聖剣の担い手   作:izuki

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第2話 ツルギ対レナ

  正義実現委員会・訓練場。

 

 普段は正義実現委員会の訓練に使われるその場所で2人の人物がぶつかり合っていた。

「キェェェェェェェ!!」

「ハァッ!」

 地面を抉る程の弾丸の嵐吹きすさぶ中、物凄い速さでぶつかり合うこの二人、正義実現委員会委員長でありトリニティの最高戦力である”剣先(けんざき)ツルギ”とティーパーティー・ルーラーの紅レナ。

 互いにレンジの近い武器をメインウェポンとしているためか、ギヴォトスでは珍しい近距離戦闘(クロスレンジ)の戦いとなっていた。

 ツルギの両手にそれぞれ握られた一対のショットガン《ブラッド&ガンパウダー》がレナを仕留めんと火を吹けば、レナはそれを躱し右手にもつ()で斬りかかる。

 それをツルギは大きく距離を取るようにして避ける、そこにレナが左手に持つ拳銃《カルンウェナン》で狙い撃つがそれも避けられてしまう。

 このような攻防をもう数十回繰り返している。

 お互いに少し距離を取り武器を構えなおす。

「どうした、攻めが甘いぞ」

「ぬかせ!」

 再びぶつかり合うツルギとレナ。

 一見互角の勝負をしている様に見えるが実際は少し違う。

 ツルギはレナの振るう剣に少しやりづらさを感じ攻めあぐねていた。

 何故かというとレナが右手に持っている剣、それが()()()()のだ。

 いままでツルギとレナは何度も模擬戦をしてきたが、いまだに正確な長さを把握することが出来ていない。

 確実なのはそれが剣だということだけ。

 なのでツルギは剣が確実に届かないだろうという距離を保ちつつ戦うしかない。

「ハァッ」

 再びレナがツルギに向かって剣を振るう。

 それをレナの右手の動きと足運びでどこに振るわれるかを考え、躱して反撃しようとするがすぐさまレナが先ほどよりも深く踏み込み叩き下ろすように一撃を食らわせようとする。

 それを後ろに飛ぶことで間一髪のところで躱すが制服の裾が少し切れてしまう。

 躱しながら両手の銃の狙いをつけて放つ。

 放たれた銃弾はレナの操る風の防壁により軌道を逸らされ髪を梳くだけで当たることはなかった。

「相変わらず厄介だな、お前の剣と風は」

「今更怖気づく様なことでもないだろう」

「ああ、そうだなぁ!!」

 ますます激しさを増していく攻防。

「ケヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

 外した弾丸が地面を抉り。

「ハァァ!」

 空降った一撃の風圧が地を切り裂く。

 そしてこの2人の戦いを外野から観戦している正義実現委員会。

「いや~相変わらずすさまじいっすねぇ」

 そういう彼女は正義実現委員会の2年生”仲正(なかまさ)イチカ”。

 砕けた口調と糸目が特徴の少女。

 社交性が高く、要領がよく器用に立ち回り、大体のことは人並みに熟せる才女。世話焼きで人助けが趣味というように面倒見も良いため、多くの人に好かれている。

 レナのことを慕う生徒の一人。

 レナの姿に憧れて正義実現委員会に入部した経緯を持つ。

「さすが《剣聖》の名は伊達ではありませんね」

 彼女は正義実現委員会副委員長の”羽川(はねかわ)ハスミ”。

 ツルギに代わって組織運営や指揮、対人折衝など主に事務方のトップを務める。

 戦闘面では狙撃の腕前は一流でスコープ無しで正確な狙撃を行えるほどの腕前。

 レナとは1年生からの付き合いで正義実現委員会ではツルギとレナと一緒に活動することが多かった。

「本当に凄いですツルギ先輩もレナ様も」

 彼女は1年生の”静山(しずやま)マシロ”。

 生真面目でストイック、一途で情熱的な性格の持ち主でその情熱は主に「正義」と「狙撃」に注がれており、普段は口数が少なく人付き合いが苦手な方だが、正義の話題になると滑舌が良くなる。

 レナとはあまり話したことはないがそれでもレナの「正義」に関する考え方や想いなどを聞き興味を示し尊敬している。

 この3人の他にも多くの部員がツルギとレナの戦いを観戦している。

 《トリニティの戦略兵器》と《剣聖》のぶつかり合い。

 トリニティの最高戦力同士の戦い。

 めったに見れるようなものではない。

「ツルギ先輩少し押されてるっすね」

「ツルギとレナの戦い方はお互いに近距離戦ですがツルギが射程距離があるのに対してレナはその分相手の間合いに踏み込む必要があります。普通であれば射程距離分詰めなければならないため不利ですが、レナにはあの風の防壁があります。あれにより自身に当たらないように弾を逸らしながら急速に距離を詰めることができる分レナの方が少し有利でしょう。最もツルギもそれの対処はできていますが」

