妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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来訪者編㉟

 

 

さ、サクサク討伐しますよ。

最終決戦の地が学校って本当出来過ぎだよね。学校と言っても野外演習場なので、校舎から離れた人工森林とあってあまり学校とは思えない景観だけど。

校内から真直ぐここに来ようとすればこの前のように証明書が必要になるけれど、裏からフェンスを飛び越えてしまえば監視システムもないので誤魔化す必要も無く、すんなり侵入できちゃうということで今回はこっちのルートで来た。

発行してしまうと証拠が残るし、何より面子がね。どうして、と聞かれると面倒なので。

お兄様を筆頭にエリカちゃん、西城くん、そしてピクシーの五人が実働部隊です。

耳にはハンズフリーの通信機。なんだかそれっぽいよね。これでお揃いのマントとかスーツとかだったなら完全にソレなのに。

緊張感なんてない、と言いたいところだけれど、パラサイトが来るわけだからね。警戒態勢ではある。

ピクシーの波動だけは個体認定ができるくらいにはわかっているので、今近くではっきりと分かる波動はピクシーのモノだけ。

今のクッションと少し当たる触手は体を動かす念動による波動だね。結界はすでに張ってます。やはり実験していてよかった。

お兄様は迷わずサクサクと前進し、その後に続く。

都会っ子、普通はこんな森林の道凸凹してたり暗がりの中でスムーズに動けるわけがないのだけどね。誰一人として足元が危ないなんてことが無い。

特殊な訓練を受けてます、的な?危なげなくていいんですけどね。

皆まだ高校生のはずなんだけどなぁ…。ちょっと前世の自分がやるせない顔をしている。ガワが深雪ちゃんなので表に出すことは無いけどね。複雑です。

これでハイキングが趣味で、とかいうオチだといいのだけど。あ、そういえば西城くんだけは慣れててもおかしくないのか、部活的に。

うんうん、西城くんのお陰で私のメンタルは無事です。ありがとう。

と、ここで美月ちゃんから通信が。パラサイトの反応を確認。私も遅れて波動をキャッチ。クッションじゃなくてふわっとした触手が漂っている感じはすでになんらかの魔法を使用しているのか。

離れているので詳しくはわからないけれど、方向はわかった。

情報端末を通してほのかちゃんの光学魔法による映像がゲームの敵を知らせるマップそのもののように、正確に伝える。

…この二人がいたら奇襲なんて楽勝だね。絶対悪い人たちに利用されないよう守らなきゃ。頑張って吉田くん。

予定通り、お兄様が先行しエリカちゃんが続く。

先に見つけたパラサイトを捕獲しに行ったお兄様と別れたのは、他のパラサイトを一か所に集めないため。

どうやってレイモンド少年がここにパラサイトを招集したのかわからないけれど、彼らの目的は捕らわれのピクシーであることは間違いない。

そのパラサイトが来たらお兄様が来るまで足止めをする。

 

(それが第一の目的だったのだけれども、やっぱり来たね)

 

ピクシーを狙うもう一つの存在。九島閣下の配下たち。

西城くんの危機察知能力は素晴らしいね。完全に奇襲目的のプロ集団にも反応していた。

急に止まった彼に続いて立ち止まり、たたらを踏んだピクシーをちょっとだけ支える。

ピクシーも熱源やらセンサーで人を察知出来てはいるはずだけど、敵意を持っている、もしくは狙われているかなんて判断はできない。

お兄様によって私たちの命令にも従うようになっているので、彼女は大人しく私の腕の中で動きを止めていた。

 

「西城くん、気を付けて」

「そりゃ、オレのセリフだぜ」

 

うーん、警戒していてもこの軽口を叩くことで固くならないように配慮するなんて、お兄様の類友だね。スペックが高い。

 

「囲まれた…わけじゃなさそうだな。そう感じさせてるだけみてぇだ。右手が空いてっけど、深雪さん、どうする?」

 

こうやって聞いてくれるところも紳士だよね。これでモテないなんてほんっと、信じられない。

 

「西城くん、サポートは任せて。西城くんの動きやすいように」

 

西城くんが良い男ムーヴをかますなら、私だって良い女ムーヴをかまさねば。

CADを操作し、いつでも防御も迎撃も取れる場を作る。

 

「ピクシー、私の後ろへいらっしゃい」

 

狙いは彼女。私の後ろにいるならば、絶対に触れさせることはない。私が守り切ってみせる。

そう見つめて頷くと、ピクシーはじっと私を見てねっとり触手を這わせてから頷き返して背後に。…張っててよかった結界である。

 

「そいつぁ頼もしい限りだ。じゃ、遠慮なく」

 

