妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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入学編⑨

深雪視点

 

 

終わった…。私の楽しい学校ライフが。

とは、流石に冗談だけど恥ずか死ぬよね!舞台女優張りの大げさな立ち回りに、独演会もどき、そんでもってのお兄ちゃん大号泣事件の三本立て!

やめて!ライフはもうゼロよ!!

まあ冗談はここまでにして。

たまには真面目モードも見せないとただのピエロで終わってしまうので。

本当はもう少しじっくりやろうと思って長期戦覚悟してたんですけどね。

直前で予定変更しちゃいました。

だって、すでに見えたんですもの、『エガリテ』のリストバンド。

え、早くない?!お兄様がストーカーされて逆に見つけちゃうあれですよね??

そう思ったら閃きました。

これ、早めにお兄様でフィッシングできてしまうのでは?大ごとにする前にぷちっといけちゃうのでは?と。

そもそもブランシュとは反魔法国際政治団体などと表向きは謳ってはいるが、その裏は公安もマークする犯罪組織だ。更にその奥を掘り返せば元は外国に通じていて――頭角を現しそうな魔法師を見つけては潰すか攫うかだの、国力を減らそうという思惑を隠しに隠した組織なのだ。ま、こちらの話は公安は尻尾すら掴むどころではないのだが。ばーい四葉調べ。軍の一部の方々は知っていたりしますけどね。情報共有大事。だって共に手を取って対大亜連合防衛協力してますのでね。

ってことでお兄様と情報共有と、協力をお願いに。

…ところでお兄様何かに目覚めました?ここでもお兄ちゃんを強要される…。期待されてもそんなにお兄ちゃんレパートリー無いですからね?

 

「お兄ちゃん、お願い(きゅるん)」

 

イメージは某赤い頭巾のウサギさんである。

…快く引き受けていただけることになりました。

 

さあて、どう動きますかねー。

 

 

――

 

 

憂鬱な登校。

すでに駅前から視線がものすごくてですね。

 

「手でも繋ぐか?」

「…それをしても今は安心できそうにないかな」

 

多分ただ煽るだけだよ、と呟けば隣で楽しそうに(ただし妹視点)苦笑しているお兄様。

 

「やっぱりこうして肩を並べて登校できるのはいいな」

「それは同意見だわ。この距離が一番いい」

 

私も嬉しくてお兄様に微笑みかけたんだけど、その途端周囲にざわめきが起こる。

そんな。珍獣が動いた!じゃないんだから。

いや、その気持ちもわかりますけどね。

きっとすでに学校中で噂なんでしょうね。昨日の今日だけど。

仲の悪いと思われていた兄妹!その実態は本当は仲良し!?みたいな?号外でも回ってたかなってくらいみんなの視線がとにかくすごい。

まるで時の人のよう。

 

「まるでじゃなくて時の人だろうな」

 

あらま。口に出ちゃってましたか。

気が緩みましたねぇ。

 

「目立っちゃったから仕方ないのだけど」

「元々お前が目立つことは当然だし、俺の場合、どうあっても悪目立ちする可能性が高かったんだから、まあマシじゃないか?」

「兄さんのことキラキラした目で見てる人もいるようだし」

「…嬉しそうですね深雪さん」

「どうせ注目されるなら憎まれ役よりヒーローの方がいいでしょう?」

「柄じゃない」

「私にとってはいつまでもヒーローだもの」

「それはお前にだけだよ」

 

頭にポン、と手を置いて髪を撫でればまあ不思議。

黄色い声が各所から上がりました。

お兄様もちょっとびっくりして手が止まりましたけど、再開するんですね。歩きづらくないです?

そんなこんなで注目を浴びて登校した教室で、挨拶よりも先にクラスメイト全員に頭を下げられる私はどうすればいいでしょう?

特に頭を下げているのはみんな大好き、かませ犬の森崎くんです。

 

「司波さんを追い詰めるつもりはなかったんだ!僕の、僕たちの価値観を押し付けて本当にすまない!」

 

そのあとに続くようにみんなして謝罪の嵐です。

まってまって。朝からそんな涙目にならないで。これから授業の前に全校集会があるのよね。

こんな落ち込んでたら周囲からどうした!?って注目されるよ。

 

(…思い込みは激しいけど、素直でいい子たちなんだよねぇ)

 

「みんな、謝らないで。みんなが悪いんじゃないの。

私もみんなと仲良くなりたくて、みんなが避けているなら私も避けた方がいいって。…ひどいでしょ?」

 

嫌われたくないから、いじめをする心理と何も変わらない。

争いを避けるようにしたつもりだけど、ただそれだけだから。

けれどそれを否定するように首を振ってくれた。

 

「司波さんが私たちを優先してくれたこと、嬉しかった。でももう無理しないで。昨日の話を聞いて私も自分の目が曇ってたことに気付いたの」

「光井さん」

「二科生と仲が良くても司波さんは司波さんだもの」

「北山さん」

 

おおっとクラスのトップ美少女に挟まれました。ここが天国。

…と、そうじゃないね。なんだか話が早くて若い子っていいなって思ってました。私も15歳。もうちょっとフレッシュさを出していこう。

 

