妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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入学編⑩

 

 

授業には余裕で間に合った。

まさか最後にホラーな展開を思わせる話になろうとは。

いえバッドエンドというか、お兄様とだったらたとえ監禁エンドでもメリーバッドエンドでしょうけども!

嫌いじゃないよ見ている分には。体験したことないからわからないけど、うん。あれはフィクションだからいいのであってリアルは想像つきません。

お兄様がヤンデレなんて想像したことなかったので!幸せにする気満々なのでね!!縁遠いものですよ。

つまり心配nothing!…動揺しすぎました。

 

「深雪?大丈夫?」

「ありがとう雫、ほのかも心配ありがとう。大丈夫よ。ちょっと考え事してただけだから」

 

心配してくれる友達ってありがたいよね。嬉しい。

クラスメイトとも仲が悪くなることなくて一安心しています。

入学当初はどうなることかと思ったのだけど、みんな素直ないい子たちで助かりました。

 

「つ、次は司波さんだよ」

「ありがとう」

 

実技の順番がきたと教えてくれた男子は、伝えることだけ伝えて足早に去っていく。

話せたことが嬉しかったのかガッツポーズをし、周囲の男子から背中を叩かれていた。

うむ。青春っていいよね。

気分のいい私は反応の鈍すぎる機械で雑音だらけの起動式を受け入れても苛立つことなく、さくっとつまらない作業を終わらせた。

どよめきをバックに友達の元に戻って、会話に花を咲かせる。

私も青春の中に入れたみたいで気分は上々!

今日はいい日だなぁ、と朝の憂鬱さが吹き飛んでいた。

 

 

 

放課後は生徒会室でお仕事。

正直四葉からの課題を熟している身としてはさほど手間ではないのだが、できすぎても問題なのでゆっくりと熟読する振りで時間を稼ぎながら作業する。

 

「ところで、深雪さんはどう思っているの??」

「どう、とはいったい何についてでしょうか?」

 

七草会長も作業をする手を止めずに、けれど声は楽しそうに――否、揶揄うような声で訊ねる。

 

「ほら、今この時お兄さんはデートをしているわけじゃない?」

 

でーと。生餌ってデートになります?

むしろハニトラとロミトラ合戦かな。

…ここは知らないふりが賢明ですね。それ以外ないです。はい。

 

「年上の彼女ですか?お姉ちゃんって憧れるので大いにアリですね。壬生先輩素敵でしたし」

「あらお兄さんが恋人作るの応援しちゃうタイプなのね」

「意外ですか?」

 

なんでしたら斡旋しまくる予定ですよ!先輩もいかがです?

口にはしないけど。

 

「そうねぇ。昨日のアレを見る限り、結構二人きりの世界だったから恋人なんて、って」

「ふふ、なんですそれ。ブラコンなのは認めますけど兄が幸せならそれでいいじゃないですか」

 

ブラコンだからって、皆が皆お兄ちゃんに恋人が嫌なんて、ちょっと夢を見過ぎじゃないでしょうかね。

 

「確か七草会長もお兄さんがいるんでしたよね」

「あ~うちは貴女達みたいに仲良くないから、その辺はお互い気にしたことないわね」

「兄妹と言っても形はいろいろですね」

 

無難な言葉を返しながら、さてどうしたらお兄様は七草会長と仲良くなるだろう、と思案する。

…ファーストコンタクトは会長の方からだったから気はあるはず、だと思ってたんだけど。

 

「でもそうね、昨日のアレを見た人には人気が出そうよね達也くん」

「私は俯いていたのでよくわからないのですが、クラスの子からもすごかったと聞きました」

「もうだめだ!って思ったところに格好良く登場して、ばっさばっさと周りをなぎ倒してお姫様を救い出すんだもの。あれはちょっと私もかっこいいなって思ったわ」

 

うーん、これは全くの脈無しではなさそうだけど、ちょっと英雄視させすぎちゃった?

