「立川地区に、怪獣9号発生!!」
立川に──亜白ミナが孤立している地点に9号が発生したという急報を受け、
彼女の本質は“砲撃特化型”であって、近接格闘が得意なわけではない。少なくとも、9号と単騎で渡り合うことは絶対に不可能だ。
「ミナ······!」
『8号。いや日比野カフカ。君は、ここには来れナいよ』
9号の“念話”がカフカに届く。
なぜ9号は自分の本名を呼んだのか?
識別大怪獣は全滅したのに、なぜ
考える前に、片方の答えは出た。8号の“力”が、巨大な怪獣の反応を
「都内複数箇所に未確認の怪獣群が発生!新宿、練馬、目黒、調布!フォルティチュード──
おそらくは
「こんな数の大怪獣を処理する力なんて···もう
疲弊しきった一人の一般隊員が思わず漏らしたこの言葉······口にせずとも、大多数の隊員が考えていたことだろう。
大量の怪獣──それも本獣クラス──だけでなく、識別大怪獣すらも5体倒した。
余剰戦力などあるはずもない。
隊長格を含む全員が消耗している。
『いつだって、俺が隣にいる』
『ありがとう──2人なら怖くないね』
絶望の最中に思い出すのは、かつての決意。
自分が防衛隊員を志す理由となった出来事。
「ミナのところに、行かなきゃなんねーんだ······
そこをどけぇぇ──!!」
この怪獣群は人語を理解しない。
故に何処までも無慈悲だ。
顔面にぽっかりと空いた穴にエネルギーを集結させ、射出。一斉に破壊を撒き散らす。
「やはり8号、君はここに来れナい。何故なら君ハ──見捨てることが出来ないかラだ」
この怪獣群は本能のままに破壊と絶望を蔓延させる。
逃げ遅れた人々を──シェルターに避難した人々を──そして、傷つき疲弊した隊員たちを──一切の容赦なく蹂躙する。
経験を積み、“8号の身体”を十全に活用できる今の日比野カフカならば、一撃で核を砕く事が出来る。
それでも、時間稼ぎには十分だ。
9号ならば──亜白ミナを戦闘不能ないし殺害することは容易すぎる。
◆◆
9号の背後にある5階建てアパートが、円形に大きく撃ち抜かれた。亜白ミナの銃撃によるものである。
「素晴らシい···ハンドガンですらその威力とは···」
「今ここで、お前を討伐する」
「うンいいね···それじゃあ、これならどウかな」
9号が左手の五本指をミナに向け──“指鉄砲”を連続で撃つ。ミナはその衝撃の余波で飛ばされるが、側転してアクロバティックに着地。
即座にハンドガンで攻撃し返す。
これに対し9号は──
「Gaaaaaaaaaaaa!!!」
──咆哮をもって応え、相殺した。
「やはり君の砲撃性能は素晴ラしい。だが、特化型の宿命か···距離を詰めてしまえば──」
「──並の隊長に劣る」
「ッ!!」
彼女の目で追えないほどの超スピードで、彼女の背後に9号が回り込む。
僅かに遅れて気づいた彼女が振り向きざまにハンドガンを撃つも、あっさりと避けられる。
「無駄だよ」
極太の右腕で首を掴まれ、頸動脈を圧迫される。
頸動脈は首の外側側面に通っている構造上、防衛隊の強化スーツがあっても攻撃が通りやすい。
圧迫によって酸素の供給を絶たれれば、簡単に失神──または死亡する。
いくら第三部隊隊長と言えども、人間だ。
······9号の怪力によって締め上げられた彼女は、数秒後にその意識を閉じた。
「······堕ちたか。やはり、実際の命とは脆く──儚い」
彼女が気絶したことを確認し、9号は右腕を離す。
亜白ミナはどさり、と音を立てて倒れ伏す。
「──防衛隊の“司令”たちよ。識っているだろうが、君たち人類は識別クラスの大型怪獣に滅法弱イ。亜白ミナという“個人”に依存していては、そこに付け込まれる。もっと“危機感”を持つべキだったな」
9号にはアドバイスをする余裕さえあるのに、人類側は満身創痍、戦線の維持が精一杯だ。
この状態で亜白ミナすらも失えば、東方戦線は根本から崩壊するだろう。
日比野カフカも、そのことは分かっている。
彼女の“力”を実際に見た人間の一人だから。
それでも───。
「注意をこちらに引きつけろ!!」
「市民を攻撃させるな!!」
文字通り、身を削ってでも戦う
「こん、なの······!」
見殺しに出来ない。
「哀しき人間の性だね······君は──君たちは、切り捨てることが出来ナい。故に一番大切なモノを失う」
そう言うと9号は跪き、仰向けになった亜白ミナの額に人差し指を添える。
「精神攻撃を使えるのハね、15号だけじゃなイんだよ」
「9号ォォ!!やめろおおぉおおぉおぉおぉおぉ!!!!!」
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*なお、ガチで精神攻撃をするつもりは無い模様。
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