あべこべ女装おねショタウマ男 ~ニコポナデポを添えて~   作:ビッグバン蓬莱

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お馬さんごっこ2

 目が覚める。ふかふかのベットの傍らに朝日がカーテンから差し込む。

 そしてボクは寝苦しさとは違った拘束感を覚える。はぁ、とため息が出た。

 右側を見る。そこにはボクの首に手を回す駿川さんの寝顔。

 ワイシャツ一枚で右足をだらしなくボクの腹にかけて微睡んでいる。

 左側を見る。そこにはオレンジの頭がボクの腰にしがみついている。

 秋川理事長。小さい彼女はボクの股に顔を埋めて張り付いていた。

 ボクと理事長と駿川さんは、すごく仲が良くなっていた。 

 

 「どうしてこうなったんだっけ……」

 

 もはや濁流のような歪な川の字の間で考える。思い浮かぶのは、一つの出来事で。

 秋川理事長はボクの事を聞きたかがった。けど、ボクが言える事はそう多くない。

 ボクは客観的に見て虐待して育った。言えるのは母の事ばかり。

 お世話になる理事長になんとか話をしたくて考えて、ボクは一つの出来事を話した。

 おウマさんごっこ。母の背に乗って遊んだそれ。古来より伝わる神聖な儀式。

 人とウマをつなぐ儀式。秋川理事長は、その事にことさら興味を示した。

 

 「明らかに失敗だったよな……」

 

 ボクも小さいけど、秋川理事長もまた少女といっていいほどには小柄だ。

 四つん這いになったその少女の背に跨って、口にはハミという縄を噛ませる。

 進むで左足の踵で少女の腹を蹴り、止まれで縄をぐいと引っ張る。

 広々としたリビングを何周か回った頃、扉から声がかかった。

 

 「……何をしているんです?」

 

 駿川さんだった。寒々とした声をしていたと思う。

 固まるボクに秋川理事長は高らかに叫んだ。 

 

 「これは革命だ!」

 

 理事長の言葉に駿川さんは眉尻を下げて困惑する。

 こいつは何を言っているんだろう、そんな理解できない顔をしていた。

 だから理事長は続けて言う。これは革命だ、ウマ娘の幸せの形だと。

 

 「……そんなわけないでしょう。理事長、馬鹿になったんですか?」

 

 そうすげなく言う駿川さんに、理事長はふん、と鼻で笑って言い返した。

 

 「笑止!やってもいないでどうしてわかる!」

 

 「それくらいわかりますよ」

 

 「無理!わからない!」

 

 「わかります」

 

 「馬鹿!わからない!」

 

 「わかりますって!」

 

 ぎゃーぎゃーわーわー、わかる、わからない。そんな子供じみた問答が続いて。

 いいでしょう、やってやろうじゃないですか。駿川、キレた。

 話に追いつけないボクを置き去りにして、駿川さんはボクに尻を向け四つん這いになる。

 覚悟の姿だった。これでわからなければただじゃおかない、そんな堂々たる姿だった。

 もうどうにでもなれ、その姿にボクは恐れを抱き、駿川さんにハミをかける。

 

 「ぐっ……」

 

 駿川さんが呻いた。大の大人が四つん這いで口に縄を噛まされる。その屈辱はどれほどのことか。

 ボクはそのことに目をそらして駿川さんにまたがる。跨って、感動した。

 極限まで鍛え抜いた肉。腰はくびれて驚くほど細いのに、その背中はまるで巨木!

 うちに秘められしままの底深い能力!鍛錬によって半永久的な強さを手に入れたそれはまさにダイヤモンド!!

 そんな馬鹿な考えがよぎる中、駿川さんが身震いした。次はどうする、そんな身震いだった。

 

 「進め」

 

 ボクは左足の踵で腹をける。言葉とともに支持をだして、それが進めと体に教える。

 

 「もっと早く」

 

 ボクは左足の踵で二度腹をける。駿川さんの歩みが早まった。このウマは賢い。

 ボクは楽しくなってきた。文句なく速く、強い。凄いバネとスピード、スタミナが共存していた。

 だからボクは欲張りする。このウマの力がもっと見たい。

 

 「もっと早く!」

 

 バシィ、と右手で駿川さんの尻を叩く。

 駿川さんは激しく身震いして、ハミを噛んだまま顔をこちらに向けて睨む。

 けど容赦しない。再度バシンバシンと尻にムチを入れて催促する。

 駿川さんは何度も身震いしして、その手足を素早くうごかし始めた。

 ぐるぐる、ぐるぐる部屋を回る。左回り、右回り、縦横無尽に部屋を駆ける。

 はいよー、しるばー。もう何周かして、ハミをぐいと引っ張る。抵抗は驚くほどなかった。

 止まった駿川さんの首元は汗と熱で真っ赤になっていて。

 がんばったんだな、とボクは両手でその首元と頭を撫でる。

 

