妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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来訪者編㉖

 

 

「…ありがとう深雪、生き返った心地がするよ」

 

ごく普通の、ありふれた夕食メニューだったと思うのですがね。相当苦かったんだなあのチョコ。

そしてお兄様が言うとなんというか、重みがね。何度も生き返った(死んではないけど似たようなものよね)経験のあるお兄様が口にすると相当辛かったのではと思ってしまう。

それをたった一人で乗り越えられた服部先輩は男です。恋する男は凄い。感服します。

 

「お兄様がなぜそこまで安堵されるのかはわかりませんが、喜んでもらえたのでしたらよかったです」

 

こんなに感情の込められたごちそうさまは初めてです。

ご苦労様でしたお兄様。このイベントの先に、きっと素敵なラブが待っていますから。

痛みや苦しみを乗り越えてこそ掴むものがある、というヤツですね。…ちょっと違う気もしないでもないけど。

 

「こちらは私からです」

 

コーヒーを入れるより早く。ごく自然に気取ることもなく。

食器を片付ける前に小さな、誰に渡すものよりも小さな箱を取り出し、お兄様の前に置く。

シンプルな、白い正方形の小箱。お兄様の手の平なら片手に収まるサイズだ。包装紙も無ければリボンもかけていない。中に緩衝材は詰まってますけど。

 

「開けても?」

「どうぞ」

 

お兄様は慎重な手つきで箱を持ち上げ、蓋を開ける。

 

「…弾丸、だな」

「弾丸ですね」

 

弾丸の形を模したチョコレートが三つ。それが今年のチョコレートです。

お兄様はひとつ取り出してしげしげと見つめる。

 

「随分精巧な作りだ。ん?外側はコーティングか?」

 

掴んだ感触でそこまでわかりますか。

ええ、ええ。その一発を作るのにとても苦戦しましたとも。

そのサイズでも、そのままチョコを溶かして固めただけでは結構な噛み応えになってしまいますからね。ただ形どるだけでお渡しするなどできない。

まず薬莢を作るところから始めましたとも。

うっすい膜状に形成。

その中にガナッシュを流し込んで作るという、非常識な作り方で作りました。

普通一般、固めたチョコの枠に熱々のチョコなんて流し込めば、溶けて形が崩れるのが当たり前ですからね。

減速魔法をこんなところに使うパティシエはまずいない。断言する。

…しかも形が定着するまで維持するなんてループキャスト技術が無ければできない。お兄様の技術あってこそのこのチョコレートです。

薬莢の型も、氷で片側ずつ作って形を整えドッキング。丸をそのまま作るのは無理でした。

 

「…魔法がこんな平和的利用をされているとは、人間主義者も驚愕するだろうな」

「包丁の使い方を決めるのは人間ですから」

 

良いじゃない。魔法をお菓子作りに使っても。

そしてお兄様作る工程遡りましたか。クリスマスプレゼントの時もそうでしたが、なんか丸裸にされているようで気恥ずかしい。

 

「ありがとう。深雪の魔法はいつも俺を喜ばせてくれる」

「そう言っていただけて嬉しゅうございます」

 

魔法の無駄遣いと言われないか冷や冷やしました。そんなことお兄様が言うはずもないのですがね。

渡せたことで私の今日のミッションは終了。食器を片付けるため立ち上がる。

 

「ところで、何で弾丸なんだ?」

「え?ああ。特に深い意味はないのですが…」

 

あら、それ聞いちゃいます?聞かれたら答えてあげるのが世の情け、ですよね。

 

「貴方のハートを撃ちぬくぞ、というちょっとした茶目っ気です」

 

振り返りざまにばぁん、と指でピストルを模してお兄様にアクションして見せると、お兄様は固まったのち胸を押さえた。ノリがいいですね。

お兄様のメインウェポンが銃であることも起因してます。お兄様のCAD構える姿カッコいいよね!

