妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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来訪者編㉚

 

 

対峙すると一気に触手が襲い掛かるけれど、すでに展開していた結界が感覚を和らげていたおかげで、攻撃を仕掛ける狙いの方向とタイミングを教えてくれる。

遅れてどのような魔法を使うかはサイオンで伝わってくるから、攻撃を打ち消すことは難しくなかった。

ぶつかり合うサイオンが一帯に広がっていく。綺麗な光だけれど、リーナちゃんの時のような感動は無い。

今、私がすることは時間を稼ぐこと。お兄様が相手を倒すタイミングで体を拘束しておけば自爆も何もできないはず。

…それよりも先にほのかちゃんのカバーに入ることも考えたのだけど、今ほのかちゃんのカバーに入ることは恐らく――彼女に恨まれることになる。

お兄様の役に立ちたい、足手まといにはなりたくない。

その一心で立っている彼女に、ライバル、ではないけれどそのような存在に助けられたりしたら、複雑を通り越して憎しみさえ生んでしまうかもしれない。

恋する乙女の思考回路は取扱注意なのだ。

危険だけれど仕方がない。

 

「なぜこちらの攻撃が通じない!?」

 

あら、おしゃべりできるのですね。

対峙していたパラサイトが焦るような声で魔法を打ってくるけれど、それはお見通しよ、とばかりに打ち消していく。ふざけられるくらいには余裕があります。

ごめんね、深雪ちゃんがチートなばっかりに。

 

「一つ窺いたいことがあるのですけれど、よろしいかしら?」

 

攻撃が止んだわけではない。今も激しく光の乱舞は起きている。

相手が余裕なく返答ができないようなので、私は続けた。

 

「あなた方は自身をデーモン、と呼びましたが、それはなぜです?」

「なぜ、だと?お前たちがそう名付けたのだろう!」

「お前たち、というのはアメリカのニュースのことを指しているのでしょうか?USNAの軍部ではあなた方のことをデーモンではなくパラサイトと認識していたはずです」

 

リーナちゃんはしっかりとそう彼らのことを呼んでいた。

恐らくだけど彼らの宿主はそんな存在がいることを知り得る立場ではなかったと思うから、持っていた知識ではないはずだ。

パラサイトやデーモンなどが跋扈していたらもっと知名度があっていいはずだからね。

吉田くんみたいな家でない限りそんな言葉が出てくるはずはない。

宗教的には可能性は無くはないけれどね。あちらのお国は今でも信仰している人は多いから。人間主義者の根本もそこが絡んでいたりする。悪魔祓いは未だに行われているからデーモンと呼ぶことにそこまで違和感はない。

けれどもし――そうではなく、日本のごく一部の魔法師、お兄様やお兄様周辺の魔法師に向けての挑発なのだとしたら――デーモンと呼ばれたお兄様への当てこすりなのだとしたら、許せない。

 

「どちらもお前たちが勝手につけた名だ。我々にそのような名称は無い。ただその方がわかりやすいから使用しているだけに過ぎない」

 

うーん、どっちだ?わからない。けど一つ分かったのは、彼らは彼らなりに流儀があって、意思伝達を効率良くするためか、こちらに寄り添った話し方をしてくれるらしい。

各国の外交官なんかよりよっぽど親切だ。

そう思ったら口調も砕けたものになった。

 

「貴方たちの思考は素敵ね。きっと間に人間なんて挟まなければ、まさに理想なのかもしれない」

 

共同体だから意見が対立することもない、共に分かち合い、手を差し伸べ合い、本来であれば仲間同士の争いなんてあり得ない、相互理解し合える関係。

元が一つの思念体だから、同じ一つの考えから派生しているのだからなのだろうけれど、彼らだけであれば欲は単純な願い、仲間を増やしたいというものだけ。

そしてその願いだけならば、仲間たちで争うことなど生じるはずがない。ただ平和に揺蕩う暮らし。

面白いかどうかは別としても、これは一種の、究極の幸福の形なのかもしれない。

 

「受け入れられるということは、相手を理解することだから――その願いを聞き入れて行動しようとする貴方たちを、どうして悪魔と呼べるのかしら」

 

デーモンなんて、センスの悪い。

取り憑いた人間が、たまたま攻撃的な感情を有していたからなのだろうけれど、彼らが自らの意思で叶えたかったのは、ただ仲間を増やすことだけだったのに。

 

