東方奴像劇 ~幻想入りする奴ら~   作:オチンギンデカ男

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紅魔館忍び込む奴 その1

 ここは「幻想郷」。

 忘れられた者たちの最後の楽園。

 

 巨大な結界に守られたこの地は、完全に外界との接触を絶っている。

 しかし時折──この地に認められたのか、或いは気まぐれか、果ては力づくか──とにかく何かしらの要因で外界の者たちが幻想郷に迷い込む事がある。

 

 

 その現象を、この地の者たちは「幻想入り」と呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 広大な山と森に囲まれた静謐な巨大湖、「霧の湖」。

 そのほぼ中心にある小島には、真紅の洋館「紅魔館」──引いては恐るべき吸血鬼「レミリア・スカーレット」の根城が建っている。

 

 凡人が館に迷い込み、彼女と出会ってしまったのなら、出来る事は彼女の機嫌が良い事を祈るだけ。

 さもなくば、自分の運命を呪いながら死ぬだけ。

 

 

 

 今日も今日とてこの紅魔館の一角にある窓辺に、一人の魔女「霧雨 魔理沙」が箒に乗って近寄った。

 彼女は「普通の魔法使い」だが、この館にとって非凡な存在だ。

 故に、こう言った暴挙を取る事も出来るし、仮にバレたとしても呆れられるだけで許される。例外はあるが。

 

 

「よぉーし……まずはフェーズワン、門を突破に成功。まぁこれは成功率百パーだからあってないようなもんだな。問題はフェーズツー、『窓から入る』だが……」

 

 

 窓の鍵は開いていた。

 

 

「全然成功。んじゃっ、お邪魔しやすぜーぃ」

 

 

 箒からピョンっと飛び降り、窓から館内に侵入。得意げに鼻を鳴らす。

 

 

「よしよし……次はフェーズスリー、『頑張って図書館に行く』。何回入ってもこの屋敷、迷っちまうからなぁ……」

 

 

 延々と続く真っ赤な廊下を、屋敷のメイドらに注意しながら抜き足差し足で進む魔理沙。

 少し扉の開いた部屋の前を通った時、そこから漏れる男の声を聞きつける。

 

 

「……ん? 男の声?……紅魔館って基本、女ばっかだよな」

 

 

 

 奇妙に思った魔理沙は、その扉の隙間から中を覗いた。

 そこは客間のようだ。中では声の主である男が中腰で、

 

 

「あ〜〜道に迷ってしまったぁ〜〜どうしたらどうしたらいいんだぁ〜〜」

 

「え。なにやってんだアレ」

 

 

 ドン引きする魔理沙。

 すると部屋にいたもう一人の男が、その中腰の彼に話しかけた。

 

 

「どうしたんですかっ?」

 

「あっ、親切な人っ! 実は病院を探しているんですー」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

 

 途端に二人一緒に声を揃えて踊り出す。

 

 

「「右見てライっ。左見てレフト。上見てアップ。下見てダウン」」

 

 

 対象の方向に腕を差し出す。最後は両指で顔を指差し、

 

 

「「イッツ・マイ・フェ〜イス!」」

 

「なんでやねーん!」

 

 

 病院を探していた男がツッコむ。二人はどうやらお笑いコンビのようで、彼がツッコミのようだ。

 

 

「病院を探しているんですよ!」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

 

 ボケにそう宥められると、また一緒に足踏みしながら踊り出す。

 

 

「「後ろに下がってバック! 前に進んでウォキ〜ン! 走って走ってランニ〜ン! イッツ・マイ・ウェ〜イ!!」」

 

「なんでやねーん!」

 

 

 またツッコミがツッコむ。

 

 

「病院を探してるんですよ!」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

 

 今度はまた二人とも両腕を広げて、

 

 

「「平行直角また平行、縦バージョン。平行直角また平行、角度を狭めてパンパパン」」

 

「なんでやねーん!」

 

 

 そしてまたツッコむ、ツッコミ。

 

 

「病院を探しているって言ってるのにーっ!」

 

「実は僕、病院の行き方分からないんですよ」

 

「分からへんのかい! もうええわ!」

 

 

 最後は二人一緒にコンビ名を言いながら決めポーズ。

 