九校戦で巻き返せるかな。

もしくはお兄様と二人きりになる機会があれば、あのフラグ建築士のお兄様のことだからイチコロだと思うんだけど。

今後に期待だね。

今日のところは私が恋人歓迎派ですよと伝えるに留めておこう。変な斡旋は逆効果だろう。

 

「ほら会長、しゃべっていないで手を動かしてください」

「動かしてるわよ~でも書類が終わらないのよ~」

「が、頑張ってください会長」

「あれ、そういえばはんぞーくんは?」

「例の件で風紀委員長に呼ばれていきましたよ」

「…もう、問題があとからあとから!こっちは学校生活だけでいっぱいいっぱいなのにぃ」

「机に凭れている時間なんてないですよ。今送りましたのでチェックお願いします」

「リンちゃんは仕事が早すぎる!」

「討論会の分の仕事が増えているのです。会長のやりたかった政策でしょう。頑張ってください」

「うー、頑張る」

 

いいチームですね。生徒会。

いい職場に恵まれたようで何よりです。

どうせ仕事をするならば癒しがあって上司に恵まれるところがいいものね!

彼女たちの為にも頑張りますか。

 

 

――

 

 

夕食を終え、食器も片してソファでまったり今日の報告会中。

 

「カウンセリングのモニター、ですか」

 

お兄様が?ああ、なんか原作にそんな話があったな。確か公安の人なんじゃなかったかしら。

 

「おそらく彼女は何かあるだろうな。妙なさぐりも入れてきた」

 

ううん、流石歴戦の雄であるお兄様は見逃さない。

小野先生まだお会いしたことないけど、にげてーと言いたくなる。

けどこの先どうあっても逃げられないだろうし、利用されることを思うと労いの方が強いかも。一応持ちつ持たれつではあるんだけど、翻弄されるタイプは総じて不憫属性である。可哀想。

公務員って大変ですね(すっとぼけ)。

壬生先輩とお話した後、タイミングよく呼び出されたらしい。

お兄様研究したいのに、どうしてこんなに邪魔されちゃうんですかね。

でもここを乗り切れば風紀委員の仕事もないし、原作よりは時間を捻出できると思うのだけど…そもそも原作多忙すぎたからな。

ここを乗り切ってもすぐ九校戦控えてるし。

 

「壬生先輩の方はいかがです?」

「はじめこそ部活の勧誘だったが、途中から今の生活に不満がないかと」

「お兄様を誘って戦力にでもする気ですか?」

「その可能性も捨てきれないが、どうにもな」

「何かおかしなことでも?」

「なんというか思い込みが激しいような気がしたんだ。集団心理でもああなることはあるが、矛盾しているのに気づいていなかったりと、どうにもちぐはぐな気がする」

 

お兄様将来探偵にでもなりますか?

リアル高校生探偵⁇真実はいつも一つ!…じゃないのがこの世界ですから、決め台詞は別でお願いしますね。

展開が早いのは悪いことじゃないからいいけど、うーん。お兄様有能すぎる。

何はともあれ。

 

「お疲れ様ですお兄様」

「俺に癒しをくれるか?」

 

両手を広げるお兄様に、私は身を預けるように倒れこみ、ぬいぐるみよろしく抱き込まれた。

だけどお兄様、そんなに抱き込もうとしないで!私縮まないから!!痛くはないけど手足を折りたたんだ状態で抱き込まれました。

どんなストレス貯めたらこんなことになるの?

