あべこべ女装おねショタウマ男 ~ニコポナデポを添えて~ 作:ビッグバン蓬莱
入学の日が来た。秋川理事長……やよいさんとたづなさんは用意があるからと朝も早くに出かけていった。
ボクと一緒に行くと駄々をこねるやよいさんを背景に、たづなさんはボクに屈んで耳元でささやく。
また後で。ふっと息を吹いてボクの頭を人なでして、そうしてやよいさんを引きずっていった。
彼女達とは学園でまた会えるだろう。今からそれがもどかしい。
どんな人がいるとか、学園へは無事たどり着けられるだろうかとか。
そんな心配が頭をよぎったけど、一番の問題はすでに起こっていた。
「このお腹、どうしよう……」
ボクのお腹は膨れていた。シャツをお仕上げ、ぽっこりと妊婦のように膨れていた。
朝食は美味しかった。美味しくて、美味しくて、残すのももったいなくて。
やよいさんに勧められ、たづなさんにそれだけじゃ倒れちゃいますよと盛り付けられて。
ボクは言われるがままにどんどん料理を腹に押し込んだのだ。初めての経験だった。
だから知らなかったのだ、ウマ娘がこんな、度を越して食没ができるなんて。
妊婦みたいなだらしないボテ腹を晒すのがウマ娘の普通だなんて。
「ほんと、どうしよう……」
幸い学園に向かう駅は近かったから、シャツを引っ張ってなんとかひと目を避けてたどり着けた。
けど努力もそこまで。メジロ駅という名前の新築のボロ駅は、そこそこに人が居る。
やよいさんもたづなさんも、すぐにお腹は引っ込むといっていたけれど、その気配は微塵もない。
どうしよう。見られたくない。けど学園に行かないわけにもいかない。
ボクは大きなお腹を抱えて蹲った。そこへ、背後から声がかかる。
「ねぇ、大丈夫?蹲っているけれど、どこか体調が悪いの?」
びくり、とした。人もまばらとはいえ、隅で蹲っていれば声をかけられるのは必然だった。
ボクはちらりと背後に顔をむける。そこにいたのは、一人の制服を着たウマ娘だ。
黒いストレートの髪にキリッとした意志の強そうな目。
委員長とか、優等生とか、そんなウマ娘のお姉さんが背後に立っていた。
お姉さんは、心配そうに膝に手をついて覗き込んでくる。
「いえ、大丈夫です」
「そうは見えないわよ、その格好、トレセン学園の子でしょう?」
「ほんと大丈夫なんで……」
「心配しないで、私もほら、学園の生徒なの。だからどうしたのか、お姉さんに教えてほしいの」
いやいや、大丈夫。いやいや、心配だから。そんな問答がしばらく続いて。
にっちもさっちも行かなくなって、ボクは観念して、それを絞り出して。
「お、お腹が……」
「お腹が?」
「その……おっきいのが、恥ずかしくて」
お姉さんはボクの言葉にきょとんとした後、その視線をボクのお腹に向ける。
ボクはうまく言えない恥ずかしさにシャツを引っ張るけれど、お腹は隠れてくれない。
どうしてこんな仕打ちを……ボクがいったい何をしたというのか。
顔が熱くなる。視界が滲む。本当に、恥ずかしかった。
「お腹が?確かに大きいけれど……あぁ、ひょっとして初めて?」
なにかに納得したお姉さんはぽんと手を叩いてうなずいて。
大丈夫、こっち来て、とその体でボクを隠しながらボクの手を引いて。
向かった先は駅の売店だった。疑問が頭に浮かぶ中、お姉さんは買い物を始める。
「これと、これと、あとこれもください。あ、支払いはカードで」
お姉さんは次々に食料を買い込む。パン、ジュース、アイス、買える物を軒並みに。
そうして一頻り買い漁った次は、バリバリむしゃむしゃと食べ始めた。
積み重なった食料の山という山がどんどん小さくなる。
小さくなるにつれて、お姉さんに異変が訪れた。
お姉さんのお腹が出ている。いや、出ているなんてものじゃない。
それはもう妊婦のようにぽっこりと突き出ていた。制服を来た女子のボテ腹。
ボクがその光景に圧倒されている間に、お姉さんは最後のパンを人のみして。
「ごちそうさま」
そういって手を合わせたお姉さんは、唖然とするボクに顔を向けて言う。
「どう?」
「え?」
「だから、どう?」
そう言ってお腹を見せてくる。ボクは恥ずかしくなって視線をそらす。
「こら、ちゃんと見る」
お姉さんはそういってボクの顔を両手でつかみ、まじまじとボテ腹を見せつける。
ボクは何を見せられているのだろう?羞恥と、異変とで顔が熱くなる。
けどその熱は、お姉さんの次の言葉ですっと引っ込んだ。
「これで一緒ね」
まさか、そういうことなのだろうか?
