妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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ダブルセブン編②

 

 

「お疲れ様、水波ちゃん」

 

恐縮する水波ちゃんに、私はこれからの生活をどうするか三人で話し合うことを提案した。

メイドさんとして働いてもらうのは決定事項としてもどこまで世話をされるか、ガーディアンの仕事についてはお兄様から教わるとしても、学校ではどのように関わるか、など話すことはいくらでもあった。

プロ意識の高い完璧主義の水波ちゃんは、おはようからおやすみまでお世話をしたかったみたいだけど…年下の美少女におはようからおやすみまでしてもらえるなんて、私本当に前世一体どんな徳を積んだの?

知らないうちに世界でも救った?

叔母様はもしかしてそこまで世話されているのだろうか。

想像した。…似合うね、とっても。気だるげに起きる叔母様をお世話する水波ちゃん?…顔を覆う指の隙間から覗いてみたい光景。もしくはドアの隙間ね。とにかく覗き見がしたい。直視は私には早すぎる。

と、冗談はそこまでにして。私は庶民が抜けないのでそこまでのお世話はちょっと勘弁願いたい。

水波ちゃんはそもそもメイドの前に学生でもあるのだ。

私の世話よりもまず己のことをきちんとしてもらいたい。

そう伝えると不承不承ながらも朝食から夕食、お風呂の世話までに譲歩してもらった。

お風呂といっても中じゃない。諸々の用意とケア等々。洗うのは流石にやめてもらった。私が耐えられない。

そして食事だけれど、基本的に水波ちゃんが作ることになりました。

美少女の手料理がただで食べられるの?後で叔母様に高額請求されない?

四葉メイド派遣サービス。高品質のサービスを超高額でご提供――払える気がしない…。

でもいつ請求されることになってもおかしくないと思うの。

今のうちに叔母様への袖の下を用意しなくちゃ。

時折私も食事を作りたい、と言うと水波ちゃんはちょっと悲しそうな顔をしたけれど、全部じゃなくて一品だけでもいいから、と譲歩したところ、それならばと許可をもらった。やったね!

…私主人なのに立場おかしくない?許可する側じゃない⁇別に気にしないからいいけど。

お菓子作りは水波ちゃんも範囲外だったようでびっくりしてたけど、水波ちゃんが身に付けるまでは好きにさせてもらえるみたい。

水波ちゃんが闘志を燃やしていたけれど、できればゆっくり身に付けてね。

あと土いじりについては難色を示した。母も初めはそうだったけどね。

お花に触れるだけならいいけれど、お嬢様が手ずから育てるなんてないからね。そういうのは庭師さんの仕事だから。

だけど一般家庭に普通庭師はいません。

これにはお兄様もフォローしてくれて、母に捧げる花を育てていて、心を慰めるのに一役買っている云々。

うん、そんな感じなので許してね。

朝の修行には水波ちゃんは付いていかない。お兄様がいれば十分なので。

私が付いて行かない日は家でストレッチ等しているけれど、一人で集中したいので水波ちゃんには自分のお仕事をしてもらうようにお願いした。

夜の勉強のコーヒータイムだったりはセルフで。

水波ちゃんは用意したいみたいだけれど、しばらく生活に慣れるまでは無し、ということで落ち着いた。

彼女も元々四葉から出たことのない子だ。

外の生活は知識として知っていても慣れるまで時間がかかると思われた。あそこは魔境でもあるからね。

普通の子たちとの暮らしってなかなか慣れるまで時間がかかる。まず常識が違う。

慣れ合わなくとも馴染めなければ私の傍に居るのは難しい。

我関せずで今のまま変わらずいればいざという時守り辛い。

ガーディアンとは影に徹し、目立つことなく主を守らねばならない。

自然に溶け込み、周囲に悟られずに。

それはメイドとして主に仕えるよりも難しく、早急に擬態しなければならない案件。

お兄様にそれは無理だった。馴染むには私と兄妹という時点で目立たぬことができなかったからだ。

ついでに他人など気にしていないお兄様にそもそもそういった擬態自体難しかった。

気配を消す、はできても、雑踏に紛れるはできても、同級生たちと打ち解けるというのは、中学までならできたとしても、魔法科高校という魔法力によってカテゴライズされた中ではなかなかに難しいものがあった。

たとえ一科生と二科生の壁を無くしたからと言っても、テストの実技の結果は思わしくなく、それでも実力がある人間というのは奇異に映る。

水波ちゃんの場合、母方の従妹という体で通うことになる。けれど、お兄様の時とは違い、同学年でもなければ能力を比べられても目立たずも優秀な成績だったため変に注目されることもない予定だ。