「先ほどから何を言っている!!」

「ごめんなさい。ただの独り言よ」

 

でもその独り言が相手の感情を逆なでしてしまったみたい。触手がびったんびったんぶつかってきた。この反応は初めてです。

攻撃も大雑把。感情的になって八つ当たりみたいな攻撃になってるからかな。

これなら干渉力を強めればサイオンのコントロールは奪えそうね。

 

「私にとって貴方たちはデーモンなんて呼び恐れることなんてない、って思っただけ。純粋で綺麗なモノを美しいと思いこそすれ、どうして恐れなければならないのかって。そう思ったのよ」

 

そろそろお兄様の方が終わりそうだ。

こちらも動かなければ、と体という器に縛りつけられたまま、自爆しないよう体を拘束させてもらうことにする。

事象干渉力によりサイオンが急速に減速、冷気を伴い相手に襲い掛かる。

そこにCADで細かな指示を送れば見事に服だけが凍り付いた。

厚めに凍らせてもらったので壊すことも難しい。一種の、厚手の鎧のようになっている。重くてかたくて身動きが取れなくなり、バランスを崩した相手は倒れてしまった。

 

「貴方たちは透明な水のよう。なんにでも染まれるし、なんにでも変われる。貴方たちが選ぶ宿主が、惹かれた願いが負によるものでなければ、こうして争うこともなく、手を取り合うこともあったかもしれない。

ピクシーの受けた祈りの原動力を知っている?『愛』よ。人を想う心から生まれた愛。そこには貴方たちと同じ負の感情も含まれるけれど、根底にあるモノが違うの。――だから私は彼女が好きよ」

「それは!お前に都合がいいものだからだろう!!」

 

あら、意外に人の話を聞いてくれるみたい。しかもちゃんと理解もできるのね。

人間同士より話がしやすいかもしれない。

 

「それはそうね。あの子は私の大事なものを守ってくれる。だから好きでもあるのだけれど、それは好きになるきっかけの一つね。まだ付き合いは浅いけれど、自分の好きなものを好きな人に悪い人はいない理論かしら。多分私は、彼女が私の大事なものを好きでいてくれる限り、彼女のことを好きになる。でもそれは、貴方たちも同じじゃない?」

「なんだと?」

「同じ考えを持つ同士だから大切。同じ思想じゃなくなったから排除する。今貴方たちがピクシーにしていることってそういうことでしょう?」

「………」

 

何か言いたそうに口を開くけれど、言葉にならないようだ。彼らもこんな混乱するんだね。それとも宿主の影響かな。とても人間らしい。

触手が、攻撃モードから観察モードに移行していた。

暴れることを止めてくれたおかげで少し周りを見る余裕ができた。

もちろん干渉力を場に敷いて魔法を発動させないようにはしているけどね。油断はしません。

お兄様は少し離れているので目視は難しい。けれどほのかちゃんは障害物のない所にいたので防戦一方なのがよく見えた。

先ほどまで繊細な光学迷彩の魔法を展開していたのだ。消耗していてもおかしくないけれど、元々彼女は対人で訓練をしてきていない。

直接戦うことなんて初めての経験だろう。横浜でも彼女はサポートがメインだったから。

ましてや相手はナイフを持っている。

魔法師同士の遠距離攻撃ならまだしも近接となれば彼女たちでは不利だ。心配して見つめる先で、パラサイトが魔法を纏った刃でほのかちゃんの服を切り裂いた!

 

「兄さん!」

 

先に述べた通りの理由で私はほのかちゃんのフォローには入れない。こんな時に、と思うかもしれないけれど、ピクシーがいるからこその余裕でもある。

 

「ほのか!」

「大丈夫です!」

 

お兄様の声に元気に返すけど大丈夫じゃないよ!玉のお肌に傷が付いちゃうよ!!

好きな人にかっこつけたいは男女関係ないのね。――想いが力に変わる、なんて素晴らしきかな王道パターン。大好き。

ほのかちゃんの髪飾りに不思議パワーが注入されて、呼応するようにピクシーが力を解き放つ。

どんな原理が働いてたんだろうね。とんでもないエネルギーがその場にあふれ、私が掌握していた一帯の干渉力が揺らいだ。

 

「ピクシー、偉いわ」

 

