あべこべ女装おねショタウマ男 ~ニコポナデポを添えて~   作:ビッグバン蓬莱

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キチママと秋川なにがし

 「あなたは奇跡の子なのよ」

 

 母親らしき存在は、そういって笑顔を見せる。

 ボクを両手で抱き上げて、うっとりと見つめた後、その鼻先をボクの顔に近づける。

 クンクン、すぅはぁ、そうしてホッと一息吐いて、またうっとりとボクを見つめる。

 今度はその大きな胸に抱きかかえて、頭を抱えて、髪に鼻先を埋める。

 指先とも、撫でるとも違う感触が頭に広がる。舐められているのだ。髪を。

 犬猫がするそれ。グルーミングというそれを、母親はボクに行う。

 髪を舐め、髪先を噛み、鼻を頭に押し付ける。

 ぎゅうう、と痛いほど抱きしめてボクを存在づける。

 

 「だからこれは特別なの。いえ、普通の事なのよ」

 

 母は多分狂っている。わずかに残る知識から、これがおかしい事だと訴える。

 

 「大丈夫だよママ」

 

 だからボクは受け入れる。この美しくもおかしい母親を受け入れる。

 

 「あぁオリハ、愛してるわ!」

 

 そういって母親はよりいっそうボクを抱きすくめる。

 一瞬の後、感極まったといでもいうかのように天を見上げて身震いする。

 ボクは身じろぎすらできない。動いたら、怖い事になるとわかるから。

 ボクの名前はオリハオリーシュ。母の名前はノーザンダンサーと言った。

 ボクがニッ、と笑って、母親はポッ、と笑顔になって、そんな毎日。

 閉じられたカーテンに十畳ほどの白い部屋。ドアに絡む鎖、鉄条網。

 それがボクの日常だった。

 

 ◆

 

 トイレも、食事も、お風呂すらも。ボクに自由といえる時間はほとんどない。

 一日の大半を母と過ごし、母を見、母から世界を聞く。

 ボクの体には普通とは違うものがあった。耳と尻尾。動物のそれ。

 体の異常に訝しむボクを見た母は、母自らその体で教えてくれた。

 

 「ウマ娘というのよ。耳と尻尾はウマ娘の誇りの証」

 

 自らの耳をピコピコゆらし、ご機嫌に尻尾をゆらゆらしながら母は言う。

 

 「だからオリハは特別なの。男の子で耳と尻尾があるのはオリハだけなのよ?」

 

 そんな信じられない事をいうのだった。

 ウマ娘。時速60km以上で走り、人を紙のように千切れる存在。

 ボクは身震いした。そんな存在に自分がなっていることに愕然とした。

 ――化け物じゃないか。

 そう口に出さなかったことを褒めてほしい。

 母は続けて言う。ウマ娘に男は存在しないのだと。

 

 「人の女と、人の男と、ウマ娘。世界には三種類の人間がいるの」

 

 指を一つ折り二つ折り、ゆっくりとボクに言い聞かせる。

 

 「人とウマは似ているけれど別の生物。だから、好きになんてなれないの」

 

 生物としての圧倒的な格の差。人と人は恋愛ができても、ゾウとアリはできない。

 それは物理的にも、意識的にも同じだという。ウマ娘を人は可愛いと思ってもそれだけ。ウマ娘が犬猫をかわいいと思いはしても交尾はしないのと同じ。

 じゃあ、ボクはどうやって生まれたの?それは思いはしても、聞けなかった。 

 

 「だからウマ息子に生まれたオリハは気をつけないといけないの」

 

 ――でないと、怖い怖いウマ娘にさらわれて、食べられてしまうから。

 

 素直に怖い。ウマ娘は圧倒的な暴力を持っている。そこにいるだけで大地は畏怖し、人は頭を垂れる。

 そんな存在が外にはひしめいているという。どんな世紀末なのかと思った。

 ボクは一度だけ母のすきを見て外にでた事がある。そして一人のウマ娘と出会った。

 あの時の事は思い出したくない。挨拶して、遊んで、そして笑いあって。

 お別れの時間が来て、彼女の瞳がぐるぐる黒くなって、それで、それで……。

 金切り声を上げる母と飛びかかる彼女。周りはぐちゃぐちゃで、台風なんて目じゃなくて。

 ウマ娘という存在を思い知った日だった。

 ――ルナちゃん、元気だろうか。

 短いながらも笑いあい遊んだ中だ。今も健やかで居てほしい。

 そう物思いに耽っていると。

 

