聖戦士ダンバイン聖戦士伝説「アルダム開発秘話」 作:早起き三文
飛竜、という戦力がある。
「……よし!!」
オーラマシンが開発、そして生産される前の時代に、この「バイストン・ウェル」の戦士たちによって運用されていた、飛行兵科である。
「一匹、撃墜!!」
「ライフルの弾が尽きそうだ、ラージャ!!」
「こちらもだ、やむを得ん!!」
元々は、今まさにこの戦を交えているガロウ・ラン達、地の底に棲むという蛮族たちの技術であるが、それをコモン達が。
「一時撤退するぞ、ドラグーン隊!!」
「おう、地上も優勢になってきているようだしな!!」
「よし!!」
このバイストン・ウェルの主たる住人である「コモン」達が取り入れた、戦力である。
「ハイヨー、パンツァー!!」
――グルゥ、ウ!!――
理論的には、ガロウ・ランが使役する強獣の全てを、コモン人も扱う事が出来るらしいが、その強獣のエサに人肉が含まれていたり、飼育する環境などによって、コモンが扱える強獣には、かなりの制限があるらしい。
「ズガスーンだ、砲撃隊!!」
「そんなに無線器に怒鳴らなくても、聴こえているよ!!」
「だったら早くしろっての!!」
「ピグシー砲ジャッキ下ろしオーケー、牽引馬車砲と共に、一斉に!!」
ボゥウ、ウゥ!!
ただ、時代の流れ的には、もはや飛竜を含めた強獣と呼ばれる、いわゆるモンスター達が戦の主力ではない。
「くそ、ピグシーや馬車の砲では、上手く当たらん!!」
「こちらレン・ブラス機、支援する!!」
「おう、落としてやれ!!」
この若き騎士見習い、いや近々正式に騎士へと昇格する事が決まった、レン・ブラスの駆るアルダムなどのオーラマシンが、あきらかに次世代の主力となりつつある。
「まだ、ズガスーンの突撃が終わってねーんだ!!」
「……一発限り、か!!」
そして、その巨人騎士アルダムが、小脇に抱えた大砲を。
「……今だ!!」
ドゥ、ン!!
上空から俯瞰し、この広々とした荒れ地に展開しているガロウ・ランの強獣の群れ、トリケラトプスに良く似た、角を持った強獣達の中心を狙って放ち。
ボフゥ、ウ!!
「……よし、ド真ん中で炸裂した!!」
ズゥ……
そして、そのまま彼レンは、単発である抱え大砲を、無造作に地面に落とす。
「むっ、ハバリーが来た!!」
「気を付けろよ、レン!!」
「了解、ラージャ殿!!」
とはいえ、未だにオーラマシンは貴重品、数は少なく、今対峙しているガロウ・ラン残党へは、やはり。
「横からアマゴローンだ!!」
「怯むなよ、パイク槍で援護しろ!!」
「りょ、了解だ、騎士ナラシ!!」
「この強獣なら柔らかい、私の馬上鉄砲でも倒せる!!」
ユニコンという騎馬を駆る騎士、それを支援する二、三人の従者という、まさしく中世の「小隊」そのものである、戦闘ユニットも現役である。
「……フム」
もちろん、強獣やらオーラマシンの存在の為に、三次元的な戦いが行われるのは、地球で飛行機が登場後の戦術を、すでに先取りしているとも、言えなくはない。
「王、望遠鏡を貸して頂けませんか?」
「ああ、しかし、レンは」
その、寒々とした荒野での戦いの様子を、小高い丘の本陣から、このリの国軍総大将である「シュンジ・イザワ」が、じっと見つめていた。
「よくやってくれる……」
「ですな」
「ほら、望遠鏡」
レン・ブラス、シュンジ王がこの世界に召喚された時は、単なる一人の騎士見習いであった少年。
「父親であるザン騎士団長も、お喜びでしょう」
「オーラマシンは、レンにとっては天祐だったのかもな、騎士バラフ」
「フフ……」
そのオーラマシンに対する適性が、リ国の対ガロウ・ラン戦役で開花し、そのガロウ・ランと交えた最後の大決戦の時には、最新型のプロトタイプ・アルダムを任された程である。
「確かにね、シュンジ王」
「バラフ、戦場の観察は任せた」
「ハッ!!」
「……しかし」
先程、この本陣にガロウ・ランの精鋭部隊が奇襲を仕掛けた時、彼シュンジは自らの愛機を起動させ、即座に抜き打ちで、大型の巨人騎士用のクロスボウを放ったが。
「このゲド、もう限界だな……」