指先にふっと息を吹きかけるモーションをしてからシンクに向かいます。

 

「とっくに深雪には射抜かれているのに追い打ちをかけるのか」

「追い打ちだなんて。そもそもお兄様に弾丸が当たるわけがないので三発も用意したのですよ」

 

というより、意外と難しくてそれしか作れなかったのだけど。失敗作は融かして別のチョコへと生まれ変わりました。

 

「深雪からもらえるというのなら俺は喜んで受けてしまうだろうから分解はしないぞ。修復はされるかもしれないが」

 

そんなリアルな回答されましても。

 

「そこは避けましょう?そもそも私がお兄様を撃つなど想定もできませんが」

「今まさに撃ち抜かれた」

「あら、命中したのですか?まだ食されてもいないのに」

 

くすくすと笑いながら残った食器を持ってテーブルから素早く離脱する。

揶揄いモードだからと言って油断はできないのですよ。お兄様はすぐ私の心臓を止めに来る。

 

「食べる前からこの威力か。これは心して食べないとな」

「チョコに細工などしておりませんよ――ああ、でも」

 

たかがチョコに警戒することなんてない、と言いたかったのだけれど昔得たオタクの知識が呼び起こされた。

 

「チョコレートには確か、フェニルエチルアミンという成分が入っていて、鼓動を早め恋と錯覚させる媚薬効果があるのだとか。――食べる際はお気を付けくださいませ」

 

バレンタインはそう言うネタがいっぱいゴロゴロ転がってましたねー。いやー、懐かしい。

皆の妄想力には脱帽&感謝です。たくさんのいい作品に出会えました。

チョコ一つで皆すごいよね。いろんな発想があって楽しかった。平和な世の中だからこそ、妄想の翼はどこまでも広がっていったのです。

それを思えば、現状はあまりよろしくない。創作物が無くなるということはないけれど、そんなものに現を抜かして、という空気が規模を縮小させていた。

消滅してない辺り人の煩悩は無くならないんだな、との証明にも思えるのだけれど、それでもこの状況はよろしくない。

世界はもっと平和になって娯楽に力を注ぐべきだ。もっと心を豊かにするべきなのだ。

なんて、世界平和を考えていたら手元がすべて片付いていた。

魔法かな?無意識にできちゃう深雪ちゃん素晴らしい。えらい。

エプロンを外して戻るとお兄様が頭を押さえて俯いていた。

 

「お、お兄様?!いかがなさいました?もしや体調が⁇」

「…いや、大丈夫だ」

 

大丈夫と言いながらもお兄様の表情は晴れない。

もしや今頃になって七草先輩のチョコレートがお兄様の体調を崩して――いや、もしかしたら私のチョコがその記憶を蘇らせてしまって?それはよくない。

手元を見ればまだチョコレートの入った箱が開いたままだった。

 

「お兄様、今お食べにならないのであれば冷蔵庫へしまいましょうか?一応常温でも大丈夫だと思いますが」

 

何処か見えないところへしまった方が良いのではないかと提案したのだけれど、私の差し出した手を見てお兄様は箱を閉じて両手で大事そうに包み込んだ。

 

「常温で大丈夫なら手元に置いておきたい。…後でいただくよ」

 

その様子に気に入っていただけたんだな、と思って頬が緩んだ。プレゼントを大事そうに持ってもらえるって嬉しいね。

 

 

――

 

 

その後、コーヒーを飲むのだけれど、今日のお供はチョコ以外、とのことだったのでプレーンのクッキーを。

 

「今年のバレンタインは、いろいろあったようですね」

「そうだな。――お前にも手を借りてしまった」

 

それはほのかちゃんへのプレゼントについてだろう。

一緒に選びに付き合いましたから。真剣に選ばせていただきました。

とはいっても贈るものは決まっていたので、どの石が純度が高いかくらいでしたけどね。

ほのかちゃんに思いを伝えられた時、お兄様ははっきりと付き合えないと断った。

その後諦めないと決めたのはほのかちゃんで、激しく拒絶しなかったのはお兄様。

今回のチョコレートも、断ることはできたのに、お兄様はほのかちゃんを悲しませない方法で、やんわりと改めて告白させない空気を作った。

プレゼントをその場で渡すことによって意識を逸らしたのだ。

想いをぶった切らなかったことは逆に残酷なことなのかもしれない。

はっきりと拒絶しないことで、気持ちを長引かせたり助長させたりしてしまうから。

けれどまだ高校生なのだ。甘酸っぱさも、苦い思い出も、青春の内。

いずれ過去のことと割り切るにはこの学生というタイミング以外無い。間違いや勘違い、いい思い出で済まされる多感な時期。

たくさんいろんな経験をして、失敗をしても許される時期だ。

 

