妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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来訪者編㊴

 

待ちに待ったこの日は朝からウキウキ心が浮足立っていた。

お兄様からも何度も落ち着くようにと抱きしめられたけれど、どうにも浮足立ってしまう。

 

「雫が帰ってくるのが嬉しいのはわかるが、その笑顔を振りまくのは危ないから落ち着きなさい。このままでは空港に連れていけなくなってしまう」

 

浮かれ過ぎて笑みが止まらないのを注意されてしまった。反省。

ぶんぶん振り回していた尻尾も垂れ下がります。するとお兄様はくすりと笑われて。

 

「水を差して悪かったね」

 

言いながら抱きこまれ、指の背で頬を撫でる。

くすぐったさに身を捩ると、今度はその手で頬を覆って反対側の米神に口づけた。

 

「お、お兄様!」

「落ち込ませてしまったからな」

 

お詫びなのだとしたら払い過ぎです!感情バロメーターがあっちに行ったりこっちに行ったりと大忙し。一気に振り切れてしまった。

お兄様はリーナちゃんとの戦いの前にこのようなことをしてから何かと理由を付けて、その…こういうことをするようになった。

異文化コミュニケーションの影響が変に出てしまったらしい。

大変困った事態です。ハグだけでも心臓がもたないと思われていたのに、更なる追撃が待ち受けていようとは予想だにしていなかった。

 

「このようなふれあいは、その、ダメです!」

「だめか?」

「だ、ダメ、でしょう」

「家族間でなら問題ないだろう」

 

ないならなんで私はこんなに慌てるんでしょうねぇ?!

 

「だめか?」

 

更なるお兄様のダメ押しに、何とか立ち向かうのだけれど。

 

「…恥ずかしいから、ダメです」

「なら、少しずつ慣れていこうな」

 

ハグの時も初めはお互い慣れなかったものな、と言われてしまえば反論のしようもないわけで。

 

(ハグは私が強制的にしてもらって常態化させましたからね。今ではしない方が違和感というレベル。…それでも恥ずかしさはあるんだけどね。お兄様もしばらく戸惑っていたはずなのに。でもさっきのセリフは当時慣れないお兄様に言ったセリフそのもので…反論を塞がれてしまった…)

 

過去の所業がこうして返ってきている状態に、私は日々追い詰められている。

因果応報?自業自得?…やばいね、そろそろ神に直々に裁かれそうで怖い。

何とかなる、で乗り切ろうとせずちゃんと裏付け取ってから行動しよう。

ご都合主義と原作知識に甘えすぎないようにしないとね。

原作の流れに沿っているとはいえ、すでにはみ出た行動を取っているのだから、どんな思っても無い変化が起きていてもおかしくはない。

 

 

 

 

それからも浮足立った私を宥めながらお兄様と一緒に空港に到着。現地集合の皆と合流し皆で雫ちゃんを待つのだけど、トラブルでちょっと遅れるらしい。

この時代でもよくある遅延理由だったので慌てることでもない。

天候ばかりはね、今の科学ではどうしようもない。

お兄様はほのかちゃんに話しかけられ、それを前の席のエリカちゃんや西城くんが面白そうに見つめ、美月ちゃんと吉田くんが楽しそうにお話しているのを私がニコニコ見つめている構図。

なんというか、青春だよね。こんな穏やかな日常がずっと続けばいいのに。

何気なく、視線を周囲に向けた時だった。目の端にとらえた金の光に引き寄せられるように視線を向ければ――見つけた。リーナちゃんだ。

立ち上がろうとしたら先にお兄様が立ち上がっていた。視線の先には同じくリーナちゃん。

横に並んでいた二人が急に立ち上がってびっくりするほのかちゃんに申し訳なく思いつつ、皆にこの場を離れることを断ってから私たちは彼女の元へ向かった。

リーナちゃんもこちらに気付いていただろうに、逃げることなく待っていてくれていた。

 

「見送りに来てくれたの?」

 

久しぶりに見た彼女は、同級生というより卒業した先輩たちよりも年上のような、大人びた顔つきになっていた。

あの卒業式後、学校に来なくなったリーナちゃん。

戦略級魔法師を探る任務は続けられると四葉との協定が揺らぐ恐れがあるから、任務自体から手を引いたのだろう。というかこれからパラサイトの後始末もあるのかな。総隊長は大変だ。

それでも今日まで留まっていたのは任務の期限が三か月と決まっていたということもあるだろうが、日本への配慮もあるだろう。学校の留学という形で来ているのだから。軍の内部だけでなく外交も関わってくるなんて面倒だけれどあちらの国も日本に喧嘩を売りたいわけではないだろうからね。

