あべこべ女装おねショタウマ男 ~ニコポナデポを添えて~   作:ビッグバン蓬莱

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おともだちと肉椅子

 力が欲しい。何者も寄せ付けない力が。

 連日連夜、ボクの周りにはウマ娘が寄り付くようになった。

 視線という視線の嵐。教室、廊下、通学路、部屋、はてはトイレまで視線を感じる。

 教室はまだいい、食堂も、なんなら学園では多少の狼藉は目をつぶろう。

 けど部屋はおかしい。部屋にいてもボクはどこからか視線を感じる。

 ベッドの下、クローゼット、コンセント、エアコン、隅々まで手を入れた。

 けど何もない。証拠はゼロ。ありもしない視線にボクは怯えるようになった。

 

 「また視線を感じる……まさか幽霊、とか?」

 

 途端ぶるりと背筋が震えた。

 右を見て、左を見て、なにもない。普通の部屋だ。

 春も暖かになって来たというのに、肌には鳥肌が立つ。

 しまいにははぁはぁとした息遣いまで聞こえてきて。

 ボクはぬいぐるみを抱きしめる。どきゅーとという、等身大のぬいぐるみを。

 大きなぬいぐるみは重くて、暑くて、色々大変だったけれど。

 こういう時には頼もしい。ボクはぬいぐるみを正面から抱きしめる。

 

 「おお”ん」

 

 「ひぃ」

 

 まただ、また聞こえる。視線を左右に這わせても、写るのはぬいぐるみのみ。

 ぱかぷちといったそれ。30センチほどの大きさのデフォルメされたそれ。

 渡されたぱかぷちはいろんな種類があった。断るのも捨てるのも申し訳なくて、今や部屋中に立てかけている。

 暗い部屋にスイッチを入れるとぱっとぬいぐるみ達と視線があう。

 ちょっと、いやかなり怖いけれど、ぬいぐるみには罪はない。

 髪が伸びる呪いの人形も湿度や温度差のせいらしいし、疑うなんて馬鹿らしい。

 

 「そうだ、除霊しよう」

 

 ボクはそう決心して、目を閉じて悪夢が終わるのを待った。

 

 ◆

 

 「見えていますね」

 

 黒髪ロングのストレートに長い一房の前髪を垂らしているウマ娘。

 彼女はマンハッタンカフェといった。幽霊の専門家として紹介された子。

 音もなしに影からぬっというようにして現れたそれ。

 彼女はハイライトの消えた金の瞳でボクをじっと見つめてそういう。

 不思議な声た。声でもない、言葉でもない、ただ感情の塊のようなものが耳元で囁いたような。

 

 「つかれていますね」

 

 続けて彼女はそういった。とぽとぽと沸騰したやかんからマグカップにお湯を注いでいる。

 注がれているのはコーヒーだ。お客様ですし、と彼女はいった。

 濾された粉豆からはなんともいえない香りがただよってくる。

 いい香りだ。素直にそう思えた。

 彼女はそれを両手で大事に抱え、ちびちびと味わうように飲んだ。

 ボクもそれに釣られて舌を伸ばす。暑さと苦さが舌に広がった。

 

 「……わかるんですか?」

 

 わかりますよ、と彼女は言った。さすがだ、専門家とはかくもあるのか。

 幽霊の専門家と聞いた時、ボクの心に浮かんだのは紛れもない疑心だ。

 そんなの、詐欺師か何かに決まっている。そう会いもせずに決めてかかった。

 けど彼女はボクの状態を見た瞬間にぴたりと言い当てたのだ。

 ふよふよと彼女は浮かんだカップを下ろす。一流の専門家は仕草も一流だった。

 

 「では、どうすればいいのでしょう?」

 

 ボクはすがる思い出聞いた。毎日毎日心休まる時がない。

 ボクに出せるものは少ないけれど、できることはやるつもりだった。

 

 「いいでしょう、ではまず私を撫で回してください」

 

 「はい?」

 

 「撫で回してくださいと言いました」

 

 「……ちなみにどこをでしょう?」

 

 「全部です」

 

 「全部」

 

 「そう、全部です」

 

