妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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ダブルセブン編⑥

 

お昼休み。生徒会室には新メンバーを含めた生徒会役員と風紀委員が揃っていた。

中条会長をはじめ五十里先輩にほのかちゃん、そこにお兄様が副会長として加わって新生生徒会となった。

風紀委員会は花音先輩をトップにして新しく生徒会推薦で吉田くんと雫ちゃんが。

…お兄様が抜けてないのに補充とは?と思わなくもないけど、人員はいつでも足りてない風紀委員だから誰も気にした風は無い。

修正力?よくわからないけれどまあご都合主義ってやつですね。

これからよろしくってことでの昼食会を生徒会室で、とのことだったのだけど、いつもとあまり代わり映えしませんね。

初めましての人がいない。

ああ、あとこの場でピクシーが給仕をしてくれてます。

本人からのたっての希望で、こちらで働きたいということだったので。

中条会長の顔が引きつってましたが、彼女がいると何かと便利でもあるのでね。了承してもらいました。

皆がいるので、ねこっ可愛がることはできないけれど、こっそり微笑みかけることはしてます。お仕事して偉いね。

するん、と撫でられる感覚が返ってくるので彼女が気付いてくれていることがわかる。

彼女も空気を読んで表向き反応するそぶりは無い。いい子。

ほのかちゃんが若干ビビってるけれど怖いことないよ。とは、流石に神経が図太すぎるか。

私には可愛い子でも、彼女にとっては繋がりがあることで未知の生き物以上に恐ろしい存在なのだろうからね。主に、暴露的な。

この部屋に八人はちょっと狭い。

だけど花音先輩がこれを機に五十里先輩にくっついて座ることでスペースが多少空いて、あまりの密着具合に中条会長がキャーってなってるけど他はあんまり反応は薄い。

ほのかちゃんがそわぁってなってるけど、お兄様が良いなら行って良いと思うよ。

などと考えてたら、お兄様が幅を寄せてきた。ああ、一人一人幅を寄せれば皆が身を寄せ合う必要はないってことですか。ごめんねほのかちゃん。

話題は新しい教員のスミス先生のお話になったが、お兄様が話したのでとても端的。

気付けば話は入学式の話題に自然と流れていった。

リハーサルと言うほど大げさではないけれど、今日の放課後に打ち合わせで全体の流れを確認することにはなっている。

新入生総代には段取りを説明するだけで、答辞の読み合わせなどはしないと言うと、質問した吉田くんより花音先輩が驚いた声を上げる。

一昨年は酷かった、とはっきり花音先輩が言ってしまったことで一昨年の総代である中条会長が落ち込んでしまったが、緊張しいの会長が逃げ出さなかっただけ偉いと思う。辞退したってよかったのにね。

ちなみに私の時も説明だけで練習などはしなかった。

あれくらいで緊張していたら圧迫面接なんて受けられない。何度内心恐怖に震えながらプレゼンを行ったことか。

アレに比べたら広い講堂で、学生の前で読むくらいで慄く訳がなく、五十里先輩が婚約者の花音先輩の放った何気ない一言に落ち込む会長に慌ててフォローを入れる。

婚約者を支える様子にすでに結婚後の様子が目に浮かぶようだ。仲睦まじい夫婦になれそうですね。

 

「もちろん、あがらなかった深雪がおかしいということでもないからな」

 

あら、お兄様もフォローですか。こちらも仲の良い兄妹です。えへん。

 

「私だって緊張していたのですけれど、そう見えなかったのならよかったです」

 

お兄様に返す、というより中条会長に向けて返した。

 

「深雪さんは堂々としてましたよ」

「皆さんをだませたようで安心しました」

 

にっこり返すとほへー、と気の抜けた中条先輩のお顔。

可愛いね。本当この小動物感はたまらない。かわゆい。

ほっこり空気が戻ったことでお兄様が私の頭を撫でた。よくやった、ということですか?

