妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
深雪視点
危険視したラッキースケベ…ラブハプニングは無かった!と、思う。なんで自信が無いのかって?
寝かしつけイベントが回避できなかったからだよ!なんでだろうね?私から誘わなかったよ?避けようともしたよ。でもお兄様が許してくれなかった。
…あんなお願いされちゃったら断れないじゃない。お兄様卑怯!
横になってからの撫でる手つきの妖しさに、慌ててベッドから手を出していたずらに動くお兄様の手を封印したよね。
あれ以上撫でまわされるのはよくない気がする!と。
グッジョブ私。おかげでお手手温かくてすぐに夢の世界に旅立ちました。
そこでお兄様がすぐに出て行ってくれてたら問題ないはずなんだけどね。
寝ちゃったら何するかわからないと不安を覚えるのは、昔母と一緒に寝させてもらった時に注意を受けたからだ。
何度かベッドの上で正座させられました。淑女としてなっていない、と。
申し訳ない。でも弁明させてほしい。寝てる人間はどうやってコントロールできるというのか。
無理じゃない?寝相悪いのって自分の意思で治せるの?
別にお兄様とは、寝かしつけられただけであって一緒に寝たわけじゃないのだから、蹴っ飛ばしたりとかしてないと思うけど、それでも布団を蹴ったところを直されていたりしたら気まずい。
はだけた布団直すイベントとか発生されても私にはどうしようもできない。
…そこはお兄様の自己責任でお願いします。私はちゃんと断ろうとしたもの。
「おかえりなさいませ、お兄様。お勤めご苦労様です」
「ただいま深雪」
「…今朝出かけられる際も思いましたが、ご機嫌ですね」
「ああ。昨日は深雪に甘やかしてもらえたからね。次の約束もしたし。おかげですこぶる調子がいい」
師匠にも珍しく褒められた、と語るお兄様はいつもより肌のツヤがいい。…のだけど。
「あの、私、昨日何をしたのでしょう…?」
お兄様の言われたことにさっっっぱり記憶が無い。甘やかす?約束⁇何のことだ!?
お兄様は、ああ。と笑みを深くして。
「やはりあれは寝ぼけていたのか。だとしても嬉しかったよ。約束は、また映画を見ようとね。この間の猫の映画でもいいよ。深雪の好きなものを選んで、この件が終わったら一緒に見よう」
「それは、ぜひ…」
よ、よかった…変なことは言ってないみたい。だけどもう一つの甘やかすのことはさっぱり。
でもお兄様が嬉しいならいいのかな。…うん、ここはスルーだね。
「この間の作品もいいですが、まだほかの作品も、それこそ猫ではなく今度は犬が主役のモノもいいですよね」
大抵犬の主役の作品は泣かされるモノが多いけれど、あれはあれで感動して癒される。
この件の解決はまだ先だものね。ピックアップする時間はありそう。探してみよう。
「それもいいんだけれど、深雪。昨日聞きそびれたことがあるんだが」
「なんでしょう?」
「ほのかの家での実験の結果を聞いていない」
んぐっ。お兄様、覚えておいででしたか。流せたと思っていたけれど、ダメだったみたい。
けれど、この感覚を伝えるって…
「その…」
「とりあえず俺はシャワーを浴びてくる」
そういえば帰ってきたばかりでしたね。朝食の準備をしながら纏めておけってことですか…。
猶予が短いけれど時間が与えられているだけありがたいと思うべきなのか…。
羞恥に耐えながらなんとか言葉を駆使してアレな話に聞こえないよう、細心の注意を払って話し終えると、お兄様はとりあえず結界が間に合ってよかった、と一言。
本当にね。先生、いろいろとアドバイスをありがとうございました。今度お礼に何か持って行きます。
「だが、アドバンテージがあるからと言ってあまり前線に出ないようにな。…七草家の息のかかった面白部隊のこともある」
ああ、昨日のあのプロと思えない監視をしていた彼らですね。
結局私たちがその場を立ち去るまで現れなかったけれど、何処で迷子になっていたのだろう?でも戻ってきた青山墓地でサンプル持ち帰れるのだから、棚ぼたかな。
いくら高校生の私たちが捕獲できたとはいえ、お兄様の技があってこそのこと。
彼らの実力じゃ到底取っ捕まえられない。
「私はお兄様の横には並び立ちたいと思いますけれど、自ら前線に立とうなどとは思っておりませんよ」
「ならいいが。…パラサイトだけでなく、ピクシーと会う時も結界を張るようにな」
ならいいが、と言いながら少し眉間に皴が寄るのは本当は横に並ぶより下がって守られていて欲しいからなんだろうな。だけど、隣ならまだ守れる範囲ではあるからギリギリ妥協点ってところ?