私の傍に居ても何らやっかみも買わずにいられるいいポジションにいるのだ。

これはガーディアンとして隠れ蓑にちょうどいい。

呼び方については、原作通り水波ちゃんは折れなかった。

達也兄様と深雪姉様呼び。ここが精いっぱいの妥協点だった。しょうがないね。こればっかりは。

ってことで設定的に、私が悪ふざけで幼少期にそう呼ぶようにお願いし、現在まで修正することなく来てしまった、という身内の悪乗り設定を通すことにした。

それならそんなにおかしなことじゃないでしょう?と言ったら水波ちゃんは恐縮してしまった。

ただの設定なのに私を悪者にしているようだって?いいんじゃない。お姫様に憧れたメルヘンチックな思考回路は幼少期あるあるだからおかしなことでもない。

それをネタに揶揄う関係は親し気にも映るだろう。

ということで長々設定を考えていたら夕食の準備に取り掛かる時間。

生活において足りない物を聞く時間もなかった。また別の機会だね。

 

「じゃあ水波ちゃん、今日はメニューを決めていたからある程度準備はできてるの。一緒に作りましょう」

 

水波ちゃんはすでにメイドさん風ワンピースとエプロンを身に付けていた。いつでも作業にかかれますアピールがすごいね。気合十分。

お兄様は部屋に戻らずソファから見守る姿勢のようだ。

今日の私のエプロンはシンプルなツートンカラーの飾り気のない実用的なエプロンです。髪もまとめていざ!と冷蔵庫を開けます。

勝手知らない人のキッチンだから全部口に出して説明しながら食材や調味料を用意しようとするのだけれど、

 

「え、お出汁を作り置きして冷蔵庫に常備なさっているのですか?」

「飾り切り…今日は祝いの席、というわけでもなく…?」

「レンジで簡単に豆腐が…応用ワザがある?…すみません、メモさせていただいてもよろしいでしょうか」

 

あらまあ。お料理教室になってしまった。

でも基本はばっちりできてるんだね。手際がいい。サイズもちゃんと均等に煮えるよう切られている。

高校上がる前にしてはかなりの腕前だ。独り暮らしどころか嫁に出してもいいレベル。

まだ出さないけどね。彼女は私の大事な子なんだから。

調味料もいくつかオリジナルがあるのでびっくりさせちゃったみたい。レモン塩とかあると便利だよ。

若いうちからでも塩分は控えめにね!ハーブはお庭にあるものを使っていると言うと驚かれた。

家庭菜園も担ってますよウチの庭は。

 

「…申し訳ございません。私の腕前では深雪様の足元にも及びません…」

「そんなことないわ。初めての調味料を使ってこれだけ美味しい味付けができるのだもの。十分に上手よ」

 

全工程を終えて水波ちゃんの頭を撫でる。可愛い。いい子です。

耳を赤くして俯いちゃってうちの子可愛い。

 

「これからは好きに使ってね。足りなくなったら補充もするし、何なら作り方から教えるわ」

「ぜひ!」

 

意欲ある生徒さんです。可愛い。

 

「ではよそって並べていただきましょう。――お兄様、お待たせいたしました」

「いいや。実に楽しい時間だったよ。深雪のいいお姉さんぶりが見えて」

「…水波ちゃんが可愛らしいので、妹がいたらこんな感じなのでしょうか。ついお姉さんぶってしまいました」

 

お兄様に手招きされて傍によると、お兄様から頭を撫でられた。

 

「いいお姉さんができた深雪には兄が褒めてあげないとね」

 

…お兄様、もしかしなくてもですが水波ちゃんの前でどこまで許容範囲か探ってます?

距離が離れてのなでなで。これくらいなら仲のいい兄妹ですものね。水波ちゃんも驚いてはいません。

ただ…ちょっと眉間に皺が寄ったような?一瞬だけど。…水波ちゃんには四葉の使用人あるあるの、ガーディアンのくせに生意気だぞぉ!は無いはずなのだけど。

 

「水波ちゃん、どうかした?」

「え?いえ、特に何も」

 

うーん、誤魔化そうとしてるなら誤魔化されてあげた方が良いのか。

 

「深雪は今、水波が思ったことが知りたいらしい。深雪は愛情深くてな、壁を感じたり下手に隠そうとするとこっそり気にするから深雪を想うなら伝えた方が良い。特にどうでもいいことなら猶更変に誤解されないためにも話した方が良いだろうな」

