聖剣の担い手   作:izuki

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第二節 個性的なメンバー

 補習授業部 仮部室

 

 あの会談から数日後、先生は引き受けた補習授業部の顧問としてトリニティに訪れていた。

 まずは、仮部室となる教室を確認して、名簿にあった子たちに会いに行こうと考えていた。

 ……ちなみに、先生が見間違えたかと思いたかった名前は見間違えではなかった。

 そして、それを決定付けるかのように、その生徒は仮部室となる教室で待っていた。

 『ああ、やっぱり……』

 「あ、あはは、こんにちは、先生。……あの、これはその、やむを得ない事情がありまして……」

 待っていたのは名簿に名前が載っていた”阿慈谷ヒフミ”その人だった。

 彼女は非常に気まずそうな表情を浮かべながら先生に言い訳をする。

 「その……ですね。実はテストの日とペロロ様のライブが被ってしまって……それでしょうがなくテストを受けられなくて……」

 『…………』

 「うう、そ、そんな冷たい眼で見ないでくださいぃ……!ちゃんと試験日は確認していたはずなんですっ。何かの間違いと言いますか……」

 『…………』

 「あうぅ……ご、ごめんなさい……」

 『いや、私に謝らなくても大丈夫だけど……』

 先生になんとか言い訳をしようとするものの、先生の無言に罪悪感が大きくなり思わず誤ってしまうヒフミ。

 空気を換えるためにヒフミは自分が頼まれたことを先生に話す。

 「え、えっと……ナギサ様に、先生のサポートを頼まれまして……」

 『私の?』

 「はい、えっと……」

 どうしてそんなことになったのか、先生に伝えるべくヒフミは数日前の出来事を話し始めた。

 

 

 ティーパーティー専用テラス

 

 ヒフミは先生が訪れた翌日ナギサに呼び出されていた。

 普段、ここは一般生徒が招かれることはめったにないが、ナギサのお気に入りであるヒフミはたまにここでナギサとお茶会をしていた。

 そのため、今回もそうかなとヒフミは思っていたが少し空気が違うことに気づいた。

 そして、それに何か嫌な予感を感じており、その予感は的中した。

 「───と、いうわけでヒフミさん。先生とサリナさんをお手伝いすると共に、補習授業部を導いてくださいませんか?」

 「はい!?私がですか!?」

 ナギサからの予想外の提案に、ヒフミは思わず声を荒げてしまう。

 普通、そういうことは自分のような生徒が担当するようなものでもないだろうと思っていた。

 「はい、そもそもヒフミさんの様な優等生でないと出来ない事ですから」

 「わ、私はそんな、優等生という程でもありませんし、そもそも成績も平均位で……今は落第の危機なのに」

 「ふふ、私はヒフミさんの「愛」を高く評価しておりますから、それに、今度はヒフミさんから私に「愛」をお返しして頂く番……ですよね?」

 ナギサのその言葉に、思わず息を呑んだ。

 そしてそれと同時に数週間前にアビドスで加勢した時のことが脳裏によぎる。

 あの時、ナギサに助けを求めて彼女に“貸し”を一つ作ったのは紛れもないヒフミ自身だった。

 そのため、拒否することもできず。

 なにより、ヒフミにとって生徒会長であるナギサに逆らうなどそもそもできない。

 彼女はだんだんと萎縮してしまい、反論の口から開かぬうちにナギサはまるで愉しむように紅茶を口にする。

 「あ、あぅ……」

 「ふふっ、そういうことですので、よろしくお願いしますね?補習授業部の部長さん?」

 

 

 『部長だったんだ……!』

 「は、はい。あくまで臨時の、ですが……それにあくまで、この補習授業部は特殊な形で作られた限定的な部活ですから、ぜ、全員が落第を免れたら、自然に部は無くなるはずです」