 「だから、オリハはウマ娘の扱いを覚えないといけないわ」

 

 最もだと思った。それがボクのためなのか、母の都合のいい妄想なのかは、怖くて聞けなかったけれど。

 母の背に乗り、母に紐を咥えさせ、首筋を撫で、尻を叩く。古来より伝統あるウマの調教法だというそれを、ボクは必死に覚えた。

 どうどう、どうどう。荒い息で時折のけぞる母の頭をたくさん撫でてやる。

 ハイヨーシルバー、そんな声をあげるボクは、笑えていただろうか?

 

 ◆

 

 「驚愕!噂はほんとうだった!」

 

 びっくり、そう書かれた扇子を広げ口元を隠すのは一人の少女。

 オレンジの腰までの髪に白い一筋の前髪を携えた、秋川やよい理事長。

 そう、理事長。驚愕すべき事に、目の前の少女は偉い学園の理事だという。

 母は死んだ。撲殺だった。監禁されていたボクは知らなかったけど、家には何度かメイドが出入りしていたらしい。

 メイドは歪に笑う母とキレイに笑うボクのあれこれを見て、凶行に至ったのだ。

  

 

 「お救いしないといけないのです!」

 

 ウマ娘のメイドは暴れた。暴れて、暴れて、ボクを攫って、そして警察のお世話になった。

 ボクはあれよあれよというまに親族の元に釣れられて、そしてこの少女と出会ったのだ。

 秋川理事長は、母の従姉妹なのだという。 家は大きくて、母は自分はすごいといっていたけれど、ここまでとは思わなかった。

 秋川理事長は、その帽子をパカッと開けてこういった。

 私もウマ娘だと。君と同じだと。内緒だとも、心配してるとも。

 

 「提案!オリハ君には変装してトレセン学園へ通ってもらいたい!」

 

 トレセン学園。それは女の園で、つまりはウマ娘の園でもある。

 困惑するボクに、秋川理事長はねっとりした声を隠そうともしない。

 いわく、ウマ娘の男は大変めずらしい。見つかれば、解剖は免れない。

 私としても母の忘れ形見であり、甥の子がそんな目にあうのは耐えられないと。

 心底心配するその目に欲をたぎらせてそういうのだ。心配だと。

 だからボクは言ったのだ。

 

 「お断りします」

 

 「……今、なんと?」

 

 「お断りしますと言いました」

 

 その顔に驚愕を浮かべ、秋川理事長は呟く。

 トレセン学園、ウマ娘の園。そんなの冗談ではなかった。

 母親はウマ娘で、メイドもウマ娘で、ルナちゃんも理事長もウマ娘。

 どいつもこいつもロクでもない。そんなウマ娘の園へ行くなんて、死ににいくようなものではないか。

 

 「お断りします!お断りします!」

 

 「信じられない!自分が何を言ってるのかわかっているのか!?」

 

 「解剖だろうがなんだろうが勝手にしろ!誰が行くか!」

 

 わーわー、ぎゃーぎゃー、ごねるボクに募る理事長。

 やがて室内で追いかけっこが始まって、ボクが逃げて、理事長が追いかけて。

 飛びかかって、組み付いて、締めて、撫でて、ぎゃあ、とかぐぅ、とか。

 

 「一体なんの騒ぎですか!扉の外まで聞こえていますよ!?」

 

 そういって飛び込んできた緑のお姉さんにボク達は取り押さえられて。

 ボク達は正座させられていた。隣には理事長、前には緑のお姉さん。

 隣では「計画が……」とか「夢のウマ息子が……」とかブツブツ言っている。

 頭にコブだらけのボク達に、呆れを浮かべてお姉さんが一瞥する。

 

 「理事長、オリハ君はお母さんが亡くなったばかりですよ?いくらなんでも急すぎます」

 

 「うぐ……しかしこれは大事な事なのだ」

 

 「オリハ君もオリハ君です。身寄りのないままで生きられるほどこの世界は甘くありません。どうするつもりだったんですか?」

 