 

「「タッチタッチ、あなたにタッチ。タッチワゴンでしたありがとございましたーっ!」」

 

 

 お辞儀の後コントを終えると、ツッコミの方は息を吐いてソファにドカッと座り込む。

 一連の流れを見ていた魔理沙は、首を傾げながら興味深そうな笑みを浮かべていた。

 

 

「おー。なんか変なのやってるなぁ。なんだアレ。雨乞いかなんかかな?」

 

 

 彼女はどうやらこれがお笑いのコントだと気付いていないようだ。

 ソファに座っているツッコミが、部屋を見渡しながら話し始める。

 

 

「あー……もうここに来て三日やけど、全部真っ赤やから落ち着かんなぁ」

 

「せやなぁ。目ぇ悪くなりそうやわー」

 

 

 ボケも同意し、テーブルに置いていたノートパソコンを弄りながら、

 

 

「せやけどどんな場所でも、求められてる以上は最高のパフォーマンスせなアカンからな」

 

「それはまぁ、もちろんや」

 

「それにアレ……この紅魔館って所が主催の宴会っていつやったっけ?」

 

「来週やる言うてたわ」

 

「そこで余興でやるんやから、失敗出来ひんやん。もう一回練習しようや」

 

「あーー、せやな。やろか」

 

 

 ツッコミがソファから立ち上がって部屋の中央に行く。

 ボケがパンッと手を叩くのを合図に、また最初のような中腰姿勢となり、

 

 

「あ〜〜道に迷ってしまったぁ〜〜どうしたらどうしたらいいんだぁ〜〜」

 

「どうしたんですかっ?」

 

「あっ、親切な人っ! 実は病院を探しているんですー」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「右見てライっ。左見てレフト。上見てアップ。下見てダウン。イッツ・マイ・フェ〜イス!」」

 

「なんでやねーん! 病院を探しているんですよ!」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「後ろに下がってバック! 前に進んでウォキ〜ン! 走って走ってランニ〜ン! イッツ・マイ・ウェ〜イ!!」」

 

「なんでやねーん! 病院を探してるんですよ!」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「平行直角また平行、縦バージョン。平行直角また平行、角度を狭めてパンパパン」」

 

「なんでやねーん! 病院を探しているって言ってるのにーっ!」

 

「実は僕、病院の行き方分からないんですよ」

 

「分からへんのかい! もうええわ!」

 

「「タッチタッチ、あなたにタッチ。タッチワゴンでしたありがとございましたーっ!」」

 

 

 ツッコミがまたドカッとソファに座る。

 ボケもまたノートパソコンを弄りながら、

 

 

「明日さぁ。メイド長の……ええと、なんて名前やっけ」

 

「咲夜さんやろ」

 

「そうそうそう。咲夜さんに許可取ってさぁ、外の庭で練習しようや」

 

「いやいや。どこでやったかて同じやろ」

 

「ほら、ずっと同じトコでやるより気分転換なるやん」

 

「あー、そうかもなぁー」

 

「湖も綺麗やしさ」

 

「せやなぁ。ほんまめっちゃ綺麗やもんなぁ。琵琶湖でももうちょい濁っとるもんなぁ」

 

「まぁとりあえず、今日はもう一回ここでやっとこうや」

 

 

 ボケに促され、ツッコミはまた所定の位置に付く。

 そしてボケが手を叩くと、それを合図にまたさっきのコントを始める。

 

 

「あ〜〜道に迷ってしまったぁ〜〜どうしたらどうしたらいいんだぁ〜〜」

 

「どうしたんですかっ?」

 

「あっ、親切な人っ! 実は病院を探しているんですー」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「右見てライっ。左見てレフト。上見てアップ。下見てダウン。イッツ・マイ・フェ〜イス!」」

 

「なんでやねーん! 病院を探しているんですよ!」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「後ろに下がってバック! 前に進んでウォキ〜ン! 走って走ってランニ〜ン! イッツ・マイ・ウェ〜イ!!」」

 

「なんでやねーん! 病院を探してるんですよ!」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「平行直角また平行、縦バージョン。平行直角また平行、角度を狭めてパンパパン」」

 