「ありがとう。あの、こんな時なんだけど私のことは深雪と呼んでくれない?」

「いいの?!じゃ、じゃあ私のことはほのかで!」

「雫って呼んで」

「わかったわ。ほのか、雫。これからもよろしくね」

「「こちらこそ」」

 

女子高生パゥワーで一気に空気を塗り替えてやりましたとも。

これで仲直りです。

他の子たちも集まってキャッキャします。

男子が疎外感半端ないけど、なんか後方彼氏面じゃないが温かく見守ってる風になってるから、いいのかな。

クラスの問題も解決したし、このまま流れでクラスみんなで講堂まで行くことになった。

…廊下に広がって歩いちゃいけませんよー。

で、集会に参加したんだけど、私とお兄様はちょいちょいっと生徒会長に呼ばれ、誰からも見えない特等席へ。

なんでも、注目されすぎちゃって大変でしょ、と気を使ってくれたらしいけど…それってこれからの話に出るからってことですよね。

噂だけじゃなく直接話しちゃうのか。…あ、一応名は伏せる?匿名の意味無さそうですけどね。ある兄妹の悲劇を例にして一科と二科の在り方を考えたい?あー。同情かって因習を断ち切ろうってことですね。

そして始まる会長の演説会。

一週間後に討論会するよー、がメインのはずなんだけど印象操作すごいね。一科二科の因縁取っ払うのは難しいけど差別は無くせる!まずはそう考えさせる原因をみんなで追求だー!って流れになってる。

原作の時ってこんな熱気無かったよね?ぎすぎすだった気がするんだけどみんな乗り気です。これが若さか、ノリがいい。

…まあ、一部の方々は違うようですけど。

 

「生徒会長は把握されているでしょうか?」

「さぁな。念のため撮っておくか」

「――あ!あの方」

「アレが?」

「ええ。ここからでは確認できませんが」

 

これだけ密集していては腕の確認はできないし、したところでこんな目立つ場所ではおそらく見えないだろう。

でもあの顔はアニメで見覚えがある。

 

「…違うとわかっているのだが、他の男を見つめる深雪を見るのは面白くないな」

 

人目がないからか、ぴったり横に並んでくっついていたお兄様が、さらに密着するように腰に手を回し耳元で囁くので一気に顔が熱くなる。

 

「お、お兄様!」

「誰もこちらを見ていない」

「そ、ういう問題では」

「これから生餌として仕事をする兄に英気を養わせてはくれないか?」

 

生餌!いい表現ですけど、きっと生きがよくてすぐ吊り上げられるでしょうけども!

 

「お兄様は時折ひどく意地悪です」

「こんな兄貴は嫌か?」

「…好きです」

 

嫌いなんて言葉お兄様に言うわけがない。

そしてお兄様もわかってて聞いてくるあたり本当に意地悪だ。

おかしいな。兄妹でべたべたはしていないつもりだったのに、これってべたべた、よね?二人きりだからセーフ??

それとなく回避していたはずなのにおかしいな、とお兄様の顔を見ればにっこり微笑まれていて。

 

「深雪は本当にいい子だ」

 

…洗脳?詐欺??ヨクワカリマセンネ。

お兄様が幸せそうでなにより。それでいいじゃないか。

原作の深雪ちゃんも言っていた。騙されてあげます、という奴だ。

お兄様が誰かとフラグを立てそうになったら気づかれないようフェードアウトしていけばいいのだ。そして彼女さんにシフトチェンジしていけばいい。

色男モードのお兄様に対し思考を放棄してしまう己の傾向を理解しつつも打開策など浮かぶわけもなく、いつの間にか集会は終了。

この場も解散となった。

 

 

――

 

 

お昼。

生徒会室に呼ばれているのでクラスメイトと別れて、共に呼ばれているお兄様との待ち合わせ場所に行くと――さっそく生餌は食いつかれていました。

壬生先輩、お兄様に助けられたわけじゃないのに接触をしてくるとは。

誘導?洗脳?ってすごいと感心すればいいのか。

ハニトラにしては、憧れの男子に話しかけてる美少女って感じが初々しく映りますね。

もしやお兄様の登場からの妹奪還シーンに憧れました?あれカッコよかったですものね。

どうしようかしら、少し待つ?と過ったけれどお兄様の視線にロックオンされました。

はい、向かいます。

 

「兄さん、お待たせ。あの、もしお邪魔なら」

「邪魔じゃないよ。少し話していただけだから。こちら壬生先輩。昨日の騒動を治めてくれたとお礼を言いに来てくれたんだ。俺は別に治めたつもりはないんだがな」

「君にその気がなくても、結果的に治めてくれたんだから君の功績よ。司波さん――深雪さんと呼んでもいいかしら?深雪さんも、二科生をかばってくれて嬉しかった。ありがとう」

「いえ、私はただお…兄さんのことがあったので」

「ふふ、お兄ちゃんって呼んでもいいと思うわよ?」

「大丈夫です!もう高校生なんですから、いつまでも子供のように呼ぶのは卒業しなければ」

「しなくていいんだがな」

「もう、兄さんまで参加しないで!」

 

とても自然な会話だ。

私に対しても壬生先輩は嫌悪がない。

むしろ感謝しているような発言も飛び出した。これは私に対して変に洗脳していない。つまり拒絶させるより――てこと…?

