貞操逆転世界なんかに転生しなければ良かった   作:Dina

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本日二話目
微グロ注意


ごにんめ

 男はロボットが好きだ。女は人形が好きだ。つまり、人類は自分たちに似たものが好きなんじゃないか?だからこそ人型ロボットは開発されるし、自分たちと似ていないものは排斥する。いやまあ全員じゃないけどさ。……ふむ、即興で考えたにしては的を射てるんじゃないか?

 

 そして、それはこの世界でも同様で。

 科学技術の発達はそれほど無いかわりに、魔法が発展したこの世界。異世界のくせにエルフや獣人や人魚はいないのは残念だが、魔法があるので差し引きプラス。それでも人間の姿形や生活習慣に()()()()()()大きな違いは無い。

 うん?その一部がマイナスすぎる?それはそう。俺クソみてえな目にしか合ってないし。

 

 ともあれ、どんな世界においても人は人に焦がれる。科学技術が人型ロボットを作るのならば。魔法によって作られるのは─

 

 

 

 

「ん、私が来た」

 

 そう言ったのは時が止まったかのような美少女。淡々とした話し方に動かない表情。顔立ちが整いすぎていて、生きているように見えないはどだ。

 

 でもそのセリフ言うならもっと明るく言って欲しい……決め台詞感が台無しである。

 

「……?何を言ってるの?」

「いえ何も」

「ん。今日も指名する」

「はい」

 

 店に来たこの女の名はカヴィラ・レンシュラン。例に漏れず俺の常連客ではあるのだが……

 

「…………」

「…………」

「…………今日は何を?」

「ん。実験」

 

 よ、読めねぇ。何を考えてるか全くもって分からない。俺を指名する理由が分からない。

 他の客は、まだ分かるんだ。クソみてえな理由だとしてもわざわざ俺を指名するのには理由がある。しかしカヴィラだけは分からない。

 

「今日はお披露目」

「何をですか?」

「やっと完成した……ようやく私は人間になれる」

 

 電波ちゃんかな?

 漫画とかゲームがなくてもこういうのって生まれるんだなぁ、なんて感心しているとカヴィラが鞄から何かをガサゴソと取り出した。

 

 手に持っていたのは、男性器の形をした物体──つまり、大人の玩具であった。

 

「ん。これ、使って」

「…………」

「…………?」

 

 どうして受け取らないの?と言わんばかりに見られた。え、どうしてもクソもある?こんなん持ちたくないが。

 

 ただ受け取らないと話が始まらなさそうなのでしぶしぶ手に取った。うわっ、なんか生暖かくて気持ち悪っ。

 

「…………」

 

 今までのカヴィラの所業を思い返す。

 

 実験と称して怪しげな薬を飲まされたと思ったら媚薬だった初回。実験と称して魔法で腕を触手に変えたカヴィラにめちゃくちゃにされた時もあった。前回は確か、最初から最後まで記録魔法で撮られたんだったか。

 

 ロクなことにならない、と確信できる。

 

 普段どんなプレイでも基本断らない俺だが、流石にカヴィラのやることは度が過ぎているというか、散々な目に遭うことが確定されているというか。嫌な予感しかしない。流石に断ろ、

 

「ん。冗談」

 

 分っっかりにくいな?!声のトーンも表情も全く変わらない冗談とか笑えないんだが?!

 

 でも、良かった……流石の俺でも()()を突っ込まれるのは絶対に無理だ……そんなこと経験したくない……

 

 

「これはまた今度」

「えっ、ちょっ」

「今日はこっち」

 

 そう言ってカヴィラは徐に服を脱ぎ出した。ボタンがぷつり、ぷつりと外されて、惜しげもなくきめ細かい肌が見えて……

 

 腹部に、何かが書いてあった。

 

「今日はこれの完成度を調べる。クローヴィス、協力して」

 

 もしかしなくても、これさぁ……

 

「ん。淫紋」

 

 ですよねぇ?!え、それって自分で自分に付けるもの??ってか何で淫紋の存在知ってんの?いくら薄い本を読んでいる疑惑のあるカヴィラでも、節度というものがあると思う。

 

「大丈夫。貴方にも刻む」

 

 お断りする!!!!