でもそれをするとほのかちゃんからの視線と、それに連動するようにピクシーの視線が向くので気を付けてください。

吉田くんがさらに空気を読んで新入生総代の話に戻そうとすると、今度はお兄様が答えた。

 

「実はまだ俺たちは直接総代には会ってないんだ」

 

今朝見かけはしましたけどね。

そこからしばし五十里先輩と吉田くん、お兄様の三人が珍しく男子トーク。

話していることは学校サイドと生徒会サイドについてのお話ですけど。女子を挟まないでトークするのは珍しい。

お兄様が男子たちだけで話しているってシチュエーションはなかなか見る機会が少ないのでとても新鮮。

ご飯が進むね。美味しい。

吉田くんの発言にお兄様が遠慮なく突っ込むのも仲が良い証拠。

それを五十里先輩がちょっぴり羨ましそうにちらりと見ていた。…五十里先輩、もしやその麗しい容姿が原因で男子の友人少ないのかな。

婚約者との関係も有名だし、男子たちからしたら話しかけづらいのかもね。

そういう意味でもお兄様たちのように遠慮なく話せる関係っていうのは彼には難しいのかもしれない。

それを別段苦に思ってなさそうではあるけれど、こうして羨ましいと思うくらいには憧れはありそうだ。

 

「中条さんは顔を合わせているんだよね?」

 

五十里先輩の話題の変更に中条会長はちょっと戸惑って。

 

「七宝君ですか?」

 

どう返したものかとしばし考えたのち、言葉を選びに選び抜いて口を開く。

 

「そうですね…やる気に満ちたいい子でしたよ」

 

やればできる子の反対語みたいですね。

 

「野心家ってことね」

 

ズバリ花音先輩が切り込み、中条会長は困ったように笑うだけで否定はしなかった。

今年も生徒会長は大変そうです。何か心休まる物を用意しておこう。

 

 

――

 

 

そして来る放課後。初対面の時間です。

この場に居るのは昼の風紀委員を除いた生徒会役員のみだった。

 

「紹介します。今年度の新入生総代を務めてくれる七宝琢磨君です」

 

中条会長とはすでに面識があるからか、堂々とした佇まいで立っていた。

お兄様のように無感情に、ではなくどことなくふてぶてしく感じますね。

…あれ?でも原作では七草先輩にはお兄様がふてぶてしく見えてたんでしたっけ?

お兄様物怖じしないというか、常に堂々としていますから謙虚さは見当たらないのかも。

七宝君も堂々としているのだけど、お兄様に感じないふてぶてしさを感じるのは中身を知ってるかの差かな。

五十里先輩の紹介も終わりお兄様の番となると、彼の態度は突如尊大なものに変わった。

お兄様が前に立ち、名乗るだけで態度を変える――それってとっても失礼なことではなくて?

 

「副会長の司波達也です。よろしく、七宝君」

「『七宝』琢磨です。よろしくお願いします」

 

…いえね、事情は知ってますよ。舐められたくないという彼の心情もわかっているつもりだけど。

 

(でもねぇ、こうしてお兄様を目の前で見下されるとやはり面白いわけがなくてですね)

 

去年もこんな空気はあった。服部先輩なんて正にその筆頭で。

二科生というだけで見下されるのが当たり前の世界(学校)だった。

それを見たくないからせっかく改革したっていうのにね。

エリート思考主義っていうのはどこにでも湧いて出るもんだ。

もちろんこれしきのこと、今の私が表立って怒りを見せるような真似はしないけれど、――だからといって黙って見過ごすのも、面白くない。

お兄様を見下す相手に鉄槌を、なんて深雪ちゃん思考にはなりませんよ。ええ。そんなことしませんとも。

 

(そんなことしたらお兄様のお立場を悪くする可能性の芽が出るだけですからね。芽吹かせることも無く消し去りましょう)

 

私がいら立ちを抑えている間も会話は続いていた。

七宝君がお兄様の胸のエンブレムを訝し気に見て、中条会長が新入生の礼を欠く姿に動揺して声を掛けるも、彼は少しだけばつの悪い顔をしてから愛想笑いを浮かべて。

 

