よし、経験値サンドバッグになろう。   作:訥々

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四ノ宮功 後編

ヒカリさんと話すときの功さんの一人称は“俺”であるとします。*1

 

────────────────────────

 

これは夢だ。

“君”が生きているはずはないのだから。

 

「“防衛隊に入る”か······まさか自分からそんなこと言うとはね」

 

目の前には眠っている()()()()娘と、この世には居ないはずの妻がいる。

 

「······本当に、良かったのだろうか」

「んー?」

「防衛隊員以外にも、道はあるだろう」

「確かにね。私もちょっと複雑。とても危険な仕事だもの」

「この子は強くなる···()()()()()。だが···」

 

まだこんなに、小さかったじゃないか。

こんな小さな肩に、防衛隊の未来などという重りを載せるべきでは···なかったのかもしれない。

 

「きっと大丈夫だよ。キコルは強くなったもん。パパのおかげでね」

「俺は···“父親”として接する事が出来なかった。ヒカリ···君がいなくなった後の俺は······」

「自分でも分かってるでしょ?功くんは、心を鬼にしてこの子を鍛えたの。この子を死なせないために。

そして、その役目は引き継がれた。次世代が育ち、功くんが戦う理由は無くなった。だからこれからは──キコルのこと、めいっぱい甘やかしてあげてね、パパ!」

 

「···父親らしいことなど、何もしてやれなかった」

「それを言ったら、私だって何も出来なかったよ。たまに夢に出ていったくらい」

「えっ」

 

「“俺の夢にも来て欲しかった”って顔してるね?」

「············」

「はい図星。···分かってる。また夢で会えるよ。だから、もうそろそろ起きた方がいいんじゃない?大きくなったキコルが待ってるよ」

「ああ。それじゃあ···行ってくる」

「いってらっしゃい、功くん」

 

 

 

視界が、白く染まっていく──────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

『──先日に防衛隊司令部を襲撃した、コードネーム“怪獣9号”は依然として行方をくらませており──』

 

 

 

“かつての防衛隊最強が敗れた”。

 

この情報は民衆のパニックを避けるために秘匿され、防衛隊内部のみに共有された。

防衛隊員の中には彼に憧れて入隊した者も多く、今回の戦いが隊に──特に、彼を師として仰いだ鳴海弦と、娘である四ノ宮キコルに──与えた衝撃は非常に大きかった。

 

()()()9号が彼に止めを刺さず、ナンバーズ(識別怪獣兵器)のみを奪って逃走したのは不幸中の幸いだった。

彼はそのお陰で防衛隊最先端の治療を施され、僅か3日で腹部の傷も概ね快復するに至った。

しかしまだ意識は取り戻していない。

 

 

 

「よう」

「隊長···!」

 

彼の病室にいた四ノ宮キコルに、鳴海弦が声をかける。彼女は憔悴し······だがその目は、怒りと使命感で爛々としている。

 

「······すまなかった。僕が間に合わなかったから、功さんは深手を負った」

「ッ、そんなことは···私だって何も···!」

「情けない話だが、僕は···僕たちは、あの時何も出来なかった。だから“準備”をする」

「“準備”···?」

「そうだ。奴が引き起こすだろう群発災害を叩き潰すための準備······シェルターの増設や隊員の底上げ···やることは多いが、僕が重視してるのは主力の大幅強化だ

 

「───次にアイツと(まみ)えるまでに、お前を僕の次くらいに強くしてやる。喰らいついて結果を出せッ!」

「了!!」

「言いたいことはそれだけだ······じゃあな」

 

キコルに今後の方針と決意を表明し、最後にちらりと()()()()()()()()()長官を見た後、鳴海は病室を後にした。

 

「僕はお邪魔虫だろうからな」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

四ノ宮長官が意識を取り戻してから数週間後。

昼前の有明りんかい基地、修練場にて。

強化スーツを着込んだ四ノ宮キコルと東雲りんが、棒術の格闘訓練を行っていた。

 

「はあああぁぁぁ!!」

 

キコルが裂帛の気合いと共に踏み込み、まずは仕掛けた。多方面からの突きや薙ぎを繰り出すも、全ていなされ避けられる。

 

「(くっ、やっぱり間合いが読みにくい!···なら!)」

 

キコルが再び仕掛けた。

東雲の突きを多少強引に打ち払い、間合いを詰める。

横構えから、柄を押切るように水平に伸ばし打つ。

伸ばし打つ突きは、射程が伸びる代わりに通常よりも威力が低い。

とはいえ、鳩尾に直撃すれば確実に“効く”。

 

「(当たれ······!)」

「甘いよきこるん!」

 

当たる直前に東雲が大きく仰け反り、キコルの樫棒を蹴り上げた。

コーン···という乾いた音が響き、キコルの手から武器が離れる。

咄嗟に掴み取ろうとするも、その隙を見逃されるはずも無く······東雲の樫棒が、キコルの喉に当たる寸前で静止した。

 

「ふぅ···きこるんは武器に拘りすぎだね、もうちょい柔軟に行こうか」

「ッ······ありがとう、ございました」

「(とはいえ、もう少しで抜かされちゃうかもな、これは······)」

 

「おーい、まだ勝てないのか?その調子だと僕がこのゲームをクリアする方が早いぞ?」

「お前は仕事中にゲームするな」

 

キコルを煽った鳴海が、部下(副隊長)である長谷川エイジに蹴り飛ばされる。

鳴海にとっての長谷川は、かつての上司であり母親(オカン)のような存在だ。

そのため、いつまで経っても···隊長になった今でさえ、頭が上がらない。

···ちなみに、一部始終を目撃していたキコルと東雲は、毎度のことながら割とガチで引いていた。

 

「ったく、何度言えば分かるんだ······人前で訓練するのが恥ずかしいとか、お前は思春期のガキか

るっせー!それを言うんじゃねー!

「はあ···お前はもう言っても治らんか。···仕方ないから用件だけ伝えるぞ。四ノ宮長官からの呼び出しだ、長官室に行ってこい」

「功さんが?···分かった、すぐ行く」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「わざわざ僕を呼び出すとか、僕に何の用があるの?功さん」

「別に大した用じゃない。近々起こるだろう9号災害に備えろ···それを伝えたかっただけだ」

「9号災害に備えろ、ね···。心配しなくても、()()()は僕がキッチリ強くしてやりますよ」

「············頼んだぞ」

「話はそれだけ?なら僕はもう戻るよ」

「······ああ」

 

鳴海が長官室から退出し、大きな扉を閉める。

 

······四ノ宮功はナンバーズ(識別怪獣兵器)を奪取されたことにより、裡にあった“2号の力”を喪失。

戦闘力が激減し、9号を始めとした識別大怪獣との戦闘は、ほぼ不可能となってしまった。

 

「歯痒いな······」

 

6号の時は愛する者を守れず、9号を討伐することも出来なかった。

その後悔と無力感が、彼を苛む。

 

「(私には、もはや託す事しか出来ない。······どうか、この国の未来を──救ってくれ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

鳴海「そう言えば、ついさっき9号が東方司令研究棟に侵入したらしい」

キコル「え···!?」

鳴海「いや、実害は殆ど無かったそうだ。何故か10号を覚醒·強化させただけですぐさま逃走した」

キコル「10号を覚醒···強化、って······」

鳴海「ああ。あの野郎、碌でもねえことを企んでやがる」

 

 

 

???「解放戦力が100%を超えるのは浪漫よな、◯◯動きます」

 

*1
捏造設定

四ノ宮長官は?

  • イケオジ
  • 隠れ子煩悩
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