よし、経験値サンドバッグになろう。   作:訥々

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夜明けの相模原討伐作戦①

ピピピピ。ピピピピ。

セットしていた目覚まし時計が、午前4時になったことを知らせる。

 

 

「あー、もウ時間か」

 

 

とあるアパートの一室。

生活感のある、何処にでもありふれたような部屋。

その住人はしかし、怪獣であった。

それも、後に“怪獣9号”という個体名を付与されるほどの強力な怪獣である。

 

 

「“彼ら”は今頃相模原カ」

 

 

“彼ら”···つまり、日比野カフカや市川レノ、四ノ宮キコルといった『物語』の中心メンバー。

『物語』···こことは違う世界で漫画として描かれたこの世界。

 

そう。彼には前世の記憶があった。

『物語』を楽しんでいた、平凡な青年だった頃の。

ただ彼の自我が発現する頃には、彼は既に人間の身体を乗っ取っていた。

青年は自我を持った時点で、人に害する怪獣だったのだ···。

 

それに気づいた彼は嘆いた。

そしてひとしきり悩んだ彼は、このように考えた。

 

自分は『物語』を最後まで読んでいないから分からないが、“怪獣9号”をも上回る脅威が登場する可能性は高い。

そうなれば多くの人が死ぬだろうし、その中には『物語』の登場人物も多数含まれてしまうだろう。

ならば自分は“彼ら”に立ちはだかる大きな壁となり、成長を促そう。

そして、“彼ら”が十分に強くなったら···潔くさっさと殺されよう(討伐されよう)、と。

 

人類勢力の経験値となることを決意した彼は、人知れず*1研鑽を積んだ。

複数回の“脱皮”を経て強くなった彼は、満を持してこの日に初めて本格的な対人類的行動を採った。

 

 

 

 

 

───未明。彼が予め“仕込んでおいた”大量の菌類系怪獣が、相模原の地表に姿を現した。

───午前4時に開始された新人防衛隊員27名の初任務である、この相模原討伐作戦は、8号と9号が初めて接敵する極めて重要な出来事だ。

 

 

さて···僕モ動こうかな

 

 

◆◆

 

 

推定サイズ、全長150m以上の菌類系(キノコ)本獣、

ミクソガステロ

推定フォルティチュード(怪獣強度)7.5。*2

 

大怪獣程ではないにしろ、相当に強力な怪獣だ───が、しかし。

大型銃器の適性が極めて高く、解放戦力も96%である亜白ミナ(第三部隊隊長)の砲撃によってあっさり討伐された。

他の隊員たちも、指定ポイントへの誘導や四肢への集中砲火等、彼女の大火力を遺憾なく発揮するための補助をなかなか巧くこなしていた。

 

 

少しは強化シテたんだけどねえ···流石は第三部隊と、その隊長。超大型キラー···といったとこロか

 

 

ここまでは概ね“原作”通り。

問題は余獣が大量発生した後だ。

 

本獣に続く第二の脅威、余獣ファネロプラス

膨大な“数”をそのままに、防御力をそれなりに上げた。

推定フォルティチュードは···おおよそ2.5。*3

新人たちの経験値サンドバッグとしては十分だろう。

初任務にしては苦しいだろうが······。

 

そして第三の脅威が、怪獣9号だ。

既存の、本来の道程を破壊する───。

 

 

それじゃア派手に暴れようカ

 

 

◆◆

 

 

市川レノ。

解放戦力30%の壁を越え、隊長クラスへと成長していく───その兆しを感じさせる、将来有望な隊員。

順当に行けばこのまま多数の余獣を討伐し、()()()()()実戦経験を積んだ上で無傷で帰還できただろう。

 

だが、そうはならなかった。

未知の脅威───知性を持った純製人型怪獣が出現したのだ。

 

 

あー。この余獣もダ。仕込んだ増殖器官が破壊されテる。なんでバレちゃッたのかなあ······

 

何か知ってます?()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人語を解する知能。

隊員の個人情報の所有。

そして───圧倒的な戦闘力。

“破裂する指鉄砲”はスーツのシールドを容易く貫き、細身だが解放戦力20%超の銃撃を受けても難なく耐えるタフネス。

 

これらを併せ持つ未曾有の難敵に、2人はなんと善戦していた。

 

 

「行くぞ!レノ!」

 

 

古橋伊春。

市川レノの同期にして、名門出の天才。

同じく将来有望な隊員。

 

彼から放たれた銃撃を9号が難なく避ける、が───地面に着弾した瞬間に発雷。

一時的に9号の動きが鈍る。

 

 

こりゃ動きにくい。まずハそちらを止めるか──

 

「(よく見ろ···もう何発ももらってタイミングは掴めてきてる!)」

 

 

市川に続き、古橋も“指鉄砲”を回避。

攻撃後の僅かな隙を突き発雷弾を9号の右足へ命中させ、動きを完全に止めた。

そして───

 

 

「今だレノ!!」

 

 

───市川がスーツの戦力を最大解放。

そして炸裂弾を連射!!

 

この時点では本人が知る由もないが、瞬間最大解放戦力は30%を超えている。

まともな怪獣であれば、これで終わりだ、が。

 

 

まあ、この時点ではこンなモノだよね

 

 

怪獣9号は······まだ終わらない。

 

 

うん。良くやッたけどこれで───()()()()万策尽キた感じかな

 

 

市川の渾身の一撃を“怪獣の死骸の壁”すら使わず、素であっさり耐えた。

 

 

君たちはまだ早かっタね。準備運動くらいにはなったかな。で、次───

 

───来たか······怪獣8号!!

 

 

 

 

 

第2戦、開始。

 

 

 

────────────────────────

 

*原作の“嬲り殺しムーブ”はしてないです。

 

 

 

*エリンギの生態

 

・脱皮する。

 

・分裂する。

 

・なンか訛っテる。

 

・しつこいから嫌われている。

 

「僕は嫌われていない。嫌われていないったら嫌われていないんだ。アンケートの結果を見てみれば分かるだろう。え·········エリンギ???」

 

*1
原因不明の器物破損等は多数確認されたが。

*2
アニメ公式サイトの“怪獣図鑑”によると、本来のフォルティチュードは7.1。

*3
本来のフォルティチュードは2.3。

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