私の知らないところで知らない事件が勃発している件について。

あったとしても…たぶん言いたくないんだろうな。

安心してください。秘密は秘密として見ぬふりのできるタイプのオタクです。

 

「お兄様、もう三分経ちますよ」

「延長で」

 

ううん、もしかして私が無理させすぎたのかな。

原作よりもアグレッシブに動くし。

でもそろそろなんです。

 

「先生のところに行くお時間が迫っています」

「…わかった」

「夜のドライブ楽しみです」

 

自動二輪車を購入したお兄様。

バイクですよバイク!お兄様とツーリング!テンション上がります。

そんな私を微笑ましく思ったのか、ようやく拘束を解いてくれたお兄様は、頭を一撫でしてから準備しに行った。

ツーリングとは、恋人の体温を周囲の目を気にせず感じることのできる最高のツールである、とは誰のお言葉だっただろうか。

まあ恋人でもないし、引っ付くのは今更なのですが、体を押し付けるのってちょっといつものとは違うよね。

腕をお腹に回すけどお兄様鉄板仕込んでます?とってもカチカチ。筋肉って力弱めれば柔らかいんじゃないの?知らないけど。

わかってたけど、私緊張してますね。

でも女は度胸、えいやっと行きます。

 

「っ」

 

?お兄様に動きはないけど今、息が詰まったような音しなかった?気のせい?失礼しました。

 

「行くぞ」

「はい」

 

そしてバイクは闇夜を疾駆する。

十分ほどのドライブは揺れもなく安全で、しかし全身で風を感じられるとあってとっても気持ちのいいものでした。

 

「深雪はバイクが気に入ったかい?」

「はい!」

「じゃあ別の機会にまた乗ろう」

「ありがとうございます!楽しみにしてますね」

 

お兄様峠攻めとかしないかな。…しないか。

いつかお願いしてみよう、と心にメモをして境内を進んで待ち合わせの庫裏に付いたけれど真っ暗だ。

連絡を入れているので留守ということは無いはずで――

 

「やあ、いらっしゃい二人とも」

 

わかってた!この人がこういう人だってわかっているのに、体は正直にびくぅっと震えてしまった。

当然腕を(暗くて足下が危ないからと)組んでいたお兄様には伝わっただろうけど、気づかぬふりをしてくれた。優しい。

忍者、愉快犯、多イ、私、知ッテル!まだ心が落ち着かなくて片言で変なことを内心呟く。

表情には出していないけれど、先生はこっちを見て笑っている。

 

「君たちの霊気は本当に見事で見ていて飽きないよ」

 

そうだった。この設定もりもり忍術使いさんは霊気も見えるお人!つまり心の乱れが丸見えってこと?恥ずかしい!精神統一ってどうすればいいの?深呼吸?ラマーズ法⁇

お兄様と霊気の蘊蓄語ってるけど、耳を素通りしていきます。

優秀な脳はちゃんと知識として蓄えてくれてるから、心配はないんだけどね。ありがとう深雪ちゃんのパーフェクトボディ。精神が私なせいで先生に笑われたこと申し訳なく思います。

これでも前世に比べたら遥かに図太くなったのですがね。

…もしかして先生、霊気で私が普通じゃないことに気付いてたりしません?…ちょっと聞くのが怖くなった。

霊気という言葉にも夢やロマンが詰まってますので、何でもわかっちゃうと思っている節がある私です。

やめとこう。闇にむやみやたらと触れてはいけない!

そうこうしているうちに話は進み、軍を頼らないのかの話から学校に入り込んでいるエガリテ、その先のブランシュのお話に。

軍は頼らないのではなく、今回はどうも別の部署も絡みそうだから、軍として動くにしてもそちらの話し合いをしなければならないとかで今はNG。

エガリテのリストバンドしてた司先輩の義理のお兄さんが、ブランシュの裏も表も知り尽くしてる真の支部長なんだって。

調べて、と頼みに行ったのにすでに知っている先生、千里眼でもあるんですかねって感じです。いや先見?未来視?違うだろうけど疑いたくもなりますよ。

お兄様のクラスメイトの美月ちゃんのことまでチェックしてるとかね!

得られる情報はここまでで、目的までは先生でもわからないらしい。

まあ調べたわけじゃないんだから知っていたら怖いけれど。

 

「帰りも気を引き締めて帰りなよ~、お兄ちゃん」

 

ん?もしかして事故の暗示ですか?