ここからではいかなピクシーでもこの程度の呟きは聞こえないだろうけど、褒めずにはいられなかった。

お兄様の指示通りちゃんとほのかちゃんを守るピクシー、いい子。やっぱり直に褒めてあげたい。

なによりすごいね。原作よりも強いらしい私の事象干渉を揺らがせるんだ。

だけどその揺らぎの隙を突いて、魔法で拘束を解いたりとか暴れたりとかするかと思っていたのだけど、拘束していたパラサイトは身じろぎすらしなかった。やろうと思えばできたはずなのに、どうしたのだろう。

 

「…るい」

「え?」

 

小さな呟きが聞こえ、振り返った直後、パラサイトは苦しみだした。

お兄様の想子弾が当たったのだ。拘束されている範囲でのたうち回るパラサイト。先ほどまで言葉を交わしていただけに、ちょっとかわいそうに見えた。

同時にエビフライが食べたい、と思ったのは恐らくびったんびったんしている姿がエビに見えたんだろうな。ごめんね、貴方には死活問題なのに。

徐々に凄まじい光が完全に治まって、発信源を見ればほのかちゃんがふらふらと目を回していた。

 

「ほのか!」

 

慌てて駆け寄って倒れ込みそうなところに何とか間に合った。

けど、ごめんなさい。女の子に言うことじゃないとわかっているけど重い。

腕の力だけで支えるのは無理があり過ぎてせめてほのかちゃんのクッションになろうと抱き寄せたところで、力強い腕に支えられた。

慣れない感触――ピクシーだった。

 

「ありがとう、ピクシー。助かったわ」

 

ほっとして見上げたピクシーの表情は無表情だったけれど、どことなく柔らかく見える。ああ、目が細められているのだ。

魔法ではなくボディの性能による動きのため、触手も動いていなかった。

…触手で思い出したけれど、あの強い光――サイコキネシスを放った時、触手の動きは無かった。温かい光に包まれるような、そんな感覚。恐らくほのかちゃんの力が影響したのだろう。

今後そちらを使ってくれないかな?と思わなくもないけれど、その度にほのかちゃんが倒れちゃったら悪いものね。

吹っ飛んだパラサイトも前の二人に続いてお兄様の想子弾を受けてもがき苦しんでいた。それに気づいているだろうにピクシーは無反応。

 

「…ピクシー、大丈夫?」

『大丈夫、とはどういう意味でしょうか?』

 

ブンッとの音と共に返事が返ってきた。…これって大丈夫の言葉の意味を聞かれているわけじゃないわよね。

 

「彼らは貴女にとって同胞だったのでしょう?辛くはない?」

『彼らはマスターの敵です』

 

そこが基準か。そもそも彼女自身破壊されそうだったのだ。

見限っても不思議じゃないか。

 

「ありがとう、ほのかを守ってくれて」

『マスターのご命令でした』

「ええ。ご苦労様。よくできたわね。偉いわ」

 

ほのかちゃんを抱えているので頭を撫でてあげられないのが残念だ。

腕の中のほのかちゃんはぐったりしている。意識はまだない。

その体をピクシーの代わりにいい子いい子と褒める。ほのかちゃんも頑張ったもんね。怖かっただろうによく立ち向かっていたと思う。

ピクシーが動く私の手に注目しているらしいのは、触手の動きでわかるのだけど、もしかしてこれも警戒対象と思われたりしてないわよね?セクハラじゃないよ。褒めてるんだよ?

言い訳をすべきか悩んでいると優秀な耳がお兄様の呟きを拾った。

 

「しかしまずいな…」

 

ああ。さっきの魔法は目立ったでしょうからね。藤林さん、データの改ざんはよろしくお願いします!

 

「そうですね、お兄様。一旦この場を離れませんか?」

 

お兄様が私の言葉にちょこっと目を見開いてから何やら思案していると、助っ人とーじょー!

 

「達也くん!」

「ゴメン、遅くなった!」

 

エリカちゃんと吉田くん、…そしてもう一人、西城くんも遅れてやってきた。

ナイスタイミングです。

でもお兄様にはそうじゃなかったみたいで。

 

「えっと…達也?何だか、顔が怖いよ?」

「俺は強面だからな」

 

え、お兄様強面?そうかな。綺麗なお顔立ちですよ。

 

「いや、強面っていうのは微妙にそういう意味じゃないというか…意識してやってるなら余計怖いんだけど」

 

