貞操逆転世界なんかに転生しなければ良かった 作:Dina
生まれ変わったら貞操逆転世界!魔法もある!顔はイケメン!最高だ!!目指せハーレム夢の生活!!
………なんて、思っていた時期もあった。
前世は普通の草食系男子……いや、取り繕うのはやめよう。異性に話しかけることすら出来ない陰キャだった。顔立ちもごくごく普通な、頭が特別良い訳でもない、どこにでもいるような男だった。ちょっと変わっているとすれば、貞操観念逆転世界に憧れていたことくらいだろうか。
貞操逆転世界。うん、良いよな。文字通り貞操観念が逆転していて、女は性欲に忠実に男は貞淑に。絶対にあり得ないからこそ憧れるというか、えっちなお姉さんに迫られたいというか。ともかく、俺は貞操逆転世界が好きだった。
だが。
今なら絶ッッッ対にそんなことは言わねぇ。
「クローヴィス!早く!お客さんだよ!」
「……はい、只今」
憧れていた貞操逆転世界にクローヴィス・モアとして転生した俺は現在──男娼をしている。
「あぁようやく来たのね、クローヴィス。今日も美しいわね。わたくしに会えなくて寂しかった?」
「は、はは……寂しかったですよ、リネット様」
娼館の一部屋でくつろいでいた絶世の美女がどこの勘違い親父かと思わせるようなセリフを吐いた。いや本当に、この綺麗な人がキャバ狂いならぬ男娼狂いになっているなんて思いたくない。
この女はリネット・オドーズ。この国の文官でもかなりの地位にいる方、らしい。らしい、というのは俺がこの国の政治システムをよく知らないからだ。それでもこの女が来る時はいつもは銭ゲバなオーナーがペコペコ頭を下げるもんだから、なんとなく偉いんだろーなーくらいの認識でいる。
「久しぶりに休暇を取れたものだから。ふふ、朝まで一緒にいさせてね?」
「そっ、すか……はは」
いやアンタこの前もそう言って一晩中俺を指名してたじゃねえか。どうも俺はこの女に気に入られているらしく、リネットがこの店に来る度に毎回指名されている。
いやね??俺だってこんな金髪碧眼美女(しかも巨乳!)と夜を共にするのはね??嬉しかったよ??……最初だけな。
「もう、すっかり取り繕っちゃって。最初の頃はあんなに反抗的な目をして可愛かったのに」
「…………」
何を隠そう俺の男娼デビューを飾った客はリネットである。つまり筆おろしをされた初客。うーん良かったのか悪かったのか。どちらかといえば最悪に近い部類だったと言っておこう。
『あら?この男は今日からなの?』
『は、はぁ。そうですが……なかなか跳ねっ返りでして。リネット様にならもっと良い男娼をご紹介できますよ』
『ううん、いいわ。今宵はこの男にして頂戴』
未だ男娼になるということを分かっていなかったあの頃。何も知らない真っさらな俺を買い取ったのはリネットだった。
もしこの時に戻れるのなら、俺は俺が店に出るのを必死に止める。
「はぁ……今でもたまに思い出すの。反抗的な目をして男娼なんて嫌だって思いながら私に溺れていく貴方の姿……。ふふ、流石に童貞の子を縄で縛ったのはやり過ぎたと思ってるのよ?」
セクハラだぞセクハラ!この女を誰か捕まえてくれ!