察したのがわかったのか、お姉さんは手を話してにっこりと笑う。かわいい笑みだった。
「アタシも昔ははずかしかったなぁ……でもね、それってウマ娘なら普通の事なの。全然恥ずかしいことじゃないのよ?」
ウマ娘は人と段違いのパワーを発揮する。それ故に、維持にも段違いの量を必要とするのだという。
だからたくさん食べる。たくさんお腹がでる。けどそれは生きることで、普通のことで。
何もおかしくはないのだと、お姉さんはそう言って笑ったのだった。
ボクはそのお姉さんの行動に言葉が詰まった。その優しさに、ありがたさに。
「お姉さん」
「ん?なに?」
「……ありがとうございます」
「ふふっ、どういたしまして」
ボクはそう言って、頭を下げた。お姉さんはいいのよ、とまた笑う。
ボクは、このひと時でこのお姉さんが好きになった。とても優しいお姉さんが。
もう恥ずかしくない。ボクはお姉さんと同じ大きなボテ腹を堂々と晒す。
お姉さんはボクのお腹をじっと見つめる。まじまじと、熱のこもった目線で。
「すごく立派ね……大きくて、その、かわいいわよ?」
ボクはおかしくて笑った。
笑って、お姉さんといろいろお話した。
お姉さんはメジロドーベルという名前らしい。今日はたまたま御用達の車がダメになったとかで、一人駅を利用するために来たのだという。
お嬢様で、電車は初めてで、そんな所もまたボクと同じだった。
駅のホームでおしゃべりしていた所、電車が来る。ボク達は中に入った。
「すごい人ね、電車って毎日こうなのかな?」
お姉さんの言う通り、電車の中はすごい人だった。ぎゅぎゅうにひしめいている。
「ちょっと!おさないでよ!」
ボクとお姉さんはあまりの密度にたじろいで、そのすきに後ろから人波が届く。
人と人、ウマにウマ、右からも左からも押し飛ばされて、あっという間にボク達は奥の扉に押し込められた。
狭い、苦しい、それはお姉さんも同じのようで、壁に手をつっぱって耐えている。
ボクはそんなお姉さんにかばわれるようにして、ドアに背を預けていた。
お姉さんと向き合う。向き合って、お腹同士がくっついて、熱を持つ。
「ごめん、ちょっとだけ我慢して。あぁもうっ、電車ってどうしてこう狭いの」
悪態もほどほどに汽笛が鳴る。電車はゆっくりと進み始めた。
がたんごとん、と電車が揺れる。揺れるたび、お姉さんのお腹も揺れる。
がたんぶるん、がたんぼよん。むちむちした感触がおしかけてくる。
そうした感触が伝わってきても、ボクは隅に縮こまるしかできない。
やがて電車はカーブに差し掛かったのか、大きな横押しがやってきた。
「きゃあ!」
お姉さんが呻く。つんのめって、ボクにのしかかってくる。
急制動でさらに密着したせいで、ボクの足はお姉さんの股の間に伸びてしまった。
お姉さんは、壁に手をついてガニ股になっているのだろう。
中腰で苦しそうにボクをかばうお姉さん。それを見て、ボクは少しでも力になりたうて。
お姉さんの頭をそっと胸にだきしめた。少しでも揺れないように支える。
支えて、感謝を込めて頭を撫でる。あやすように、優しく、そっと。
「あっ」
お姉さんが声を漏らす。
「あっあっ……ああっ!」
途中駅への到着のアナウンスが響く中、お姉さんとボクは耐えきった。
まだ途中だけど、これはダメだと一緒に電車の外へ降りた。
お姉さんはぐったりしていた。ぐったりして、ボクに手を引かれている。
お姉さんは何も言わない。俯いたままで、汗まみれだった。