びくびくお兄様におびえる吉田くん。…うーん、達幹?じゃなくて。ごめんね吉田くん。お兄様も大変だったのですよ。

西城くんにも声を掛けるけれど、こちらは普通に返していた。吉田くんいじめ好きだねお兄様。

彼はプライド高いから身内にだけなら揶揄われてくれるタイプ。お兄様気を許してもらってるようでなによりです。

と微笑ましく見ていたら腕の中で反応が。ほのかちゃんが目を覚ましたみたい。

 

「ほのか、大丈夫?」

 

お兄様たちはまだお話し中だったのでこっそり声を掛けます。

 

「あれ、私…」

「ピクシーが貴女を守ってくれたの。その時ほのかは気を失ってしまって。どこか痛むところはない?頭が痛いとか」

「…大丈夫。どこも痛くない」

 

よかった。怪我はないみたいだし、ピクシーの魔法の副作用もないみたい。ほっと安心です。

お兄様が視線を向けたのでほのかちゃんの手を取って強制的にお手振りを。元気アピール。

お兄様が口元を弛めたことでほのかちゃんがぼん、と顔を赤くしちゃってまたくったりしてしまったけど、今度は意識があるので大丈夫。

他の三人もほのかちゃんに気付いて手を振ってくれた。心配してくれてたものね。

倒れているパラサイトの話になったんだけど、彼らは戦いの装備はしてきていても、回収の準備はしてきていないようだった。まあ当然か。遭遇できるかもわからない状態だったもの。

エリカちゃんちの人たちは呼べばすぐ来るから倒した後に回収させるつもりだったのか。

彼らも助っ人に来てまさかすでに戦闘が終わっているとは思っていなかったのだろう。

吉田くんちに運ぶことで合意したところで、エリカちゃんから早く帰った方が良い、との助言が。

お兄様ピンと来ていないようだけれど、ピクシーとほのかちゃんの恰好を指摘されて口をつぐんだ。

服の一部に切れ込み入っちゃってますからね。ダメージファッションにしてはちょっとやり過ぎ感。

この恰好では見咎められても何も言い訳できないから。

その後どうなるか見たかっただろうけれど、お兄様だけ残って私たちだけ帰すという選択肢は無いだろうから。

これもパラサイトを連れ去られるための予定調和です。車を呼んで移動することになった。

 

 

――

 

 

ほのかちゃんちにコミューターのままではいけないことに気付いて、駅でキャビネットに乗り換えた。

お兄様の横に座るのは誰か、とほのかちゃんが一瞬身構えたけど、気にしなくていいですよ。私はピクシーと座ります。

お兄様から視線を受けたけど、お兄様は確かめたいことがおありでしょう?

ピクシーはお兄様の傍に居たいようだけれど、正面は譲ってあげるから我慢して。

 

「あの、達也さん…?」

「送っていくよ」

 

お兄様の言葉に恐縮するほのかちゃんだけれど、嬉しさが隠しきれてません。

好きな人に送ってもらえるってそれだけで嬉しいことだものね。…この調子じゃ、二人きりでデートしたらどうなっちゃうんだろうね。今のうちに慣れるといいのだけど。

動き出したキャビネットの中、お兄様はピクシーを見て、隣のほのかちゃんを見て、を三回ほど繰り返していた。

おかげでほのかちゃんはそのたびにびくびくしていた。可愛い。小動物みたい。

 

「兄さん、ほのかが困っちゃってるわ」

「ああ、悪い」

 

お兄様無意識でしたか。

無意識に観察しちゃう辺りやっぱり四葉の研究魂は受け継がれてますよね。探求心?

 

「三人とも、今夜はご苦労様」

 

行く前はピクシーに対してただの3Hに向けての対応、ロボットに対してる時と同じ物の扱いだったのに、今では人数として数えている。心境の変化が速い。

労いの言葉を掛けられて私はにっこり、ほのかちゃんは真っ赤に、ピクシーと言えば表情を念動力で変えることは禁止されたままなので目を細めるだけだったけれど、それでも嬉しそうに見えた。

 

「それで、ええと、ほのか。何と言えばいいのか…脱力感などは無いか?」

 

お兄様にしては歯切れの悪い言葉。どう尋ねていいのかまだ定まっていないのか、丁重に言葉を選んでいる。

唐突な問いかけに戸惑いながらほのかちゃんも戸惑いつつも首を振った。

 

「そうか…ピクシー。お前はどうだ。疲労…という表現は適切じゃないな。お前の本体を構築する想子や霊子の消耗を感じられないか?」

『消耗は自然回復が可能な範囲です、マスター』

「そうか」

 