 

「でも、それじゃあ……私は人間になれない」

 

 珍しく、表情が動いた。きゅっと寄せた眉、傾げられた首。それは冗談でも何でもなく、本当に困り果てているように見えた。

 

 控えめに膨らんだ胸元が見え隠れして、ぐら、と自分の中で何かが揺れる。

 

 

 

 

 ッ、いや無理!!!

 ごめん流石に無理だわ、いくら可愛く懇願されても自分の身体に淫紋が付くのは嫌だ!!

 

「どうして、これが必要なんですか?」

 

 こうなったら理屈で説得を図るしかない、カヴィラは理屈厨なところがあるからな。なんとか誤魔化して俺に淫紋を刻むのを阻止しないと……!

 

「ん、人間になるため」

「既に人間だと思いますが」

「……違う。私は、カヴィラは、人間ではない」

 

 ちっ、頑固だな。お前が人間なのは知ってるんだよ、じゃなきゃ今までしてきた性行為はなんだって言うんだ。

 無表情の下で色々考えていることも、案外抜けていることも──このせいで性行為中に熱中症になりかけたのは許さないが──知っている。

 

「……そう、言ってくれるのは予測できていた」

「はい?」

「でも、今日こそは本当のことを言う。見てて」

 

 カヴィラがぶつぶつと魔法を唱える。するとはだけた胸元が淡く光って──

 

 パカっと開いた胸から心臓が取り出された。

 

「私は人によって造られた存在。魔法で動く自動人形。……驚いた?」

「は、い」

 

 

 いやもうめちゃくちゃ驚いた。ここ最近一番の衝撃だ。

 

 

 ……驚いた、驚いたからさ、……その心臓、仕舞ってくれない?

 

 取り出された心臓は、どくんどくんと鼓動し血のようなものが滴っている。なかなか……いやかなりグロい。うえっ……

 

「何故?あまり驚いていない」

 

 いや、心臓取り出しておいてピンピンしてるんだから人間じゃないことは分かったよ。

 でも、ちょっと心臓がグロくてそれどころじゃないというか。こちとら現代日本の令和っ子だったんだぞ……この世界に転生してからも戦ったことないんだぞ……グロいものには閲覧注意必須だろ。

 

 言い募る俺を見て不思議そうにしたカヴィラがようやく心臓を仕舞う。もう二度と見たくねぇや。

 

 

「ん。これで分かった?」

「いやまあ、はい。人間じゃなかったんですね」

「ん。だから淫紋が必要」

 

 なんで???

 いや疑問には思ってたけど全く関係なくない??

 

 俺のはてなマークが飛び交う脳内を察したカヴィラが得意気に言う。

 

「クローヴィス、人間であるために必要なものは何だと思う?」

 

 ふむ。人に必要なもの……急に心臓を取り出したりしない倫理観とかか?

 

「違う」

 

 はいはい、冗談だよ。でも真剣に考えるなら、そうだな……

 

「……心、とか?」

 

 心を持つからこそ、感情を持つからこそ、人は人として生きていける。ありきたりだがそれっぽい答え。

 

 だが、カヴィラは自分が感情を持たないとでも思っているのだろうか。それこそ笑ってしまう。さっきも思ったがカヴィラは無表情ながら結構感情表現が豊かであることを俺は知っている。

 

 そんな俺の答えを聞いたカヴィラは。

 

 

 

「……はあ?馬鹿?戸籍に決まってる」

 

 呆れたようにそう言った。

 

 あー、はいはい戸籍ね。確かに必要だよな、この国では仕事に着くのにも家を買うのにも戸籍は必須だし、それさえあれば割とどこでも生きていける……って、は?!?!

 

 え?!ここまで答えさせておいて、戸籍?!いや分かるけど、必要だけど、人形が人間として生きるために必要なものが、戸籍?!