「ほのかは喜んでおりましたよ。今は、それで十分なのではないでしょうか。――お兄様は先が無いと思うから罪悪感を抱かれるのでしょうが、それはほのかも承知の上。…恋とは楽しんだ者勝ちなのです」

 

だからお兄様が気に病む必要はない。

 

「私も今日、たくさんプレゼントを贈りました。返してもらうことよりも、皆が受け取ってくれて、喜んでもらえた。そこに喜びを感じるのです。皆の反応が嬉しいのです。そのあとのことよりも、その瞬間が見たくて」

 

恋だけじゃない。イベントなんてものは須らく楽しんだ者勝ちなのだ。

でも、そうか。そうだね。

 

「贈る側からしたら楽しいイベントでも、受け取る側はいろいろと考えてしまうのかもしれないですね」

 

特にお兄様は真面目だから、ただ貰うということができない。今までそのような施しを受けたことが無いから余計に。

ギブアンドテイクなら知っていても、ただ受け取ってもらえればいい、なんて想いは持て余してしまうのかもしれない。

 

「そういえば、レオ達が戸惑っていたぞ。お前から貰えると思っていなかったから来月はどうしたらいいのか、と」

「友チョコはお返しはいらないと伝えたのですが。皆律儀ですね。でも返すのもイベントの楽しみの一つというのでしたら、そうですね。もらえるならクッキーでしょうか」

 

マシュマロやグミを貰ったって彼らにそんな意図が無いと思うので。だけどどうせ貰うならここは無難が一番なクッキーをお願いしましょうか。

 

「伝えとく」

指定したが悩まずに済みますものね。よろしくお願いします。

 

「…楽しんだ者勝ち、か」

「ええ」

 

お兄様は目を閉じてソファに深く沈んだ。

最近になって、お兄様はこうして少し崩した姿も見せてくれるようになった。そのことが嬉しくて、緩む口元をコーヒーカップで隠した。

 

 

――

 

 

こうして一大イベントのバレンタインの夜は更けていった。

あくる日――

学校は本日起きた怪奇現象の話題でもちきりだった。

曰く、ピクシーが微笑した、と。

学園七不思議がいまだに廃れない理由はここにある。皆娯楽に飢えているのだ。

よって回るスピードがとてつもなく速かった。今朝起きたばかりの事件だというのにこの浸透率。まあ、詳しい情報なんてないけれど。

生徒会役員として呼ばれて状況を詳しく聞いたけれど、生徒会も把握できていない。教員たちが調査中とのこと。

ほのかちゃんが怖いね、と震え、中条会長がまさかまたトラブルが?と別の恐怖に震えていた。会長…お疲れ様です。

そしてほのかちゃん、しがみつくの待って。今うっすらとだけどぞわぞわしてるところだから。

近くにいないのだけどね、場所を確認するため感度を上げていたからうっすらとだけど気配を感じるのですよ。

活動休眠していても存在を消してはいないのか。昨日までは気配を探ろうとしても感知できなかったのだけど、今日は隠れる気が無いらしい。

詳しくはお昼に、ということでこの場は解散。授業に戻る。

リーナちゃんはお休みです。パラサイトがロボットに入ったなんて情報、知れたら大変なことになるから運がよかった…というより神の采配ですね。ストーリー成り立たなくなっちゃう。

でもね、私がこうして前もって感知しちゃっている時点でストーリー変わっちゃうよね。…どうしよう?先にお兄様に知らせた方が良いのかしら。それともチェックしてから気づいた方が?

 

(…ピクシーがお兄様に抱きつくところは見たいよね)

 

私はそっと感度を落とした。

 

 

 

 