「そうですね。私も彼女と気まずくはなりたくないので気を付けます」
昨日は驚いて結界を解いてしまう醜態も晒したしね。もうあんなことにはならないように気を付けねば。
しかし…こう言っちゃなんだけど、お兄様の鋼の精神ヤバいね。
悶えた深雪ちゃんに抱きつかれて無反応って。…妹なんだから当たり前か。
私だったらたとえ血の繋がった兄妹であっても、深雪ちゃんほどの美貌ならぐらっときてもおかしくないと思うけどね。
流石お兄様だ。言わないけどね。なんか怒られそうなので。
「それから」
まだ何かあるの!?お兄様朝から私を攻めすぎでは?
体力が既に黄色ゲージから赤に変わる寸前なのですが。
「深雪の言う妹の役目とは何だ?」
「…はい?」
「この発言時は起きていたと思うんだが」
はて、何のことかと深雪ちゃんの優秀な脳みそをひっくり返してみると一件ヒットしました。そう言えばそんなことも言ったね。
お兄様がおかしなことを言うから釣られたというか。
「お兄様もよく言うではないですか、妹を可愛がるのは兄の特権だ、など色々と。それと似たようなものです。お兄様にも色々あるように、妹にだって色々とあるのです」
「その一つが困った兄の願いも叶えてくれる、なのか。妹の役目も大変だな」
「…そう思うのでしたら手加減してくださいませ」
「善処しよう」
あ、これしないヤツだ。
お兄様のすまし顔の即答に、私の心はレッドシグナルが点滅。ヒットポイントが、残りわずかです。誰か回復を。
――
この日のお昼、皆ぐったりしていた。
ほのかちゃんは昨日の疲れが出ているのだろう。
もしかしたら初めての戦闘で興奮して眠れなかったのかもしれない。目の下にはクマさんがいた。
エリカちゃん、西城くん、吉田くんは、あの後面白部隊とやり合ってお兄様から貰ったパラサイトを奪い去られてしまったらしい。
ここでそんな話はしていないけれど、お兄様から昼前に教えてもらった。覚えてよかった四葉式暗号文である。パターン幾つもあるから大変。
皆頭の中どうなってるの?深雪ちゃんボディだからできたこと。感謝してます。
元気なのは美月ちゃんと、なぜかお兄様だけ。
なぜお兄様はそんなに元気なの?私は朝のやり取りで疲労が取れてません。起きた時はすっきりしてたのにね。
お兄様の苛めっ子。お兄様は質問の鬼です。
「何か言いたげだな、深雪」
「何でもないわ」
お兄様のからかいを込めた視線に、私はそっぽを向いた。
たったそれだけなのに、周囲からはざわめきが。
…皆お昼くらいこっちに注目するの止めない?ご飯は集中して食べるべきだと思うな。
「なあに、達也くん。深雪を怒らせるなんて珍しい」
「怒らしちゃいないさ。困らせはしたけれど」
「…朝から兄さんが容赦してくれなかったからでしょ」
ざわっとざわめく声が大きくなる。ところどころ悲鳴も聞こえたけど、外野は楽しそうだね。私はちっとも楽しくない。
朝の質問するお兄様は本当に妥協をしてくれなかった。
あの時はお兄様におかしく思われないよう説明しなきゃ、って気を張ってたから答えることに必死になっていたけれど、今となって思えばあの朝の忙しい時じゃなくてもよかったのでは?とむくむくと。
…むしろそのまま流してくれてもよかったのにと思わなくもない。
…恐らくそれを察知しての今朝だったのだろうけど。
「昨日の夜は寝かせてあげることを優先したが、本当なら昨日のうちにする約束だっただろう?」
「それは…そう、だけど」