最後のはあれですよね。学校のを知っていての激励ですね。愉快犯な音符が見えた気がします。

 

「師匠は戸締りをしっかりした方がいいと思います」

 

ん?こちらは闇討ちフラグ?

声は低めで地獄の底から響いてきそうなアレです。

師弟揃っておみくじ凶でも出ましたかというくらいな不穏さ。

とりあえず明日も早いのでここは退散しましょう。

 

「おやすみなさい先生」

「はい、お休み~」

 

へらへらと笑う先生と、無表情のようでいて少しだけむっとしているお兄様。

ううん、男同士しかわからないアレです?わからなくてちょっと寂しい。

家に着いて、先生とのやり取りにストレス感じたのではとハグする構えを取ったけど、お兄様は出かける前にしたから大丈夫と断った。

ハグって貯蓄できるんだ。

私もストレス感じそうな時があったらハグの前借りしようかな。

 

 

――

 

 

「司波さん、ちょっとお話し良いかな」

 

そう初対面の司先輩に話しかけられたのは、お兄様がまた壬生先輩とカフェデートをすると約束している日だった。

生徒会があると言ったが、明日の討論会について聞いてほしいことがあるとちょっと強引に誘われてしまい、断ることができなかった。

カフェスペースに座っていると、自分にコーヒーを、私に紅茶を買ってきてくれた先輩はこう切り出した。

 

「お兄さんの不遇をどう思ってる?」

 

そして自分も兄がいて、とても理不尽な目にあっているのだと語ってからちょっと見せたいものがある、と場所を変えることになり、その場所に向かう人気のない廊下で――私は意識が遠のいた。

 

 

――

 

 

達也視点

 

 

「ごめん、お待たせしちゃった」

「連絡もらっていたので」

 

息を切らしてきた彼女は「怒って帰っちゃったらどうしようかと思った」と大げさに胸を撫でおろし、席に着く。

前回とアプローチを変えたようだが、残念ながら特段何も思わなかった。

ただ世にいう可愛らしい女の子とはこういうモノを指すのだろう、と一般論として参考データにする。

 

「どうかした?」

「大したことじゃありません。先輩が時々『可愛らしい女の子』になるので、剣を握っている時とのギャップを感じまして」

「やだっ、もう…揶揄わないでよ」

 

慌て気味に、目を逸らされる。

 

(――ああ、この間の呼び方ひとつで恥ずかしがる妹は可愛かったな)

 

先輩の仕草に深雪とのやり取りが思い起こされた。

お兄ちゃん、など呼ばれたこともなかったし、呼ばれたいなど考えたこともなかったが――あれはよかった。

思わず口元が緩んでしまったが、視線は先輩に向けたままだったので、微笑みかけたような形になり先輩は顔を赤く染めた。

剣道部はかなり男子がいたはずだが、剣道に集中していて男に免疫がないのだろうか。

だとしたらこの役どころはかなり酷だと思うのだが。

 

「司波くんって…いつもそんな感じなの?」

「そんな、とは?」

「その、女の子を誤解させたりとか」

「質問の意図がよくわかりませんが、俺はあまり女子と関わる機会はないので」

「じゃあ天然なんだ…」

 

女子と関わらないというのは嘘だが、女子を誤解させるとは?そもそも誤解されるほど付き合うこと自体ほとんどないのでよくわからない。

 

「ってそうじゃなくて今日はこの前の続きを話そうと思って」

 

そして続くのは討論会への疑念、二科生としての不満を丸め込むつもりなんじゃないかという危機感。

 

「もちろん、私たちは討論会にも参加するつもりよ。聞かないと反論もできないし。でもきっと私たちの本当に願ってることは叶わない。

ねえ司波くん。闘技場での貴方の力はすごかった。あんなにすごいのに評価は最低なんておかしいでしょう?みんな貴方に同情してた。同時にみんな憤っていたわ。理不尽だ、おかしいって!だからぜひ私たちと――」