 

「戸籍は大事。他国からの不法侵入者や中途半端に造られたような私には人権がない」

 

 うわ、真面目に「……心、とか?」なんて答えた俺が恥ずかしい奴じゃん……自信満々で「カヴィラには心がある(キリッ)」と抜かした俺が馬鹿みたいじゃん……

 

 だが、ふと気づいた。

 

「あれ、でも、戸籍って高いですよね」

 

 そう、戸籍を買うのには非常に金がかかる。銭ゲバババアが運営し、かなり稼いでいるこの娼館でもおいそれとは手が出せない金額。まともな職に就いていたら生涯払えないような高額なのだ。

 普通に生きてたら生まれた時にちゃんと国に申請してるので基本必要はないのだが、人工生命であるカヴィラにはそれが貰えなかったらしい。

 

「ん。だから私はお金が必要」

「はあ……」

 

 じゃあ娼館になんて来てる場合じゃないのでは?

 

「ん。必要経費」

「はあ?」

「クローヴィスに手伝って貰った玩具、売れ行き好調。最近は貴族にも人気」

 

 は?俺が手伝った玩具?

 

「だからこの淫紋も失敗できない。しっかりとデータを取って一般販売を行う」

 

 カヴィラと過ごした夜を思い出す。

 媚薬から始まり、前世では考えられないような大人の玩具の数々を試された。アブノーマル過ぎだろと引きながら、でも身体は傷つけられなかったので特に抵抗しなかったモノもたくさんあった。毎回記録を付けるので変な性癖だと思っていたが……

 

 あれらが、全部売られている?

 

「ん。さっきのバイブも人気商品。クローヴィスのものを参考に作り上げた逸品。気持ち良いとこに当たると評判」

「…………」

「知らなかった?でもオーナーには追加料金を払って許可も得ている」

 

 なるほど……なるほど。つまり俺は俺のブツを参考にしたバイブが売られていて、それを大勢の女が使っているってことだ。

 

 もう何も考えたくないが……全てはあのクソババアのせいってことで良いか?

 

「ん。たぶんそう?」

 

 おーけーおーけー、じゃあちょっとあのババア殴りにいってくるわ。

 

「だめ。この『お手軽淫紋!ワン詠唱で感度五倍!』を試してから。今日はそのために来た」

 

 そんなアホみたいな淫紋刻まれてたまるかぁっ!!!嫌だ、ぜっったいに嫌!!!

 

「ん、『淫紋付与!』……本当にお手軽。素晴らしい」

 

 離せ!!絶対に今日という今日はこの女から逃げ……ッ?!?

 

 カヴィラに腕を掴まれた途端、身体に衝撃が走り、思わず声が出てしまう。 

 

「あ゛あぁッ゛?!?!」

「感度は五倍。流石に百倍は死んでしまう。だからこれで我慢。……楽しんで、クローヴィス」

 

 

 

 

♢ ♢ ♢

 

 カヴィラが帰った後。

 

 俺は死んだように顔を覆って店の奥にいた。

 なんなんだ……なんなんだよ淫紋って……そんなんえっちなサキュバスとかに付けるものじゃないのか。感度五倍という本当に普段からは考えられないような快感はもはや痛かった。

 

 売られてる大人の玩具のこととか……本当に何も考えたくねぇな……

 

 すると、雑用をしていたフラットに声をかけられた。

 

「うわ、先輩お疲れっすね」

「ん、あぁフラット……放っといてくれ」

「はー、そんなキツかったんすか?先輩も優しいですねぇ」

「何がだ……」

「えだって、どんなプレイされても出禁にしないんでしょ。なんだかんだ最後まで付き合ってやるじゃないっすか」

「……できん?」

「はっ?……先輩、もしかしてなんですけど、あんまりにも厄介な客は出禁に出来るって……覚えてないんすか?」

 

 できん……出禁。

 そんな制度が、あったようななかったような。

 

「おれが言うのも何なんすけど、ちゃんと覚えといた方がいいっすよ……」

 

 呆れたようなフラットの声を聞きながら。俺は天を見上げた。

 

 カヴィラ・レンシュラン。玩具を多用する厄介な客()()()……だったのだが。それ以上の衝撃が合わさりそれどころではない。




コメディ燃やしたからシリアスにして良いよな!……って思っていたのに前以上にギャグになった。何故?

感想、評価ありがとうございます。嬉しくて筆が乗りました。
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