もう、戻らなくてはならない
何故って?
僕は、本来ヘスティア・ファミリアの団長を務めている
今はただアストレア・ファミリアに籍を置いているだけ
でも、心残りが———幾つかある
まずアストレア・ファミリアの人たちやアルフィア母さんたちの問題だ。
僕はこの世界のアリーゼさん達を救っただけで、本来の僕の居場所に戻ったらその存在は無くなってしまうのか、アルフィア母さんも同じだ。
僕は、優柔不断でお人好しすぎた…冒険者に向いていないって言われたのを初めて理解した
ただ、選択しなければならない。
「新たな一歩を歩むためには」
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「はい、勝手に決めて申し訳ないんですが」
「あら……そうなの」
僕は、今星屑の庭ことアストレア・ファミリアのホームにお邪魔させてもらっている、それも神室だ。
「アリーゼさん達には、出来れば言わないでください」
「なぜ、貴方から言わないの?」
「だって、」
神はなんでもお見通しだ、どうせ今から僕の言うこともとっくにわかっているかもしれない
「アリーゼさん達に言ったら、僕…きっと泣いちゃいます」
「それじゃあ、格好がつかないじゃないですか」
アルの…いや、ベルは笑っている、でもそれはただの作りで…そこはかとなく漂う哀愁はアストレアには隠しきれなかった。
「………!?」
この子は、英雄でいて道化でいて…その小さな背中では背負いきれないような色々な物を背負っている
「怖がらないで……」
ビクビク震えて、兎よりも小さな存在になってしまっている少年をアストレアは優しく抱擁した
「いいのよ、泣いたって」
甘い言葉でベルを再び抱擁する
「…ん…うグッ、」
ベルは耐えきれなかったのか、今までの我慢を漏らすかのようにしがみつく
「うん、私にだけは貴方の弱さを見せて」
ベルの方がやや高い背丈そしてガッチリとした体つき
アストレアは意外にもベルは逞しいと思い、かるーくベルを意識してしまった
「きゃっ!………」
無意識なのか、ベルはアストレアの胸を顔を埋めた
「うっ、」
暖かいベルの吐息、アストレアは胸の割れ目に汗をかき始めた
「……んっ…すみませんでした、おみぐるしいところ」
「あら、え…いいのよ」
突然のことにアストレアも挙動がおかしくなってしまっていた
「僕、決心できました!」
ベルは先ほどまでとの顔とは違い凛々しく不安と恐怖に打ち勝った顔をしていた
「あら、」
その顔を見たアストレアもニッコリと笑って、
「おめでとう」
と、ベルを祝った
これはたかが小一時間の話。