ユニ様に仕えます   作:Mr.♟️

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約束

 

「ただいま戻りました」

 

嫌味抜きで優秀な術士だった。幻覚から抜け出して家に帰るまでに1時間もかかるなんて思いもしなかった。とりあえず、姫様が襲撃された様子はない

 

「ケガはないようですね」

 

「ケガをさせられたなら、僕は血まみれですよ。返り血で」

 

目的が僕でも姫様でもないとなると、別の誰かと間違われたか。もしくは運悪く巻き込まれた。恐らく後者だろう。前者であるなら、僕か姫様のどちらかが襲撃を受けていないと辻褄が合わない

 

「しばらくは外出を控えた方がよさそうですね」

 

「気にしなくていいんじゃないですか。なんたって、姫様の護衛はこの僕ですよ?」

 

気は進まないけど、術士を探すか。となれば情報屋に依頼する必要がある。ああ、幾ら吹っかけられるか考えると憂鬱だ。あれだな、やっぱり探さなくていい気がしてきた

 

「その頼りになる護衛が術士に惑わされ、反撃もできずに家に帰ってきているのですが」

 

「姫様の身の安全を優先したんですよ。炎さえ使ってよければ、5分で終わらせれましたよ」

 

アリアさんが使うなって言うから

 

「未知の力を使わせるわけにはいきません。お母様も私も同じ考えです」

 

「制御できますよ。不安なら、武器を使わせてくれれば周りに被害は出しませんし。アリアさんも姫様も心配性ですね」

 

「それを使えばあなたに謂れない風評がたつことは目に見えてます。武器を使うことも許可できません」

 

「あれもダメ、これもダメ。しまいにはグレますよ」

 

当然、武器も炎もいざとなれば使う。日本ではそのいざという時がこないため使えない。護衛なのに武器を使ったらダメって本末転倒だ

 

「グレたらリーゼントにしないとダメですからね。日本の法律で決まってます」

 

「勝手な法律作らないでください。リーゼントなんてダサい髪型、風紀委員くらいしかしませんから」

 

「そうですか?男らしくていいと思いますよ」

 

「絶対にやらないですから。リーゼントにするくらいなら、そこら辺の泥水でも飲んだ方がマシです」

 

「泥水を飲むんですか?あまりオススメしませんが、ゼブルがそれを望むなら止めません」

 

「いつの間に腹黒姫様に進化したんですか。野猿と太猿の影響ですね。これだから猿山の大将も信用出来ない」

 

お茶目な一面が最近は頻繁に出すぎじゃないですか。まあでも、いい変化だと思いますよ

 

「γの部下たちですね。3人はよく一緒にいると、前にゼブルが話してくれた気がします」

 

「猿山の子分と大将だって、僕は話したんですけどね。記憶を捏造しないでください」

 

「そんなことを言って、またγに怒られますよ」

 

「γの血糖値があがるだけですから、どうでもいいですよ」

 

「γの健康を心配してお酒を飲ませないようにしているのに、ゼブルは照れ屋ですね」

 

え?なんですか、そのデマ。そんなデマを流すなんて、流しているやつはロクな人間じゃない

 

「違いますから。ジッリョネロの守護者がアル中なんて、格が下がるじゃないですか。僕のために止めているんです。で、そのデマは誰から聞いたんですか」

 

デマを流す悪人を許してはいけない。もしかしたら、今後姫様の悪評を流す可能性だってある。そう、これは私情ではなく姫様のための行動。断じて私情ではない。私情で人を罰したら怒られるからね

 

「お母様から聞きましたよ?お母様がゼブルに聞いた時は『ジッリョネロでは安酒しか飲めないのか、なんて噂をされたくない』と言っていたそうですが。不思議なことに理由が違いますね?」

 

いつになったら優しいエンジェル姫様に戻るんだろうか。くっ、γの影響がここまで強いとは。一生の不覚也

 

「何を考えているかよく分かりませんが、違いますからね」

 

「いつの間にエスパー姫様になったんですか。心を読むなんて、プライバシーの侵害ですよ」

 

