過去の英傑を召喚するタイプの世界に転生した事を知らずにチート無双してしまった場合   作:ガチャガチャ

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プロローグ

 お金が好きだ。

 こういうと拝金主義者だと思われるかもしれないけど、実のところ言うと俺はお金自体はこの世で最も価値のないものだと思っている。

 お金とは万物を動かす為の原動力でしかなく、何かをする為に必要になって来るだけのものである。

 そして俺は、このお金を消費して何かをするというのが何よりも好きだったのだ。

 もはや理由とか目的とかどうでも良くて、ただひたすらお金を消費して何かをする事に命を懸けて来た。

 マネーイズパワーとはよく言ったもので実際お金は力であり、そうやってお金を消費する事によって万能感に浸る事が出来る。

 だから、まあ、俺は良くお金転がしを趣味でしてたがそれはさておき。

 

 ソシャゲ。

 あれは良いモノである。

 お金をじゃぶじゃぶ溶かしてただ一つの目的物を手に入れる。

 そしてそれは確定ではなく運に左右されるのだ。

 無残にもお金が見る見るうちに消えていき気づけば手元に残っているものが微かしかない。

 それでもピックアップされている存在が手に入った時、それはもう脳汁だばだばで絶頂しそうになるのであった。

 

 そんな俺がまさか転生する事になるとは、俺もつくづく運というか悪運があるなと呆れたものだが、ただ転生したのがやたら文明が進んでいない時代である事には困り果てた。

 いや、お金という概念は存在しているのだ。

 小金色のコインが流通しているのを見た時俺は思わずガッツポーズしてしまったが、兎に角今はそれどころではない。

 時代は――ちょっと分からない。

 いわゆる典型的な剣と魔法が良く見られるファンタジー世界なので、俺の前世の知識はまるで通用しない。

 馬がいない馬車が蒸気を上げて走り、明らかに水道が通っていないのに蛇口を捻れば水が出てくる。

 摩訶不思議としか言いようがない。

 

 それでも、兎に角俺は明日を生きて行かなくてはならないし、だから兎に角お金が必要だった。

 お金。

 実にいい響きであるし、まさか転生した後にもまた触れる機会があるとは。

 死後の世界の渡り舟の駄賃として全部徴収されて終わりだと思っていたので、そういう意味で今生が与えられたのは感謝しなくてはならない。

 兎に角――お金だ。

 お金が必要である。

 そして俺は何をしてお金を稼ごうかと思ったのかというと――

 

 

「よし、赤の23に全チップをベットしよう」

 

 ざわ、と酒場内の空気が揺れる。

 ディーラの震える手がルーレットを操作し、くるくると盤面が回転し始める。

 球が転がり、そして――

 

 

「おい、また勝ちやがった!」

 

 歓声、怒声、悲鳴。

 オールオアナッシング。

 そしてすべてを手に入れた俺はチップをさっさと現金に換えてその場から立ち去る――と、その前に酒場に向って景気よく「俺のおごりだ、金は置いてくから好きに飲んでくれ!」と告げておく。

 再度、歓声。

 気配を消し、がやがやと騒がしい酒場を抜け出した俺は「ふぅ」と一つ息を吐いてからそそくさと移動を開始する。

 大儲けしたし、下手すると狙われるかもしれない。

 まあ――それはそれで良いのだけど。

 

「よぉ、兄ちゃん。随分と儲けてたじゃねえか」

 

 と、ほらこのようにチンピラ達が人気がない場所にタイミングを見計らって声を掛けて来た。

 俺の懐にある金を狙っているのだろう。

 まあ、治安の良し悪しに関係なくこういう輩は一定数いるだろうし、そして事実暴力に訴えて持っているモノをすべて奪えば言葉通り丸儲けというのも事実である。

 だが、うん。

 

「じゃあ、ゲームをしようか。左と右、どっちの手にコインが入っていると思う?」

 

 俺はにやりと笑って両の握りしめた手を差し出して見せる。

 それを見て馬鹿にされたと思ったのか青筋を立てたチンピラだったが、しかし次の瞬間変な表情を浮かべた。

 握りしめられた手、それを恐る恐る開けると――その中には確かに、黄金のコインが。

 驚き、間抜けにぽかんと口を開けているチンピラに告げる。

 

「外れだ、じゃあ俺が総取りさせて貰おうか」

 

 俺の言葉が最後まで発せられるまでもなく。

 刹那、爆発。

 黄金のコイン、それそのものが大爆発を起こしてチンピラ達を弾き飛ばした。

 正しくゴージャスな攻撃手段である。

 俺が扱える魔術、置換魔術。

 価値と価値を交換し、目的の現象を引き起こす。

 その関係上、お金の価値が高ければ高い程強力になる――かもしれない、そんな魔術だ。

 別にお金を使わなくても行使は出来るが。

 俺はお金をじゃぶじゃぶ溶かすのが好きなので、だから狙ってお金を使っている。

 

 

「ま、お金は使わなくては意味がないからね」

 

 そんな風にぼやいてみる。

 ぼやく、ぼやく事しか出来ない。

 ……そして人生とは早いもので、順風満帆に稼ぎに稼いで築き上げた黄金の山をガンガン浪費してきた俺も今では老人。

 それまでにいろいろな事があったけれども、兎に角まあ、今生はとりあえず大往生と言うべきだろうか?

 俺はいつものように笑い、笑えなくて、それから震える手でコインを放って地面に落ちたコインを見ずに言う。

 

「んじゃ、コインが表なら次の人生も波瀾万丈なモノになるだろうな」

 

 

  □

 

 

 というのはまあ、そもそも来世があるとは思ってもいなかったからそんな事を言った訳だが。

 

「【黄金狂】ブルードット……! マジの大外れじゃん!!」

 

 悲鳴みたいな叫びを上げる少年の前で俺は途方に暮れた。

 なぁんで現代で使い魔になってるんすかねぇ……?

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