「どうして、アルはいなくなったんですか?」
「……………」
「お願いです、教えてください。」
先日、輝夜がアストレア様を見つけ出し連れて返ってきたことから話は始まる。
「ヘルメス様も、なんで黙っているんですか?」
その場にはヘルメス様も居たようなのでついでに連行してもらった。
「いやぁ、アリーゼちゃん…そんなに怒らなくても…」
ヘルメスはいつも通りのスタンスで場を和やかにしようとしたがそれが裏目に出る。
バンッ!
「ふざけないでください」
アリーゼはヘルメスは睨む。そして叩いたテーブルからは到底想像もできない低く軋んだ音がした
「…………」
アリーゼの態度、そして周りの孕む温度を再び感じ取ったヘルメスは言葉が詰まり、口内から溢れ出てくる唾を飲み込む。
「今更、こんなことを言っても遅いかもしれないけど……うん、全て話すわ」
そして、ヘルメスを見かねたのかアストレアは口を開く。
「ア…アストレア、いくらなんでも……約束が違うぜ?」
ヘルメスはアストレアの話をあからさまなバツマークのジェスチャーをして必死に遮断していた。
「この子達も、聞く権利があると思うわ」
そう言うと、ヘルメスはバツが悪そうな顔をしながら黙り込んだ。
「ああ、分かった」
最終的にはヘルメスも納得するという形になった。
「話すと長いんだけれど……」
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語ること30分。
「それじゃあ……アルは、」
話が終わった突如、口を開いたのはリューだ。
これに関しては周りも驚いていた。
「そうね、あの子は本来は此処にいてはいけない。」
「じゃあ2度と……」
少なくともアルとの関係が深いアリーゼや輝夜が、いち早く反応すると思われたが、両者ではなく……リューだった。
「ああ、察しの通りだ」
そしてヘルメスは口を開き、乙女達に現実を突きつける。
当のアリーゼや輝夜はグッと我慢しているのか、2人を含める11人は皆は下を俯き険しい顔していた。
(分かっている、あいつが異端の存在でいつかは戻らなくてはならない……だけど何もなしに、戻るなんて)
みんなそう思っているだろう、
今までアルには、たくさん助けられた。そしてアルが来てから毎日が楽しく充実していた。
そんな日が続くことで、当たり前になっていた。ずっと一緒だと思っていた矢先に、これだ。
「当たり前だと思い始めていた時点で…もう、手遅れだ」
殺伐とした雰囲気の中にヘルメスが一言投下する。
「どう言う意味だ」
煽りかのように聞こえ捉えられた一言は11人の視線と怒りを牛耳る。そしてその言葉を文字通り通り受け止めた、輝夜は作り口調をやめ、素にもどす。
「なんで怒っているだ?輝夜ちゃん」
ヘルメスは自分が何も間違ったことを言っていないと言う自信があるのか段々と挑発の言葉に変わっていく。
「そもそも、アル君はいなかった存在だ。君たちは聞いていないだろうが……アルくん…いやベル君の世界では君たちはもういない存在…亡き人なんだ、そこに何かの間違いでアル君はこちらに来てしまっただけなんだ」
事実、嘘偽りのない事実を突きつけられ黙りこくる。
そして険悪ムードは続いていく。
「君たちは、情を移しすぎだ。それが君たちの美徳かもしれないがな」
何も返される言葉もなかったのか最後に皮肉った言葉を混ぜて場を後にした。
「み、みんな…そう、落ち込まないでね」
ヘルメスが立ち去った今、アストレアは大慌てでみんなを慰め声がけをする。
「アストレア様ぁ、私たちはどうすればよかったんですか?」
アリーゼが一言。
散々な言われようで今直ぐにでも部屋に篭り、泣き出したい気持ちを抑え、主人に一つ質問した。
「ヘルメスの話は事実。貴方達には話してないかもしれないけど、アルの世界ではアストレア・ファミリアは壊滅しているの」
唯一の頼りの綱であり、共感者であり味方だと思っていたアストレアはヘルメス側なのだと、そう思いみんな絶望に立たされていた。
「でも!貴方達の気持ちが大切よ。」
