よし、経験値サンドバッグになろう。   作:訥々

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群発災害③/怪獣9号、討伐します。

 

「なに?···ここはどこ?」

 

 

地下洞窟。9号の居城──を模した風景。

亜白ミナは、幼年時代の姿で立ち尽くしていた。

 

 

「私···何か大事なことを忘れてるような···」

 

亜白ミナ

 

 

彼女が振り返るとそこには、岩でできた歪な椅子に背を預ける、一人の男がいた。

 

 

「おじさん、誰?」

 

ん?···あー、ちょッと記憶が飛んでるんダね

 

この姿なら分かるかな

 

 

そう言うと、男の身体がボコボコと膨れ上がり、悍ましい変形をしていく。

 

 

「あ······あ···!?」

 

 

その男の姿を見た瞬間、激しく頭が痛む。

それと同時に頭が冴えていき、記憶が還ってくる。

 

 

「お前は······怪獣9号!!

 

君の救けが来るマで、多分あと少し···その間、僕の話を聞いてくレないか?

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

「8号···!頼む、行ってくれ!!俺達が死んでも代わりはいる!!亜白隊長を失うわけにはいかない!!」

 

「(そうだ行かなきゃ···ミナの所へ···!)」

 

 

他人を見捨てない──それは間違いなく、英雄の資質だ。しかしそれでは──“一番大切な人を失う”。

 

彼は分かっている。

戦況も共有されている。

ミナが9号によって倒されたことも、全部。

今すぐにでも行かなきゃいけない···だけど!!

 

彼には英雄の資質があった。哀しいほどに。

誰にも頼らず、一人で背負おうとしてしまう。

だからこれからの出来事は全部、彼の自業自得なのだろう···。

 

“8号の力”が、巨大な──今戦っている相手よりもずっと強い怪獣の存在を感知した。

 

 

「(嘘だろ、何だよこのデカい反応···!?これ以上何が来るんだ───)」

 

 

次の瞬間、目の前の怪獣群が──()()()

 

 

「(氷結···冷気!?てことは···)」

 

「先輩、行って下さい。ここは俺が引き受けます

 

「市川!!」

 

 

日比野カフカは誰にも頼らず、全てを一人で背負おうとする。そんな彼だからこそ、彼のために、市川レノは強くなった。

かつての厄災たる、識別怪獣兵器6号をその身に宿して戦えるほどに。

これもまた、ある種の自業自得。

日比野カフカは、独りじゃない!

 

 

「俺はまた、一人で戦おうとしてたのか······

目ぇ覚めたぜ。ここは頼んだ、相棒!!」

 

「はいっ!!」

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

これはアくまでも仮定の話だが、僕が元々一人の人間だったとしたら、君はどんな行動をとる?

 

「何が言いたい?そのような有り得ない仮定など、何の意味も無いだろう」

 

いや···8号と他の怪獣の違いはナんだろうな、と思ってね

 

「日比野カフカは人間であって怪獣ではない。貴様らと同じ括りで捉えるなッ!!

 

 

 

対話をしている間も、亜白ミナは9号にハンドガンを向け続ける。そこに一切の油断はない。

 

 

 

ふむ···では、人と怪獣が共存出来る可能性はあるト思うかい?

 

「·········怪獣が人を襲う限り、共存は絶対に不可能だろう」

 

怪獣が人を襲わなくなレば、共存出来る可能性はある、といウことかな?

 

「なんだ?なんなんだお前は···何が言いたい?高い知能を持つお前さえもが人間に牙を剥いているんだ、人と怪獣は、どうあっても分かり合えない

 

 

 

亜白ミナの怒りは、ごく正当なものだ。

怪獣が──9号が余りにも多くの苦しみを与えている以上、同じように“正当な怒り”をもって“報復”する人類が大多数だろう。

 

やはり、人と怪獣の和解は不可能。

両者にとってこの対話は、ひたすらにその認識を深める結果となった。

 

 

 

亜白ミナ、ありがとう。君のおかげで私もようやく覚悟が決まった。私は、“(滅び)の道”を歩む

 

 

 

彼女を閉じ込めていた精神世界がひび割れていく。

目覚めの時が近いのだろう。

 

 

 

「待っていろ、()()9号。お前は私が撃ち抜き、私()()が討伐する」

 

やれるものならやってみろ

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

「ミナ───!!!」

 

 

裂帛の気合をもって繰り出した日比野カフカ(8号)の一撃が、9号の腹部に命中。

9号は大きく吹き飛び、大量の瓦礫に埋もれる。

 

 

 

「カフカくん」

 

「起きたか、ミナ───」

 

「嘘つき」

 

 

 

ようやく救けられた幼馴染からの第一声がこれである。カフカは「ええ···」って思った。

 

 

 

「すぐに追いつくって、防衛隊に入るんだって言ってたのに···一生来ないかと思ってた」

 

「···すまねえ」

 

「屋上で話したときも、私の力当てにしてなかった。一人でなんとかするつもりだったでしょ」

 

「う······ああ。それじゃダメだって、市川が分からせてくれた」

 

「ふーん。市川がね···ふーん」

 

「ごめんな。遅くなった上に俺、ガキの頃に思ってたのと違う、こんな姿でよ」

 

「あの頃に思い描いてた大人になんか、私もなれてないよ。───それでも、進まなきゃいけない

 

 

 

そうして何度目かの“決意”を固めた瞬間、9号に覆い被さっていた大量の瓦礫が轟音と共に吹っ飛び、9号が再び姿を現した。

 

 

 

「いこう、カフカくん」

 

「ああ」

 

「「怪獣9号、討伐します」」

 

 

 

────────────────────────

 

*“岩でできた歪な椅子に背を預ける、一人の男”というのは、9号が前世を模した姿です。

日比野カフカの姿ではありません。

 

次回、最終話。

 

9号は好きですか?

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