「すみません。司波先輩が着けている歯車のエンブレムに見覚えがなかったものですから」

 

なんてうそぶいて見せた。

けどね、もっともらしく言っているけどそのふてぶてしい表情が言葉を裏切っている。

 

(ふぅん、そう来ますか。そうですか)

 

言い訳として杜撰だとしか言いようがない。

見覚えは無くともそれを意味することを知らない一高生は新入生であろうともいないはずだから。

入学する学校に新設された科ができたニュースをどうやってスルーできるというのか。

自分は無知だと言っているようなものだと気付いてるかな。それとも口だけでも謝ってあげてる俺偉いって?

中条会長は気づかず、というより空気を悪くしないために、かな。納得するけれど、…いいよね?

 

「同じく副会長の司波深雪です。――先代の総代として訊ねたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

なるべく穏やかに話しかける。威圧なんて出さない。冷気なんて漂わせていない。

ただ純粋に、疑問だとばかりに不思議そうな、それでいて少し困ったような表情で小首をかしげて訊ねた。

傾国の美姫もかくやの美貌を惜しげもなく利用した、儚さと気品ある姿はプレッシャーこそ感じさせないものの、決して下に見ることのできない存在感がある。

七宝君がどうぞ、と強気の態度を崩さないで済んでいるのは私に敵対の意思が見えないから。

気圧されず対等であろうと向けられるこの視線は新鮮だね。負けてなるものか、という強い意志を感じる。

だけどね、――まずは同じ土俵にも立っていないのだと認識しましょうか。

 

 

 

「七宝君に総代が重荷なら次点の七草さんにお任せすることも可能ですよ?」

 

 

 

質問なんて名ばかりの煽り文句を一発かましてみた。

今ならまだ引っ込みつくよー、とね。

敵対するオーラなかったんじゃなかったのか?!って?ええ。敵対する気なんてさらさらないよ。

歯牙にもかけない。ただ純粋に、心配しているだけだからね。

君に総代が務まるか、と心配になっただけだから。

七草さんちの姉妹は優秀だからね。一日あれば急遽答辞を頼まれても大丈夫だと思うよ。なんて。

この言葉に、沸点低いだろうなー、と思っていた予測をはるかに上回る速度で彼の感情は沸騰した。

 

「な!?どういう意味、です?!」

 

完全に敬語も忘れてどういう意味だ!ってキレるところだったね。

ギリギリで先輩ってことを思い出したのだろうけど、言葉は直せても態度は追いつかなかったみたい。すごい剣幕だ。煽り耐性ゼロかな?

中条会長とほのかちゃんがビビって声をあげて後退してしまった。

五十里先輩は成り行きを見守る態勢だし、お兄様はいつ攻撃されても迎撃する気満々ですね。

スイッチ押した私が言うのもなんですが、お兄様はその不穏な空気をちょっと抑えましょうか。

すぐに飛び掛からないのは、私が何かをするとわかっているから。

そのままお待ちください。

そんなことを考えつつも彼に向ける表情は、大きな声に少しびっくりしたけど心配を滲ませる微笑は崩さない。

 

「このエンブレムを初めて見たというのは理解できますが、貴方の目は明らかに見下すもののようでした。

総代と言うのは公正な立場でいることも求められます。優秀な人がどちらかに偏るというのは、学校の秩序を乱すことに繋がる恐れがありますから。

たとえ心情は違っても態度に出してしまうようでは、その程度、と見られてもおかしくありません。七宝君にとってそれは耐え難い視線ではありませんか?」

「っ!俺は別に見下してなんていません!!」

 

わあ、すごい。それ本気で言ってます?さっきのお顔見せてあげたい。

どう見ても見下してたとしか見えなかったのに。

 