 さぁ、とマンハッタンカフェさんは椅子に座って両手を広げる。

 どこからでもどうぞ、彼女は全身でそうアピールしていた。

 ボクは、ボクは躊躇した。やるといってすぐにうろたえた。

 意気地のないボクは、すこしでも抵抗したくて理由を彼女に聞いた。

 

 「……どうして、撫でるのでしょう」

 

 「私のパワーをあなたに送るためです」

 

 「送る?それなら逆じゃないのですか?」

 

 「いいえ、私が撫でたのでは意味がありません」

 

 ちちち、と彼女は指を左右に振ってそういった。

 最初はクールで無表情な印象を彼女に持ったが、なかなかどうして、こう話をしてみるとおちゃめな所があるらしい。

 いわく、ボクは家電で、マンハッタンカフェさんはコンセントなのだという。

 電源であるマンハッタンカフェさんに家電たるボクを挿して、パワーを吸い取る。

 なるほどと思った。逆だと、ボクが吸い取られるだけになってしまう。

 

 「でも、いいのですか?」

 

 「?恥ずかしがる事はありません。証明になります」

 

 「証明?……よくわかりませんけど、じゃあ失礼して」

 

 ボクは彼女の前に立って、恐る恐る片手を伸ばす。

 いつの間にか、マンハッタンカフェさんはソファーに仰向けになった。

 伸ばす手の先はまた彼女の指先だ。まずは試しに、そう思ってそのほっそりとした指先を握る。

 

 「あん!」

 

 びっくりした。びっくりして思わず手を話してしまう。

 視線をあげれば、マンハッタンカフェさんは目をまんまるに開いてもう片方の手で口元を抑えていた。

 自分でも、声が出たのにびっくりした、そんな仕草に見えた。

 ごほん、と彼女は一度目を閉じて咳払いした後、染まる頬でこう言った。

 

 「失礼。気にせず続けてください」

 

 ボクはその言葉を信じて再度手をのばす。今度は二の腕だ。

 

 「やぁん……」

 

 さわさわ、もみもみ。その続く二の腕に指を這わせる。

 

 「ん、上手ですよ……そのまま続けてください」

 

 指、腕、肩、足。

 首筋から鎖骨、肋骨、脇腹。

 太もも、膝、ふくらはぎ……。 

 するするもみもみとボクはその感触を楽しむ。

 彼女のはだ驚くほど白く、すべすべで、何よりしっとりと冷たかった。

 それなのに彼女の体を撫でるたび、両手に熱がこもる、全身に力がたぎる。

 ボクは彼女のパワーを実感していた。驚くべき事だった。 

 

 「いいですよ……おともだちもすごいっていってます」

 

 「おともだちですか?」

 

 「……いえ、なんでもありません」

 

 十分か、二十分か、一頻りボクは彼女の全身を撫できった。

 お互い汗でびっしょりだった。驚くほどに集中していたと思う。

 マンハッタンカフェさんは体を起き上がらせ、汗に濡れた前髪をさっとどかす。

 

 「これでもう大丈夫なんでしょうか?」

 

 ボクは聞いた。確かに効果があったと思う。ならこれで十分なのか。

 

 「いえ、まだです。今のは私とあなたに道を作る前準備にすぎません」

 

 ボクは驚いた。この行為にはまだ先があるのだという。

 続けてマンハッタンカフェさんは言う。次はより一層大変だと。

 覚悟してください。その言葉に、ボクはごくりとつばを人のみする。

 ここまできたんだ。毒を食らわば皿まで、と一思いに賭ける。

 

 「ん、どうぞ」

 

 今度の支持は、抱き合う、だった。

 彼女いわく、より肌が密着するほどパワーを送りやすいのだという。

 ボクはそれを信じて、勇気を持って彼女の背中に腕を回す。

 セミのように、抱き合うコアラのように。その柳のように柔らかい体に身を預ける。

 さわやかな香の匂いがした。汗にまじってすっと鼻に入ってくる。

 彼女は続けて言う。褒めてくださいと。

 

 「はい?」

 

 「ですから、私を褒めてください」

 

 「なんで?」

 