あとは、そうだな、本土からでは調べにくいことをこちらで調べていたのかもしれないね。

あれからも何度か四葉とは資料のやり取りがあったみたいだし。

 

「まあな。ここで会えたのは偶然だが」

「あら、今日がフライトの日だと伝えてなかったかしら?」

 

うっかりしてたわ、というリーナちゃんには心の余裕が見て取れた。以前のように、突っかかる様子はない。

 

「リーナ、綺麗になったわね」

 

自信に満ち溢れているせいか、キラキラ神々しく見えます。綺麗だね。

 

「…深雪こそどうしたの?いつもよりその、ふわふわしてるというか、可愛いじゃない」

 

リーナちゃんに可愛いって言われた!嬉しい。頬が緩むのが止められませんね。

今日は淑女はお休みだから抑える気もない。

 

「リーナと交換してアメリカに行った友人が帰ってくるんだ。今朝からずっとこんな調子でな」

 

苦笑交じりの困ったような笑みを浮かべながら頭に手を置かれました。文字通り浮かれ過ぎないようにってことですね。ちょっと抑えましょう。

 

「…なんか、悔しいわね」

「え?」

 

さっきまで堂々としていたリーナちゃんが、ちょっぴり複雑そうなお顔。どうしました?

 

「ワタシとの別れより、そっちの方が嬉しそうなんて」

 

……あら。あらあらあら!

 

(嫉妬!?リーナちゃんに嫉妬されてる?!やだ、どうしよう!)

 

どうしようもないので感情のままにリーナちゃんに抱きついた。

 

「ちょ、ミユキ!」

「リーナとのお別れは辛いわ。でもきっと、きっと近いうちにまた会えるって思ってるから」

「な、何でよ!帰国したら気安く本国から離れられないはずよ」

 

リーナちゃんはすでに次の任務が待っているのかもしれない。

国に帰ったら色々お掃除がありそうだと聞いているのか。だとしても、彼女はきっと戻ってくる。

 

「だって、リーナは兄さんに選択肢を貰ったでしょう」

「!!」

「見えなかったものが急に見えると不安になるわ。立っている場所が安全かわからなくて、このままでいいかわからなくて。でも今のリーナには不安だけじゃない、見極める力がある。自分で選べる道がある――、そんな目をしてる」

 

じっと見つめるのは彼女の瞳の海の中。キラキラとした輝きが映っている。それを際立たせる白い肌が、夕焼け色に染まっていく。

 

「こ、こんな至近距離で見つめないで!」

 

おっと、あまりの美少女っぷりに顔を近づけすぎてしまった。あまりの美しさに吸い込まれていたらしい。

ごめんね。オタク、美しいものや好きなものを見ると熱中しちゃうから。

真っ赤になったリーナちゃんに押し戻されて、彼女から離れると、すぐさまお兄様の腕が私の肩を抱き寄せた。

 

「深雪はちょっと落ち着きなさい」

 

久しぶりに敬語のお兄様。

はい、申し訳ございません。深呼吸、深呼吸。

 

「深雪もこう言っていることだしな。また会うだろう。それもそんな遠くない未来に」

「なんでそんなことがわかるのよ」

「深雪の勘は当たる。それに――、俺自身もそう思うよ」

 

穏やかに微笑まれるお兄様に、リーナちゃんは一瞬たじろいだ。

出会ったころならばこんなに可愛い反応は返ってこなかっただろう。

ここまで気を許せる間柄に成れたのだと思うと感慨深い。

 

「リーナ」

「…何?」

「短い間だったけれど、貴女と過ごした時間はとても濃厚で、思い出深いものばかり。この三か月充実した日々を過ごせたわ。ありがとう」

 

しっかりと頭を下げてお礼を述べる。

彼女がシリウスだったから、私たちは争いをせずに済んだ。

こうしてまた平穏な日々を送れるのだ。

 

「それはこっちのセリフよ。こんな濃密な三か月、忘れようがないくらい、どれも印象深い思い出よ」

「大好きよ、リーナ。元気でね」

「っ、そうやってさらっと言うのやめてよね!…ワ、ワタシだって…、ミユキ」

 

リーナちゃんは一歩私に近づいて両手で私の手を包み込んで。

 

「感謝してる。アナタのお陰で、私は――いいえ、これは秘密。言えないわ」

 

そう言ってぎゅっと握りしめてから、手を少しだけ持ち上げて。

 

「大好きよ、ミユキ。またアナタに会える日を楽しみにしているわ」

 