西城くんは張り切った笑みを浮かべてぱしん、と拳を自身の手の平に打ち付けた。かっこいいね。こういう王道ヒーローも素敵だ。

キラキラと、うっすら舞い散るダイヤモンドダスト。

私が広げた攻守ともに優れた魔法領域。西城くんの邪魔をする者は減速魔法で停滞させて(凍らせて)、振りかざされた刃には氷の礫が散弾となって襲い掛かる。

少しやり過ぎのような布陣に、西城くんの笑みは苦笑に変わっていた。

 

「こりゃあカッコ悪い所なんて見せられねぇな」

 

そう言って走り出した西城くんに、先行して動き出していた大ぶりのナイフで襲い掛かる野戦服の男たち。

ナイフを腕で受け止めた西城くんだけど、彼らは接近戦に特化した魔法師。それだけで済むはずもない。

西城くんに続けて襲い掛かる衝撃波に、本能で飛び退ったところに狙いすまして放たれた魔法を打ち消すように魔法を発動。

お兄様の大切な友人を、これ以上目の前で傷つけさせない。

西城くんが驚いた顔をしていたけれど、戦場で惚けるなんて真似をするほど愚かでもない。

続く襲撃にも対応しながら、小さくサンキュ、とお礼を返した。

うーん、いちいちカッコいいね。お兄様と共闘しているところをぜひ眺めさせてほしい。きっとカッコいい。

でも意外に二人が背中合わせで戦うシーンってないんだよね。ここは任せて先に行け、展開ばかり。それも好きだけどね。

相手も馬鹿ではないので、当然邪魔な魔法を展開している私を狙いに来るのはわかっていた。

そういう方々には、一定の箇所を踏むと足が氷の蔦で絡めとられちゃう魔法をプレゼントしちゃおうね~。

全身凍らせないのは慈悲――でも何でもなく、単に事象干渉力を下回っている人間に私の魔法を打ち破る術はないからである。舐めプともいう。

物理攻撃に転じることはできるはずだけど、正体不明の攻撃に戸惑ってるのかな。投げナイフを投げつけられたところで減速魔法に阻まれ当たることなどない。

お兄様の妹もお兄様並みにチートでいなければならないのでね。申し訳ない。

大人しく西城くんのレベルアップに付き合ってください。

と思っていたら、コンビネーションで襲い掛かられてるね。西城くんも流石にプロの息の合った攻撃に苦戦している。

どのタイミングで手出ししようか、そう思っていたのだけれど、接近してくる気配をキャッチ。

このスピード、自己加速魔法で距離を詰めてくるのはヒロインでもあるけれどヒーロー味の強い最強剣士、エリカちゃんの登場だ。

私の出番はここで終わりみたい。

西城くんのピンチに颯爽と駆け付けたエリカちゃんによって形勢は逆転。

…あと、ダイヤモンドダストにもう一つ、引っかかる人物が現れた。お兄ちゃんとはすべからく心配性なのだろうか。まだ皆気付いてないようだけどね。

到着したエリカちゃんはわざとらしくもう一人、お兄様が近くに潜んでいると臭わせてお相手たちを撹乱させていたけれど、

 

「深雪、達也くんが自分と合流しなさいって」

「ピクシーはどうするの?」

「ピクシーには指示が来てるはずよ。ここで私たちのお手伝い」

 

いつの間に、と思ったけれど、背後にいたピクシーがすっと横に出た。

 

「マスター・から・の命令と・サイキックの・使用許可・を確認しました」

 

ついでに魔法を使わずに伝えてくれるよう指示も出たのね。お兄様ありがとう。

 

「ピクシー、二人は頼りになるから大丈夫。無理はしちゃダメよ」

 

頭を撫でてこの場をお願いすると、こくん、と頷いた。視線は合わせないようにしてくれていたみたいだけれど、するり、と一本だけ触手が腕に絡んだ気がした。

…なんだろう、この、そっけない愛猫が尻尾を絡ませてくれた時のような感覚は。思わずぎゅっと抱きしめてから、私はこの場を後にした。

場所わかるの?と背後でエリカちゃんの声がしたけれど、大丈夫です。愛の力がありますので!と心の中で叫びつつ、パラサイトの波動を感じる方へ。

 

 

――

 

 

リーナちゃんとお兄様が交戦するその背後には兵士たちが斃れ伏していた。

若干名生き残っているようだが、すでに虫の息だ。

パラサイトたちはピクシーをどうにかするよりも、仲間を守ることを優先し、6人固まって自分たちを攻撃する敵に立ち向かっている状態なのだろう。

 

「深雪!」

 