 

(おや?そうなると話は変わりそうですねぇ)

 

「では先輩。申し訳ありませんが、妹と共に生徒会に呼ばれていますので」

「ああ、そういう話だったわね。引き止めちゃってごめんなさい。でも放課後は時間ある?」

「深雪を待っている時間でしたら」

「ならカフェテラスで続きを話したいの」

「わかりました。では放課後に」

 

先輩はこちらに軽く手を振って去っていった。

昨日はあの場にいたはずだけど見る余裕なかったしね、うん。流石美少女剣士。剣道小町の異名も可愛いよね。ちょっと男勝りな勝気な少女。可愛い。

 

「では行こうか深雪」

「ええ、兄さん」

 

これはまた作戦が変わるかも、と過る一コマにそっと兄の手を握る。

符丁のつもりですぐ離す気だったのだけど、握りこまれた手は離れない。

…目的地にたどり着くまでの視線が生暖かかった。

 

 

 

初めてお兄様と生徒会室に入室する。

中にはお昼には珍しく服部副会長の姿もあった。ついでに生徒会員ではない渡辺摩利先輩と――おや、十文字先輩の姿もある。こちらは完全お初ですね。迫力が違います。本当に高校生です?

ある意味これも年齢不詳よね。社会人になったとしても新入社員に見えないしなれない。絶対重役。

 

「いらっしゃい。来てくれてありがとう。

――司波深雪さん、この度は本当に申し訳ありませんでした。貴女を苦しめてしまったこと、謝罪いたします」

 

示し合わせていたのか、先輩方が揃って頭を下げる。

本当なら謝罪をされることではないのだけどね。こっちが勝手にやったことだし。

でも謝罪は受け取ります。

 

「七草会長、お気持ちは受け取らせていただきます。私はただ、平穏に過ごせればそれでよかったとそう思っていたのですが、考えが浅はかでした。むしろ暴走を悪化させたところを収拾していただいてありがとうございました」

「うーん、あれは貴女のお兄ちゃんが治めてくれたと思うんだけどな」

 

おおっと。もう謝罪ムード終わりです?

七草会長って公式小悪魔さんだから揶揄うの大好きなのよね。

だがしかし、公式は許しても私のお兄様がそれを許してくれるかな?

横からちょっぴり不穏な空気が。

 

「会長、あまり妹をそのことで揶揄わないでいただけますか?昨日のことを思い出す度、この子は自分は守れなかったのだと後悔するので」

「えっ、あ!ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの!」

 

いえ、さっきそのネタで壬生先輩にいじられたばかりです。

あの時はそんな話出なかったし、そこまで後悔してないんですけどね。

あ、ないわけじゃないんです。実際原作ほどお兄様へ嫌がらせが向いてなかったからね。

原作はほら、なんでそんなに?っていうくらいヘイト集まってましたから。歩くだけで睨まれるお兄様、それは見たくなかったので。ちゃんと守っている気分も味わえて、どちらかと言えばいいイベントでしたよ。…心労はあったけど。

私はなんちゃって女優な気分であって、実際女優でもなんでもないんですから、ある程度真実を混ぜて演技しないと真実味はそう出ないよ。

 

「会長大丈夫ですよ。兄さんなりのジョークです。さっきも別の方に兄の呼び方で言われてたのを一緒になって揶揄ってきましたから」

「え、そうなの?」

「意趣返し、なんでしょう?」

 

そうお兄様を見ればうっすらと微笑み返す。

あ~、さっきの『ちょっぴり不穏』は自分以外に、というか七草会長に揶揄われることが面白くなかった、のかな?

 

「失礼しました」

 

慇懃に頭を下げるお兄様に、まだお兄様を掴み切れていない会長は戸惑っていたけれど、十文字先輩の介入で空気が切り替わる。

 

「とりあえず立っているのもなんだ。座って食べながら話さないか。そんなに時間もないことだしな」

「!そうね。みんな掛けて頂戴。お肉と魚と精進料理、好きなものを選んで」

 

本当ならお兄様の後に続いて座りたいのだけど、気づけばエスコートされて座らされる。

私が上座ですか。座り心地悪いんですけどね。

 

「…なんというか、兄妹というか恋人でもそこまでしないぞ」

「渡辺先輩の彼氏さんのことは存じませんが、これくらいは別に兄妹でもおかしくないと思いますよ」

 

絶対おかしいですよお兄様。周りの認識を塗り替えようとしないでください。

さらりと先輩が恋人持ちなことを見破ってますね。さっそく渡辺先輩が動揺してます。

 

「そ、そういえば名乗っていなかったが」

 

話を変えようと必死な先輩は普段のカッコよさと違って可愛いですね。

これを見放題な彼氏さんうらやまです。

しかしその可愛さを流すことができるのがお兄様。時間を無駄にはしない男。

 