 

あら、お兄様からの援護射撃。でも私そんなに愛情深くは無いですよ。

オタクはその瞬間が深海まで深い時があるくらいで平常では結構浅瀬です。

好きなキャラに対しては常時深いこともありますけどね。

 

「…たいしたことではないのですが…」

 

水波ちゃんは迷ったようだけど重い口を開いてくれた。

使用人が口出しするのは、とか遠慮してるんだろうけど、ごめんね。プロに徹することをさせてあげられなくて。

 

「兄妹仲が、よろしいのだな、と思いまして」

「そうね」「そうだな」

 

お兄様と同じタイミングでした。顔を見合わせくすりと笑い合う。

ああ、本邸ではそのような様子は一切見せないから、あちらでは兄妹仲が良いように見えてないのは知っている。そう見せているんだから当然なのだけど。

気付いている人はアレが演技によるものだとわかっているようだけれどね。

表面しか見ない人には兄妹にも見えないようだから。

 

「あちらでは立場があるからそのようにふるまっているけれど、大事な家族なんだもの。プライベートくらい好きにしてもいいでしょう?」

「建前は大事だからな。俺としては主演女優を特等席で見られているとあって、それなりに楽しんでいる」

「まあ。そんなことを考えてらしたのですか?こちらはどうして大好きなお兄様にそんなに辛く当たらなければならないのか、と己の立場を悲しんでおりますのに」

「他人がいなくなった時、辛そうに息を漏らす度、お前が俺を好きでいてくれると実感するんだ。――こんな兄は嫌いかい?」

「…今しがた口にしたばかりでしょう?それで満足してくださいませ」

「わかったよ。催促は食事後にするとしよう」

 

何が何でも取り立てるつもりですかお兄様。

そして水波ちゃん、ごめんよ。この会話は触れ合いもないのでライトな方。慣れていってくれると助かります。

 

「…お食事を準備いたします」

 

コメントを避けるように水波ちゃんは動き出した。その判断は正しいよ。

一人で作業したいだろうから手出しはせず、私はエプロンを外してお兄様と共にソファへ。

もちろん距離はちゃんと開いている。

しかし…女の子がいるってそれだけで空気が違うね。マイナスイオン?

正直もっと複雑な気持ちになるかと思っていた。

彼女の顔があまりに記憶に残る顔とそっくりなものだから。

過らないことはない。確かに記憶を引き出すには十分なのだけど――

 

(穂波さんの代わりに、と思っていないからだろうね)

 

あの記憶は確かに辛く、悲しい思い出だ。

救えたかもしれない命に手を伸ばさなかった初めての人。

彼女が望んでいなかったことも知っている。

それでも、私にとって彼女は家族以外で信頼できる、心を許していた存在だった。

水波ちゃんは、どうなっていくだろう。

内向的に見える彼女は、穂波さんとは違う性格のようだけれど。

 

「お兄様は、お辛くないですか」

 

こそり、と囁くと、お兄様は私の手を取った。

 

「人のことばかり心配をする深雪の方が心配だよ」

 

…はぐらかされた、だろうか。

わからないけれど、お兄様の表情は少し目じりが下がっていた。

心配しているようにも見えるけれど、それだけじゃないと思わせる、複雑な瞳の色。

 

「今夜、少しだけお兄様のお部屋にお邪魔してもよろしいでしょうか」

 

故人を偲ぶ時間を共有したい。言葉にはしないけれどお兄様は汲み取ってくれた。

握る手を少し強めて。

 

「いいよ。おいで」

 

 

 

夕食はとても美味しかった。いつもの食材、調味料でも作り手が変わると味も変わるよね!

今日はお手伝いという形だったけれど明日からは彼女が一人で作ってくれる。

美少女に作ってもらうご飯をタダで?!ちゃんと給金は振り込まれているだろうけれど、チップは渡していいんだよね?え、だめ?受け取り拒否??そんな・・・。

 

 

――

 

 