 

携帯端末が震えた。

端末を目視し立ち上がる。

 

「えっ司波くん!?」

「先輩、ちょっと付き合ってください」

 

そう言うと彼女の返事も聞かずに手を取って、引きずらない程度のスピードで走りだす。

急だったにもかかわらず転ばなかったのは、やはり体幹がいいのだろう。

 

「ちょ、ちょっと待って司波くん!なにが」

「緊急事態です」

「え、何?!」

「確証が欲しい。念のためです」

「だから何が!?説明して頂戴!」

 

混乱しているだろうに、彼女は抵抗することなく手を繋がれたまま付いてくる。

…実際は連行しているのだが、大丈夫かこの先輩は、と他人事のように考えながらたどり着いたのは生徒会室だ。

乱雑にノックをして返事も聞かずに突入する。

当然何も知らない会長たちは唖然としていた。背後の壬生先輩も驚いている。

 

「達也くん!?いきなりどうしたの?それに彼女は――」

 

 

「深雪が攫われました。すでに学校の外に連れていかれたようです」

 

 

「「「え!?」」」

「な、どういうことなの?!現場を見ていたの?」

「いえ、ただ妹には誘拐された際発信機にスイッチを入れるようにしてもらってます。その信号が端末に届くようになっているんです」

「それじゃ警察に連絡を――」

「必要ありません。俺が行きますので。ただ俺は共犯者を連れてきただけです。」

「共犯者?」

「まさか、私!?疑っているの?!」

「正確には共犯者にさせられた被害者ですが。タイミングが良すぎます。渡辺先輩と連絡は取れますか?今日は部員数が少ないなど報告はありませんか?」

 

矢継ぎ早に繰り出される言葉に生徒会室は一気に動き出した。

手を繋いだままの壬生先輩はただただ理解が追いつかなくて戸惑っている。

 

「なんなの…いったい何が――」

「壬生先輩、俺は貴女が悪い人だとは思いません。

貴女はとても誠実で、正義感が強く、己だけでなく人のことを思いやれる素晴らしい人格の持ち主だと思っています。たった二回お話しした程度ですが、貴女が俺のことを心配してくれたことはとても嬉しかった」

 

深雪は俺に良いことを教えてくれた。

 

「どっ、な!?」

 

――動揺させてからの方が話は聞いてもらえますから――

まるで催眠術でもかけられたように、目を見開いたまま真っ赤な顔をして固まった先輩に畳みかける。

 

「だからこそ悔しいんです。優しい貴女が利用されたことが」

 

そろそろネタは集まる頃合いと思ったところ、服部先輩を皮切りに続々届いた。

 

「今連絡が来ました!剣道部は主要な部員はいないそうです!」

「主将がカフェで司波さんとお茶をしてからどこかに移動したと」

「机にあったカップですが他の男子生徒が片付けてあげていたのを目撃したと証言する人が」

「総代は時折足元がおぼつかなかったようで主将に支えられている場面があったそうです!」

 

少ししか聞きこんでいないであろう風紀委員からの報告だが数多く上がるのは相手が深雪だからだ。

注目されている人間を攫うというのはプロでも難しい。

 

「ですが学校から出たという情報はまだないですね」

「協力者がいるのでしょう。――この移動速度と位置からして車ですから」

「…落ち着いているのね」

「そう見えるだけですよ」

 

落ち着いている?深雪を攫われて?ありえない。内心は荒れ狂っている。

いくら深雪が自分の意思で誘拐されたとわかっていても、ここまで深雪が計画した通りであっても、深雪を傷つけようという輩を許すつもりなど欠片もない。

俺から深雪を奪おうとするなど――万死に値する。

 

「では俺は深雪を迎えに行ってきます」

「ちょ、ちょっと待って!深雪さんが攫われたのは分かったけど相手は危険なテロリストの可能性があるのでしょう?!」

 