 「むぐぅ……!」

 

 駿川さんはツイと一際大きくのけぞった後、力尽きたように倒れふしてしまった。

 駿川さんの荒い息が部屋にこだまする。ふと理事長はどうしているかと顔を側に向けると。

 秋川理事長は、スマホをこちらに向けていた。スマホが赤く点滅し、それが録画を示しているのがわかった。

 続いてパシャリパシャリとフラッシュと音が鳴って、写真を取り続ける。

 

 「あ、や、やめて!とらないで!」

 

 気づいた駿川さんが飛び起きて慌てふためく。

 ボクを跳ね除けて、元気よく秋川理事長と取っ組み合いを始めた。

 理事長が部屋をぐるぐる逃げ回り、駿川さんがどたどたとそれを追いかける。

 

 「もう遅い!ウマスタにあげてしまった!これは歴史的快挙である!」

 

 「なんてことするんですか!なんてことするんですか!」

 

 「だがよかったろう!すごかったろう!恥じることはない!これは神聖な儀式である!」

 

 「そんなわけないでしょ!恥ずかしいに決まっているじゃないですか!あんな!あんな……!」

 

 駿川さんは理事長のほっぺを両手でひっぱり抗議する。

 思い出しているのだろう。だが誇っていいと思う。駿川さんは早かった。そこに何も恥じることはない。

 

 「笑止!なら嫌だったのか!?」

 

 「うっ……」

 

 「嫌だったか!取るに足らないものだったか!?」

 

 「それは……その……」

 

 「宣言!ウマ娘としてあれは嘘だったと三女神に誓えるか!?」

 

 理事長の剣幕に駿川さんは怯んだ。怯んで、俯いて、ボソリと言った。

 

 「すごくないかと言われれば、すごかったですけど……」

 

 「難聴!聞こえない!」

 

 「す、すごかったです」

 

 「否定!でも嫌なのだろう!?」

 

 「い、嫌じゃありません!すごかったです!」

 

 やけくそだった。最後はお互い叫んで部屋中に響いた。

 満足、理事長はそんな顔をしてにんまり笑顔を浮かべている。

 駿川さんは悔しそうで、真っ赤な顔のままボクと目を合わせようとしない。

 だから、言っておこうと思った。彼女にだけ恥をかかせられないと思った。

 

 「あの、桁違いでした。一番でした。駿川さんほどのウマ、見たこと無い。レースがあったなら、駿川さんが五冠も楽に取れたでしょう」

 

 ボクの言葉に駿川さんはきょとんとした顔をした。目を合わせ、ニッと笑って言う。

 

 「駿川たづなが、最強でした」

 

 高らかに宣言する。駿川たづなは最高だった。堂々と宣言する。

 それがおかしかったのか、秋川理事長は笑った。駿川さんもそれに釣られて笑った。ボクも笑った。

 それがまたおかしくて、みんなで一頻り笑いあって、ボク達は仲良くなった。

 これで話はおしまい。ボクと、理事長と、駿川さんとの思い出の話。

 入学は、すぐそこまで迫っていた。

 

 ◆

 

 笑い合う隣でピロンピロンとスマホの通知がなる。静かに明滅しそれを知らせる。

 お馬さんごっこ、そう名付けられた投稿はまたたく間に燃え上がった。

 なにこれ、草生える、私にも乗ってほしい、ちくわ大明神。

 動画は拡散し、連鎖し、また一つの文化を生み出す。

 乗馬、かっての世界において、人とウマをつなげた儀式。

 人が馬に乗る。かって 移動のため、戦争のため、狩りのため、牧畜のため、気晴らしのため、競技をするために行われたそれ。

 人類がどれくらい昔からウマに乗らなくなったのかは正確には知られていない。

 だがそれも過去の事となるだろう。今ココに、乗馬は息を吹き返した。

 これから長い時をかけ、人類は乗馬に少しづつ水をやっていくこととなる。

 人がウマに乗る。それは確かに現代に蘇ったのだった。

 人がウマにウマが人に、人が人に、ウマがウマに乗る行為。

 そこには家族、友人、親愛、友愛、恋人、あらゆる意味が込められた。

 乗馬は、人と人とをつなぐ神聖な儀式となった。 




予想外にクールなお姉さんとのお馬さんごっこが長引きました。でもしょうがないね。
次はボテ腹ショタと新築のボロ駅でどぼめじろうです。
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