聖戦士ダンバイン聖戦士伝説「アルダム開発秘話」   作:早起き三文

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第3話「王という身分」

「なるほど、本当に何から何まで」

 

 リの機械化軍団、その中で二機だけある、アルダムを除けば、完全な「リの国独自」のオーラマシン。

 

「ドロの半分、という訳ですか、王」

「乗員は半分、火力も大きさも半分」

「性能も半分、と……?」

「ただその分、コストすらも、ドロの半分ですよ、バーン殿」

「なるほど、良くも悪くも、全てがドロの半分とな……」

 

 その流線型、楕円形の胴体をしているオーラボム「スジャータ」を見つめつつ、騎士バーンは何度もその面を頷かせ、そして。

 

「オーラバトラーの支援機に徹した構造か……」

 

 何かを納得させるように一人、そう口ごもった後に、再び、そのスジャータという小型オーラボムに瞳を向ける。

 

「バラウの発想に似ているな」

「バラウ?」

「……あっ、いや」

 

 ボソリとそう、騎士バーンが呟いたその単語、それをシュンジの肩に止まっている、フィナが聞き付けた。

 

「我らの新型でしてな……」

「オーラバトラー、ですか?」

「まぁな、フェラリオ……」

 

 そう言い、そのフィナに顔を向けずに、生返事をしたバーンは、一つわざとらしく、咳払いをした後。

 

「とりあえずシュンジ王、我々は明後日に、アの国へ帰還致しますので」

「はい、遠路はるばる、ありがとうございます、騎士バーン」

「リの鹿肉と、トウモロコシ生地の肉パイは、中々美味でしたよ、シュンジ王」

「リにとっては自慢の、郷土料理らしいので……」

 

 と、笑みを浮かべて若き王と話しつつ、そのシュンジ王は騎士バーンと、夕焼けの中で、軽く。

 

「またお会いしましょう、バーン殿」

「シュンジ王こそ、お体に気を付けて……」

 

 互いに、握手を交わした。

 

 

 

////////////////

 

 

 

「アルダム、装備はオーラソードのみ、抱え大砲もオーラクロスボウも、はたして適切に使用出来るかどうか……」

 

 今日の朝方、偵察飛行に向かったドロの発見した、ガロウ・ランの残党が集っていた野営地について。

 

 ホゥ、ホゥ……

 

 フクロウの声が夜の闇に響く謁見の間、そこで玉座に座りつつ、対応策を考えていた、リ国王シュンジであったが。

 

「……誰か?」

 

 その若き王の元へ、裾ずれの音をカーペットに擦らせつつ、近付く人影。

 

「何者か?」

「……シュンジ王」

「ああ、オウエン殿か」

「シュンジ王、少し……」

 

 シュンジの元へ歩み寄ったのは、そうかしこまりつつ、しかしながら。

 

 サァ……

 

 月明かりしかない薄闇の中で、険しい顔をしている、リ国の内務大臣である。

 

「少しばかりのお時間を、よろしいですか?」

「あっ、はいオウエン殿」

 

 そのオウエン大臣が、軽くうつ向き、そして。

 

「して、話と言うのは……?」

「ハッ……」

 

 少し目を伏せたまま、一つ息を整え、そして。

 

「シュンジ王の、王としての言葉使い、権威の事です」

「……?」

 

 真剣な面持ちである、そのオウエンに対して、シュンジは疑問が混じった表情を、玉座に座ったまま、リの内務大臣に向けている。

 

「先にこの謁見の間で祝辞を上げたバーン殿、王は彼を、自分と対等の者として、会話を致しましたな?」

「えっ……?」

 

 その言葉、この大臣が何を言いたいのか、シュンジには解らない、ただ、そのオウエンの鋭い眼差しから、彼が考えた末の進言、すなわち。

 

「……俺は無作法でしたか?」

「いえ、王は礼節を心得ております」

 

 諫言、それを言おうとしているのは、解る。

 

「王侯貴族、そして騎士の産まれでも無いのに、教養も礼儀もあります」

「では……?」

「その逆です」

「ハッ……?」

 

 シィ……

 

 天窓からの月の光が、彼オウエンの薄い唇、そして顔の皺に、強く陰影を作ったようだ。

 

「……意味が解りませんが、オウエン殿?」

「あの時のバーン殿は、他国の騎士であり、使者でありました」

「……」

「いくらリが小国とはいえ、仮にも一国の王、それと公の場で対等の者として、対話をして良いのは、同じ王の座にある者のみです」

「あっ……」

 

 その時、シュンジの脳裏に、少し前の出来事がよぎった。

 

――シュンジ王、王たるもの、ガロウ・ランごときに頭を下げてはなりませぬ――

 

 確か、この国の騎士団長が使っている密偵、ガロウ・ランの女性を紹介された時にシュンジが頭を下げ、そして丁寧な挨拶を行った時だ。

 

「無論、ドレイク殿など、小国の王ともいうべき大領主」

「……はい」

「それら高位の者と、会話を交わす時は、対等の立場でも構わないでしょうが……」

 

 そこで、彼オウエンは再びうつむき、咳払いをし、息を整えた後に、また頭を上げ、そして。

 

「シュンジ王の人柄を知らぬ者からすれば、他国の、それも一介の騎士にすら、媚びへつらっている様子、軟弱な王と思われます」

「……」

 

 そこまで、一気に言い放つ。

 

「……なるほど」

「わたくしは、身分が下の者には礼儀は不要、と申している訳ではありません」

「解ります、解ってきましたよオウエン殿」

「王は、舐められたら終わりなのです、この国共々に」

 

 その、あえて「品」の無い言葉を、強く力を入れて話したオウエン、だがそれゆえに。

 

「地上では、身分という物が希薄であると、シュンジ王はお話して下さいましたが……」

「……俺は、日本の常識を引きずっていたんだな、オウエン」

 

 彼の、若き王の事を案じる気持ちが、シュンジの心に響く。

 

「王、か……」

「そもそも、リの臣下や民にすら、示しがつきませぬので、シュンジ王」

「なるほど、解ったよ」

 

 そう、そのように、最後の語尾を強めて、言い放ったシュンジは。

 

 スゥム……

 

 今まで腰を掛けていた玉座から立ち上がり、オウエンに向けて、微笑みつつ。

 

「その諫め、諫言大儀であった、オウエン」

 

 と、出来るだけ威厳、いや傲慢さを出そうと、腹の底から絞り出すようにして放った、その「王」の言葉に対して、目前のこの臣下は。

 

「ハッ、シュンジ王!!」

 

 この上なく満足げな表情を浮かべつつ、即座に「王」の前で、片膝をついてみせる。

 

 

 

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