終末週末紀行   作:WASA-B

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まぐろのたたき

「そうだ佐藤さんのRdだ! ただの模擬戦だからC装備は全部外せ! 何? 模擬戦で使う装備は全て向こうが用意する!」

天木が怒鳴りながら整備の音頭を取っている。

ただでさえ本演習の前の確認や整備で忙しいのに、本当に申し訳ないな。

 

「余計な仕事を増やしてすまない」

「あ、佐藤さん。いえいえ、売られた喧嘩なんでしょう? しかも隊長をコケにされたとか。我々としても気持ちは同じです。存分にやっちゃってください」

「そう言ってくれると助かる」

「えぇ、佐藤さんは少し休んでてくださいよ。アレ(・・) の事もあるんですから」

 

そういえば何か拾ったな。

思い出したくは無かったが、考えねばならぬことではある。

どうするかなあ。

 

「それから、セッティングはBの3で本当に良いんですか? 仮にも相手は部隊長らしいじゃないですか。それを」

「それは大丈夫だ、絶対に強くない確信がある。機体には指一本触れさせない」

「それはまた、頼もしいです。じゃあついでにフィールドモーターの摩耗も抑え目でお願いします」

「整備副長のお願いとあらば、聞かないと何されるかわかったもんじゃねえな」

「ははは、まさか。模擬戦だから何やっても佐藤さんなら死にはしないとか、思ってないですよ」

「それが冗談であることを切に願う」

『天木さん準備できました』

「よし。コンテナ搬送チェックを、あ、佐藤さんはどうぞ休んでください」

「了解」

 

少し仮眠を取ろう。

今日は出来事が多過ぎた。

 

@@@

 

『お父さん! お父さんはどこ! ねえお兄ちゃん! なにか言ってよ!!』

 

@@@

 

幸いなことに(Fortunately)、何にも妨げられることなく2時間の仮眠を取ることができた。

副艦橋に上がると玲華がぼんやりとモニターを眺めていた。

 

「何見てるんだ?」

「……?」

いつも通り、意識はうわの空だ。

うーん。

何考えてるかわからないというのもあるが、会話が要領を得ないのが一番困る。

 

「あの子、何か隠してる」

「あの子? あぁ、アディソィ書記官のことか。隠してるってそりゃあ、いくら命の恩人か何かとはいえ会ったばかりの我々に」

「違う。……彼女(・・)は違う」

 

彼女? あれ女の子なのか。それに違うとはどういう……?

 

『--・・-・佐藤さん。お迎えが来てます。格納庫後部デッキまでお願いします』

壁のターミナルに発信元の通信コードを打ち込み、繋ぐ。

「こちらサブブリッチ、佐藤だ。すぐに向かう」

『--・・-・了解です。一応規則ですので機体データを渡しました。では後ほど』

 

気が向かないけど行くか。とりあえず叩き潰してやる。

「じゃあ行ってくる」

「うん。気を付けて」

 

***

 

「わざわざ屋外演習場を借りてくるとはな。結構なことだ」

『我々の管轄下だからな! これくらいどうということはない』

「独り言に割り込んでくるなよ……ルールの説明をしろ」

『ケッ。ルールは模擬3だ。バイタルエリアへの直撃判定による決着。わかりやすいだろう?』

 

バイタル以外を痛めつけてやろうという魂胆が見えるなあ。まあ性根が腐っているのはよくわかっていたから良いんだけども。ここまで分かりやすいとこっちもやりがいがあるってもんだ。

 

「いいだろう。カウントはそちらでどうぞ」

『よぉし! 相対距離200、カウントダウン10! 9、8……』

 

意識を集中させるほどのものでもない。

そもそも模擬戦は相手が人間であるが故に意図を理解しやすい。別に相手の気配を読むといったような人外的スキルとかではなく、だ。

これはモビルスーツという兵器の特性が出ているところではある。

 

ヘミスフィアは、MS(モビルスーツ)の概念が出てきた頃からすると比較的小型化されているとはいえ、量産形のFn型でも10mちょいはある。

人型の兵器を二本の腕と二本の足だけでヒトのように動かすには、補助プログラムが必須だと言われている。あらかじめプログラムされた挙動のプリセットがあり、その組み合わせで戦闘挙動をするわけだ。

 

『5、4、3』

 

MSの発明は、AGEには計り知れないほど有効だった。

第一世代のギガスシリーズ、初めてPS装甲を搭載した第二世代のイージスシリーズ、量産及び戦闘機動をより効率的にする為サイズを小さくした第三世代ヘミスフィアシリーズ、どれも当時の人類勢力圏を大きく広げたものだ。

 

『0!』

しかし、こと対人となれば話は変わる。勿論その挙動のプリセットを全て記憶している相手であればの話だが。

敵機のへミスが右足を少し後ろに下げ、機体を沈めつつ腰部武装ラックから汎用ライフルを取る。

 

相手の機体はFn型に少し手を加えた、おおよそスラスター強化型か。

おそらく自慢の背部メインスラスターを、全開にし突っ込んでくる。同時に左腕を動かしシールドを前に構える。

 

なるほど大した度胸ではある。素晴らしい加速により、コクピット内のパイロットには少なく見積もっても6Gは掛かっている。そのなかで必要最低限の時間で距離を詰めながら射撃武装を選択することで、敵が動こうとも有効打を与えようという発想は悪くない。

 

しかしまあ。それだけだ。

これなら武装を選択するまでも無い気もするが、機体に傷一つ付けないどころか関節部の負担も最低限って約束してしまったから、弾当ててササッと終わらせよう。

 

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