夜、…お風呂のお世話と聞いていたけれど、まさか上がったら洗面所でスタンバられているとは思わなかった。

私の裸を見ることになった水波ちゃんは、彼女にしてはとんでもないことなんだろうけれど、顔を思い切り背けられた。

ごめんね。水波ちゃんがいることはわかってたからタオルで隠しはしたけれど、バスタオルは中になかったのでね。Iラインしか隠せませんでした。

バスタオルを持って構えていた水波ちゃんもわかっていたはずだけど、…まあ磨きに磨き上げちゃった深雪ちゃんのボディですからね。

至近距離で見たら目がつぶれてもおかしくない眩さですもの。そこに性別なんて関係ない。

落ち着いたのは、私が水波ちゃんの用意してくれたバスタオルを勝手に取ってぱぱっと体を拭って、下着を身に着け終わってしばらくしてからだった。

暖房が効いてるから寒くないけどね。春とはいえこの恰好で長く待っていたら風邪ひいちゃうかもしれないから勝手に動かせてもらった。

そこからは服を着せてもらい、髪を乾かしてもらってヘアケアからスキンケアまで隈なくされて、…つま先までしっかり塗り込まれました。

人にやってもらうって楽って言うけどとっても気まずい。

くすぐったくてたまらなかった。

まだこういったことは慣れてないのかな。

技術は学んでいたような動きだったけれど、遠慮があったからエステティシャンのようにはいかなかった。

練習付き合うから、頑張ろうね。

なんか、変な声を出したり見悶えて真っ赤にさせちゃってごめんね。

今日は謝ってばかりです。反省。

私も主として精進せねば。

最近淑女としての仮面の修復も間に合っていない気がします。

数日後に控えた雫ちゃんの身内のパーティーまでには直っているといいのだけど。

一度気を引き締める為に叔母様と圧迫面接の荒療治でもしようかしら。水波ちゃんのこともあったことだし。

 

「ありがとう、水波ちゃん。これで、今日のお仕事はお終いね」

「……至らぬところが多く、申し訳ございませんでした」

 

顔を真っ赤に染めて涙目の水波ちゃんに思い切り目線を逸らされてます。

すまないね。鏡越しで見ても確かにコレは直視が厳しい。

 

(上気した頬は薄紅色に染まり、瞳は今にも雫をこぼしそうなほど潤い、焦点がぼやけているように虚ろになっていて、口から漏れる吐息は近づかなくても熱いとわかる。体には力が入らない全身火照った状態…うん、事後にしか見えない)

 

ケアと同時に施されたマッサージは、まさか性感マッサージでも含まれているのではと疑いたくなるくらい体が火照ってしょうがない。

クリームに特殊な薬剤か何か入ってた?と、疑いたくなるけれど、そうじゃないことはわかっている。

これは単に彼女が私の体に力を入れるのを躊躇ったことによる中途半端な施術が原因です。下手に緊張させてごめんね。

だけど擽りを耐えるって結構大変。

頑張ろうとしてくれたのがわかるから、好きなようにやらせてあげたのだけど、うん。早く慣れてね…。

下がる水波ちゃんを見送って、私は少し体を冷ましてからキッチンへ。水分はしっかりとらないと。

この後お兄様の部屋に行くのだけれど、ちょっと時間を空けていった方が良いよね。

流石にこの状態で会うのは気まずい。

一旦部屋に戻って態勢を立て直してからだね、と考えて廊下を歩くと――

 

「お、にいさま」

「……何があったかは聞かない方が良いか?」

 

こういうタイミングで会うよね!知ってた!!

だってお兄様には呪いがかかってるものね。ぶつからなかっただけましだと思った方がいいのかな?!

そしてお兄様からも少し視線を外されました。お兄様でも直視はできないですか。申し訳ない。

でも息を短く吐いてからすぐに視線が向けられた。流石お兄様。

この歩く危険物状態の深雪ちゃん相手でも持ち直してくれる!嬉しい。私でさえ直視が厳しいのに。(←)

 

「お風呂上りにボディケアをしてもらっただけですので…」

 

嘘をついたわけじゃないのだけど、ちょっと後ろめたいのはなんででしょうね。

 

「お兄様は、地下で作業をされていたのですか?」

「ああ。キリがよくなったから切り上げてきた。深雪とも話をする予定だったしな」

 

早めに切り上げてくれたのだろうね。…でも、この状態でお兄様の部屋でお話を?できるかな。

 

「とりあえずコーヒーでも淹れましょうか」

「そうだな。少し濃いめに淹れてくれるか」

 

落ち着くための時間稼ぎにコーヒーを用意。お兄様からのリクエストに応えつつ、今日のお供は一口サイズのマドレーヌ。これなら部屋で食べても零さないで済む。

トレイに全てのせ終えると、当然のようにお兄様が運んでいく。

 

「ありがとうございます」

「これくらい大したことじゃないよ」

 

せめて、とお兄様の部屋の扉を開けるくらいの手伝いをして後に続いて入室した。

 

 

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