聖戦士ダンバイン聖戦士伝説「アルダム開発秘話」 作:早起き三文
「シュンジ王、御即位お祝い申し上げ致します」
と、全くにその豪奢な王衣が似合わぬ、若き王、成人ともなっていないような若者である、その若き王。
「それと、共に」
リの国新王「シュンジ・イザワ」の目前で、あたかも主君に向ける程の「礼」を表している、他国の騎士。
「先王ゴート王の崩御、心より御悔やみ致します」
バーン・バニングスが、一点の非が無い、完全な礼儀作法と共に、その下げてある頭を、さらに下げ。
ファサ……
彼の総髪、よく手入れがされた、朝の日にさらされた、その艶やかな髪が、軽く揺れる。
「御苦労です、アの国の勇猛なる騎士、豪胆にして賢知を誇るバーン殿」
「ハッ……?」
その時、その「中世風」の感謝の礼を、他国の騎士バーンに述べた時、彼シュンジ王の側近である、大臣オウエンと騎士団長であるザンが。
「……?」
連れている部下に、引き出物をシュンジの前に出させようとさせているバーン、隣国「ア」の名高き騎士である彼と。
「こ、これは我が主、アの国ラース・ワウが領主、ドレイク・ルフトからの気持ちでございます、シュンジ王」
「は、はい、大変喜ばしいです、バーン殿」
その精緻な彫金が施された、まばゆい黄金の鞘を纏った剣が、バーンの両手から差し出された時。
「……何だ?」
シャ……
王城天窓からの朝日を浴びた、鞘の黄金の光にその目を細めたシュンジ王、彼は。
「……何か」
先の自国大臣に自国の騎士団長、騎士バーン、そして。
「……俺は、対応がまずかったかな?」
この謁見の場にいる全員が、怪訝な顔をしている事に対し、その細めた目で、捉えていた。
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パァン、パパァン!!
――新王万歳!!――
「祝賀ムード、ではありますな」
「はい、バーン殿」
バイストン・ウェルでは、各列強の国に挟まれるようにして点在する小さな国、その小国の一つである「リ」の城下では。
「ゴート王の大葬も終えましたので……」
「惜しい方でありました、シュンジ王」
「俺にとってもですよ、バーン殿」
約三日前までは先王に対する喪、それに服していたのだが、今はその雰囲気は一転し。
――新王、リの聖戦士王、万歳!!――
と、シュンジの乗る機械馬「ピグシー」がその「脚」を踏み鳴らす度に、民からの歓声が挙がる。
――悪しきガロウ・ランからの救世主、シュンジ王万歳!!――
パァ、パァン!!
何か、通行人の一人がクラッカーのような物、ここ数年で、ある大国に降り立った「異人」がもたらした科学技術の一端を使った「オモチャ」が、けたたましく鳴り響く。
「普通の馬なら、この火薬の音で怯えてしまうものを……」
と、そのクラッカーを放った酔っ払いに苦笑いを浮かべつつ「リ」の隣国「ア」の地方領主に仕える騎士バーンは、やや前方のピグシー、シュンジの乗る飾り立てた、その王に相応しい「馬」の主に向かって。
「この機械の馬、これなら何という事も無い、ですかな、シュンジ王……?」
「ハハッ……」
笑みを浮かべつつ、気安い様子で、語りかける。
「……さて、バーン殿」
「はい、シュンジ王」
「戦時に、ドレイク殿より貸与されていた、ゲドとドロの返却ですが」
「それについては、御館様は」
ヒュウゥ……!!