顎に指を掛けて思案顔。かっこいいよね。ほのかちゃんが横顔にうっとり。ピクシーも熱心に見つめている。

…ハーレム会場かなここは。お兄様好きしかいない集まりだった。

なのにお兄様ったら――という冗談はここまでにして。心配しているのだから茶化すのは可哀想。

診断するように質問しているけれど、ただの好奇心ではなく、彼女たちの身を案じているのだとわかる。

 

「さっき、ピクシーが強力な念動力を放った時のことなんだが…ほのか、何が起こったか自覚はある?」

「いいえ、なんのことでしょう?」

 

ピンと来ていないほのかちゃん。客観的に見えないのだからしょうがない。

彼女は知らないのだ。あの瞬間の神秘的な光景を。

光が呼応して起こした奇跡の力を。

 

「冷静に聞いてほしいんだが」

 

前置きに、ほのかちゃんが固唾を飲んだのを見守ってから、お兄様は努めて冷静に伝える。

 

「ピクシーが念動を放つ直前、ほのかからピクシーに想子が供給されていた」

 

私にはそのラインは見えなかった。ただほのかちゃんの髪飾りが発光し、次いでピクシーにも光が宿ったように見えるだけだった。

 

「起動式を展開する際にCADへ想子を注入するプロセスに似ていた。呼び水…みたいなものかな。あるいは、共振か」

 

ほのかちゃんが怯えを含んだ視線をピクシーへ向けた。

魔法師と機械が想子をやり取りする。その現象自体は現代魔法の術者には馴染みのものだ。

だけど本来、ピクシーの「機体」にそのような能力は備わっていない。

魔法師から直接想子を受け渡しする機能なんて初めから備わってないのだ。ただプログラミングされて動く機械に、自分で新たな機能を会得することは不可能。

つまり中にいるモノによって何かをされた、と思うのは必然で、ほのかちゃんが怯えるのも当然の反応とも言えた。

 

「美月はああ言っていたが…ほのかとピクシーの間には、やはりある種のパスが通じているようだ。そしてどうやら」

 

何やら苦々し気に、言い難そうにしているのはどうしてだろう。おかしなものを、というよりきっかけになるようなものを渡してしまったという後悔の念か。

 

「…どうやら、その媒体となっているのが、ほのかの髪飾りみたいなんだ」

 

その言葉に、ほのかちゃんは今日一番の驚きぶりを見せた。

 

「正確には、その水晶だな。一体、どういう理屈でそんなことになっているのかわからないが…」

 

ほのかちゃんの両手が髪飾りの水晶に触れる。無意識のもので、特に何らかの結果を意図したものではなかったのだと思う。

しかしその直後、推理を裏付けるような現象が生じた。

ピクシーの体、その胸の中央から霊的な光が放たれたのだ。

強い光ではない。視覚的に言えばランタン程度の明るさ。

けれどその関連を疑うには十分なほど同期性が強すぎた。

ほのかちゃんは奪われるのを恐れるように飾り玉を両手で包み込んで隠そうとする。健気だ。

お兄様から貰ったものだものね。離したくない、とお兄様相手でも不審に思ってしまったのだろう。でも安心して。

 

「原理的なことはひとまず置いといて…コントロール法を身に付けなくちゃな」

 

警戒する小動物を宥める口調で呟くお兄様に、警戒感を意外感に変えてほのかちゃんが見つめ返す。

お兄様は優しいから、あげたものを取り上げようとはしないよ。それがほのかちゃんに害にならない限り。

その確認は既に口頭だけだけど、本人たちの口から取れているしね。

 

「ほのか、頑張りましょうね」

 

どうやってコントロールすればいいのかわからないけれど、彼女も特訓することが決まった。

混乱気味のほのかちゃんにこぶしを握ってファイト、と応援すれば、こくんと頷き目に光を宿した。

そうそう、水晶が危険なものじゃないとはっきりすれば、それは常に身に着けられるお守りになるからね。

そんなやり取りを横目に、ピクシーに視線を移したお兄様は、とんだ爆弾発言をぽそり。

 

「とりあえず、ピクシーを買い取っておいて正解だったか」

 

…それって個人で買うにはとってもお高いお値段~。一高校生が買えないよ。ほのかちゃんはほへ~、とキャパオーバーで感心するだけだけど、正気に戻らないことを祈る。でないと大変な騒ぎになっちゃう。

今日はお兄様の方がうっかりね。

 

 

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