聖戦士ダンバイン聖戦士伝説「アルダム開発秘話」 作:早起き三文
「なるほど、本当に何から何まで」
リの機械化軍団、その中で二機だけある、アルダムを除けば、完全な「リの国独自」のオーラマシン。
「ドロの半分、という訳ですか、王」
「乗員は半分、火力も大きさも半分」
「性能も半分、と……?」
「ただその分、コストすらも、ドロの半分ですよ、バーン殿」
「なるほど、良くも悪くも、全てがドロの半分とな……」
その流線型、楕円形の胴体をしているオーラボム「スジャータ」を見つめつつ、騎士バーンは何度もその面を頷かせ、そして。
「オーラバトラーの支援機に徹した構造か……」
何かを納得させるように一人、そう口ごもった後に、再び、そのスジャータという小型オーラボムに瞳を向ける。
「バラウの発想に似ているな」
「バラウ?」
「……あっ、いや」
ボソリとそう、騎士バーンが呟いたその単語、それをシュンジの肩に止まっている、フィナが聞き付けた。
「我らの新型でしてな……」
「オーラバトラー、ですか?」
「まぁな、フェラリオ……」
そう言い、そのフィナに顔を向けずに、生返事をしたバーンは、一つわざとらしく、咳払いをした後。
「とりあえずシュンジ王、我々は明後日に、アの国へ帰還致しますので」
「はい、遠路はるばる、ありがとうございます、騎士バーン」
「リの鹿肉と、トウモロコシ生地の肉パイは、中々美味でしたよ、シュンジ王」
「リにとっては自慢の、郷土料理らしいので……」
と、笑みを浮かべて若き王と話しつつ、そのシュンジ王は騎士バーンと、夕焼けの中で、軽く。
「またお会いしましょう、バーン殿」
「シュンジ王こそ、お体に気を付けて……」
互いに、握手を交わした。
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「アルダム、装備はオーラソードのみ、抱え大砲もオーラクロスボウも、はたして適切に使用出来るかどうか……」
今日の朝方、偵察飛行に向かったドロの発見した、ガロウ・ランの残党が集っていた野営地について。
ホゥ、ホゥ……
フクロウの声が夜の闇に響く謁見の間、そこで玉座に座りつつ、対応策を考えていた、リ国王シュンジであったが。
「……誰か?」
その若き王の元へ、裾ずれの音をカーペットに擦らせつつ、近付く人影。
「何者か?」
「……シュンジ王」
「ああ、オウエン殿か」
「シュンジ王、少し……」
シュンジの元へ歩み寄ったのは、そうかしこまりつつ、しかしながら。
サァ……
月明かりしかない薄闇の中で、険しい顔をしている、リ国の内務大臣である。
「少しばかりのお時間を、よろしいですか?」
「あっ、はいオウエン殿」
そのオウエン大臣が、軽くうつ向き、そして。
「して、話と言うのは……?」
「ハッ……」
少し目を伏せたまま、一つ息を整え、そして。
「シュンジ王の、王としての言葉使い、権威の事です」
「……?」
真剣な面持ちである、そのオウエンに対して、シュンジは疑問が混じった表情を、玉座に座ったまま、リの内務大臣に向けている。
「先にこの謁見の間で祝辞を上げたバーン殿、王は彼を、自分と対等の者として、会話を致しましたな?」
「えっ……?」
その言葉、この大臣が何を言いたいのか、シュンジには解らない、ただ、そのオウエンの鋭い眼差しから、彼が考えた末の進言、すなわち。
「……俺は無作法でしたか?」
「いえ、王は礼節を心得ております」
諫言、それを言おうとしているのは、解る。
「王侯貴族、そして騎士の産まれでも無いのに、教養も礼儀もあります」
「では……?」
「その逆です」
「ハッ……?」
シィ……
天窓からの月の光が、彼オウエンの薄い唇、そして顔の皺に、強く陰影を作ったようだ。
「……意味が解りませんが、オウエン殿?」
「あの時のバーン殿は、他国の騎士であり、使者でありました」
「……」
「いくらリが小国とはいえ、仮にも一国の王、それと公の場で対等の者として、対話をして良いのは、同じ王の座にある者のみです」
「あっ……」
その時、シュンジの脳裏に、少し前の出来事がよぎった。
――シュンジ王、王たるもの、ガロウ・ランごときに頭を下げてはなりませぬ――
確か、この国の騎士団長が使っている密偵、ガロウ・ランの女性を紹介された時にシュンジが頭を下げ、そして丁寧な挨拶を行った時だ。
「無論、ドレイク殿など、小国の王ともいうべき大領主」
「……はい」
「それら高位の者と、会話を交わす時は、対等の立場でも構わないでしょうが……」
そこで、彼オウエンは再びうつむき、咳払いをし、息を整えた後に、また頭を上げ、そして。
「シュンジ王の人柄を知らぬ者からすれば、他国の、それも一介の騎士にすら、媚びへつらっている様子、軟弱な王と思われます」
「……」
そこまで、一気に言い放つ。
「……なるほど」
「わたくしは、身分が下の者には礼儀は不要、と申している訳ではありません」
「解ります、解ってきましたよオウエン殿」
「王は、舐められたら終わりなのです、この国共々に」
その、あえて「品」の無い言葉を、強く力を入れて話したオウエン、だがそれゆえに。
「地上では、身分という物が希薄であると、シュンジ王はお話して下さいましたが……」
「……俺は、日本の常識を引きずっていたんだな、オウエン」
彼の、若き王の事を案じる気持ちが、シュンジの心に響く。
「王、か……」
「そもそも、リの臣下や民にすら、示しがつきませぬので、シュンジ王」
「なるほど、解ったよ」
そう、そのように、最後の語尾を強めて、言い放ったシュンジは。
スゥム……
今まで腰を掛けていた玉座から立ち上がり、オウエンに向けて、微笑みつつ。
「その諫め、諫言大儀であった、オウエン」
と、出来るだけ威厳、いや傲慢さを出そうと、腹の底から絞り出すようにして放った、その「王」の言葉に対して、目前のこの臣下は。
「ハッ、シュンジ王!!」
この上なく満足げな表情を浮かべつつ、即座に「王」の前で、片膝をついてみせる。