「シャワーの時間じゃ足りなかったか?」
確かにわずかな時間だったけど猶予があったからうまく話せた、という点は有難かったけれど。
だけどそれと、口に出すのはまた別問題の内容だったと、今のお兄様ならわかっているはずなのに。お兄様は意地悪だ。
「…時間が問題じゃないことくらい、兄さんならわかってたでしょ?」
「しつこくしたのは悪かったと思う。だがな、お前が辛いのは――」
「兄さんストップ!思い出させないで!!」
お昼御飯中まであの話を蒸し返さないでほしい。いくらオブラートに包みまくったとしても私が羞恥を覚える内容であったことは伝わっていたはずだ。
私の様子がおかしかったことは現場にいたお兄様が気付かぬはずがないのだから。
淑女教育頑張っているからと言ってこれだけ疲労困憊の中赤面を抑えるのも無理がある。
俯いて顔を覆っていると、周囲のざわめきが消えていた。…人の気配はあるはずなのに、なぜか皆固まっている雰囲気が。
なぜ⁇でも確認する余裕なんてない。こっちはこっちでいっぱいいっぱいなのだ。頭が上手く働かない。
「……ちょっといいか、達也。違うのわかってて聞くぞ」
そんな中、一人の勇者が現れる。
「レオっ!」
吉田くんが、まるで危険だ!と叫んでいるような悲痛な声をあげる。だから、さっきから何が起こっているの?
「いや、達也はどうか知らないが、深雪さんがここでそんな話をすると思えないからな」
んん?私ですか?どういうこと?そして西城くんに初めて名前呼ばれたね。吉田くんの影響か、やっぱりさん付け。
なんというか、西城くんなら呼び捨てかな、と思ってただけに、不思議な感じ。
「なんだ?」
「今朝、何をして深雪さんを困らせたんだ?」
周囲から勇者、勇者だ、という声があちこちから。やっぱり西城くん勇者なの?…似合うね。戦士とか騎士とかそっち系かと思ってたけど。
でも西城くんが勇者なら対するお兄様は魔王か何かですか?
その魔王様は淡々と答えた。
「後回しになっていた話の続きを聞かせてもらっただけだ」
…私はできれば流してもらいたかったのだけどね。ぐったりと体の力が抜けて更に項垂れた。
「……んなこったろうと思った」
「ナイス、レオ」
「よく聞いてくれた」
「西城くん…」
「なんで美月はそんな悲し気なのよ」
「いえ、なんとなくそんな気はしていたんですけど、もう少し夢を見ていたかったと言いますか」
「柴田さん…」
「って、ほのかは?さっきから何も聞こえないけど――ってほのか?ほのかー!ダメ、気を失ってる!」
「いつからだ?まさか達也の会話の途中で?!」
…なんか、知らぬ間に大惨事?周囲も溜息やらなにやら聞こえた後喧噪を取り戻した。
「皆、食べないのか?」
そんな中、お兄様の落ち着き払った一言にお兄様のせいだ!との非難が集中した。
私も声をあげたかったけれど、その気力すらなかった。
ご飯を食べ終えたのはお昼時間が残りわずかになった頃。長い戦いでした。
教室に戻ってから、ほのかちゃんから本当に何もなかったんだよねと念押しされるように確認されたけど、「何度も言うけど兄妹だからね?」と否定を。
いったい私たちの間に何があるというのか。
「そうだよね、兄妹だもんね」
涙目になって縋られるとちょっと変な気を起こしそうになるけれど、ダメダメ。ほのかちゃんはお兄様に懸想しているのだから変に悪戯なんてしちゃいけない。
同性なのにそんな気を起こさせるなんて、ほのかちゃん、恐ろしい子!