 先生としては見知った彼女が部長であってくれて頼もしいのだが。

 あのアビドスでの一件が原因なら自分にも責任があると先生もヒフミに謝罪をして、彼女は自分のしたかったことだからとその場の雰囲気が和んだものになっていく。

 「えっと、よろしくお願いします。先生」

 『うん、よろしくね、ヒフミ』

 「あ、補習授業部の他のメンバーには、まだ合われてないんですよね?名簿を確認していると思われるのでわかっていると思うのですが、メンバーは私を含めて四人みたいです。とりあえず会いに行きましょう」

 ヒフミについて一緒に教室を出る先生。

 向かう先は正義実現委員会の本部。

 

 

 正義実現委員会 本部

 

 十分も歩かずに2人は正義実現委員会の部室棟に来ていた。

 ヒフミからすればこの建物は何処となく威圧感すら放っているような気がして、近寄りがたい印象があった。

 『ここは……』

 「あ、あぅ……あんまり此処には来たくないんですが」

 建物に入り、暫く歩けば目的の生徒がいるであろう部屋の前に辿り着いた。

 何処か怖気付いていたようなヒフミだが、覚悟を決めてほんの少し上擦った声で扉を開いた。

 「えっと、失礼します……どなたかいらっしゃいますか?」

 「…………」

 返事がなかったため、室内に誰かいないかとぐるりと視線を回せば、受付と思われるカウンターに小柄な桃色の髪の少女が扉を押し開けヒフミを見つめていた。

 「あ、え、えっと、こんにちは」

 「…………」

 「え、えっと……」

 「……何」

 ヒフミのなんてことない挨拶に少女はぶっきらぼふに答えた。

 「あうぅ……わ、私、何かしてしまったんでしょうか……」

 『……ちょっと、人見知りなんじゃないかな?』

 「……だ、誰が人見知りよ!!」

 先生がおそらくそうだろうと思って口にした言葉にその少女はデスクを叩きつけながら立ち上がった。

 「た、ただ単純に知らない相手だったから警戒してるだけなんだけど!?」

 『それを人見知りって言うんじゃないかな……?』

 「うっ……」

 真正面から図星を突かれ思わず言葉に詰まる少女。

 そんな彼女に思わず苦笑いしながら先生は周囲を見渡した。

 目的の生徒らしい子は此処には見当たらないが……目の前の彼女以外。

 「そ、それで正義実現委員会に何の用!?」

 「えぇと、実は探してる方がいて……」

 「はあ!?何それ!正義実現委員会に人探しの依頼をしに来たってこと!?私たちのことボランティア団体かなんかだと勘違いしてるの!?そんなに暇じゃないんだけど!」

 「い、いえ!そういうわけではなく……此処に閉じ込められてるって聞いて……」

 「……はぁ?」

 「ですからえっと、その……良くないことをした子が此処に……」

 「え、それってもしかして……」

 少女がヒフミの口にしていることの意味を理解して、まさかと思いながらその視線を奥の扉の方へと向けた瞬間。

 そこから、スクール水着を着た少女が堂々と歩いて出てきた。

 そう、堂々と、歩いて、出てきたのだ。

 何の恥じらいもないかのように。

 「こんにちは。もしかして、私のことをお探しでしたか?」

 「!?!?」

 「『!?』」

 桜色の髪をした少女は何でもないようにこちらまできて聞いてきた。

 急に現れて自然に挨拶をしてくる学校指定のスクール水着を着た少女に3人は驚く。

 「え、は、なんで!?あ、あんたどうやって牢屋から出たの!?ちゃんとカギ閉めたのに!?」

 「いえ、開いてましたよ?私のことを話されているような声がされたので、こちらに来てみました。何かご用でしたか?」

 顔を真っ赤にしながら言う少女にさも当たり前化のように水着のまま言う少女。

 「あら。大人の方、ということは……先生ですね。改めまして、こんにちは。なるほど、もしかして補習授業部の?」

 「ちょっと待って!その格好で出歩かないでよ!」

 そのまま歩き出す彼女の腕を少女はギリギリと掴んで止めようとする。

 ”浦和ハナコ”