購買でお昼を買うのは初めてでちょっぴりドキドキ。お兄様の分のホットサンドとドリンクを。

お兄様は一足先に先輩たちと打ち合わせ。

恐らく話の流れ的にこの後メンテナンスルームに向かうのだろうと予測して――うん、その通りみたい。メールが来ました。

直に向かってほしいとのこと。ほのかちゃん、エリカちゃん達も行きますよー。

皆非日常好きだよね。お兄様に便乗して見に行こう、なんて。ほのかちゃんは生徒会役員として、だけどね。

到着したらさっそく服部先輩が野次馬を散らしてくれました。危険が無いとは言えないからね。

お兄様にホットサンドを渡して手早く食べながら打ち合わせ。

私もこの間に食べようと袋からサンドイッチを取り出すのだけれど、ちょっと食欲が。

感度を下げようとも消してはいないから、これだけ近づくと違和感は感じるわけで。

今こそ先生との修行の成果を!と考えなくもなかったけれど、それをするとお兄様に気付かれる可能性が高いので今回は無し。

クッションが当たってるくらいのレベルなので、これくらいたいして気にならないのだけど、相手がアレだと知っているから気分がね。

このパラサイトちゃんがいい子だって知ってるんだけど、対峙していた時のことを思い出すとまだ身が竦む。

…やっぱり対処ができる、できないでは心の持ちようも変わるのかな。この後どこかで訓練する時間が取れればいいのだけど。

困ったなぁ。

今朝の妙な動きの説明を受けながらお兄様は表情を全く変えず、最小限の動きで食事をしているので魔法のようにホットサンドが消えていくように見える。

もう一個いります?とお茶と共に差し出せばお茶を飲んでからホットサンドが消えた。まるでシュレッダーみたいに吸い込まれていくのが面白い。

そして隣でほのかちゃんが驚愕の表情。エリカちゃん達もうわぁ、って顔。

どうしてかって?お兄様がノールックだったからですね。会話の邪魔はしないしさせません。よってお礼も頭を一撫でだけ。これもノールック。

私もタイミングに合わせて頭を寄せたのもどうかと思うけどね。お兄様が撫でたそうな雰囲気だったので。

蔑ろにされてるわけじゃないよ。これが片付いたらあの時はありがとう、ってちゃんと言ってくれると思う。完全に後回しにできないからのチョイ撫でです。

これでちょっと気が楽になったので私もサンドイッチの最後のひとかけを口に入れる。何とか食べきりましたね。

 

「ピクシー、サスペンド解除」

 

お兄様の短い指示に、少女型ロボットは目を覚ます。――同時にクッションが膨らんだような圧を感じた。

魔法はまだ使ってないからかな。ひも状のアレは感じない。

ごみをまとめて片付けて、お兄様の斜め後ろに戻る。ピクシーの表情はまだ噂のように微笑んではいない。

だけど不思議と目の色が違って見えた。

ただ情報を入れようとしてカメラを動かしているのではなく、目の前の人間を、お兄様を見つめている。

その瞬間だ。ぞわり、と先ほどまでクッションだったものが糸状に解れて体をなぞるように蠢いた。

直接的な、肌に触れるような感覚ではなかったので見悶えるまではいかないが、それでも分厚い冬のコートの上から撫でられているような感覚はある。

ピクシーがお兄様を視界にとらえて、前進する。

体の動きも魔法だったのか。うねうね動くね。うねうね。

…無機物ならまだいいんだけど、この動きは生き物のように意思をもって動いているかのよう。

どうして私の情報の捉え方ってこうなのだろう。もしかしてだけど、前世の前情報がいらない情報処理の仕方して勝手に解釈したから今に至っていたりしない?…答え出ないことを考えるのはやめよう。

目の前の光景を目に焼き付けねば。

――お兄様が美少女型ロボットを抱きとめているこの素敵な光景を。

無機物ボディの宇宙生物にまで愛されちゃうお兄様すごくない?素晴らしきかなハーレム系主人公。これをどうして非難できようか。

どう考えてもお兄様巻き込まれてのことであって自発的じゃない。

なのに女っ誑しの称号を得てしまったりして睨まれたり悋気起こされたり…不幸体質ここに極まれり、だよね。女難の相。不憫。でもそこがいい。

 

「…へぇ、司波君って、ロボットにまでモテるんだ」

 

衝撃的な光景に誰もが思考停止していた中、唯一外に出ていて今ようやく合流した花音先輩がこの現場を目撃、冷ややかな声を掛けたことで、全員が動き出す。

ほのかちゃんと美月ちゃんは静と動で混乱を表し、エリカちゃんはどうなってんの?とあんぐり。西城くんは首を傾げ、吉田くんは顔を逸らし、先輩方は何が起こったのか戸惑っていた。

 

「兄さん、大丈夫?」

「大した衝撃は無かったから問題ない。――ピクシー、離れてくれ」

 

私が騒がないだけで、こんなにスマート。

っていうか誰もお兄様を心配しないとは何事?もっと心配してくれてもいいと思うのだけど。

ほのかちゃんもようやくその可能性に気付いたみたいだけど、話はどんどん進んでいく。

そしてお兄様は私を振り返り視線を向けられた後、美月ちゃんに声を掛けた。

ピクシーを見てくれないか、と。

一瞬私を見たのは、アレを感じたかどうかだと思うけれど、確認するわけにはいかないと気付いたのかな。心配させてごめんなさい。

そしてピクシーの中の正体が明らかになる。その――目的も。

美月ちゃんの目ってどうなってるんだろうね。ほのかちゃんとパターンが似てるって、どういう風に見えてるんだろう?

