111-11   作:いちごケーキ

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1 探し人

 

 

 

 

端的に行って、昔の俺の家庭環境は最悪だった。

自称冒険家の父親は数年前から行方不明で、母親は俺の親友の父を略奪。ついでに、小学生の頃までは相当治安の悪い所に住んでいた。

 

……だが、そんな俺にも救いはあった。

浮気された親友の母が、同情して引き取ってくれたのだ。

 

だから、母さんと兄が俺の全てだった。

絶対に親孝行しようと国内で1番頭の良い高校に合格した後、確か家族3人でお祝い旅行に行こうと車に乗って……トンネルが崩壊した。

 

 

 

 

 

 

痛い!痛い!痛いっ!!

 

暗闇で激痛に悶えている途中、急にあたり一面がぼんやりとした光に包まれた。

 

 

「おめでとうございます!可愛らしい男の子ですよ!」

「アギャーッ!(はぁ……?!)」

 

 

 

 

 

 

全く何が起こっているのか分らなかったが、数日間時間が経った頃に驚きの真実が発覚した。

 

 

「ねぇ涼太ちゃん、覚えてる?……前世の事」

「うぅ??!」

「私は前世、柊と涼太ちゃんの母親だったわ……」

「あうっ!!」

「ふふっ!目をキラキラさせちゃって!やっぱり涼太ちゃんだったのね!!」

 

こうして、義母が本当の母親になってハッピーエンド……ではない。1歳年上の、親友兼兄貴の柊が見つからないからだ。

そもそも彼も産まれているのかなんて分からないし、いても国外かもしれないけど。

 

___それでも絶対に、見つかるまで探し続ける。

 

幸い、全く手がかり無しではない。母さんも俺も、前世の顔の面影があるからだ。

目立ち続ければ、もしかしたら兄貴が自分から来てくれるかもしれない。

 

だから俺は、何が何でも目立ってやる!

……中学生の精神に、幼児の身体!子役タレントにはピッタリの筈だ!!

 

 

 

 

 

 

彼は「15年の嘘」という映画にアクア役として出演し大ヒット、一世を風靡する大人気子役として名を馳せた。

 

だが……彼の兄に、活躍は届かなかった様だ。

中学生になった頃には、涼太の演技力はそこそこ優秀程度まで落ちてモデル活動にシフト。

世紀の美少年だった為、彼だけを取った写真集で10万部売り上げる程の人気を得たが、国内にはいないであろう兄に活躍が届くとは思えない。

 

 

(このままじゃ駄目だ……この身体も運動能力は割と高いし、スポーツ路線に変更するか?

……やるとしたら、今の中学で1番強いバスケしか無い。でも強豪校でモデル兼部なんて、やらせてくれるのか?

……いやまぁ、聞くだけならタダだな)

 

 

 

 

 

 

黄瀬の、名門バスケ部にモデル兼業で入るという思い付きは、なんと成功してしまった。

 

百戦百勝を掲げる帝光バスケ部は、強い選手こそ正義。

バスケ未経験で2軍レベルの実力を持っていた彼は、特例で許可されてしまったのだ。

 

 

(3軍の選手と戦ったけど凄く弱かったな。ホントに強豪校なのかよ……ま、下を見ても仕方ねぇけど)

 

格下を見下していくスタイルの、転生黄瀬涼太。

前世でも素晴らしい身体能力と頭脳を持っていた為、出来ない奴の事が理解出来ないのだ。

 

その上、前世で不遇だったり兄貴が何年も見つからない事もあって、幸せな奴を妬んだりもしている。

傍目から見れば確実に幸せな黄瀬だが、その内心は鬱々としていた。

 

 

 

 

 

 

「今日から1軍に上がる、黄瀬涼太だ。覚えておけ」

「始めまして、黄瀬涼太です!モデル活動を兼任するので毎日練習に出る事は出来ませんが、部活時間は精一杯やらせて頂きます!よろしくお願いします!」

 

___パチパチ

 

入部してたった2週間で、部員数100を超える超強豪校で1軍に上がった黄瀬。

意外と簡単だったなぁという軽い感想を抱きながら、とりあえずスタメンを目指そうと思っていた。

 

前年度全国大会優勝校の帝光で、卒業までにスタメンが取れればバスケの才能があると判断出来る。

そしたらNBAを目指して頑張っていこうと思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

___ダダダキュ、ダダッ

 