お兄様に名を呼ばれた時には、すでに領域干渉を広げていた。

如何な驚異的な速度で魔法を行使できるパラサイトとは言え、魔法の仕組みは同じ。干渉力がモノを言う。

パラサイトたちの猛攻がおさまると同時に、お兄様たちは私の敷いた領域内でも対抗できるだけの高濃度の魔法を構築していた。

反応が早い。この判断力こそ、彼らが身に付けざるを得なかった過酷な環境を物語っているようだったが、今はそれを気にしている場合ではない。

リーナちゃんはお兄様から警告を受けていたはずだけれど、彼女を取り巻く環境・状況が彼女の立場を追い詰め、正常な判断力を失わせていた。

――ただ、任務を遂行するだけの兵器に徹していた。

お兄様が妨害するも、一歩及ばない。

リーナちゃんの攻撃により三体のパラサイトの宿主は絶命し、お兄様が行動不能にしたパラサイトは肉体に見切りをつけて自爆した。

防御の魔法を展開したので二人が傷つくことは無かったけれど、これで八体のパラサイトが宿主から解き放たれてしまった。

今までの傾向であれば、本能的に近くの人間に取り憑いて――となるが、この場には元はひとつからなるパラサイトが全て揃っていた。

一度一つの個に戻り、すべてをリセットする。

ラスボスにある完全究極体に戻ろうとする動きですね。それで全快して絶望を与えてくるRPGの王道的展開。

その為のキーは、封じ込められた二体ではなく、唯一己から離反したピクシー。彼女を奪われたままの危険性を、パラサイトの本能が感じていたのかもしれない。

 

「ピクシー、俺と合流しろ!」

 

お兄様の鬼気迫る命令に、ピクシーは全速力をもって応える。

続けてお兄様がほのかちゃんにフォローを頼んだことで、ピクシーの意思は完全に本体と切り離されることになろうとは、とんだ怪我の功名ではあるのだけど。

ご都合主義って素晴らしい。お兄様にとって良ければなおのこと。

走り出すお兄様のスピードについていくのは至難の業だが、やってやれないことはない。これもコソ練の賜物ですね。

魔法を制御して森の中を駆け抜ける。そのために鍛え上げた健脚だ、と言いたいけれど魔法が無ければこうして背を追いかけることなどできないか弱い私です。

リーナちゃんはわけもわからないけれど、なんかヤバい!?と感じているのか慌てて追いかけてきた。ようやくリーナちゃんらしさが戻ってきたようだ。

先ほどまでの兵器に徹していた彼女なら関係ない、と知らんぷりしていただろうからね。

ピクシーの姿を目視できる距離に近づき、お兄様とリーナちゃんはピクシーと対峙しているモノに驚愕しているけれど、私には陽炎のような光の塊しか見えない。

代わりに、大蛇が絡みつくような感覚に己の結界を情報強化して対抗する。情報によって生み出される概念に締め付けられるなんてことはないけれど、圧力を感じて動けなくなることはある。

パラサイトの触手が大蛇クラスに変わったことで、爬虫類が平気な私は普段のパラサイトを相手にする時より精神的にはるかに気が楽になった。

 

「アレは一体、何!?」

「――アレが、貴方が宿主を殺したことによって合体強化されたパラサイトよ」

 

ピクシーの前に私の身を守る結界と同じものを展開する。

距離があるから全く同じとはいかないけれど、少しでも圧力を下げるのに効果はあるのか、ピクシーの触手がちろりと私を舐めた。猫ちゃんの感謝かな?だんだんピクシーの触手なら可愛がれる気がしてきた。

 

「兄さんが、殺さないように忠告していたのはこの可能性があったから。その前に封印してしまえばこれほど脅威になることは無かった」

 

合体して究極体になるかなんて予想してたかはわからないけどね。予測できない最悪の事態になる可能性を考えないお兄様じゃないから。

 

「リーナ、」

「うるさい!」

 

掛けようとした言葉はリーナちゃんによって行き場を失う。

 

「なんなのよ!私はただ任務を遂行しただけ!!脱走魔法師の処理を完遂したのよ!」

「そうなった原因はどうなってもいいということ?」

 

怒りの中に滲んだ悲痛な叫びに、けれど私は追い打ちをかける。このままでは彼女は思考することが無くなってしまう。

自らの意思を消してしまう。それだけは、させてはならないと思ったから。

任務に含まれていない、というならそれまで。彼女にこの先は無い。

でも彼女は――

 

「やるわよ!見てなさい!」

 