「それは失礼しました。こちらの勘違いでしたのね。それなら安心しました。成績優秀なのに自信家で周りを見下している、なんて見られたら印象は悪かったでしょうから」

「…そう見られないように気を付けます」

 

殊勝に答えるけれど、腹芸は苦手なのね。感情を隠すのはけして上手ではなかった。顔が引きつっていた。

多少自覚あったかな。そう言えば女優さんから演技指導受けたんじゃなかった?それを今思い出したのか。

私はあえて安心したように微笑んでから、今度は優しく声を掛ける。

そして先ほど自身が述べたことを実践するように、公正であることを示す微笑みを湛えて。

 

「七宝君のお家はCADに頼らず魔法を行使する優れた技を持っていると伺いましたが、そうなのですか?」

「ええ」

 

家のことを、己のことを褒められることには弱いようで、警戒心が少し緩む。

彼にとってその魔法が使えることは誇るべきことなのだろう。恐らく身に着けるのも大変苦労をしたはずだ。

だからこそこれだけの自信家になったんだろうから。

でもちょこっと触れただけでこの反応…実にちょろい。ちょっと心配になるよ?

今回はありがたいのでこのまま利用させてもらうけど。

 

「素晴らしいですね。CADに頼らずとも魔法を行使できるのはとても並外れたことなのでしょう」

 

想像もつきません、というように褒めたたえる。

その並外れたことを私たち兄妹は楽に熟せてしまうなんて暴露はしない。せっかく伸びた鼻をへし折るのはここじゃないから。

今の言葉もまた彼の自尊心を満足させるものだったようで、鷹揚に頷いてみせた。うんうん、期待以上の反応だ。

もしかして普通の高校生ってこんな感じなのかな。

周囲との反応が違いすぎて感覚がわからなくなってるみたい。新入生たちを見て一旦勘を取り戻さないと。

 

「そうだとすると、新設された魔工科に興味がなくても仕方がないでしょうね。その技術自体、七宝君の魔法にはあまり意味がないでしょうから」

「CADも使うことがありますので、全部が全部そういうわけではありませんよ。ですが、魔工技師を目指している人には申し訳ないですが、そこまで重要視していないのは事実です」

 

あらぁ。…さっきまでの殊勝な態度はどこに行っちゃったんだろうね。五十里先輩苦笑してますけど。

ここまでくるといっそ清々しい。鼻が長く伸び背も反り返っちゃってみえるね。

だからこそ忠告しがいもあるというものだ。

 

「七宝君は魔法力も優秀ですもの。九校戦の選手に選ばれるのは確実でしょうから今のうちにアドバイスを。

九校戦は本人の魔法力も大事ですが、何よりもエンジニアの腕も影響します。いくら技術があっても担当者も人間ですから、いい関係を築いておくことをお勧めしますよ。ちなみにその優秀なエンジニアがここには三名います。自身で調整するのが得意でないのなら頼るべき存在でしょうね」

 

自分には関係ない、と思っていただろうところに爆弾を放り投げてみた。

今度はちゃんと効果はあったらしい。

 

「…ご忠告感謝します」

 

にっこりと微笑んで伝えれば、その意味を理解した七宝君は若干顔色を悪くしながらも頷いて返した。

初めに向けていた敵対心は鳴りを潜め、己の失態に気付いたように歯を食いしばっている。

流石にわかっただろうからね、お前が見下した相手はお前の選手生命を握っているのだよ、と(注意)したことは。

優れたエンジニア三人衆が苦笑を浮かべているから、誰がエンジニアかもわかっただろうしね。

今日のところはこの辺で、とほのかちゃんへバトンタッチすると、ほのかちゃんがたどたどしく自己紹介していた。

空気掻き乱した後に自己紹介させてごめんね。

でもいい空気清浄機です。七宝君も落ち着きを取り戻した。

彼にとってはほのかちゃんも自陣に組み込みたいターゲットだから情けない姿は見せたくなかったのか。

その後、予定通り入学式の段取りを話し、軽く流れを見てから解散となった。

 

 

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