 補習授業部2年生、水着で学校を徘徊していたところを正義実現委員会に捕らえられ監禁中……だったはず。

 ……ちなみに、もう数十回目である。

 「……?何か問題でもありますか?下江さん?」

 「あるに決まってるでしょ!?何で学校の中を水着で徘徊するのよ!?」

 「ですが、学校の敷地内であるプールでは皆さん普通に水着になられますよね? ここもあくまで学校の敷地内で、これも学校指定の水着です……あ、もしかして下江さんは、プールでは水着を着ないタイプですか?」

 「えっ、はぁ!?!?」

 「そうでしたか、下江さんは全裸で泳ぐのがお好きなんですね、流石は正義実現委員会、そういった分野まで網羅されているなんて」

 「ばっ、バカじゃないの!?着るに決まってるでしょ!?そ、そんなことするわけ……!」

 あれよあれよと言葉のマシンガンが次々と少女に突き刺さる。

 意味のわからないほどのトンデモ理論で危うく全裸族にされかけた少女は怒りながらハナコを再び牢屋へと押し込んだ。

 「『…………』」

 もはや、絶句するしかなかった。

 「はあ、はあ……」

 「えっと……一旦、次のメンバーに会いに行きましょうか……」

 『…うん』

 とりあえず保留にして他のメンバーの名前を確認する。

 「えっと…………白洲アズサさん」

 「──ただいま戻りました」

 「任務完了です!現行犯で白洲アズサさんを確保しました!」

 「はい……はい!?」

 ちょうど探そうとしていた生徒の名を言われて驚いてしまう。

 しかも確保したと。

 「あ……ハスミ先輩にマシロ」

 「コハルさん、お疲れ様です……あれ?」

 「先生?」

 帰ってきたのはハスミとマシロ、そして連行されているのは顔を覆うガスマスクをつけている少女。

 「惜しかった。弾丸さえ足りてれば、もう少し道連れにできたのに」

 ガスマスクをつけているからか「フシュー、フシュー」となんとも締まらない呼吸音を繰り返している。

 ”白洲アズサ”

 補習授業部2年生、校内で暴力行為の疑いで正義実現委員会から追われていたところ、弾薬庫を占拠し3時間にわたる抵抗の末に逮捕。

 逮捕寸前まで、激しく抵抗。被害多数。

 先生は事情をハスミに説明する。

 「なるほど、お話は理解しました。先生が、補習授業部の担任の先生になられると……残念です、できればお手伝いしたかったのですが」

 『2人を連れて行っていいかな?』

 「はぁ!?ダメに決まってるでしょう!?絶対ダメ!凶悪犯なのよ!?」

 だハスミが先生に答えを返す前に喰ってかかるように少女が食い気味に声を上げた。

 「コハル、先生はシャーレの方として、ティーパーティーの要請を受けてこちらにいらしたのです。規定の上ではなんの問題もありません。補習授業部の顧問、担任の先生となるのですから」

 「え、えぇ……まあでも、先輩がそう言うなら……」

 ハスミが諭すように口にした正論を受けて縮こまってしまったがすぐに先ほどまでの威勢を取り戻して再び大きな声をあげた。

「ふ、ふん!まあでも良いザマよ!こっちは凶悪犯達と一緒に居なくて済むし、そもそも補習授業部だなんて!恥ずかしい!」

「…………」

「あははっ!良いんじゃない、悪党と変態の組み合わせ!そこに「バカ」の称号なんて、私なら一緒にいるだけで羞恥心で死んじゃいそう!」

 「…………ふぅ」

 「え、っとぉ、非常に言いにくいのですが……最後の1人は、下江コハルさん、です」

 「……え、私っ!?」

 ”下江コハル”

 補習授業部1年、すでに3回連続で赤点をたたき出し、留年目前。

 補足事項:成績が向上するまで、正義実現委員会には復帰できないものとする。

 かくして、ここに個性的な4人の生徒が集まった。

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