己の失態にも向き合える強さを持っていた。

己の判断ミスにより最悪の事態を引き起こした責任を理解し、強大な敵であろうとも立ち向かえる勇気があった。

――残念ながら、物理にしか干渉できない彼女では、その勇気も無駄になってしまうのだけど――それでも覚悟は見て取れた。

食らわない攻撃であろうとも攻撃の意思は読み取ったパラサイトは、ピクシーよりもリーナちゃんを攻撃対象に選んだ。

もしかしたら彼女に取り憑いて手数を増やそうとしたのかもしれない。強力な彼女の攻撃はピクシーたちにも有効だから。

今までの宿主より強いことはわかっただろうしね。

お兄様はリーナちゃんに向いた攻撃を撃ち落とす。その間私も陽炎の周りを領域干渉で鈍らせるけれど、12分の1と4分の3とでは威力が違う。封印されたままの状態で抑え込むのは不可能だった。

じりじりと追い詰められる状況に、リーナちゃんは戦意を失わないようにするのが精いっぱい。

お兄様も決定打を撃つことはできない。

手段は一つしかなかった。

 

「幹比古、こちらの状況は見えているか?」

『わかってる。今大急ぎで封陣を組み立てているところだから、もう少し待って』

 

吉田くんの声の焦り具合に、私たちが感じている恐怖以上のモノが彼らの目に映っているのだと知る。

私からはお兄様の後ろ姿しか見えない。拳が固く握られた。

決心したお兄様の背に、そっと手を当てる。

――お兄様の判断は間違っていない、と。

気持ちが通じたかわからない。けれどお兄様は俯きかけていた頭をあげた。

 

「幹比古、一時的なものでいい。十秒だけ抑えられないか」

 

お兄様が指示ではなく、頼る発言をした。

それは彼らにとってどれほどの衝撃だっただろう。受けた吉田くんは誰よりもその衝撃に驚愕していた。

同時に、奮い立ってもいた。

大役を任されたような、そんな心地になったかもしれない。

 

『…わかった。十秒だけ、何があってもソレを抑えてみせる。合図するから、達也は自分の思い通りにやって欲しい』

 

頼もしい言葉だった。

その十秒がどれほど貴重なものかを、お兄様は知っている。それをやってのけると言い切った仲間に、お兄様は今何を思っただろう。

 

『達也さん、私も協力します!』

 

ほのかちゃんの熱い思いは、何も吉田くんに張り合ってのものじゃない。彼女自身の役に立ちたいという気持ちが、何よりも彼女を突き動かす。

 

役者は揃った。

 

 

 

「幹比古、合図を頼む」

『OK…3、2、1、今だ!』

 

吉田くんの号令で私は領域干渉を消し去り、直後炎が陽炎に巻き付いた。

ピクシーもほのかちゃんに呼応する形で魔法を放つ。その力は陽炎に向けての激しい拒絶反応のようにも感じた。

パラサイトからリーナちゃんへの攻撃も止まり、突然の攻撃に戸惑い暴れているようだけれど、その動きが私たちに届くことはない。

リーナちゃんはその場で警戒しつつ様子を窺っていた。

 

誰もがパラサイトに注目する中、お兄様の腕が、私を抱き寄せる。

 

勢いが余ったのか、あまりの引きの強さにつんのめってつま先立ちになってお兄様に密着してしまった。

いつものハグとは違う、抱きしめ合う時とも違う、一方的な抱き込みに心臓が痛いくらいに悲鳴を上げるが、お兄様のいつも以上に強い視線に貫かれて時が止まってしまったように動けない。

触れ合う額、絡み合い融和する視線、鼻先同士が触れて、あと何ミリで唇が触れてしまうかというほどの距離で紡がれるのは、短い命令。

 

 

「深雪、視ろ!」

 

 

途端体を駆け巡る不可視の光。

まるで自分が何かの端末になって情報を送り込まれたような、自分が自分であって自分でなくなるような感覚に、密着しているお兄様との境界線が曖昧となりわからなくなる。

私はちゃんと視えると答えられただろうか?

わからない。それでもお兄様に伝わったことだけはわかる。

頭を胸に押し付けられるように抱きこまれて、視界も触覚も嗅覚もお兄様しか感じられないはずなのに、お兄様が指し示す方向がわかる。

見えなかった精神情報体の座標がはっきりと捉えられた。

気が付けば抑圧されていた力が解き放たれている。封印が解除されていた。

セーフティが外され、対象の座標を捕捉、引き金を引く。

 

 

――系統外・精神干渉魔法「コキュートス」。

 

精神を凍り付かせる魔法は、霊子情報体であろうと関係ない、実態を持たぬものであろうとも凍り付かせ――依り代を持たぬ氷はその場で粉々に砕けて散っていった。

 

 

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