「なんでやねーん! 病院を探しているって言ってるのにーっ!」

 

「実は僕、病院の行き方分からないんですよ」

 

「分からへんのかい! もうええわ!」

 

「「タッチタッチ、あなたにタッチ。タッチワゴンでしたありがとございましたーっ!」」

 

 

 ソファに座ろうとするツッコミだが、その前に、

 

 

「もう一回やろ」

 

「………………」

 

 

 一度深く項垂れた後、座ろうとしていたソファに背を向けてまた同じ位置に戻る。

 ボケが手を叩くが、ツッコミは少しストレッチ。それを急かすようにまたパンッと手が叩かれる。

 

 

「うーー……っしッ!」

 

「はいやろ」

 

「分かった分かった」

 

「はよ」

 

 

 何度も手を叩く。やっとツッコミが中腰になった。

 

 

「あ〜〜道に迷ってしまったぁ〜〜どうしたらどうしたらいいんだぁ〜〜」

 

 

 最初よりもやる気がなさそうだ。

 

 

「どうしたんですかっ?」

 

「あ親切な人。実は病院を探しているんですー」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「右見てライっ。左見てレフト。上見てアップ。下見てダウン。イッツ・マイ・フェ〜イス!」」

 

「なんでやねーん。病院を探しているんですよ」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「後ろに下がってバック! 前に進んでウォキ〜ン! 走って走ってランニ〜ン! イッツ・マイ・ウェ〜イ!!」」

 

「なんでやねーん。病院を探してるんですよ」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「平行直角また平行、縦バージョン。平行直角また平行、角度を狭めてパンパパン」」

 

「なんでやねーん。病院を探しているって言ってるのにー」

 

「実は僕、病院の行き方分からないんですよ」

 

「分からへんのかい。もうええわー」

 

「「タッチタッチ、あなたにタッチ。タッチワゴンでしたありがとございましたーっ!」」

 

「もう一回やろうや」

 

 

 間髪入れずにボケが言う。

 ツッコミは背を向けたまま項垂れ、一度部屋の隅に行くと「アーーッ!!」「ヴーーーーッ!!」と叫ぶ。

 

 

「………………」

 

「はい」

 

「分かった分かった」

 

 

 諦めたように戻ると中腰になる。

 

 

「あー道に迷っ」

 

「手ぇ叩いてからや。もっかい最初っから」

 

「…………」

 

「はい」

 

 

 ボケが手を叩き、また始める。

 

 

「あ〜〜道に迷ってしまったぁ〜〜どうしたらどうしたらいいんだぁ〜〜」

 

「どうしたんですかっ?」

 

「あ親切な人。実は病院を探しているんですー」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「右見てライっ。左見てレフト。上見てアップ。下見てダウン。イッツ・マイ・フェ〜イス!」」

 

「なんでやねーん。病院を探しているんですよ」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「後ろに下がってバック! 前に進んでウォキ〜ン! 走って走ってランニ〜ン! イッツ・マイ・ウェ〜イ!!」」

 

「なんでやねーん。病院を探してるんですよ」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「平行直角また平行、縦バージョン。平行直角また平行、角度を狭めてパンパパン」」

 

「なんでやねーん。病院を探しているって言ってるのにー」

 

「実は僕、病院の行き方分からないんですよ」

 

「分からへんのかい。もうええわー」

 

「「タッチタッチ、あなたにタッチ。タッチワゴンでしたありがとございましたーっ!」」

 

「もう一回やろうや」

 

「もうええやろ」

 

 

 とうとうツッコミが口答え。

 

 

「なんでや?」

 

「もうええやろ」

 

「なんでや? はよやろうや」

 

 

 威嚇するように手を叩くボケだが、ツッコミは心底やりたくないようで、

 

 

「いや、もう、アホほどやったやん。幻想入りしてから三日連続、朝から晩まで二十四時間」

 

「練習して損ない。やろうや」

 

「もう損するトコまで来てんねん」

 

「ええからやろうや!」

 

「あーもう……分かった分かった……最後な? 最後やで、最後」

 

 

 ツッコミが「最後」だと念押しながら所定の位置に付く。

 ボケがパンッと手を叩く。ツッコミの顔が歪む。

 