「て、テロリスト!?」と騒ぐ声などもう耳に入れることはない。

 

「これは俺の役目です」

 

言いたいことはすべて伝えた。

後は深雪を迎えに行くだけ――それが俺に与えられた今回の任務。

 

「司波、車を用意した」

「十文字先輩」

「ブランシュが動くならこれは十師族としても動かないわけにはいかない。もちろん部活連会頭としてもだ」

「…案内します」

 

深雪の移動が止まった。

俺は端末のスイッチをオンにしてスピーカーに切り替えた。

 

 

NEXT→

 





おまけ

『本日は引き続き深雪ちゃんに来ていただきました』
「なぜ本日もお兄様が――…ああ冒頭…」
『お呼びしても良かったのですが…お兄様の前で監禁エンドとかメリーバッドエンドという単語は控えた方がいいかと』
「英断かと」
『…何ですかねぇ、原作ではそこまで激重感情が表に出ることは無かったのですが、ここでは結構見え隠れしちゃっているというか。まあ、原因はこちらにいらっしゃいますが』
「わ、私が悪かったのですか!?」
『どう考えてもそうでしょう。原作改変した影響――というより貴女があまりにお兄様を信用しすぎて、お兄様なら妹に靡かないから大丈夫!と心の育成にばかり目を向け育った愛を見逃したことが主な原因かと』
「……だって…」
『ま、お兄様も男だったということで。さくっと諦めてサクサク先に進みますよ。クラスメイトとはそれなりに仲良くなりましたね』
「…ええ。朝の謝罪もあって距離が縮まりました」
『クラスの憧れのマドンナ的な?』
「というより、どちらかというと珍獣?でしょうか。男子たちはおっかなびっくりという感じでしたから」
『まあ、森崎君を中心に二科生を、特にお兄様を睨みつけていたグループでしたからそんな態度になっていてもおかしくはないのかな。嫌われたのではないか、とびくびく怯えられていた、と』
「ですが、それも初めだけで女子と仲良くしていたら自然と変化して落ち着いていきましたね。怯えられるということは無くなりました」
『それは良かった。で、続いての初の生徒会業務ですが…恋バナが始まりましたね』
「七草先輩も気になっていたんでしょう。…この時の会長って、すでにお兄様に惹かれていたりとかは…」
『それが、この段階では兄の殺意の高さを前日に見てしまったので、恋のドキドキより自分たちも悪いことをした、という罪悪感込みのハラハラドキドキになってましたね』
「で、ですが、ドキドキならば吊り橋的な効果が生まれても!」
『生まれる前に大事件でそれどころじゃなくなっちゃったんですよねー』
「…この前に黒幕を仕留めておけば…」
「でもそれをしちゃうとお兄様の成長を促す流れがわからなくなってしまうからと原作の流れを選んだのは貴女ですよ」
「うぅ…お兄様の恋愛メインに進めることに重点を置けばよかった…」
『(…だったとしても深雪ちゃん一直線になるだけでは、というのは黙っておこう)まあまあ。それで、兄の恋愛についてどうか、と尋ねられたわけですが、ここでもお兄様との恋愛を進めるために自分は気にしていませんよムーヴをかますわけですが』
「この世界、妹による兄姉への恋愛相手厳しい問題がありますから、自分はそんなことないというアピールをしたのですが…」
『真由美さんには良い情報だったかもしれませんが、なんにせよお兄様がアレですからね…。ああ、でも救ったところはカッコいいとの評価を貰ってましたね』
「そうなんですよ!これでちょっとずつ惹かれていってくれれば、と」
『九校戦もありますから挽回はできるとの計画だったのですね』
「お兄様にはたくさんの恋のチャンスが散りばめられてましたので、それをいい具合に仕向けられたらよかったのですが」
『女子はともかく、お兄様の視線は一点集中でしたからねぇ…』
「原作より周囲に関心が持てれば恋にまで発展せずとも、いい雰囲気になれるんじゃないかと思ったのですが、なかなかうまくいかないものですね」
『もう少し深雪ちゃんに関心が薄くなれば可能性もあったのでしょうが、そもそも衝動が妹にしか向けられない状況を何とかしない限り難易度がヘルモードだったかと』
「…うぅ、根本…」
『さて、事態は動いて公安の彼女が出てきたわけですが、A組は余り関りがなさそうですね』
「カウンセリングが必要な生徒は二科生の方が多いのだそうです。あれだけの環境だったわけですからさもありなん、といった感じでしょうが。この時お兄様に目を付けられた理由は手駒に使えると思われたから、でしょうが…小野先生は運が悪かったですね」
『お兄様を選んだのが運の尽き、でしょうな。お兄様の使い方を知っていれば手駒にもなったでしょうが…持ちつ持たれつどころか利用する側される側が見事に入れ替わっちゃっいましたよね』