「こちらは一方的に皆さんを知っていますから。自分は深雪の兄で司波達也と言います」

 

食事が来るまでに改めて全員自己紹介を済ませ、ようやくランチとなった。

 

「長く続いた学校の問題を解決する糸口を、貴方達が作ってくれたんだもの。絶対に成功させて見せるわ」

 

意気込む会長に渡辺先輩が補足する。

 

「あ~、真由美はずっとこの問題をどうすべきか考えていたんだ。どうあったってこんな環境、いい影響なんてないからな」

「一部の生徒にはいい発破かけではあったようですが。二科のようになりたくはない、と」

 

これは市原先輩。クールビューティー。

 

「そ、それは全然いい影響じゃないです!むしろ心身に悪い考えですよ!」

 

この可愛らしく吠えるのは中条先輩。チワワ?ポメラニアン?可愛いですね。

 

「一科には一科のプライドがある、という話ですよ」

 

淡々とした口調は服部先輩のモノで、若干固く感じるのはまだ二科生に対して蟠りを感じているからか。

昨日のお兄様を見て思うところがあったのかな。妙にお兄様を意識しているように思う。

 

「でもだからと言って二科生に対し見下していい、ということにはならない」

 

いつになく凛々しいお顔の七草会長。

 

「――初めは魔法師の数が少なかった。兵力を育てるに、自信をつけさせる意味でも必要だったかもしれんな」

 

創立当初の分析をするのは十文字先輩。

それにストレス発散もあったんですかね。戦争はどうしてもいろんな影を生む。

先輩が話すとちょっとした会話も重厚さが出ますね。

 

「時代は変わったのだから私たちも変わらないと」

「――その、ちょっとよろしいでしょうか?」

「なに、深雪さん?」

 

自己紹介のような会話も終わったところでこちらから本題に入ろう。

お兄様と意味ありげなアイコンタクトをしてから挙手をして話に割り込んだ。

 

「もともと一科と二科の関係は根深かったと思うのですが、こういった暴動は毎年起こるのですか?」

「ええ、残念ながら。毎年風紀委員がその場を収めるのに駆けずり回っているのだけど、今回のような規模は私たちも初めてだったわ」

「ああ。闘技場のは、たとえ剣術部と剣道部の争いを風紀委員が最初から介入しても止められたかどうか。風紀委員からも謝罪と感謝を。助かったよ司波兄妹」

 

渡辺先輩は背筋を伸ばして首を垂れる。

その場を風紀委員として収められなかったことを悔やんでいるようだった。

でもごめんなさいね。今はその話は置いておいて問題を提起させてもらいます。

 

「十文字先輩は部活連の会頭なのですよね。何か異変など感じるところはありませんでしたか?」

 

今度はお兄様が私の意図を汲み取って、十文字先輩に質問を投げかける。

先輩は箸を止め、目を伏せてから。

 

「そうだな、俺に直接ではないんだが、予算について公平かどうかみたいなことは聞いたか。だがこれは去年末くらいだから今年に限った話ではないな」

「ああ、それなら私もちらっと聞いた。まあ不満に思われるのもしょうがないが、こればっかりは一科二科ではなく大会の実績だからな。あとは風紀委員で言うなら点数稼ぎやら一科生ばかり贔屓にしているやらだな。これも毎年あることだから気にしてはいなかったが」

 

まあそうよね。いきなり不満が爆発したら目立つから徐々に徐々に浸透させたんだろうし。

 

「二人は何か思うところがあるのですか?」

 

市原先輩の質問はありがたく、おかげで話の進行がスムーズに進む。

 

「回るのが早いと思ったんです。深雪の噂が」

「え、それは彼女が目立つからで」

「目立つのは分かります。深雪は誰もが認める美少女ですからね。でもそうじゃない。悪評が出回るのが早すぎた」

 

きゃ、誰もが認める美少女ってお兄様に言われちゃった(はーと)、と遊んでしまうのはけして冗談でふざけているのではない。

そうしないと口元が緩んでしまうのです。

深雪ちゃんの体の不便なところは、お兄様に褒められると反応してしまうことですね。

表情引き締める為、今日も心の中で全力でふざけます。

 

「…悪評」

「俺を避けていた、兄妹仲が悪いのでは、というのは分かります。だが『兄を嫌っているのは二科生だからだ』や、『二科生を毛嫌いしている』、といった二科生に対しての悪感情についての噂の方が広がっていた」

「…つまり一科生と二科生の溝を深くしようとした人物がいたと言いたいの?!何のために!?」

 

あれ?確か原作では七草会長や渡辺先輩は一部先導している生徒がいることを知らなかったっけ。

誰とは特定できていなかったはずだけど。

ならば証拠になりそうなものを提示しましょうか。

 

「兄さん」

「ああ。こちらは今朝の集会の様子です」

 

見せたのは撮れたて新鮮の生徒たちの様子だ。

整列は特にしていない。うちのクラス以外クラスごとに移動したわけでもないし、講堂の中に入ったとて別にクラスで並ぶ必要のない集会だ。

ただ仲間内で集まって話を聞いていたその中で。

 