「うっわ速っ!!」

 

 

___スッ…………パシッ

 

「えぇ……?ボールの対空時間が長すぎる……」

 

黄瀬が1軍に合理すると、2人の選手が群を抜いて上手かった。

彼はこんな凄い奴が中学生でいるのかよと慄きながら、休憩時間に青髪に向かって話し掛けた。

 

 

「あの……貴方と緑髪の方がダブルエースなんですか?」

「ん?いや、俺がエースだ!……で、他にキセキの世代って呼ばれる選手が2人いる、赤司と紫原って奴だ。赤司は監督に呼ばれてて、紫原は……サボり?」

「なるほど、帝光バスケ部ってけっこう緩いんですね」

「いや本当はサボっちゃいけねぇんだけど、紫原はガタイが良いから食事休憩が必要なんだ……多分」

 

原作と違い青峰に憧れていない黄瀬が雑談をしている最中、勝手にドアが空いた。

 

 

「あれ、なんな入り口壊れてます?」

「いや、あれは……」

「ボクが開けました」

「?!」

 

突如現れた水色の髪の少年に、黄瀬はかなりビビった。

 

 

「え、幽霊……?」

「人間です」

「テツはソンザイカンがねーけど人間だぜ!」

 

ドアを開けたのは、バスケ部の選手だったらしい。

黄瀬はホッと安心しながら、彼をチラッと見た。

 

 

(バスケやるには背が低くね?170明らかに無いよな)

 

割と失礼な事を考えているのは表に出さず、黄瀬は笑顔で挨拶した。

 

 

「あ、1軍の人でしたか!俺は今日1軍に上がった黄瀬涼太って言います!よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします」

「あ、コイツお前の教育係になるから!」

「そうなんですか……ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします!」

 

あんまり強くなさそうな教育係を当てられた黄瀬だが、原作と違って嫌がってはいなかった。

 

 

(あんまり強くはなさそうな人だな……まぁ別に最低限の事を教えてくれれば誰でも良いけど)

 

 

 

 

 

 

黄瀬が1軍に上がった後は、スタメンの中では1番弱い灰崎とマッチする事が多かった。

彼以外のスタメンだと手も足も出ず、他の1軍選手だと弱過ぎたからだ。

 

 

「やっぱし灰崎くん強いねー!俺はサブかな!」

「ケッ、良い子ちゃんぶりやがって」

「俺は普通位だよ。まぁモデル活動でちょくちょく練習休んだりはしてるけどさぁ……」

 

原作では犬猿の中だった灰崎と、仲が悪くもない様だ。

黄瀬は不良が嫌いだが、灰崎は喧嘩に刃物を使うレベルのヤバイ奴じゃないので普通に対応出来ていた。

灰崎から見た黄瀬は、幸せに見えなかったので嫌いにはならなかった様だ。

別に仲良くもないが、チームメイトとして機械的に対応する事は出来ていた。

 

 

 

 

 

 

練習試合で黒子と共闘した黄瀬だが、原作と違い優秀な選手位にしか思っていなかった。

彼が友達になりたいと思うのは、「自分を好意的に見てくれる明るい善人」なので実力とかは関係ないのである。

存在感の薄さをプレーに活かすなんて選手もいるんだなぁと1つ学んだだけで終わった。

 

なので、青峰や黒子達と一緒に帰ってコンビニに寄るなどもしていない。

そんな事する暇があったら、勉強でもしている方がマシだと思っているからだ。

彼は、友人だと認めた人以外には全く興味が無かった。

 

 

 

 

 

 

「チッ。黄瀬、俺は今日退部する事にした」

「まじか。へー、バスケ飽きた感じ?」

「そんなトコだな。このバッシュ、いらねーから燃やそ」

「ふーん……じゃあさよなら」

「じゃあな。今日からお前がスタメンだから、ロッカーの位置変えとけよ」

「了解」

 

黄瀬には理由が分からないが、ポジションを争っていた灰崎が急に退部した。

別に黄瀬はスタメンの座を狙っていた訳ではなく、自分に才能がありそうならNBAに行こうかと、帝光バスケ部を試練金にしていただけだったので微妙な気分だった。

 

灰崎が勝手にいなくなってスタメンになっても……俺に才能があるのか分からないじゃん。

ま、俺がいても2連覇出来たら、ある程度の才能はあるって事で良いか。

 

 