「兄さんの言葉足らずは、何とかしないといけないわね」
「…たまにわかっててやってるのかと思うよ」
「わかってて?どうしてそんなことする必要があるのよ」
「けん制、とか?」
落ち着いてから先ほどのやり取りを思い返すと、周囲が何に騒いでいたのかわかってきた。
確かにお兄様のあのセリフと私の言動は勘違いを生んでもおかしくない内容だったかもしれないけれど…みんな想像力豊かだね。
シャワー中、兄妹でなんやかんやするわけないだろうに。でも私も他人事なら妄想しただろうなぁ。
前世でもカフェとか一人で飲んでる時隣のカップルの会話とかいい妄想のネタだったもの。
しかし、兄が妹に手を出していると錯覚させることが一体何のけん制になるのか。
そのような内容を訴えるとほのかちゃんはきょとんとして答えた。
「でも時折周囲を睨んでいることもあるよ」
「過保護よね」
というよりお仕事なんだろうな、お兄様にしてみれば。
四葉家次期当主の虫よけはガーディアンとしてはミッションの一つだろうから。
それがまたこうして勘違いを生むのか。
「今度リーナに付いていってお昼別にしてみようかしら」
「えええ!?そ、それはちょっと!」
どうなんだろう、とほのかちゃんが慌てだす。
そろそろ本当にお兄様離れしないと、来年度の新入生とのラブが生まれにくいと思うのだけど。
先輩ってだけで近寄りがたいのに妹の傍に居たら難易度上がるもんね。
「学校内で何を心配することがあるの?」
「心配っていうか、…深雪、達也さんと離れて食事するのって4月以来じゃない?」
「そうね」
「…達也さん、嫌がるんじゃないかな?」
心配するのはそこなの?
「ほのか…。家に帰れば二人でご飯食べるのよ?学校で別々になったところで家は一緒なんだから、何の問題もないと思うけど」
何でお昼別にしようと話しただけでそんな動揺するのだろう。
本来私の予定では時々お兄様たちとお昼を一緒にして、他は生徒会だったり、他にお友達を作ったりして外側からお兄様を見守る予定だったのに。
気が付けばお兄様の横が定着してしまっていた。
忙しかったから流れに身を任せてしまっていたけれど、そろそろ本格的に動かなくては。
…リーナちゃん明日来るかな?って思ったけど、明日は土曜日。お昼を一緒にすることはないかも――と考えてから、はたと気づいた。
そうだ、何故気付かなかったのか。パラサイト事件は明後日が決着の日だ。
どうして映画選ぶのに猶予があると思ったのだろう?…あ、そうか。来訪者編は、リーナちゃんは卒業式までいるって思ってたから、そこで混ざってしまって勘違いしてたのか。
「ねえ、せめて先に達也さんに了解を取った方が良いんじゃないかな?」
「そもそもリーナが来てないから一緒にお昼出来るかなんてわからないもの」
チャイムが鳴ってこの話はうやむやに。
教材に向かいながら、この後の流れを考える。
明後日の夜、恐らく原作通りの流れから変わらないだろう。
お兄様は劇的にパラサイトを消滅に至らしめる攻撃の術がないし、吉田くんも同様、弱っていない状態では封印もできない。
リーナちゃんは物理にしか攻撃できない。――私が、凍らせることが、彼らを消滅させられる唯一の対抗手段。
初めて、人間以外を殺すことになる。
人間が偶然開けた穴に引き込まれ、ただ本能のままに活動しただけなのに。生物として真っ当に動いただけなのに。
――人里に下りてきた害獣を駆除するだけ。そう思えればいいのに。
(パラサイトにだって、意思があるんじゃないかって)
縋るように見つめてきた、あのパラサイトの目が忘れられない。
あれは宿主が見せたのか、はたまた――中のモノに芽生えた意識だったのか。
恐らく次に会う時は別の宿主に宿った後だろうから、記憶がリセットされているだろうけれど。
(まま、ならないなぁ)
彼らに生まれ変わりがあるか知らないけれど、どうか、次生まれてくるときはこんな世界に関わらないで自由に生きられるように。
早くこの世界から離れられるように終わらせてあげよう。それが、私にできること。
NEXT→