 

「そのパンってのやめて。パンやめて。パンやめてな」

 

「はよやらんからやん」

 

「やるからやるから。パンやめてパン」

 

「パンパンうるさいねん。俺、和食派じゃ」

 

「いや知らんけど……あーもう、叩かんといて叩かんといて。自分のタイミングでやるから……」

 

 

 若干、病んだ顔付きでツッコミは中腰になる。

 

 

「あ〜〜道に迷ってしまったぁ〜〜どうしたらどうしたらいいんだぁ〜〜」

 

「どうしたんですかっ?」

 

「あ親切な人。実は病院を探しているんですー」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「右見てライっ。左見てレフト。上見てアップ。下見てダウン。イッツ・マイ・フェ〜イス!」」

 

「なんでやねーん。病院を探しているんですよ」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「後ろに下がってバック! 前に進んでウォキ〜ン! 走って走ってランニ〜ン! イッツ・マイ・ウェ〜イ!!」」

 

「なんでやねーん。病院を探してるんですよ」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「平行直角また平行、縦バージョン。平行直角また平行、角度を狭めてパンパパン」」

 

「なんでやねーん。病院を探しているって言ってるのにー」

 

「実は僕、病院の行き方分からないんですよ」

 

「分からへんのかい。もうええわー」

 

「「タッチタッチ、あなたにタッチ。タッチワゴンでしたありがとございましたーっ!」」

 

「もう一回やろうや」

 

 

 ツッコミが首を振ってソファに座り込む。

 

 

「いやもう、最後って約束や」

 

「ええからやろーや」

 

「いやもうええて。損するトコまで来てんねん」

 

「やろーって。ほら、ハイ!」

 

「もうええて。今日は休ませてくれ」

 

「本番一週間しかないねん。はよやろや」

 

「一週間もあんねん。もうええやろ。ええねん」

 

「ほれ、やろ」

 

「やり過ぎやねん。せめて明日にせぇ」

 

「ネタ書いてから言えやッ!!!!」

 

 

 延々と渋るツッコミに、とうとうボケがキレた。

 あまりに急に怒鳴ったので、扉の向こうの魔理沙も跳ねる。

 

 

「そう言うのネタ書いてから言えやッ! お前だけ遊んでッ! 俺だけ深夜のファミレスこもって、一人でなぁッ!」

 

「………………」

 

「お前がみぃーんなと遊んでる時に一人でこもってッ!! 一人でネタ書いてッ!!」

 

「………………」

 

「んでネタ出来たらお前に渡して、お前覚えるだけやんけッ!! 練習くらい付き合えやッ!!」

 

「ほな言わして貰うけどなぁッ!?」

 

 

 ツッコミも怒鳴り返し、積もり積もった鬱憤をぶちまけた。

 

 

 

 

「あんな……」

 

「おぅ」

 

「…………今ファミレスも遊ぶ友達もおらんねんッ!!」

 

 

 ソファから立ち上がり、部屋中をウロウロしながら、

 

 

「練習の帰りにこの世界飛ばされて、もうなーんもないねんッ!! おまけに人食い妖怪おるわ、怖い吸血鬼に捕まって宴会の余興出ろ言われるわ、おもんなかったら殺す言われて、この屋敷監禁されて……練習どころちゃうやろッ!? 生命の危機やぞッ!? 気ぃ狂いそうなるわッ!!」

 

「大丈夫やて! 俺のこのネタやったら余裕や!」

 

「お前のそのメンタルどっからくんねんッ!?」

 

「とにかくやろ! お客さんが人食い妖怪やろーが笑かしたろうや!」

 

「こんな意味分からんネタやったら余興のゲストから宴会のディナーなるわッ!!」

 

「ええからやろぉや! 俺たちの世界のお笑い知らしめたろーや!」

 

「知らしめられへんねんッ!! 程度が低い思われるわッ!! 俺たちの世界の恥なるわッ!! ほんで殺されるわッ!!!!」

 

「とりあえずもう一回やったら良さ分かるから!」

 

「何度やっても変わらへんて! もーいい! やらんやらん!!」

 

 

 怒りを壁を叩いてぶつけ、そのままツッコミはへたり込む。

 