直ぐに感情を切り替えて、ロッカーに向かった黄瀬。

灰崎の考えている事など、知った事では無い。

彼は素行不良が原因で実質退部になっているのだが、黄瀬はそんな事に興味が無かった。

 

 

「灰崎が退部?!マジかよ……」

「あーだから俺がスタメン用ロッカー使う事になるって。でもスタメンは虹村さんの可能性もある気がするんだけど……

ちなみにアイツは、バッシュ燃やしに行くってさ。ちゃんとゴミに出せば良いのに」

 

不良の行動を止めるのは面倒だからしなかった黄瀬だが、焼却炉をこんな事に使うなよとは思っていた。

……彼は全く、灰崎の行動に興味がなかった。だから逆に、友人の様な関係が継続できたのだろう。

 

 

「ボク……ちょっと行ってきます……!」

「あ!おいテツ!もう練習始まんぞ!」

 

 

 

 

 

 

灰崎が退部し、赤司がキャプテンになった日も1人で帰っていった黄瀬。

個性が豊か過ぎるバスケ部のスタメン達と、あまり関わりたくないからだ。

その日は、最近の紫原と緑間の確執などチームにとって割と重要な話をしていたのだが、黄瀬は全く聞いていない。

 

 

「ふむ、やはり個々の能力は高いが……まだ全ては噛み合っていない様子だな」

 

次の日の練習中も、紫原と緑間が揉めていた。

 

 

「なぜそんな所に突っ立っているのだよ!今のはお前がスクリーンを掛ければ完全にフリーだっただろう!」

「はぁ〜〜?ミドチンこそこっちにパス入れろし

んなメンドクサイコトやんなくてもオレが決めりゃいーじゃん!」

『オレが決めた方が良い!!』

 

「うわー」

「喧嘩辞めろオイッ!」

「様はアイツらの事だが」

「何やってんだ全く……」

 

プレースタイルについて争っている2人を見ながら、黄瀬は欠伸を噛み殺していた。

 

 

(結局、どっちも自分で点を決めたいんだろ?……交代で譲り合えよ、子供じゃないんだからさぁ。あーアホらし)

 

少し様子を伺った後、見ていても時間の無駄としてスクワットを始めようとした彼だが、黒子が何か言い出したので一応聞いた。

 

 

「ケンカは辞めてください……今の2人なら、ボクでも勝てますよ。おえっ、練習後に勝負してくれれば証明して見せます。」

 

 

 

 

 

 

練習時間が終わった後、赤司・紫原・緑間vs黒子・青峰・黄瀬の戦いが始まった。

興味ない奴らの喧嘩に、勝手に巻き込まれた黄瀬だが今回は感謝していた。

 

 

(良い練習になりそうだな……しょうもない喧嘩の行方とか興味ないけど、この6人で戦うのは有り難い)

 

「これでオレらが、チームワークを見せつけて勝ちゃいいんだろ?」

「はい。バレバレかもしれませんが、それでもやれば分かってくれると思います」

 

 

 

 

紫原と緑間が揉めながら試合は続き……黒子がパスを出した瞬間、青峰と黄瀬がボールを取ろうとしてぶつかった。

 

 

「いってぇ!何やってんだよ黄瀬ぇ!今のはテツからオレのリターンだろ?!」

「いや、俺の方がボールに近かったけど……」

「はあ?!オレだろ!!」

「……はいはい分かったよ、次は一応気を付けるわ」

 

原作と違い、黄瀬が争いを辞めた事により試合は続行。

争う事がみっともないという感覚を紫原と緑間が理解しないまま試合が終わった。

 

 

 

 

 

 

黄瀬が入部してから4か月後、県大会に圧勝して全国大会が始まった。

 

 

___スパッ

___ガンッ!

 

青峰1人無双である。

黄瀬は凄いなぁと思いつつ、そのうち俺でも似たような事が出来るだろうと漠然と感じていた。

 

 

決勝戦で黄瀬は、ファールされたと騙るラフプレーヤー2人に多少苦戦したが、原作と違い熱くなりにくい性格なので4つもファールを喰らう事は無かった。

 

結果、フル出場して余裕の優勝。

黒子が出なかろうと、簡単に勝てる事が証明された。

 

 

 

___彼らの友情は、ここで狂い始めた。

 

 

 

 

 

まぁこの黄瀬は、他のキセキの世代と関わりが殆どないから関係ないのだが。

 

 

 

 

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