そう思ってもここは娼館なので誰も聞いてくれやしない。オーナーはオプション付けて貰ってウハウハ、リネットも性癖を発散できてウハウハ、被害を被ったのは俺だけ。なんてこった。
あの頃はなー、俺もまさか初めて取った客から緊縛プレイを受けるとは思わず、思いっきり蹴ろうとした……が、あっさりと魔術で止められ更におかしな体勢で縛られたのには暫くトラウマになった。
魔法でいくらでも強化できるこの世界では男も女も力の差はあってないようなもの。国のエリート様には俺の抵抗なんて子犬が戯れているようなものだったとか。
うっとりと最初の頃を思い出していたリネットはふと目を輝かせた。嫌な予感がする。俺のこの手の予感の的中率は今現在百パーセントである。
「そうね、やっぱり今日は縄を使いましょう」
「オプションは銀貨三枚です」
クソがよ!!と叫びかけてギリギリ飲み込む。大丈夫大丈夫、金のためだ、オールオーケー。大人しく代金を告げた俺にリネットはつまらなそうにため息をついた。
「もう、分かってるわよ。……はあ、本当に従順になっちゃって。貴方をそんな風にした他の客に嫉妬しちゃうわ」
残念だったな。俺をこんな風にしたのはオーナーのクソババアだ。客に乱暴な口をきいた日にはマジで何も食べさせてもらえない。身体を酷使した後に薄っすい味の具も入ってないスープだけってのはな、めちゃくちゃ堪えるんだ。あのババアにだけは逆らえる気がしない。
内心をおくびにも出さず、大人しく微笑んでいる俺。いい子過ぎるね。こりゃあ次期男娼エースも遠くない。全くもって嬉しくはないが。
「それじゃあ、服を脱いで。動かないでね……」
諦めて服を脱いだ。慣れた様子でリネットはしゅるしゅると縄を俺の身体に巻き付けていく。じっと俺の身体を見つめる青い瞳の中には興奮が見てとれた。
赤い縄が重なって、結ばれて。もう解き方すら分からない。下半身まで余す所なく……というか股間のあたりは特に重点的に縛られ、思わず声が漏れる。
「う、っ……!」
「あぁ、ほんっと綺麗!やっぱり男は細い方が見栄えが良いわね。食事制限を依頼して正解だったわ」
いやアンタかよ!俺の食事、妙に少ないなとは思ってたんだがアンタのせいか!ゆ、許せねぇ。俺の貴重な食事を減らしやがって。
「あら、なあに?不服だったかしら?」
細い指であごをクイっと上げさせられる。リネットの目には嗜虐的な色が浮かんでいた。
「ふふ、そうよね?嫌だったわよね?でも仕方ないわよね?他の客も抱いているんだから」
身請けさせてくれないのが悪いのよ、とリネットは頰を膨らませた。まるであどけない少女のように。
ぜ、絶ッッッ対に嫌だ。この女に身請けされたら毎日どんな目に遭うか分かったもんじゃない。
そもそもこの世界では男の社会的地位が著しく低い。貞操逆転世界……いやきっとそれだけじゃないこの世界。現代に生きた令和っ子だった俺にとっては耐えられないほど性別によって扱われ方が異なるのだ。
そんな世界の、権力者の元へ行く?冗談でも笑えない、俺はまだ人間として生きていたい。
「……その、反抗的な目。男のくせにどうしてそんなに女に逆らうのかしら。諦めた方が早いのに。折れてしまえば楽なのに。でも……とっても綺麗な目」
最後の言葉は、あまりに小さくて聞こえなかった。
何故か静かになったリネットは視姦するのに飽きたのか、縄を解いた。自分の服をはだけさせながら俺に胸を押し付ける。
「……ううん、何でもないわ。それでは貴方の身体を頂こうかしら。ねえ、触って?」
「……はい。リネット様」
♢ ♢ ♢
最悪だ。
最悪の朝だ。
いま鏡を見たら目が死んでいる自信がある。
身体は痛いし、擦られ過ぎた股間のブツがひりひりするし、まだ搾り取られたような感覚が残っているし、あの後また縛られた縄の跡が残っている。
リネット相手の最悪な点。それは縄で縛られることではなく──
『も、むり……!』
『あらダメよ?ほら回復魔法をかけてあげる』
常にリネット優位。萎えても回復魔法で回復させられ朝まで搾り取られる。前世での男のプライドなど塵のように砕かれ、ひたすらに貪り食われる。
不思議と身体の疲れだけはないのだが、それ以外が最悪すぎる。
「……う、ぅん。おはよう、クローヴィス」
「……おはようございます」
「うふふ、朝から綺麗ね」
アンタもな。絶対に言ってはやらないが、情事の後のリネットは気怠げで美しい。本当に、見た目だけは良いのだ、見た目だけは。
「……やっぱり、ダメだったわね」
「はい?」
「昨日もあんなに啼いていたのに。身請けだけはさせて貰えないのね」
「…………」
あっっぶねえ。もし流されていたら簡単に売られるところだったらしい。この娼館の数少ない良い点を挙げるとすれば、身請けは男娼が認めなければ出来ないところだ。その制度のおかげで俺が何回助かったことか。
「ねえクローヴィス?今はそれで誤魔化されてあげる。でも……もし。他の客が貴方を身請けするようなら、……ねえ?」
リネット・オドーズ。
この女は俺の男娼生活において厄介な客の内の
短編連載にしたい(欲望)
良ければ評価のほどよろしくお願いします。