「皆前向きに話を聞いている中、一部の生徒たちの表情にご注目ください」

「これは…壬生、か?」

「摩利知ってるの?」

「ああ。彼女は剣道部部員でとんでもなく強くてな。全国大会常連で剣の腕では私は敵わないだろう」

「そんなにすごいの彼女…」

 

渡辺先輩への信頼が厚いですね。

地味な男子たちと美少女のグループって目立つからすぐ目が行ったのか、案外早く見つかった。

まあ表情があまりいいものでもないですしね。

 

「――その周りも剣道部の部員だな、というよりもこれは」

「もしかして剣道部部員全員ですか?」

「すべてを把握しているわけではないし、剣道部以外の者もいるが共通点がある――二科生がメインの部活の生徒だ」

「「「…」」」

 

流石部活連の会頭、抑えるべきところはちゃんと抑えているようだ。

 

「だがこんな映像をわざわざ撮った理由はなんだ?噂を気にして撮った、にしてはピンポイントのようだが」

「その、先輩方は青と赤のラインで縁取られた白いリストバンドをご存じですか?」

 

質問に対し彼らは顔を見合わせるが芳しい反応はない。

まあ普通の高校生は知らないのも無理はない。

だけど七草会長はともかく十文字先輩ならご存じかと思っていた。

 

「ではブランシュ、はいかがです?」

 

今度は反応があった。

顕著なのが二つと、見逃してしまいそうなのが一つ。

その他は彼女たちの反応に、何かあるのだと黙って聞く姿勢だ。

 

「なぜ、その名前を…」

「――そうか。エガリテ、か。聞き覚えがあったな。確かブランシュと直接的に繋がりこそないが下部組織ではないかと噂されている」

「「「!!」」」

「その組織のシンボルマークですね」

 

やはり、全く知らぬわけではなかったらしい。

同じ十師族として少し安心した。…七草会長はまだそういった教育をされていないのか、はたまた家を継ぐ者ではない故に教わっていないのか。

教育方針はそれぞれだからね。口出しはしませんしできません。

でもブランシュに反応したってことは学内にいる可能性は感じていた、のかな。そのあたりは分からないけれど。

 

「そのシンボルマークを付けている生徒を見かけました」

「どうして反国際魔法組織が魔法を志す者の学校に?!」

「政治的戦略と言われればそれまででしょうが」

「工作員?まだ高校生ですよ!?」

 

まあ混乱しますよね。

ある意味敵対する組織の人間が入り込んでいると言われたら。

 

「魔法が使える人間でも、魔法師に不満を抱いてもおかしくありません――二科生は特にその声に耳を傾けやすい立場にありました」

 

だがこんな中ただ一人冷静に分析できる市原先輩は頼りになります。

 

「!!一科二科の差別を助長させることが目的?!」

 

でも…うん、どうやらブランシュで知っているのは表向きの、しかも政治的意味合いの方の話になりましたね。

まあそれでも問題は無いですが。

 

「しかしブランシュの、それも下部組織などどこで知った。普通は服部や中条のようにニュースで聞くくらいだろう」

 

普通はそうでしょうね。

 

「深雪は狙われやすいので」

「!そういえば昨日言っていたわね」

 

便利な言葉ですよねその言葉。嘘ではありませんし。

無表情のお兄様の顔色を見破るのはなかなかできるものではないけれど、疑われる要因は無いに越したことはない。

 

「もしやすでに狙われたことが?」

「いえ。ですが可能性があるならばと調べたうちの一つです」

「…その頭にはどれだけの犯罪者リストがあるんだか」

「恐縮です」

「褒めてはないんだが、褒めるべき、なのか?」

「兄さん、いつもありがとう」

 

心からの感謝を。

微笑んで見つめればお兄様も表情を和らげて頭を撫でる。

 

「お前が健やかに育ってくれるだけで俺は嬉しいよ」

 

これぞ司波兄妹って会話だよね。

ねじがぶっ飛んでる。

 

「……そんなに狙われ続けているの?」

「七草会長もそうではないのですか?」

 

驚愕されてるけど、魔法力が高いと狙われるのは魔法師界隈では常識だし、美少女に変態が湧くのは世の常だ。

特に七草会長だって、そこに加えて十師族ブランドも加わるのだから狙われ放題でしょうに。

だが会長は手を振って否定する。

 

「私もなかったわけじゃないけど、ちゃんと護衛がいるから回数で言うならたぶん深雪さんには敵わないんじゃないかしら」

 

あ、これ会長ももちろん警戒しているんだろうけど、陰で護衛さんがめっちゃ頑張ってるやつですね。

失礼しました。

 

「十師族も大変なんですねぇ」

 

中条先輩のおかげでほっこりしそうになったけれど、ずっと聞く側に徹していた十文字先輩が動く。

 

「話が逸れたな。つまり司波、――兄の方だが――お前はこう言いたいわけか。この度の一科と二科の諍いはブランシュの下部組織エガリテが関わっていて、何か事を起こそうとしている、と」