 「それは……すみません、ボクが浅はかでした」

 

 混乱と反発。今更ながらに自分がいっぱいいっぱいだったのがわかった。

 今まで一緒だった母の死。ウマ息子という唯一という枷。恐怖。

 今までずっとずっと閉じ込められていた不満が爆発したのだった。

 だから、冷静になれた今はわかる。何をすればいいか。

 

 「秋川理事長、ごめんなさい。ボクのためを思ってくれたのに」

 

 「……いや、私も性急だった。君は母を亡くしたばかりだというのに……」

 

 失態、そう扇子を広げて理事長は俯く。ちょうどいいそれを、母の教えがよぎる。

 ボクは隣で俯く秋川理事長の頭を撫でた。仲直りしたかったのもあるし、なんとかしたかったというのもある。落ち込む彼女を見たくなかった。

 反応は劇的だった。

 

 「な、ななななにをしゅる!」

 

 火山が噴火したようだった。顔は真っ赤で、つばを飛ばし彼女は抗議する。

 

 「れ、レディの頭をなでるなど!撫でるなど……!」

 

 やってしまった、と手を引っ込める。すると彼女はまた俯く。

 俯いて、その頭を見せてくる。不格好なお辞儀がボクを脅迫する。

 察して、恐る恐る頭を撫でて。理事長は荒い息を立てて身震いする。

 

 「……とりあえず、仲直りできたようでよかったです」

 

 緑のお姉さん、駿川たづなさんと言った。

 彼女はそういって、ふっと笑みをこぼした。

 ボクもそれにつられてふっと笑った。心からの笑みだった。

 そうして、たづなさんがポッとして、秋川理事長がぶるぶるして。

 ボクのトレセン学園への入学が決まったのだった。

 

 ◆

 

 ボクは秋川さんの邸宅にお世話になっていた。

 パソコンやスマホも支給され、まさに至れり尽くせりといっても過言ではない。

 ボクはまだ9歳くらいだ。背も低くて、声変わりもしていない。喉仏だって出ていない。

 だからトレセン学園の、女の子の制服を来ても目立ちはしないと言うのだという。

 けど、安心できなかった。トレセン学園はいわば一個の独立した国だ。

 いるのはウマというウマ娘だけ。密閉し鎖国された治外法権。

 だから、保険は用意しておかなければならない。

 

 「ログインして……アカウント名はこれで……パスワードは……」

 

 ウマスタグラムというらしい。不穏な名前だが、これが一番普及しているSNSだとか。

 そこに下書きで色々と情報を書き込む。ボクの事情、ボクの履歴。ボクの生涯。

 これは保険だ。トレセン学園という鎖国した国へ入国する際の命綱。

 ボクという存在を隠蔽しすり潰されないようにするための命綱。

 ボクはボクという存在を残したかった。

 パワハラ、いじめ、不正など。SNSは尽く弱者の味方をしているのをボクは知っている。

 独自のネットワークを持つのはウマ息子のボクには必須だったのだ。

 

 「笑顔なんて、笑うなんて、誰でもできる」

 

 だから精一杯媚をうる。世界に、ボクを覚えてもらう。

 しっかりとトレセン学園の制服を来て女装して、鏡を見てチェックする。

 とびきりの作り笑顔を用意して、カメラで記録する。

 笑顔の向かう先はSNS。作りたてのアカウントに写真をアップロードする。

 

 「トレセン学園に入学することになりました、オリハオリーシュです。よろしくおねがいします、と」

 

 これで多分安心だ。できることはやった、後は野となれ山となれ。

 ボクは制服を脱いでベットに寝転んだ。久しぶりによく眠れる気がする。

 スマホがピロンピロン鳴ってうるさかったので、電源を切って明かりを消した。

 

 ・皇帝さんにフォローされました。

 ・黄金船さんにフォローされました。

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 ・ルチャさんにフォローされました。

 ・ウンスさんにフォローされました。

  フォローされました…………。

  フォローされました………。

  フォローされました……。

  ……。




後はどぼめじろうにセクハラして男バレ死にヒヤヒヤしつつおねショタして
どやるドンナかラモーヌが負けて凹むのをナデナデしておねショタして
着替えとか教室でわざとチラ見せしてくるウマ娘達とおねショタしたいです。
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