人権侵害だー

 

「心を読ませるなんてセクハラですよ?まさか、ぜブルがあんなことを考えているなんて」

 

「いやいや、想像上のゼブルくんは何を考えてるんですか。姫様って案外ムッツリですね」

 

「!!!!!?女性にそんなことを言ってはいけません!!」

 

ひぇ、怒られた。理不尽だ

 

 

 

 

 

 

 

「術士を探さないんですか?」

 

「実害を与えられたわけじゃないですからね。姫様が排除してほしいなら探しますけど」

 

「いえ、大丈夫です。そのおかげでゼブルがこんなに早く帰ってきましたから」

 

「....γ式口説き術をいつの間にマスターしたんですか。アイツはロクなことをしませんね」

 


 

「姫様姫様、今日のお昼ご飯はこれなんてどうですか?こっそり買っておいたんですよ」

 

「カップラーメンですか。たまにはいいかもしれま...なんですかこの『世界へ羽ばたけ、カップヌードル〜日本が誇る懐石料理風味〜』明らかに地雷感のあるカップラーメンは」

 

「姫様知ってますか?これにお湯を入れて3分放置すれば、懐石料理が出来上がるんですよ!!健康に悪そうだし、パッケージも安っぽいし、今までは気にもとめてませんでしたが、3分で懐石料理が出来上がるなんてすごくないですか!日本の食に関する執念が生み出した最高の食事ですよ!」

 

たったの3分で懐石料理が出来上がるなんて、改めて口に出しても信じられない。しかし、僕はこの国の食に関する拘りを知っている。だからこそ、この嘘のような話を疑わない!3分で懐石料理なんて、テンションが上がる!

 

「現実を教えてあげるのが優しさでしょうか。それとも、このまま3分間は楽しませてあげるべきでしょうか?」

 

「?よくわかりませんが、姫様の分もお湯入れときましたよ」

 

「....!...!?」

 

何かを無言でアピールされている。頬をつついたら空気が抜けた。なにこれ、可愛い

 

「仕方ありませんね。苦痛も共に味わえば思い出になります。今回はゼブルの勘違いに付き合ってあげます」

 

「どうして、そんなに不吉なことを言うんですか?」

 

「ゼブルの口に合わない気がしているだけです」

 

「心配しなくとも、僕は懐石料理が好きですよ」

 

「こういう系統の食べ物は、元となった料理が好きであるほど好みにくいといいますか、そもそも何故カップラーメンを知らないんですか」

 

「恥ずかしながら、僕が食べるものじゃないと思ってました。ですが、これが懐石料理に化けるなら話は別です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......なんですか、この明らかに美味しくなさそうなラーメンは。僕の懐石料理はどこに?」

 

「大事なのは味です」

 

「いや、そうじゃなくて、僕の懐石料理はどこに?」

 

見当たらない。美味しくなさそうな麺しか見えない

 

「現実を見なさい。カップラーメンは懐石料理にはなりません」

 

「う、嘘だ...確かに懐石料理って書いてましたもん」

 

「風味と小さく書かれているでしょう。こんな勘違いをするのは、ゼブルくらいだと思います」

 

「──この会社、潰してきます」

 

「私情で動いたらダメです。メッですよ」

 

「赤ん坊扱いしてます?」

 

「和ませようと思って」

 

「姫様じゃなかったら血祭りに上げてますからね」

 

「思ったことはそのまま口に出しなさいって、ゼブルが言ったじゃありませんか」

 

「いっ...てますね。昔の僕は余計なことを言ったみたいです」

 

「作った以上は食べるしかありません。ゼブル、口を開けてください。アーンしてあげますよ、アーン」

 

「いやいや、レディーファーストって言葉がありますから。僕が食べさせてあげますよ。ほら、ちっちゃい口を開けてください」

 

明らかに美味しくない匂い。全然食べたくない。姫様と一緒にいなかったら捨ててるレベル

 

「風邪を引いた時に私に甘えたこと、守護者達には内緒にしてあけます。はい、あーん」

 

「姫様が怖い夢を見て1人でトイレに行けなかったこと、まだ誰にも言ってませんよ。ほら、口を開けてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二度とカップラーメンなんて買いません。やっぱり、姫様の手料理が1番です」

 

「そう言いながら、よく食べましたね。偉いですよ。ご褒美に、ゼブルが隠し持っている高級プリンを食べましょう」

 

「なんで知ってるんですか」

 

端っこの方に隠しておいたのに。僕が買ったものを食べるだけだから、ご褒美ではないのでは?