「そう考えると腑に落ちますので」

「腑に落ちる…って何が?」

「ここに来る前にさっそく壬生先輩から声を掛けられました。挨拶もしたことのない自分に対して、です」

「それ、は…でも、昨日の君たちを見ていたら声を掛けたくなった、というのはさほどおかしな話ではないと思うが――ああ、今朝の集会、か」

「何かある、ということね」

「だが目的はなんだ?二科生の待遇改善なら討論会で話し合えば何か変わるんじゃないのか?」

「青田買いか?手駒としては一高生というだけでブランドにはなるかもしれないが」

「――ブランシュは表立っていないが過激な組織だ。旗印としてうちの生徒や卒業生が使われたとあれば、世間の印象は悪いものになる」

「「「………」」」

「何か手を打った方がいい、のかもしれないけれどその、エガリテ?だからと取り締まることはできないわ。この国はどうであれ政治活動の自由を保障してる。それは学生にだって適用される」

「相手の出方を見守るしかない、ということですか」

「動かなければそれはそれ。だが見せてもらった映像を見る限りすぐにでも動き出しそうだからな。見張っているべきだろうが」

「風紀委員にそんな余裕はないんじゃない?クラブ勧誘はまだまだ始まったばかりでしょう?」

「そうだが、剣道部は部活の一つ。一つをずっととはいかないが、ある程度見張りはあっておかしいものじゃない」

 

どうやら方向性は決まったようだ。

今回の昼食会は警戒を促すものだったので、戦果は上々だろう。

お兄様を見れば安心させるような笑みを浮かべていた。

 

「そろそろ時間ね。ほかにもいっぱいお話したいことがあったのに全然話せなかったわ。また近いうちに誘ってもいいかしら」

「ぜひ」

 

こうして長いようで短いお昼時間は終わっ――る前に、

 

「司波、ちょっといいか」

「深雪」

「ここで待ってるから」

 

生徒会室を出てすぐ十文字先輩に呼び止められた。

先輩がお兄様だけを呼んでいるのがわかったので、賢い深雪ちゃんはちょっと離れた壁に寄って待っていますよ。

そして話はすぐに終わりお兄様と共に頭を下げて教室へ急ぐ。

 

「目的の目星を聞かれた」

「なんとお答えしたのです?」

「先輩の予想通りかと、と」

「…十文字先輩はご存じでしたか」

「軍の噂程度、だそうだ」

「はっきりしないうちは明かさず警戒を、ということでしょうか」

「動くならさっさと動いてもらいたいな」

「あら、お兄様ったらいつになく好戦的ですね」

「こんな暗躍じみたこと、深雪の健康に良くないからな」

「…お兄様、過保護が進んでませんか?」

「俺が過保護ならまず深雪を外に出さない」

「それはバッドエンドですお兄様!」

 

あれ?お兄様ってばヤンデレの素質なんてお持ちでした!?深雪ちゃんの専売特許では⁇

 

 