 最も防壁といえども所詮は風、その防御は完璧ではない。

 弾幕が激しかったり、同時に何発も同じ場所に撃ち込まれたり、威力の強いモノに関しては防ぐことは出来ない。

「それにレナは《剣聖》と呼ばれるほど剣の腕は確かですが、彼女は遠距離戦は苦手です。レナに勝つには遠距離からの攻撃で如何に近づけないかが重要になってきます」

「まぁそれが難しいっすけどね」

「はい、私も前に一度レナ先輩との模擬戦をしたことがありますが狙撃を全て対処されて接近されてしまい負けてしまいました」

「背後から撃っても躱されちゃうっす」

「あれは本人が言うには直感のようなものらしいのですが……」

 レナは飛んでくる弾丸をほぼ全て躱したり、剣で叩き落としたりしてくるのだ。

 さらには自身の死角からの攻撃すらも交わしてしまう

 たまに対処できない時もあるがそれは稀だ。

 本人は直感だと言ってはいるが正直に言って信じられない。

「そういえば、なんでレナ様は剣聖って呼ばれてるんですか?」

 突然マシロがそんなことを聞いてきた。

「いきなりどうしたのですかマシロ?」

「ふと気になって、思えば私レナ先輩が何故そう呼ばれているのか知らないので…」

「そっか、知らない人もいるっすよね」

 何せあの事件が起きたのはもう2年前になるのだから。

「私たちが1年生の頃にトリニティのデパートで大きなテロが起きたのですが、その時たまたまその場に居合わせたレナが単独で持っていた竹刀だけででその場を制圧したことがあったのです」

 私たちが連絡を受けその場に急行したころには既に制圧されていた。

 しかも彼女は息を切らしておらずさらに一度も被弾していないようで無傷だった。

「あの時のレナ先輩かっこよかったっす」

「それからですね、レナが剣聖なんて呼ばれるようになったのは」

 最初は誰かが少し口にした程度だったのだろう。

 だが次第に大きくなっていき《剣聖》の二つ名が定着し、さらにはギヴォトス全体にその二つ名が浸透していった。

「そうなんですね……あれ?なんでイチカ先輩はその時の現場のこと知ってるんですか?」

もっともな疑問である。

 レナ達が1年生の頃に起きた事件と言うことはまだイチカたちはトリニティに入学していない。

 それにレナ一人で制圧したということは他の部員達もその時の詳しい状況を知らないはずなのだ。

「あ~~あの時私占拠されたデパートにいて、その時レナ先輩に助けてもらったんすよ」

 あの時のレナ先輩はすごかったとイチカは思いの時の記憶を思い出す。

デパートに残された人たちを助けるためにレナ先輩は単身でテロリスト相手に戦っていた。

 飛んでくる銃弾は全て避け、物凄い速さでテロリストの懐に飛び込み手に持つ竹刀でバッサ、バッサと切り伏せていくレナ先輩の姿はとてもかっこよくて何より綺麗だった。

この時のレナ先輩に憧れて正義実現委員会に入ったといっても過言じゃない。

「そろそろ決着がつきそうですね」

 イチカはハスミの言葉で思考を戻しツルギとレナの方へと視線を戻す。

 ツルギとレナはと言うともうかれこれ10分以上続く戦いでお互いに少しずつ被弾し、今は両者大きく距離を取り武器を構えたまま睨み合っていた。

「…そろそろ決着をつけましょう」

 レナは銃をホルスターに仕舞い、両手で剣を握り構える。

風をその身に纏い、剣を低く下段に、刀身を後ろの方に流して半身でツルギに対峙する。

 防御など眼中になくただ渾身の一振りで仕留めるための必中必殺の構えである。

 レナが次の一撃で勝負を決めに来ているのは誰の目にも明らかだった。

「……キヒ。キヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

 ツルギもリロードしたショットガンを構え、迎え撃つ態勢を取る。

 先程までしていた戦闘の喧騒とは真逆の静寂。

 深まる緊張が場を支配する。

 2人以外の誰も動けず、呼吸と2人を見る事以外の行動をする事が出来なかった。

 睨みあうこと数秒、ついに戦況が動いた。

 お互い同時に踏み込んだ。 

 自身の脚力を生かし駆け抜ける。

 お互いに急激に接近していく。

 ツルギは自分の射程内にレナが入るとすぐさま両手のショットガンを連射する。

 放たれた弾丸はレナに向かって飛んでいくが、レナの纏う風により逸れていく。

 それでも逸れなかった弾をレナは体を少しそらすことで躱しツルギの懐に入る。

 ツルギがレナに右手の銃を構え撃つ。

 この至近距離、決まったと誰もが確信しただろう。

 だが、そうはいかなかった。

 レナはその弾丸を体をさらに低くし、空中で体をひねり横へ少し移動しながら1回転することで躱す。

 ツルギはすぐさま回避行動を取ろうとするが遅い。

 既に剣は振るわれた。

「……私の勝ちだ、ツルギ」

「……ああ、私の負けだな」

 レナが振るった剣はツルギを斬らずに首元で止まっていた。

「相変わらず、強いな」

「あなたも前よりも強くなってる、流石だ」

 お互いに武器を仕舞い、レナは結んでいた髪を解きいつものポニーテールに戻す。

「お疲れ様っすレナ先輩、これどうぞ」

イチカがレナにスポーツドリンクを渡す。

「いつもありがとうイチカ」

「いえいえ、これくらい当然っす」

 邪魔にならないように纏めていた髪を解きいつもの髪型に戻す。

「お疲れ様ですツルギ、レナ」

「お疲れ様です」

ハスミとマシロもこちらへ来る。

「今回は急なお願いでしたのにありがとうございます」

「いいえこちらこそ、最近は書類仕事ばかりでこういうこともできていなかったからいい機会だったわ」

 鍛錬は怠っていないがルーラーとなってからは戦場に出ることも少なくなっていたため腕が落ちていないか少し心配だったのだ。

 なので今回のこの模擬戦はレナにとってもいい機会だったのだ。

「さてと、そろそろ行くわね。今日はありがとう」

「もう行っちゃうんっすか」

「ごめんさいこの後も予定があるから」

「たいへんですね……」

「まあね」

 行く前にツルギに一声かける。

「また誘ってねツルギ」

「ああ、次は、私が勝つ」

「いいえ、次も私が勝つわ」

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