よし、経験値サンドバッグになろう。   作:訥々

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群発災害②

「立川地区に、怪獣9号発生!!」

 

立川に──亜白ミナが孤立している地点に9号が発生したという急報を受け、日比野カフカ(怪獣8号)、保科宗四郎、鳴海弦は一斉に駆け出した。

 

彼女の本質は“砲撃特化型”であって、近接格闘が得意なわけではない。少なくとも、9号と単騎で渡り合うことは絶対に不可能だ。

 

 

「ミナ······!」

 

8号。いや日比野カフカ。君は、ここには来れナいよ

 

 

9号の“念話”がカフカに届く。

なぜ9号は自分の本名を呼んだのか?

識別大怪獣は全滅したのに、なぜ()()()()()()()()()()()()などと言うのか?

 

考える前に、片方の答えは出た。8号の“力”が、巨大な怪獣の反応を()()()感知したのだ。

 

 

「都内複数箇所に未確認の怪獣群が発生!新宿、練馬、目黒、調布!フォルティチュード──8.0(大怪獣)!?」

 

 

おそらくは14号の異能(空間転移)に依るものだろう···巨人型の大怪獣の群れが空から()()、現れた。

 

 

「こんな数の大怪獣を処理する力なんて···もう俺達(防衛隊)に残ってない···!」

 

 

疲弊しきった一人の一般隊員が思わず漏らしたこの言葉······口にせずとも、大多数の隊員が考えていたことだろう。

大量の怪獣──それも本獣クラス──だけでなく、識別大怪獣すらも5体倒した。

余剰戦力などあるはずもない。

隊長格を含む全員が消耗している。

 

日比野カフカ(怪獣8号)はまだ体力はあるが···如何せん、相手の数は余りにも多い。

 

 

『いつだって、俺が隣にいる』

『ありがとう──2人なら怖くないね』

絶望の最中に思い出すのは、かつての決意。

自分が防衛隊員を志す理由となった出来事。

 

「ミナのところに、行かなきゃなんねーんだ······

そこをどけぇぇ──!!

 

 

この怪獣群は人語を理解しない。

故に何処までも無慈悲だ。

顔面にぽっかりと空いた穴にエネルギーを集結させ、射出。一斉に破壊を撒き散らす。

 

 

やはり8号、君はここに来れナい。何故なら君ハ──見捨てることが出来ないかラだ

 

 

この怪獣群は本能のままに破壊と絶望を蔓延させる。

逃げ遅れた人々を──シェルターに避難した人々を──そして、傷つき疲弊した隊員たちを──一切の容赦なく蹂躙する。

 

経験を積み、“8号の身体”を十全に活用できる今の日比野カフカならば、一撃で核を砕く事が出来る。

それでも、時間稼ぎには十分だ。

9号ならば──亜白ミナを戦闘不能ないし殺害することは容易すぎる。

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

9号の背後にある5階建てアパートが、円形に大きく撃ち抜かれた。亜白ミナの銃撃によるものである。

 

 

素晴らシい···ハンドガンですらその威力とは···

 

「今ここで、お前を討伐する」

 

うンいいね···それじゃあ、これならどウかな

 

 

9号が左手の五本指をミナに向け──“指鉄砲”を連続で撃つ。ミナはその衝撃の余波で飛ばされるが、側転してアクロバティックに着地。

即座にハンドガンで攻撃し返す。

 

これに対し9号は──

 

 

Gaaaaaaaaaaaa!!!

 

 

──咆哮をもって応え、相殺した。

 

 

やはり君の砲撃性能は素晴ラしい。だが、特化型の宿命か···距離を詰めてしまえば──

 

──並の隊長に劣る

 

「ッ!!」

 

 

彼女の目で追えないほどの超スピードで、彼女の背後に9号が回り込む。

僅かに遅れて気づいた彼女が振り向きざまにハンドガンを撃つも、あっさりと避けられる。

 

 

無駄だよ

 

 

極太の右腕で首を掴まれ、頸動脈を圧迫される。

頸動脈は首の外側側面に通っている構造上、防衛隊の強化スーツがあっても攻撃が通りやすい。

圧迫によって酸素の供給を絶たれれば、簡単に失神──または死亡する。

 

いくら第三部隊隊長と言えども、人間だ。

······9号の怪力によって締め上げられた彼女は、数秒後にその意識を閉じた。

 

 

······堕ちたか。やはり、実際の命とは脆く──儚い

 

 

彼女が気絶したことを確認し、9号は右腕を離す。

亜白ミナはどさり、と音を立てて倒れ伏す。

 

 

──防衛隊の“司令”たちよ。識っているだろうが、君たち人類は識別クラスの大型怪獣に滅法弱イ。亜白ミナという“個人”に依存していては、そこに付け込まれる。もっと“危機感”を持つべキだったな

 

 

9号にはアドバイスをする余裕さえあるのに、人類側は満身創痍、戦線の維持が精一杯だ。

この状態で亜白ミナすらも失えば、東方戦線は根本から崩壊するだろう。

 

日比野カフカも、そのことは分かっている。

彼女の“力”を実際に見た人間の一人だから。

それでも───。

 

 

「注意をこちらに引きつけろ!!」

「市民を攻撃させるな!!」

 

 

文字通り、身を削ってでも戦う隊員(仲間)たちを日比野カフカは───。

 

 

「こん、なの······!」

 

 

見殺しに出来ない。

 

 

哀しき人間の性だね······君は──君たちは、切り捨てることが出来ナい。故に一番大切なモノを失う

 

 

そう言うと9号は跪き、仰向けになった亜白ミナの額に人差し指を添える。

 

 

精神攻撃を使えるのハね、15号だけじゃなイんだよ

 

「9号ォォ!!やめろおおぉおおぉおぉおぉおぉ!!!!!」

 

 

 

────────────────────────

 

*なお、ガチで精神攻撃をするつもりは無い模様。

 

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