「「……!」」
皆が反応する。
「貴方達が正しいと思ったならそれを突き通しないさい。」
そこに一言、何よりも捨て難い真実が言われる。
アストレア・ファミリア
「みんな、私の眷属でしょ」
「自分の正義を突き通しなさい!」
普段のアストレアとは少し違う雰囲気、それはアリーゼを思わせるような陽気で、周りに元気与えていく
「はい!」
そして曇り切っていたみんなの顔は今では曇り景色ひとつない明るい顔に変わっていた。
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アストレア・ファミリアの問題が解決した。
そのままアストレアは酒場に直行する。
「ヘルメス、あんな役回りにしてごめんなさい…」
「いいんだ、アストレア。僕の悪役キャラは結構様になってただろう?」
先程、星屑の庭を出て行ったヘルメスとアストレアは人気のつかない落ち着いた雰囲気の喫茶店で落ち合っていた。
「そうね、体がぴくぴく震えてたわ」
「あはは……」
さっきの態度とは真逆で、今はいつも通りのおちゃらけた感じのヘルメスに戻っていた。
それに対してアストレアは、酷く落ち込んでおりヘルメスのことを気にかけている。
「もうそろそろだぜ」
そう言いながら、年季の入っている木製の振り子時計を指差す。
そして同時に、店の入り口のウェスタンドアの軋んだ音が響く。
「来たみたいだ」
そうして視線を向けた先には、2人の男女が立っていた。
女の人は長身でスレンダーな女性。
それに対して、男の人は大柄で逞しい体つきをしている。
「 ! 」
ヘルメスに言われた通り指定された場所に行った。
人を呼んだと言われていたが、あまり気に留めていなかった。
「ヘルメス?呼んだのって…誰なの」
恐る恐る聞く。
仮にそう言う場合でも、この神の繋がり充分に有り得る話だから。
「なんでわざわざそんなことを聞くんだい?」
質問を質問で返された。
ヘルメスはヘラヘラしているように見えて策略家である
「気づいたみたいだぜ」
そう言われると自分とヘルメスに視線が集まるのがわかる。今までの視線とは違い重圧がのしかかる感覚に襲われた。
「きてくれて光栄だ」
目の前まで迫ってきた途端ヘルメスがそう言う。
「五月蝿い」
ヘルメスの言葉を五月蝿いで一蹴して、驚いて顔を見上げる。そこには言葉から想像もできない端正な顔立ちをした女性がいた。
「まぁ、いいじゃないか」
「紹介がまだだったか。この子はアストレア」
「ああ、知っている」
「アストレア、名前ぐらい聞いた事があると思うが、アルフィアとザルドだ」
ヘルメスにそう言われたが二人の名前は耳が痛くなるほど聞いた。そして紹介云々はヘルメスによって着々と進められた。
そして二人は目の前の席に着く。
「っで、話とはなんだ」
「……単刀直入に言おう。ベル君のことだ」
その場の二人は頼んでいた飲み物を吹き出した。
ちなみにヘルメスの奢りらしい。
「「っゴホッ…どう言うことだ、説明しろ!」」
二人は吹き出したコーヒーをヘルメスにかけながら、咳き込むのを抑え口を開いた。
「君たちの知っている通りベル君は元の世界に戻った」
「僕の見解に過ぎないが、ベル君のリープには条件がある。」
「!!」
ヘルメスの言葉を聞き3人は目を見開く。
「それは、アストレア、君だ!」
「ええ!?」
これに関しては思わず声が出てしまった
「ベル君が戻った時、君とベル君は握手をした。それで戻った世界でも握手をすれば再びこちらの世界に来れるのではないかと」
「だから、ベル君には言っておいた。アストレアと接触をしてくれと」
「ちなみに、3日後約束の日になる。」
「子供のベル君とは合わせない事さえしなければ問題はない」
「闇派閥はもういないようなものだし、大丈夫だろう」
ヘルメスの行動の速さに一同驚いていたもののデカベルとの再会を楽しみしているのは確かだった。
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久しぶりの投稿です。