 ボクの疑問に彼女ははっきりとした口調で答える。

 いわく、言葉には不思議な力がやどるのだという。

 かといって、適当ではだめ。経文なども意味はあるが、素人のボクではダメだという。

 だから、お互いわかりあえて、意味がある言葉が一番なのだとか。

 それが、褒める事。相手に好意を捧げてつながるというのだ。

 言葉に力を込めて、存在を形にする。そういう意味があると。

 ボクは納得して、なんとかない頭で言葉をひねり出す。

 

 「えっと……かわいいです」

 

 「はい」

 

 「まるで夜みたいにきれいな黒髪で

 

 「はい」

 

 「金の瞳はエキゾチックで神秘的で」

 

 「はい」

 

 「ボクの突然のお願いにも優しく対応してくれて」

 

 「もっと」

 

 「嬉しいです。あなたに会えて本当によかった」

 

 「もっと言って」

 

 「キミはすごい。すごくすごくがんばっている」

 

 「……ッ」

 

 「偉い。最高。たまらない。結婚してほしい」

 

 「……ッ!!」

 

 褒めた言葉が十を越え二十を越え、百を越えたかもと思う頃。

 背中をなで、頭を撫で、あやしてあやしてあやしまくった頃。

 マンハッタンカフェさんは「あへぇ」と声をあげてうごかなくなった。

 白い肌を真っ赤にして、汗を噴いて目を回している。

 ボクは慌てた。慌てて彼女を引き剥がして、ソファーに寝かせる。

 寝かせて、服を緩めて、汗を拭き取って。

 救急車を呼ぶべきか?とボクが考え出した頃、彼女はむくりと起きた。

 

 「お恥ずかしい所をお見せしました……」

 

 「いえ、そんなわけでは……それより大丈夫なのですか?」

 

 「はい、おかげさまでもう大丈夫です」

 

 彼女は言う。これでボクと彼女にはしっかりとパスがつながったのだという。

 これでいつでもどんなときでもパワーを発揮できるのだとか。

 おまけにボクの事もよくわかるらしく、いざというときは助けにきれくれるという。

 至れりつくせりだった。ありがとう、本当にありがとう。それしか言葉がみつからない。

 ボクの言葉にも彼女はいいえ、と言って、私ももらいましたし、と続いた。

 

 「もらうですか?」

 

 「いえ、言葉の綾です」

 

 ふふふ、と彼女は笑った。笑って、ではこれで、と挨拶もそこそこに扉から出ていった。

 「おつかれさま」そう言葉を言い残して。

 ボクはふぅ、と一息はいて、背もたれにぐっとよりかかる。

 そこへつかつかと廊下から慌てるように足音が響いてきて。

 がらりと音をたてて扉が開いた。

 居たのは彼女、マンハッタンカフェさんだった。

 

 「忘れ物ですか?」

 

 「今ここに、私が来ませんでしたか?」

 

 ボクと彼女の言葉は同時だった。同時に答え、同時に?が頭に浮かんだ。

 

 「……私がここに来たんですね?」

 

 「来たもなにも、さっきまで一緒にいましたよね?」

 

 ボクの言葉にマンハッタンカフェさんは目線を険しくする。

 

 「見えていますね」

 

 同じ言葉だった。

 最初に彼女と出会ったときと同じ言葉。

 けれど、今はひどく違う意味に聞こえてきて。

 ミツケタ、とも彼女は言って。

 

 「あの、どうしたんですか?なにかあったんでしょうか?」

 

 「いえ……ありましたけど、もう大丈夫です」

 

 その言葉にボクははぁ、と浮いた言葉を返す。

 そんな様子のボクに、マンハッタンカフェさんはにこりと笑ってこういった。

 きれいな笑みだった。

 

 「いえ……こちらこそありがとうござます」

 

 嬉しそうに楽しそうに、そういってニッと笑みを深くする。

 

 「本当に、お憑かれさまでした」

 




生徒会で平然肉椅子シチュやろうと思ったんですけど書いてるうちにお友達に。
ウマ娘の風呂はやめました。色々と難しいしまずそうなんで。
R-15は色々おkですけど、ウマ娘ほんとどうなんでしょうねそこんところ。
抱きしめタッチもそうですし、なんなら下着とかもいろんな所で見ますし。
次はどやっといて無様に負けるドンナさん慰めシチュ書けたらいいな
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