「お兄様は景気よく支払ってくれますから彼女にも悪いお話ではなかったとは思いますけどね」
『…金払いのいい高校生って…ま、お兄様ですからね。それにしても、女子高生に言い寄られてストレス、とは。お兄様贅沢が過ぎますね。周囲の男子たちから恨まれても仕方ない』
「原作ではそのヘイトを丸っと被ってましたが、ここではあまりそういった流れは見当たりませんでしたね」
『いえ、やっかみ自体はあったそうですよ。ただ――妹を救った英雄譚があったので多少和らいだみたいで。ほら、放送室でのひと悶着も無いですからプライベート番号交換に嫉妬される場面も無いですし、何より風紀委員になっていないことでそこまで周囲を刺激していないんですよね』
「…確かに」
『クラスメイトの男子たちに羨ましがられても、「部活の勧誘だ」とさらっと流して皆を納得させていたみたいですよ』
「?普通それで納得します?」
『ほら、救出劇の実力があるので。身体能力は高そうだから二科生でも活躍できる部活に勧誘されたんだ、と』
「…皆、素直ですね」
『まだ擦れてなかったですからね。二科生というレッテルが響く前』
「変にはやし立てられて嫌な気分にならなかっただけマシなのかもしれませんね」
『それでも癒しのハグを欲するお兄様…さてはさほどストレス無かったのに妹を抱きしめる理由が欲しかっただけでは…?』
「お兄様は理由も無く妹を抱きかかえません!」
『現実が良く見える眼鏡が必要ですねぇ…』
「それよりツーリングです!初めてお兄様に乗せてもらいましたが楽しかったです」
『原作では合法的にお兄様に抱き付けると、深雪ちゃんもお好きだったようですが、ここではまさかのスピード狂…』
「びゅんびゅん景色が流れるのって良いですよね!前世でもバイク免許取ればよかったと後悔しました」
『…貴女が気にするべきなのは腕を腰に回した際のお兄様の反応だと思うのですがね、自分も緊張してて気づけなかったんですよね』
「ちなみに峠攻めではありませんが、山へ行く時スピードを出してギリギリまでバイクを倒してもらいました!楽しかった!」
『うん、残念仕様になってしまわれましたね』
「突然の悪口!何故?」
『深雪ちゃん、素が出てきちゃってますよ』
「っ!し、失礼しました。…ここでも先生は先見があり、ずばずば核心を突いてくるわけですが」
『これってお兄様たちが入学するにあたってどこぞの誰かさんから下調べでも頼まれていたり、とかは…流石に無いとは思いますが、二人がトラブルに巻き込まれることを読んで何が起爆剤になるかチェックしていた、ということもあるでしょうね』
「私たちが入学前の一高を毎年チェックしていなかった…いえ、軽くはするでしょうが本腰を入れてチェックするまでは至らなかったというのはあるかもしれないですね」
『あと小野先生が入ったことで何かあることは読んでいたでしょうし。…そこから兄妹たちのやったことを知ったんですかね?…どうにもそこから情報を得られたようには思えないですが』
「小野先生も必要最低限しか先生と接触して無さそうですもんね」
『お兄様を揶揄う師匠とそれを受けて立つお兄様の図…今ならこの会話の意味は分かるんですよね?』
「…『お兄ちゃん』呼びを密かに喜んでいたお兄様に対し揶揄った、と」
『そんな密かに、でも無かったと思いますけどね。師匠に揶揄われたことにムッとしたお兄様。結構師匠の前では感情が出ますよね。まあ、妹関連のことで弄っているのだから出やすくて当然なんでしょうけど、これはお兄様個人の感情によるものなんですけどね』
「……先生ってやはりすごい方なんですね」
『人の懐に潜り込むのもお手の物な超一流の忍びです。流石最強キャラ』
「で、次の日ですね。さっそく仕掛けられます」
『(…飛びましたねぇ。相当ハグの前借の話を聞かれたくないご様子。まあ、あまりいじめすぎて凍らせられても困るので)準備万端で罠にかかる気満々でしたねぇ』
「早く決着を付けたかったもので」
『まあ、そのせいでお兄様もハッスルしちゃうわけですが。妹が攫われるわけですからねぇ』
「…そのことは申し訳なく思いますが、その方が被害は最小になると思ったのです」
『髪の毛一本でも傷つけられたら被害は最大になってましたが』
「……前日に作戦はお話していたのですが」
『わかっていても理性が、というヤツですね。お兄様の大切な唯一ですから。この辺りは次回、お兄様を呼んで詳しくお話を聞くとしましょう』
「え!?いいじゃないですか!ここで終わらせましょう?」
『ほら、当事者無しではわからないこともありますので。ってことで深雪ちゃん、お兄様を呼んできてください』
「…呼ぶのですか?この場に?」
『というよりお兄様からあまり妹を独占しすぎるなと忠告がありまして…次あったら深雪ちゃんとのもっと甘い話を書けと――』
「呼んでまいります!」