 

「隠し場所が甘いです。冷蔵庫にある物で、私が把握してないものはありません」

 

「半分こですからね」

 

「それでこそ私の護衛です」

 

「もっと感動する場面で言ってもらっていいですか?」

 

万が一を考えて、今日からはしばらく引きこもり生活か。食料がなくなっても、最悪ネットで注文すればいい

 

「ゼブルが選んだものにハズレはありませんからね。楽しみです」

 

「たった今、ハズレを引いたばかりですけどね」

 

って、聞いてない。楽しそうでなによりです。あ、ちょっと、半分こですからね。全部食べないでくださいよ

 


 

『なんですか、僕の声を聞かないと安心して眠れないんですか?ストーカー並に気持ち悪いですよ』

 

数ヶ月の間は術士の襲撃を警戒したが、何も無かった。既に僕と姫様は引きこもるのをやめて、健康的な生活を送っている

 

『相変わらず可愛くねぇガキだ。アリアが喜んでるぜ、お前がマメに姫様の写真やら動画を送ってくれて嬉しいってな』

 

『おっと、まさか姫様に嫉妬してます?百戦錬磨のナンパ師γ様が子どもに負けるなんて最高に面白いですね』

 

『僕は微笑ましい家族愛は眺めたくなる質でな。嫉妬なんかしねぇよ』

 

『えぇー?ほんとうにござるかぁ?』

 

『いつからお前は侍になったんだ。あんまり舐めた口聞いてると、泣かせるぞ』

 

『電話越しに?』

 

『あーあー、ウザってぇ。お前の茶番に付き合ってたら、いつまで経っても本題に入れねぇ』

 

『γの茶番の間違いだ』

 

『γさんだ、クソガキ』

 

『で、今日はなんの用?』

 

週一で連絡してくるんだから、この暇人は

 

『──()()()イタリアに帰国させろ』

 

『ってことは、姫様をお披露目するってこと?』

 

守護者然り、他のファミリーのメンバー達にも。そして、姫様が表舞台に立つということは、アリアさんが表舞台から──舞台から降りることを意味する

 

『ああ、そうだ。ようやく、ようやく僕たち守護者も姫様とご対面ってこった』

 

『あったことも無い女の子を姫様って呼ぶの頭がおかしいと思う』

 

へんたいふしんしゃさんめ

 

『喧嘩売ってんのか?てめぇが姫様ってよんでっから、俺らもそれに習ってやったんだろ』

 

『とりあえず、すぐに姫様とそっちに戻ります。最期に親子で会話する時間くらいはあってもいいでしょ』

 

『誰がお前も戻って来いって言ったよ。お前は姫様を送ったあとも、並盛に残ってボンゴレを監視してろ』

 

ボケてんのか、このボケ。姫様の護衛として渡航した僕が姫様がいない日本に残るって、頭沸いてる。さっさと病院に行け

 

『ボケてんのか、クソジジイ』

 

『まあ、お前の気持ちも分かる。今回は俺もお前の意見寄りだ』

 

『僕だって、アリアさんの死に目に会うくらいの権利はあると思いますけど』

『俺もそう思う。が、これもアリアからの命令だ。必ずなにか意味がある』

 

『──ま、いいですよ。元々僕は部外者ですしね』

 

姫様ともこれでお別れか。長かったような短かったような、割かし充実した日々を過ごしてきたなぁ

 

『バカなこと言うな、バーカ。そんなんだから、お前はいつまで経ってもガキなんだよ、クソガキ』

 