身をかがめて私の指先にキスを落とした。

瞬間、周囲の音が消え、指先から熱が点ったように熱くなる。

 

「その時にはタツヤより強くなって、アナタを奪ってやるんだから」

 

ぱちん、とウインクされて、ずきゅんっ!とハートを射抜かれた。

体から力が抜け落ちるのを感じたけれど、お兄様が力強く支えて――、違うね。抱き込まれたね。

リーナちゃんが見えないどころかお兄様の胸のあたりしか見えない。

 

「ふん、いつまでもそうやって独り占めできると思ったら大間違いよ!覚悟してなさい」

「それがリーナの本性か」

「さあ?なんのことかしらね」

「…警告もされたしな。たっぷりと迎撃の準備はさせてもらおう」

 

おおっと、なんだかきな臭い方向に。背中からピリピリした空気が伝わってきます。

この間の十文字先輩との一触即発に似た雰囲気。

 

「と、そろそろ時間ね。タツヤ、ミユキを見せて」

 

けどその空気はあっさり霧散。二人とも遊んでたね。ちょっと疎外感。

お兄様の腕も緩んでくるんと回され元の位置へ。だけど肩は抱かれたままだった。

 

「アナタたちの言う通り、これで最後じゃないって私も予感してる。だから――また会いましょう」

 

飛び切りの笑顔で、彼女は去っていった。

私たちは彼女の姿が見えなくなるまで見送った。

 

 

――

 

 

そして待ち焦がれた姿が現れ、ほのかちゃんとの抱擁を済ませた後、両手を広げてくれた雫ちゃんの胸に飛び込んだ。

 

「会いたかった」

「私も」

 

もう離さない、と言わんばかりに二人して抱き合った。

 

「…なんつーか、ほのかとの間は友達って感じだったけどよ」

「こっちはまるで恋人同士よね」

 

エリカちゃん達が何か言っているけど気にしない。だって待ちに待った瞬間だったから。

だけど、

 

「…甘い香り…?深雪、香水つけてる?」

「いいえ」

 

そんなものつけてないけど、と首を捻ると、いつの間にかお兄様が傍に来て耳打ちをした。

この距離だから内緒話にはならずバリバリ聞こえるのだけれど。

 

「雫がいない間にライバルが増えてな。さっき別れの挨拶をしてきたばかりだ」

 

ライバルとは?リーナちゃんは確かに原作では私のライバルでしたけども。

お友達としてお別れしたはずなのだけどね。

お兄様の言葉に雫ちゃんの抱きしめる腕の力が強まった。

 

「達也さんが付いていながら?」

「深雪の魅力にオチない奴はいない」

 

そんなことないよ。お兄様も、そして雫ちゃんもさっきから何を言っているの。

そして、なんでしょうね。雫ちゃんから浮気を嗅ぎつけられたような妙な焦りを感じます。

リーナちゃんの時には嫉妬かな、可愛い。だったのに、ダラダラと背筋に汗が流れる感じが…。

 

「深雪。もうちょっと自覚を持って」

「…何を自覚するの?」

「深雪は魔性なんだから何でもかんでもオトさない」

「そんなことしてないわ」

「そんなことあるだろう。パラサイト然り、リーナ然り、まさか十文字先輩もだとは思わなかったが」

 

パラサイトってピクシー?リーナはお友達だし、十文字先輩は魔法師の家系だから、もし他に行くところがなければと前置きをしたうえで、強力な力を持った魔法師を囲い込みたいって話だったでしょうに。

 

「…深雪は危機感が足りない」

「…深雪の学習能力は高いはずなんだが」

 

二人してやれやれ、と嘆息された。

えー、危機察知能力は今回の件でかなり上がったと思うのですけどね。そっちじゃない?どっち⁇

 

「達也さん、レイからたくさん伝言を預かってる。今度都合がいい時に」

「わかった」

 

私が混乱している間にお話はまとまっていた。

何はともあれ雫ちゃんが帰ってきた。

私の思考はそこに帰結し、すべてがよくなった。

 

「おかえり雫」

「ただいま深雪」

 

 

――

 

 

だからちょっぴり気が緩んでいたのだろう。

お兄様と二人きり、ソファでまったりしているところにチャイムが鳴り響く。

出迎えると、そこには――

 

(そういえば、今日でしたっけね)

 

桜井穂波さんを小さくしたような、可愛らしい女の子の姿が。

 

 

 

こうして最後の来訪者、水波ちゃんが今日から我が家で暮らすことになりました。

 

 

 

来訪者編 END

 

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