――深雪が退出しました――

『…どのみち書く約束は取り付けられているのですが、ねぇ』


――

というわけで、次の事件の前ぶりですね。中休憩とも言います。
妹にとってバッドエンドなんてありえないことなので想像もしていなかったみたいですが、少しは想像すべきでしたね。でも、しない方が無意識に避けられるからいいのかな。
意識すると逆に逃げ道塞ぎそうなお兄様です。
雫ちゃんほのかちゃん共に順調に仲良くなっていきます。…この時ほのかちゃんはお兄様に惚れる要素が原作よりごっそりなくなっているんですが、九校戦が来れば流れは変わらないので。個別レッスンで目覚めちゃうでしょうから。
生徒会では会長による恋バナを少々。兄の浮いた話は妹に気まずさを与えるものかもしれませんが、この妹はイケイケと応援するタイプですからね。揶揄おうとしたら肩透かしを食らいました。
隙あらば妹とくっつこうとするお兄様ですが、この抱きしめ方はどうかと思いますよ。お兄様の常識がどんどん消去されています。もしくは奥底に沈められている、かな。
その異常さを指摘して修正してくれるのが先生です。最後に妹からのハグの誘惑を断れたのは先生の揶揄いがあったから。先生はお兄様の教育も担っていたのです!…まあ、それも長続きはしないのですが。お兄様、先生にだけは反抗的。お兄様が甘えられる()数少ない大人です。
ブランシュさんとその手足のエガリテは後日一高に強襲を掛ける予定でしたが、その前に強力な魔法師が手に入るかもしれない、と妹誘拐を計画。お兄様ごとゲットしようとしていました。
キャストジャミング擬きの件は知りませんが、彼らのせいで計画に狂いが出そうになったこともあって強引に引き込むことになったようです。二科生ならすぐ洗脳できると思っていたのかもしれませんね。…ご愁傷様です。

お粗末様でした。


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