終末週末紀行   作:WASA-B

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時系列的には少し戻って幕間閑話の直後になります。


朧月

 

顔を少しあげフロントキャノピーを見ると、分厚い吹雪の絨毯しか見えなかった雲海から細く天まで伸びる光の柱があった。

 

「……CIC、熱源反応は?」

「あっ……セクター(グリーン)に於ける高熱原体は以前変わらず中型1、へミス4機、小型多数。(イエロー)に大型1、へミス2、その他小型多数と変化なし」

熱源ではない、か。

 

ん? メインモニターには何も映っていないな。あれは、なんだ。

肉眼より遥かに多くの帯域を捉えているはずのメインモニターには何も表示されず、防弾レベルⅥ、耐熱Ⅳ程度の強化ガラス製キャノピー越しにはくっきりと光の柱が見える。明らかに異常だ。

 

「玲華、目算でいいから光の柱の座標を算出。できるな」

「え? うん。……現在位置と進路、角度。あれっ、N30E100辺りかな」

「これは中型が集結していた地点と一致する、よな」

 

今日の日付はCE0090/16/08、旧暦でいうところの2198/12/25、いや、日と月の単位の差を考慮すると、ちょうど2200/02/14、00:00、いや、3分経ったか。

それは、その日付は、旧暦に於いてAGEが侵攻を開始してからちょうど40年後だ。

だからなんだという話ではない。

でも親父から何度も聞いた話と全く一致する。

『あれは、創世の光だよ。新たなる時代の幕開け。その狼煙だった』

その光からAGEは生まれた。生涯父はそう言っていた。

 

親父殿の話の真偽はさておき、あれは回収せねばならん。上層部に即座に報告せねば。

 

「ねえ。あの子、泣いてるよ」

「え? 誰?」

「あの箱の中の女の子」

「……それは……どう、いう?」

「ゆるして、って」

 

……困ったな。

人が入っている、のか。

玲華のこの謎のトランス状態には自分限らず、第三隊は何度も助けられた。

つい最近も、散発的な小規模戦闘をしていた定期哨戒班が半包囲されていて、危うく嬲り殺しに遭うところだったらしい。玲華が隊長に懇願して救援に行かなければ全滅していたということだ。

 

おそらく今回も正しいのだろう。

そして人が入っているのなら、間違いなく尋問、いや状況類型的にAGEと深い関わりがある以上、人としての扱いはまず為されないだろう。

 

しかしこれだけの人に見られたものをそう簡単に口止め……

そうか。カメラ越しにこの光が見えないのであれば、光自体は記録には残らないということ。

あとは適当に燃やしたことにして通信さえ誤魔化せば、どうにでもなるだろう。

 

〈!〉

 

Sa4(井上機)からの通信です。ほぼ単騎で小型掃討することになりそうっていう泣き言が届きました」

「かわいそう」

「P3も尽きたから帰りたいって言ってます」

「まあ帰りたいまでは言ってないんだろうけどキツそうだな。まあでもあいつ自分で気付いてないだけで普通に格闘戦上手いからな。何とかなるだろ」

「インパクトブレードなんてけったいなもの私は使えない」

あれはかなりピーキーな武装だ。

音速で動く刃筋を綺麗に真っ直ぐ立てる、というとんでも無く繊細なことを、腕部関節ニュートラルの状態で行わなければ使い物にならない。

そんな器用なことができる輩はあいつだけだ。

他の隊員は基本的にインパクトハンマーを使っている。

打面が広く当てやすいし、慣性モーメントも強いぶん多少のブレは修正される(機体の各部関節に負担はめちゃくちゃかかる)

 

〈──!〉

 

「信号弾D・E、確認。戦闘終了および撤退行動開始。チャンネルS3で各機にポイント座標転送」

「了解、進路(グリーン)mk(マーク)03(マルサン)(デルタ)Shift(シフト)(ヨン)

「軌道修正確認。へミス各機ポイントへの移動開始を確認。予測集結時刻はプラス24(ミニッツ)

「まあ間に合いそうだね」

「うん。……ありがとう」

「まあまだわからないけどな。まあとりあえず中居さんが回収してくれてるみたいだからそれからだな」

「うん」

 

さて、この判断がキチと出るか狂と出るか。

神の味噌汁といったところか。

 




編注
多分書いたときに計算したとは思うんですけど、旧暦40年が新暦換算で20年くらいだった気がします。
なんか違う気がするんですけどとりあえずこのままで。
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