『僕のことはどうでもいいとして、しっかり姫様のこと支えてくださいよ。いきなり組織のトップなんて大役を担うことになるんですから。本当に、頼みますよ』

 

そのために姫様の動画や写真を守護者達に送り続けた。知らない人間をボスと仰ぐわけじゃない。全く情報のない知らない子どもを支えるわけじゃない。しっかり支えろよ、お前たち大人が。ボスになるとはいえ、姫様は年相応の子どもなんだから

 

『頼まれるまでもねぇ。アリアの娘だ、何があっても支えてやるよ』

 

『あんたがそう言うなら信じます。僕の信頼、裏切らないでくださいね』

 

『【電光のγ】の名前にかけて、必ず姫様を支える。お前は余計な心配せずに、残りの期間任務をこなせ』

 

『りょーかいです。短い間でしょうけど、残りの期間頑張りまーす』

 

アリアさんが亡くなったら、僕は自由の身。ジッリョネロファミリーとは関係の無い、唯の1人のヒットマン。それがアリアさんとの約束だから

 

『ったくよ、アリアもバカとバカな約束したもんだ。残っても誰も文句言わねぇのによ』

 

泣かせてやろうか?人の事バカバカ言いやがって。まあ、多分これが最後だから見逃してあげますか

 

『姫様のこと、本当によろしく頼みます。信じてますから、γ()()()

 

『──ああ、任された』

 

 


 

私とゼブルは空港にいる

 

「本当に、ついてこないんですか」

 

ゼブルからイタリアへの帰国指示を聞いた時、お母様の寿命が長くないことを察した。それはつまり、私がジッリョネロファミリーのボスになるということ。悲しみと同じくらい、大きな重圧が背中にのしかかってきました

 

「このまま日本に残りますよ。アリアさんからの命令もありますしね」

 

「ですが、あなたは私の護衛です。最後まで私を守り抜く義務があるはずです」

 

お母様が何を考えているのか、私には分からない。ゼブルは掛け値なしに強く、絶対に裏切らない人間。そんな人を、わざわざ日本に残す意味がわからない

 

「護衛の任務は姫様が飛行機に乗るのを見届けたら終わりです」

 

「でも、守護者としてボス(お母様)の娘である私を守る義務があるはずです」

 

「守護者は僕以外にもいますから。むしろ、イタリアには僕以外の守護者全員いますし。困り事があれば、γを遠慮なく使ってください」

 

ここで別れれば、ゼブルがどこか遠くに行ってしまう気がする。そんな予感がする

 

「私は、あなたを頼りたいんです。困った時に相談にのってくれるのも、一緒に悩んでくれるのも、あなたがいいんです」

 

長い時間を共に過ごした。もしかすると、人生で1番長くいるのはゼブルだったかもしれない。そう思えるくらいには、同じ時間を共有した。当たり前のように隣にいてくれる人。それがゼブルだった

 

「んー、まるでプロポーズですね。大丈夫、僕がいなくても守護者たちが姫様を支えてくれます。それに、本当に困った時は呼んでくれれば駆けつけますから」

 

「困ってから呼ばないと来てくれないんですか?」

 

「あれですよ、独り立ちってやつ。でも、呼んでくれれば海の中マグマの中、森の中宇宙の果てまで、どこまでも助けに行きますから安心してください」

 

「腑に落ちませんが、分かりました。ゼブルが私に同行する気がないということは」

 

「僕が居なくても、姫様は大丈夫ですよ」

 

「──約束ですよ」

 

「?」

 

「私が呼んだら、宇宙の果てでも絶対に来てくださいね」

 

「僕の誇りにかけて、約束します。身体には気をつけてください、姫様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──いずれまた、会いましょう」

 

離陸する飛行機の席に座る私の隣には、いつもいた少年の姿はなかった

 

 


 

「僕と君で、一世一代の大勝負をしよう。この大博打に勝つことが出来れば、呪いの解呪に一歩近づくんだ!もちろん、僕だけじゃなくて、アリアからユニに引き継がれた呪いだって!!」

 

「──協力しよう、()()()()

 

 

 

 

 

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