おかげでほのかちゃんの望みがここにいる皆に公開されています。これぞ正に公開処刑。かわいそうすぎる。

止めてあげたいけれど、早いところ原因究明しなければならないのでね。

ほら、暴れない暴れない。エリカちゃんと二人がかりだけれど、抵抗する人間抑えるのって大変ね。とりあえず締め技で押さえればいいかな?

 

「…深雪、容赦なさすぎ」

「暴れたら怪我しちゃうかもしれないじゃない」

「…だからってオトすのはどうかと思うわよ」

 

黙って辛い現実を見せつけられるより、早くオチた方が幸せだと思うのだけど。

五十里先輩たち話に普通に参加しているけど、百家にはパラサイトの情報回ってるのね。

流石に一般に回ってはいないけれど、服部先輩は有志で活動に参加しているのかな。

七草先輩や十文字先輩も動いてるから不思議はない。

でもパラサイトに届いた祈りがほのかちゃんの想いだったことで事態は大きく進展する。

ほのかちゃんの願い、祈りはお兄様のものになりたいという欲求だったから。

好きな人に尽くしたい、使ってもらいたい、なんて。なかなかそこまで想う人は珍しいけれど、そこは彼女の生まれも関係する。エレメンツ――遺伝する、依存性質。

ご都合主義ィ!とか言っちゃいけない。このおかげで色々助かることがあるのだから。

物語を抜きにしても、厄介な性質だと思うけどね。

だけど反面、こうも思う。パラサイトは宿主の思念、祈りによって人格が変わる。

憎しみの念には憎しみを、救いを求める声にはその者にとっての救いを。それは彼らの意思に関係なく写し取ってしまう心。

その祈りが誰かを想う心だったから、ピクシーは人に討伐されることもなく寄生に成功している。

同じ仲間たちからは捕らわれているように思えてしまったみたいだけれど、彼女――少女型ロボットに寄生してしまったのだからそう呼ぶけれど――は自らの意思として、願いを叶えようとする言動が見られるようになる。

この平和的で小さな願いをすぐにでも叶えられる彼女は、苦しみをトレースして憎しみや怨念のこもった願いを叶えようとする彼らよりも幸せなのではないかと、勝手ながら思ってしまうわけで。

 

(憎しみの心ばかり抱くことになってしまったパラサイトは、大抵負の感情に振り回されて封印されたり悪い人たちに悪用されたりした歴史があるのだろうな)

 

何かの拍子で地球に来た彼らを、人はその時々で悪魔と呼んだり、神と呼んだりするのだろう。

人には起こせない奇跡を利用するだけ利用して、都合が悪くなると処分やら封印やらして存在を無くしていく。――そんなに度々地球に来てはいないだろうけどね。

パラサイトという存在に同情はするけれども、

 

(だからって、お兄様に微笑みかけたいからって魔法使うのはチョッと控えてくれないかなぁ!)

 

何かする度もぞもぞ動かれるのは大変気が散ります。もうシャットアウトしようかな。

 

「では、俺の命令に従え。今後、俺の許可なくサイキックを行使することを禁止する。表情を変えているのも念動の一種だろう?それも禁止だ」

 

お兄様~!ありがとう!助かりました。おかげでもにょもにょがクッションに戻った。クッションならそれほど怖くない。変に動かないからね。やっぱり動くのが怖いみたい。存在はちょっと慣れてきた。

健気にお兄様の言う通り動いて尽くそうとするピクシーちゃん可愛いね。

仲間になると思うとすぐに手のひらを返せる私です。

敵だった人が仲間に加わる展開好きだよ。戦隊モノのブラックって嫌いな人少ないんじゃない?

ピクシーはあんな孤高のタイプじゃないけど、感覚的に昨日の敵は今日の友ってヤツです。

これからよろしくね!

 

 

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