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おまけ

『さて、本日のゲストは前回女優ムーヴをかまし大立ち回りした深雪ちゃんです』
「…穴を掘って埋まりたい…」
『おお、深雪ちゃんが落ち込んでます。唐突な鬱発言。でもそうですよね、盛大にやらかした後学校になんて行きたくないですよね』
「行きますけどね…。でないとお兄様が一日介抱とかしそうじゃないですか」
『あ~、喜んで付きっ切りで看病しそうですよね、妹の羞恥丸無視して』
「学校行く選択肢しかなかったんです…」
『でもおかげで展開も早まったそうじゃないですか』
「ブランシュ…エガリテですね。舞台上でお兄様の実力について明かしていますからすぐアプローチが来ることは予期してましたが、それにしてもエガリテバレもすぐ発生するとは…。おかげでお兄様ともすぐに情報をすり合わせられましたし対策は立てられました」
『その対策とはもしかして』
「四葉経由で軍に、ですね。原作と違い、我々四葉は沖縄後大亜連合の動きにまた何か仕掛けてきそうだと情報共有するよう裏で繋がりを持ちました。強硬派とは別組織ですが、不穏な動きは沖縄以外でも見受けられましたので日本軍内部でも警戒している人たちはいたようです。ですが、十師族と手を結ぶと何かと煩いので情報共有を主に裏でこっそりと」
『暗躍してますね~』
「完全後手に回るのだけは阻止したかったので。おかげでスムーズに進むこともありましたから意味はあったものと思いたいですが」
『後々響いてくることもありますから。――それにしてもきゅるん!とは、ずいぶん身を切りましたね』
「…ネタに走りました。お兄様からそんなことを強要されるとは思っていなかったから内心焦りましたけどね」
『ところで以前話した時は敬語が無かったように思うのですが』
「慣れが出てお兄様の前で敬語が外れて…前世が飛び出てしまったら気まずいでしょう?」
『『ついうっかり』が多いですもんね』
「前世ではそこまでうっかりは無かったのですが…。原作の深雪ちゃんはお兄様の前でうっかりしてしまう子でしたからその影響が出ている、とか?」
『その影響が全く無いとは言いませんが、「原作ではこの流れではないから!」と気を緩めすぎることも要因かと』
「……だって、お兄様は深雪ちゃんから迫らなければ――って思うじゃないっ!」
『敬語外すとすぐに素が出てきますね。でも、いくらお兄様相手でも限度があるかと思います。あれでは深雪ちゃんが意識して迫らなくとも恋に落ちてもしょうがないじゃないですか。イベント通りに熟さなくとも好感度が上がると無条件で日常から強制恋愛イベント発生するんですよ』
「うぅ…」
『まあ、立場逆転を謳っているのでね、深雪ちゃんの代わりにお兄様の方から迫る流れは逆らえなかったのですが。それにしても次の日には二人並んで歩くことを受け入れられるとは、一高のノリも捨てたもんじゃないですね』
「生徒会選挙であの盛り上がりをするくらいですから本来ノリはいいのでしょうね。それにしても受け入れが早かったとは私も思います。半日しか経ってない上、目撃者はそこまで多くなかったはず。早朝の全校集会のこともあって急速に噂が回ったと思うのですが、そう思うと横の繋がりはあったんだな。と」
『お兄様もすでに英雄扱いに』
「アレはどうにも、二科生の兄が一科生の妹を守るという行動が感動を呼んだというか…元々注目を集めていた兄妹でしたから」
『作戦通り以上に事がトントンと進んだ、ということですね。森崎君も丸くなっちゃって』
「謝罪してきた時は驚きましたが、女性には紳士的でしたからね。リーダーとしてけじめを付けてくれましたのでA組が纏まりました」
『ただの噛ませ犬に終わらなかったんですねぇ』
「魔法師って変な圧力が至る所にあって、それが歪みを生んでるから、その元さえ正せばそこまでの事態にはならないはずなんですよねぇ…十師族とか軍とか魔法師協会とか」
『わあ、珍しい深雪ちゃんの恨みヴォイス』
「それは憎くもなりますとも。大抵そこで問題をややこしくしているんですから。七草とか七草とか」
『横浜でも来訪者でも関東の防衛失敗しているのにどうして降格、とまではいかなくとも罰則的なことが無かったんでしょうね?テコ入れくらい必要だったでしょうに』
「それこそ師族会議を緊急で行う案件だったと思うのですが」
『成長、してないですもんね、七草。失敗から何も学ばず人の足を引っ張ることしか考えない――、とそちらに意識を逸らしたいのは朝礼中、人目が無いことを良いことにお兄様といちゃいちゃしていたからです?』
「アレはっ!お兄様がその後壬生先輩からちょっかいを掛けられるだろうということで英気を養いたいと…」
『言いくるめられたというより勢いに流されたんですね?』
「…おかしいなとは思ったのですが、お断りするのも申し訳なく…」
『生餌にするのは事実でしたからねー』
「お兄様のラブイベントの一つでしたから本人にその気はなくともそういった触れ合いはお兄様の心に変化をもたらすのではないかと」
『その気が…ああ、桐原先輩とくっつくのは確定だったから、ですね』
「舞台袖から見えましたよ、桐原先輩が心配そうに壬生先輩を見つめていたのは。その後恐らく十文字先輩に相談にいかれたのでしょう」
『だからその後の昼食も流れがスムーズだったのかもしれませんね。お昼に呼び出された理由は謝罪目的だったわけですが』
「生徒会としては利用するわけですからね、会長も心苦しかったのかもしれません――そこをさらに利用した私の方が本来謝罪しなければならない立場だと思うのですが、ね」
『お昼に生徒会室に行く前にお兄様はさっそく壬生先輩に喰いつかれていたわけですが、深雪ちゃんから『お兄ちゃん』呼びを仕掛けたのは何か目的が?』
「先輩がどこまで洗脳されているのかチェックですね。人を揶揄う余裕があるということはさほど強くない洗脳だったのだと判断しました。あと、一科生に向けての嫌悪や憎しみが無いか、もです」
『――この時点で、深雪ちゃん自身が攫われる可能性を予期していたのですか』
「彼女は一科生にいい顔をする余裕は無かったはずです。それが好意的になっていた、ということは何かあるのかもしれない、と。…兄の為に無理をして頑張る妹は利用しやすく見えたのかもしれませんね」
『ということは自分も餌にしていた、と。…これ、お兄様知ったらヤバい案件では?』
「…言われてはいないのですが、恐らく、気付かれていたからこその…『アレ』だったのではないかと」
『…後日確かめる機会があればご本人に確認してみましょう。で、生徒会室に向かうわけですが、七草会長からの揶揄いには応じなかったのですね』
「応じる前にお兄様が立ちはだかっていましたからね…。何故あそこまで七草会長を警戒していたんでしょう?私の見ていないところでちょっかい掛けられていたり、とか」
『どうにもお兄様は無自覚ながら深雪ちゃんに誤解されたくなかったので隙を見せないようにしていたみたいですよ』
「え…」
『序盤も序盤で計画に支障があったみたいですね。妹を女性と意識してしまってから無意識下で他の女性を遠ざけてたみたいです』
「……そんな…」
『うっかりエロエロな下着身に付けちゃうからー』
「アレが…そんな影響を及ぼしていたなんて…」
『とはいえそれはきっかけの一つに過ぎず、遠くないうちに変化はあったかと思いますよ――特に、この入学編の最後とか』
「うっ…」
『まあまあ、やっちゃったもんはしょうがないですよ。先に話を進めますが、生徒会も一部が情報を握るのではなく共有すべきでしたよね』
「七草会長はまだ確証が無かったから言えなかったようですが、学校に危険分子の可能性があるならせめてトップの生徒会役員と部活連、風紀委員の一部には共有すべきでした。そうすればもっと早く学内の変化に気を付けられたかもしれませんが…こういうのって生徒ではなく本来教員たちが動くべき案件ですよね」
『一高の教員って何やってるんでしょうねー?』
「授業を担当される教員とはかかわり合いが多少ありますが、雑用は任されたりすることはあってもあまり交流という交流はないですね。魔法技術以外の指導的なこともほぼないですし。でも考えて見たら魔法師の数が少なく教えることに特化した人材ばかり集めていたら、生活指導などは後回しになるのかもしれないですね」
『ま、これもご都合主義ってやつですね。自主性を重んじて生徒に責任持って行動させているのです、ってことで。』
「それ、職務放棄って言いません?」
『まあまあ。そのおかげで隠ぺいとかできているわけですから。それにしても、お兄様にアレだけ愛されて言葉でも可愛いと言われ続けているでしょうに、まだ慣れないんですか?お兄様からの『可愛い』』
「…慣れると思います?むしろ人前で言われてより一層恥ずかしいのですが」
『お兄様、自重しませんもんね…。自分の可愛い妹だという主張がしたかったのか。困ったもんですな』
「ほら、先に進みますよ!お兄様からのヒントで十文字先輩は原作より早くエガリテの存在に気付きました」
『他の人はエガリテを知らない様子でしたね。おかげで話がトントン進んで』
「ええ。まさか反魔法師組織が魔法師の学校で工作を仕掛けてくるとは信じがたい話ですが、十文字先輩のおかげでスムーズに風紀委員とも連携が取れました」
『深雪ちゃんが二科生と一科生の壁に亀裂を入れ、生徒会も風紀委員を配置し警戒させたことで放送室占拠事件も起こらなかったわけですね』
「ああ、お兄様、いわれのない件で深雪ちゃんから誤解を受ける、のアレですね。私だったらナンバーを知っていたからと目くじら立てませんのに」
『まあ、事件が大きくならずよかったじゃないですか。――最後、暗躍に気付いていたお兄様がいますね。何処までかはこの段階では読めませんが』
「…焦りました。急に軟禁まっしぐらのバッドエンドお兄様が現れて」
『その地雷は大量に埋まっていたんですけど、本当よく回避できましたねぇ』
「え……?」
『いやあ、ハッピーエンド派なので助かりましたよ。よかったよかった』
「……あの、お兄様って『深雪ちゃん』の好きにさせてあげるのがお好きでしたよね…?」
『それは今も変わりませんよ』
「なのに、バッドエンドフラグが…?」
『というか監禁軟禁エンドですね。思いの外独占欲が強くて。恐らく原作に無い母親との妹の取り合いや雫ちゃんとの取り合い、リーナちゃん、一条君、果ては十文字先輩と…ピクシーもでしたか。ま、仕方ないですよネ☆』
「かんきんなんきん…お兄様が…?」
『要素は原作にもあったと思うのですが――と、もうお時間ですね。ではまた次回~』