ボクは一息付きたくて、お姉さんにお手洗いに行きたいと告げる。
反応は早かった。
「それならこっち。いい場所を知ってるの」
初めて降りる駅で、お姉さんはボクと手を握ったままぐいぐい進む。
進んだ先は薄暗い多目的トイレ。寂れた駅の、雰囲気あるそれだった。
「大丈夫?一人でできる?」
お姉さんはそんな事をのたまう。何度も聞いてくるお姉さんに断って、ボクは中にはいった。
鍵を締める。中は薄暗かった。今にも幽霊でも出てきそうな薄暗さ。
電球はキレているのかスイッチを押してもつかない。仕方ないので、ドアの擦りガラスから漏れる光を頼りに便器にすわる。
スカートを下ろし、トランクスを脱ぎ、用を足す。
ほっと一息して、ドアを見つめた。お姉さんの影が映る。
羞恥を感じてそれを見ないようにして視線を横にそらすと、それはあった。
「なんだこれ?」
それはあった。手の届く所に、便器の隙間に隠れるようにしてバッグがあった。
「忘れ物かな?」
ボクはそれを手にとってしげしげ見る。中身ははいってるようで、それなりに重い。
ボクは好奇心がむずむずと湧いてきて、悪いと思ってジッパーを下ろした。
ぎょろりとした目。死んだ魚のような目。人とおなじような、人の頭……。
「うわあああああ!」
ボクはバックを放り投げた。がたんとした音で首が壁にぶつかり転がりだす。
「ちょっとなんの音!?大丈夫!?」
ボクの叫びに反応したのか、お姉さんが鍵を引きちぎって扉を開けた。
すごい勢いだった。お姉さんはスマホを手にしているのか、逆光がボクを照らす。
ボクは震える手でそれを指差す。バッグから転がり落ちる生首を。
お姉さんはボクを見、それを見、またボクを見た後転がる首に近づいた。
「……人形ね」
「え?」
「人形よ、玩具の。誰かの悪戯かしら」
「人形……誰かの悪戯」
その言葉にボクは背もたれにのしかかった。どっと安心が押し寄せてくる。
けどその安心は長くなかった。だってボクは、今服を脱いでいる。
「それよりも……」
それよりも?とボクが続く疑問に身をまかせれば、お姉さんは……。
パシャリ、またパシャリと音が響く。それは聞いたことのある、写真を取るときの音で。
お姉さんは、こちらのスマホを向けて取っていた。ボクの、服を脱いだボクを。
「あ、やめて!とらないで!」
身を捩って縮こまる。バレた、見られた、もうおしまいだ、そんな言葉がよぎる。
「男の子だったんだ……そっか、ふふっ……」
お姉さんは不気味に笑う。何かを確信した笑みだった。
ボクは怖くて、情けなくて、目をつぶって嵐がすぎるのを待つしか無い。
そんなボクをお姉さんは近寄って抱きしめた。そっと、壊れないように。
「大丈夫、言わないから。安心して、本当よ?」
けど、とお姉さんは続けて。
「オリハ君がアタシを避けたらどうなるか、わからないから」
二人だけの秘密。そういってお姉さんは約束してくれた。
事情はわからないけれど、言うつもりはないと。
一人だけじゃ色々困るだろうから、アタシを頼っていいよ、手伝ってあげると。
そう優しく囁いて。
「裏切ったら許さないから」
そんな、怖い言葉を残して。
ボクの学園生活は、初日から頓挫した。
女装バレ脅迫されたくて後半は強引でした。メジロ家が仕込んだとか多分関係ないです。
急遽駅に訪れたメジロとか、なぜかカメラ構えていても関係ないです。
次はショタがレズのサディストとになって胸チラトランセンドか皇帝肉椅子です。