聖剣の担い手   作:izuki

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目次にPIXIVのほうで使っているこの小説の表紙を貼ったので良ければ見ていってください。


第4話 予知と予感

  トリニティ総合学園 サンクトゥス分派執務室。

 

 「『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか』それって確か第五の古則...だっけ?」

 「ああ」

 ミカとの一件から数日たった放課後。

 私はセイアのいる「サンクトゥス分派」の執務室にいた。

 何故私がここにいるかというと珍しくセイアのほうからお茶会に誘われたためである。

 珍しいというのは彼女が特殊体質が故の病弱のせいであまりそういう機会がないだけで彼女から誘ってくれることはティーパーティーのメンバーの中では一番多いだろう。

 まあ、お茶会と言っても難しい話をしていることが多い。

 そして、今セイアから七つの古則の第五則についてのことを聞かれていた。

 「私はこれについて矛盾していると解釈しているのだが、レナ、君の答えが聞きたい」

 「矛盾してる……それって本当に楽園があったら誰もそこから出たがらないから結局存在の是非がわからない。とか?」

 「すごいな、その通りだよ」

 「なるほど……楽園、ね…………」

 脳裏にロクデナシの夢魔が幽閉されている地が思い浮かぶが……まあ、今は忘れておくとしよう。

 「……問い自体にあまり意味はないんじゃないかしら?」

 「どういうことだい?」

 私がそういうとセイアは興味深そうに聞いてくる。

 「そうね、例えば楽園が存在すると妄信的に信じるのもいいし、証明できないから存在しないとそう考えるのもいい。また他の考えもあるかもしれない」

 「……それは、つまり…」

 「ええ、要は一人一人が考えた色々な答えを互いに共有しあってお互いに考えを深め合う。そういうことのためにこの問いはあるんじゃないかしら。楽園の存否は考えずに」

 私がそう言うと彼女はとても驚いたような顔をする。

 「…………なるほど、私には到底思いつかないであろう発想だ。まさか楽園についてはどうでもいいと言い出すとは」

 「そこは考え方の違いね」

 「……ふむ、なるほど…」

 興味深いと考えこむセイア。

 私は紅茶に口をつける。

 最近の彼女は何かを考えこむことが多かったとナギサから聞いていたけれど、その内容はこれだったのだろうか?

 それに…………

 「…最近、何か悩んでいると聞いたけれど」

 「……ナギサからかい?」

 「ええ、あなたのことを案じていたわ」

 「そうか心配をかけてしまったね」

 「それは私じゃなくてナギサに言うといいわ」

 セイアはティーカップに口をつけて一息つく。

 「また、何か視たの?」

 「…………ああ」

 「そう」

 やはり、そうじゃないかと思っていた。

 最近セイアの体調が特に悪いということは彼女から聞いてはいたから。

 そういう時は必ずと言っていいほど予知夢(これ)関係だ。

 彼女の体調に関しては昔()()を貸そうかと言ったのだが結局受け取らなかった。

 「話したくなければ話さなくていいわ」

 「…………いや、少しだけ話そう」

 私は彼女が何を見たのかを無理に聞き出すことはしない。

 それが、彼女に負担を掛けてしまうことになるかもしれないのなら。

 けれど、話してくれるというのであればちゃんと受け止めよう。

 「……どうしようもない未来を見た。何もかもが虚しく、全てが破局へと至るエンディングをまさにバッドエンドというものを」

 「……あなたが言うならそれは本当に起こってしまうんでしょうね」

 「ああ、……君ならば、君の持つ()()ならば多少は変えられるかもしれない。初めて会ったとき、私の見た光景に居なかった君ならば、けれどそれだけじゃ足りないだろう結果は変わらない…」

 「………………」

 確かに彼女の見た未来は確実だ。

 唯一当たらなかったと言っていたのは、さっき言った私と初めて会ったときだけらしい。

 それ以外は全て当たっている。

 そして、それが決して変えることができないことも私は彼女から聞いている。

 けれど、それでも。

 「それでも、諦める理由にはならないわ」

 「……そうか、君はそういう人だったね」

 お互いにティーカップに口をつけて一息つく。

 「……私の聞きたいことは聞けた。次は君の番だ」

 「私の?」

 「君が何かを探していることは知っているよ」

 「……そう」

 「指摘されたくないことであったのならすまない」

 「いえ、いいわ。あなたなら」

 セイアなら気づいているだろうとは思っていた。

 それに、セイアには、聞いておきたいと思ってはいた。

 ……私はあの日から、5年前からずっと探し続けている。

 「何か、予感のようなものがあるの。何かを探さなきゃいけない。そしてそれをどうにかしないといけない。そんな漠然とした感覚が」

 その感覚を頼りに暇があれば各地を巡りながら何か見つけられないかと探した。

 残念ながらそれらしいものは見つけられなかったが。

 それでも諦めずに探し続けた。

 高等部に進学してからアクセスできる範囲が増えて本格的に過去の文献など漁り始めた。

「探している過程で私はトリニティの過去の歴史が書かれた文献を読み漁ったわ。そしてその中に一つ気になるものを見つけたの」

 「……なにを見つけたんだい」

 それは図書委員会に頼み込んで古書館の書物を拝見させてもらっているときに見つけた文献だった。

 あの本は私が見つけ時にはボロボロでページの大部分が無くなってしまっていたけれど。

 「セイアはトリニティ総合学園が出来る前のことは知っているわよね?」

 「ああ、当り前じゃないか」

 かつて、トリニティ自治区には幾つもの学園がひしめいておりその学園間での抗争や紛争が絶えず繰り返されていた。

 やがて、散発していた学校間での争いを収めるべく、各校代表が会談を行うために設け、その場所を「ティーパーティー」と呼んでいた。

 そして、各学園は「第一回公会議」における合意を以って、「パテル」「フィリウス」「サンクトゥス」という3つの主要な学園を中心とした連合を形成。

 トリニティ総合学園という一つの学校へと統合した。

 簡単に纏めるとこうだろう。

 そして、私が見つけた文献に記載されていたのはまだ争いの絶えなかった時のこと。

 「かつて、まだトリニティ自治区内で争いが絶えなかった時代に起きたとされる()()。”聖杯戦争”」

 「せいはいせんそう……聞いたことがないな」

 「でしょうね。どうやらこれは闇に葬られた歴史のようだから」

 「ほう……」

 無くなっていたページの切れ端には人為的に破られたような跡があった。

 その時点で何かある。と言っているようなもの。

 それに、()()()()()があるのなら後の歴史に残っていてもおかしくない。

 「文献にはこう書かれていた。手にしたものにあらゆる願いを叶えるとされる万能の願望機・聖杯をめぐり繰り広げられた争い」

 「あらゆる願いを叶える願望機……」

 「トリニティ自治区内の学園のほとんどがこの争いに参加した。と書いてあったわ」

 「ふむ」

 「辛うじて読めたのはここまで、これから先の部分はほとんど破れて無くなっていたから分からなかったけど………」

 けれど、私はこう思った。

 「この予感は聖杯戦争、いや、聖杯と何か関係がある」

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 ————これが、彼女との最後のお茶会だった。

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