「破損が激しければ、それなりの代金と引き換えに、リの物とされてもよいと」
その、今まさしくバーンが話した「ゲド」と「ドロ」というオーラマシン、それらがリの国の国旗を掲げつつ、上空を飛行している最中に、空を飛翔する二機のマシンを見上げつつ話すバーンに向かい、シュンジが顔を振り向け、そして。
「ドレイク殿が?」
「はい」
そのシュンジの顔に、バーンは少し嫌らしく、ニタリとした笑みを浮かべた。
「フム……」
タッ、タァ……
そのまま二人のピグシーは無言で走り、そして。
「これを、バーン殿」
キィ……
ある、広々とした地点で立ち止まる。
「ホウ、このオーラバトラーが……」
偶然の一致ではあるが、この即位パレードと、先王ゴート死去の葬儀を両立させ、それらをとり行う直前に、リの国独自のオーラバトラー「アルダム」の第一号機がロールアウトし、今その機体は。
「確か、ゲドの発展型、名前は……」
「アルダムです、バーン殿」
「そう、アルダムと私も聴いております」
リの王城トルール城下の中央広場、今まさにシュンジ達の目前において。
チュン、チィチ……
屋台か何かからの食べかす、それにつられた鳥達に囲まれ、空の光をさんさんと浴び、展示されている。
「なるほど、シュンジ王……」
そして、その巨人騎士「アルダム」の足元には、先王ゴートの業績を讃えた石碑、そして。
――ガロウ・ランとの戦いへの戦没者に、安らかな眠りを――
と記された碑もまた、人型マシンであるオーラバトラー「アルダム」の足元に鎮座している。
「……外見だけは、ちゃんと巨人騎士っぽいですな、王?」
「一応動きますよ、バーン殿?」
「いやなに、試作機と言えば」
と、言いつつ、バーンは自分のピグシーをその手で軽くポンと叩きつつ、その端正な顔に笑みを浮かべながら。
「アの国、ギブン家という家も、ゲドを参考に独自のオーラバトラーを造り上げたそうですが」
スゥ……
そのまま、少し雲間に入り、チラチラと瞬くような日の光に、バーンはその目を細めつつ、僅かに皮肉っぽく、片頬を歪めつつ、言葉を続ける。
「ショット様の言葉によれば、まさしくゲドのデッド・コピーらしいマシンなようです」
「密偵を使いましたか?」
「まあ、そうですな……」
ピグシーにまたがった二人の青年、彼らに向けて、少し離れた場所から、女性の矯声が聴こえてきたようだ。
「空だけ飛べる、木偶の坊だと、ね」
「まあ、確かにこのアルダムの試作機も、あまり出来が良いとは言えませんでしたがね、バーン殿」
「ガロウ・ランとの決戦の時に、投入された見知らぬアレですな?」
「そうです、空色の俺達の機体……」
試作タイプのアルダムはすでに、リの国の先王「ゴート王」が存命していた時に製作され、そしてガロウ・ランとの最終決戦では、リの国新鋭である、若手の騎士見習いに預けられていた。
「……遠目で見た所、悪くはない動きでしたよ、シュンジ王」
「まあ、帰還したときに、いきなりコンバーターが爆発しまして、そして脚が折れ……」
「と言っても、ゴート王が負傷された最中、気にする者もいなかったでしょうに?」
「ハハッ、バーン殿その通りですよ」
ただ、王となる前のシュンジ、地上からの聖戦士として、希望の星であった彼が、一回だけ乗ってみた感じでは。
「装甲も脆弱、さすがにいきなり完成品、とはいきません」
「なるほどね……」
「とは、言え」
いくら問題点が多くとも、初期型のゲド、そしてリの国で独自に、その貸与マシンを改造した、シュンジ王専用ゲドより、機体のレスポンスが良かった気がする。
「ああそうだ、バーン殿」
「何か、シュンジ王?」
「これから、リの機械の館に行きますが」
「もしかして、ドレイク様のゲドとドロも、そこですか?」
「無論、そして……」
ブオゥ……
ちょうど、と言うべきか、上空を飛行し、祝賀の良い「出し物」であった、ゲドとドロがその機械の館、すなわち。
「我が国の機械化兵団も、ご覧になられますか?」
「リ」のオーラマシン開発本部、及び生産工場に向けて、その翅を向け始めた様子だ。