――深雪が退出しました――

深雪ちゃんにヤンデレ要素があるならお兄様にだってあってもいいじゃない、と軽く考えていたのですが、お兄様妹に対して閉じ込めたいとか普通に発言してるんですよね。元から要素ありました。
そのことに気付いてしまったせいでどんどんバッドエンドに向けての罠が至る所に仕掛けられていくのですが、よく回避してくれたな、と思います。完結できてよかった。
えっと、脱線しましたが、今回の話は前回やらかした兄妹が学校に受け入れられ、いろんなトラブルを事前に潰していた、という裏話ですね。
色々と暗躍や工作が役に立っていました。
妹的に壬生先輩とのラブは無いなーと早々に諦めてました。片思いはされていたはずなんですけどねー。お兄様全く気付かず。これで鈍くないってほんとです?でも浮ついた感情でもありましたからね。すぐ冷めて切り替えられたのならどのみち長続きはしなかったでしょう。
今回の裏話は上記の会話で色々ばらしたので割愛しますが、色々とショートカットが起きてます。
…本当はこんなに長続きする話になると思わなかったのでこうやってさくっと終わらせるつもりだったのですが、いつの間にやら原作沿いになっていきました。
これを書いていた時にはそんな予定無かったのですが、不思議ですね。
そして最後のヤンデレバッドエンドはずっと付きまといます。お兄様の感情が重すぎたので。でも原作でも衝動が一人にしか向けられないのであればこれくらい重くなって当然ですよね!(開き直り)

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