 

「このネタじゃ無理やてーーッ!! 余興でスベって死ぬてェーーーーッ!!」

 

 

 ひたすらゴネまくるツッコミを見て、ボケもやや不貞腐れた様子で「あーそう」と。

 

 

「一応もう一個候補あんねんけど」

 

 

 それを聞き、ツッコミは縋る目つきで振り返る。

 

 

「……あんの?」

 

「おう」

 

「どんな?」

 

「三つ目にな?」

 

 

 ボケがウキウキした様子で実演する。

 

 

「朝は〜、一緒にパンっ!」

 

 

 腰を振りながら「パンっ!」に合わせて手を叩く。

 

 

「こんがり焼けた〜、パンっ!」

 

 

 繰り返す。

 

 

「パンっパンっパンっパンっ、パンダさんっ!」

 

 

 最後は両指で丸を使って、両目に重ねる。パンダの目の模様を表しているらしい。

 

 

「これや」

 

「…………無理やてもぉぉおーーーーッ!!!!」

 

 

 絶望を叫びながら壁に突っ伏すツッコミ。

 

 

「訳分からへんから出られてへんねんッ!! なんやねんパンダて!?」

 

「折角お前が言うから用意したったのに、なんやねんその言い方!」

 

「てか、パンっ、パンっ、パンって……お前さっき和食派言うとったやんけッ!?」

 

「個人的なアレとネタは別や! ほんじゃ、これBパターンにしよか。ほれ、一回やろや!」

 

 

 そう言ってノートパソコンを弄るボケに、たまらずツッコミが指差しで怒鳴る。

 

 

「パソコンやる系のネタちゃうやろッ!? 閉じろいっぺんッ!」

 

「パソコンやらなネタ組み立てられへんねん!」

 

「なんやねんお前、もぉおぉお……!!」

 

「ほら。やろっ。はい」

 

 

 何度も何度も手を叩いて促すボケ。

 頭を抱えて絶望していたツッコミだが、やっとの思いで立ち上がり、泣きそうな顔で中腰になる。

 

 

「あ〜〜道に迷ってしまったぁ〜〜どうしたらどうしたらいいんだぁ〜〜」

 

「どうしたんですかっ?」

 

「あ親切な人。実は病院を探しているんですー」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「右見てライっ。左見てレフト。上見てアップ。下見てダウン。イッツ・マイ・フェ〜イス!」」

 

「なんでやねーん。病院を探しているんですよ」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「後ろに下がってバック! 前に進んでウォキ〜ン! 走って走ってランニ〜ン! イッツ・マイ・ウェ〜イ!!」」

 

「なんでやねーん。病院を探してるんですよ」

 

「その前にあなた、落ち着きましょーっ!」

 

「「朝は〜、一緒にパンっ! こんがり焼けた〜、パンっ! パンっパンっパンっパンっ、パンダさんっ!」」

 

「なんでやねーん。病院を探しているって言ってるのにー」

 

「実は僕、病院の行き方分からないんですよ」

 

「分からへんのかい。もうええわー」

 

「「タッチタッチ、あなたにタッチ。タッチワゴンでしたありがとございましたーっ!」」

 

「一週間みっちりやるで」

 

 

 ツッコミはカーテンを開け閉めする謎の挙動を繰り返した後、胎児姿勢で床に伏した。

 その間もボケは、パンッと手を叩き続ける。

 

 

 

 そこでやっと魔理沙は扉を閉めた。その表情は渋い。

 

 

「なんか……エグいの見たぜ……アレ、絶対『外来人』だよな……?」

 

 

「外来人」とは、外の世界から幻想入りして来た人物を表す。

 

 

「宴会だの、余興に、外来人だの……聞いてないモンばっかだ。またレミリアの奴の気まぐれかぁ?」

 

 

 色々聞きたい事こそあるも、あの二人に聞くのは気が引けない。

 もはや魔理沙の脳裏にも、ボケの手が鳴らす破裂音が鳴り止まない。

 

 

 とりあえずこの疑問は後回しにする事にした。

 今の彼女の目的は、図書館まで行く事なのだから。




【幻想入りしてもめっちゃ練習する奴】
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