そうぼやいた彼の真横に鎮座する「聖戦士用ゲド」は、改造をほどこし過ぎて、機体寿命が間近であるこのマシンは、王ともどもに、予備兵力として参戦している。
「飛ばずに腕だけを上げた、それのみで計器が乱れ、機体が止まるとは……」
ただ、もともと王というものの戦力としての値打ちは、敵を撃破する能力ではない。
「シュンジ王、こちらの死者は二名です」
「さすがに上手く仕掛けられた……」
「王、先程は火縄銃で私を助けて頂き、ありがとうございます」
「なんの、それよりも俺の予備の剣を」
「ハッ!!」
このように、奇襲とはいえ本陣まで攻め込まれれば、王自らも剣を取る必要があるが、戦陣での王の役目は死なない事、後方で指揮執る事である。
「……む?」
その時、望遠鏡を任された、騎士バラフの目に入ったそれは。
「どうした、騎士バラフ?」
「……あれは」
敵か味方か、どちらかの砲撃による煙が晴れた時に、拡がる荒野に彼が見た物は。
「……オーラバトラー!?」
「何?」
そして、そのマシンは、確実にリ国のマシンではない。
「……レンのアルダムではないな?」
「あんな、不気味なシルエットのオーラバトラーなど!!」
「そうか」
僅かに狼狽気味であるバラフに、冷静な声で答えたシュンジの目は先程、飛竜と牽引大砲のまぐれ当たりで仕留めた、ガロウ・ランのオーラマシン。
「……やはり」
きゃつらガロウ・ランが何処からか手に入れたらしきマシン、撃墜され、この距離からでも、未だに煙を上げているのが見える「ドロ」の残骸の方角へ向けられた。
「スジャータ、それも持ってくるべきだったかもな……」
シュンジにしても、ここまで残党の数が多く、そして強力だとは、思わなかったのだ。
「留守居のザン団長と協議し、そして推測されたガロウ・ランの数の、五割増しの兵は連れてきたが……」
偵察を行ったリのドロによれば、この戦場は見晴らしが良く、シュンジも最初は正面からの真っ向勝負になると、戦場に着いた時も自分の目で見て、そう思っていたのだが。
「想像していたより、地形に起伏があり、ガロウ・ランもしぶとい……」
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「……ガロウ・ランが独自開発、まさかな!!」
ただ、レン・ブラスの記憶では、確かにガロウ・ランがオーラマシンを運用するのは、これが初めてではない。
「……そういえば」
その、レンのアルダムに面を向ける、悪魔のような顔と姿形をした、異形のオーラバトラー
「僕が、オーラバトラーで、同じオーラバトラーを相手にするのは、これが初めてだな……」
と、言っては悪魔に失礼かもしれない、その謎の機体の外見は、悪魔は悪魔でも、貧相な使い魔、とでも言うべき、弱々しい形状をしているオーラバトラーだ。
「……くるか、悪魔の出来損ないの顔をしたオーラバトラー!?」
そして、その敵機はよたよた動きつつ、いびつな手には剣、そして逆の手には、なにやら得体の知れない物を保持して、レン機アルダムへ向かって飛翔。
「見た所、剣は持っているが、あの妙な物を片手に持っている為に、動きが……」
そう、飛ぶというより、カトンボのような頼りない、翅を震わせての浮遊、そのまま上空までどうにか昇り、迫ろうとするガロウ・ランのオーラバトラーに対し、レン・ブラスは。
「……まあいい、飛び道具かも知れないだろうが、何だろうが!!」
ジャ、ギィ!!
レン機アルダムが今、その敵機に向けた剣は、アの国製の機体が持つ両刃剣ではなく、片刃の剣である。
「レン・ブラス参る!!」
片刃、と言っても日本刀や、地球の中東で使われたような曲刀ではない、むしろ中世ヨーロッパで使用されたファルシオン、先端が重い剣だ。
「一気に、距離を詰め!!」
シャア……!!
これは何か考えがあって剣の形を変えたのではなく、単に本家アの国ほど、巨人騎士の剣を製造する技術が、リの国には無かっただけの話である。
「袈裟斬りにする!!」
この片刃の剣では、突きは直剣ほど上手くは出来ない、バランスが崩れ、相手に隙を見せてしまう。
ギュイ、イィ!!
「たあ!!」
そして、一気にレンのアルダムは相手の上を取り、そのまま大上段に、オーラだんびらを叩きつけようとした。