妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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ダブルセブン編⑩

 

 

次の日のお昼、生徒会室に七草双子を召喚。

香澄ちゃんはお兄様を睨みつける――ことなく、むしろ顔を背けていた。

どうしたのかな。七草先輩が何か説明したのだろうか。

泉美ちゃんは…うん。私しか目に入ってないみたい。瞳を潤ませ胸の前で手を組んでこちらを見つめていますね。

見るだけだったら可愛らしい、可憐な恋する乙女の様子そのものなのだけど、その対象が私だと愛でられないのが難点?

…なんてボケもできにくい気がする。可愛いのに、まじまじ直視しちゃうと危険信号が点滅しそう。

もしや香澄ちゃんが顔を背けているのはこっちが原因?もうどうにもならない感じ⁇

双子のお姉さんとしてそこはぜひ頑張っていただきたいのだけど。

 

「深雪先輩と一緒にお仕事ができるなんて、夢のようです」

 

うん…おかしいね。まだどちらか生徒会に入りませんか、という段階の質問なのだけど、泉美ちゃん譲る気がない。自分が入る気満々。

これは触れてもいいのかな?

 

「もしかして七草先輩からこういう話が来るかもしれないと聞いていたのかしら」

 

香澄ちゃんに声を掛けてみると、香澄ちゃんが小さくはい、と答えた。

まあ、そうだよね。先輩ならこういう予測くらいつくだろうし。すでに双子間で話は成立していたらしい。

それなのに付き添ってきてくれた香澄ちゃんは、もしや本当に泉美ちゃんの暴走を止めるために来てくれたのではないだろうか。

…その場合、今後のことを考えるとストッパーとして香澄ちゃんにも生徒会に入ってもらった方が良いと思うのだけど。

 

「やる気があるなら二人一緒で構わない」

 

お兄様も同じ考えに至ったのか、予定にはなかったが香澄ちゃんも誘う。生徒会役員は随時優秀な人材を募集しております。

しかし彼女は生徒会役員に興味は無いらしい。残念だ。

だけど原作のように、お兄様に対しての拒絶感がほとんど見当たらないのはどうしたんだろう。

 

「…あの、司波先輩」

「なんだ?」

 

香澄ちゃんがお兄様に向けて声を掛けたので勘違いは起きなかった。

だけどまさか彼女が直接お兄様に声を掛けるなんて思いもよらず、ちょっと驚き。

お兄様も意外に思われたのか眉が二ミリほど上がりましたね。気づいた人いるかわからないけど。

 

「…本当に姉に興味が無いんですか?」

「尊敬できる先輩の一人だ」

 

脈絡のないいきなりの質問がお兄様に飛来した。

だけどその質問、生徒会メンバー揃ってるところで訊くことかな。

それだけ彼女にとっては大事な質問なのか、彼女は大いに真面目な顔だった。

お兄様はと言うと質問の意図が分かった途端、その眉が一気に下がりましたね。そして即答。

見えないけどほのかちゃんが喜んでいるのがひしひしと伝わってきます。彼女にとっては卒業しても強力なライバルだからね。たとえ一方的であっても。

 

「お姉ちゃん綺麗で可愛いじゃないですか」

「そうだな」

「っ認めるんですね!」

「そこを否定するほど目は悪くないつもりだが」

「頭もいいし」

「成績が優秀であったのは誰もが知っている」

「スタイルだって、ああ見えて結構ある――」

「ちょっと香澄ちゃん!さっきから何を言ってるの!」

 

畳みかけるような質問ラッシュ。お兄様は微動だにせず即答で返している。

流石に最後のは泉美ちゃんがストップをかけた。

お兄様、一瞬口を開きかけてましたけど何を言う気でした?少し、いえだいぶ気になるけれど、成り行きを見守るモードになってしまった。気になる。けど聞けない。

 

「もしかして大きい人が好みですか?」

 

香澄ちゃん、ちらっとほのかちゃんを見ましたね。

視線を受けてほのかちゃんも滅多に聞けないことを聞くチャンス?!と思わないの。

 

「香澄ちゃん!!いい加減にしなさい」

 

ああ、お兄様が呆れから無表情になってしまった。こうなるともう完全に興味が失せてしまいましたね。相手にするのも面倒ってお顔。

 

「香澄さんは兄さんの好みのタイプが知りたいの?」

 

このままでは収拾がつかないので訊ねてみると、彼女は大人しくなった。

 

「…だって、姉さんを好きにならない人なんて…」

 

七草先輩のこと、本当に大好きなんだねぇ。

泉美ちゃんも、共感しているのか頷きながら慰めている。仲が良い。

ふう、とお兄様からため息が漏れた。怒涛の質問でしたからね。しかも得意じゃない話題。

お兄様もお疲れかな、と表情を窺おうと見上げた瞬間、お兄様の腕が私の腰に回って引き寄せられる。

 

「、にいさ」

 

 

「悪いが俺には深雪がいる」

 

 

「………はい?」

 

私の口から洩れた言葉はここにいる皆の心と一つだったと思う。

誰もがきょとんと、お兄様を見つめていた。

お兄様はその視線を一身に浴びながら続ける。

 

「いくらお前たちにとって姉が理想なのか知らないが、俺の理想は常に横にいるんだ。他に目が向くはずがない」

 

………わあ。お兄様からのとんでもシスコン発言だ。

周囲が皆宇宙猫顔。いつの間にここはシスコン対決の場になりました?

 

「兄さん、冗談はそう言った表情で言わないと――」

「深雪、今俺が冗談を言っているように見えるかい?」

 

珍しく言葉を遮られ、じっと見つめられる。

 

「……見えない、けど」

 

嘘でも見える、と言いたいけれど、お兄様の目はどう見ても本気だった。

 

「昔この部屋で言っただろう。お前と血が繋がっていなければ恋人にしたいと」

 

ああ、去年の渡辺先輩との会話か。あったね、そんなこと。

でもあの時は冗談だって流れたはずだけど。

 

「ちなみに俺はそうか、と答えただけで否定はしていない」

 

…心をお読みにならないでほしいなぁ。そして思い返してみて否定は、うん、してなかったね。

周囲にはなんのこっちゃですよね。皆疑問符がいっぱい…じゃないか。

中条会長はその場にいたもんね。ひゃーって顔を赤くして頬を押さえているし、ほのかちゃんは真っ青。

五十里先輩は、遠い目でどちらを見つめておいでで?

目の前の双子は泉美ちゃんが厳しい表情でお兄様を睨みつけ、香澄ちゃんが引いた顔を隠しもしないでお兄様を見てますね。

香澄ちゃん、貴女が聞きたかった回答でしょうに。

 

「…重度のシスコンってホントだったんだ」

 

ぽつりとつぶやく香澄ちゃん。お姉さんに聞いたのかな。

けど重度って言うほど重い所を学校で見せた記憶が無いのだけど、あれかな。九校戦の時の恋人の振り。

でもアレには裏の事情もあったのだけど、説明できない内容だからそれが変に勘違いさせてしまっただろうか。

――ともかく今はそこじゃない。

 

「兄さんに理想と言われるのは嬉しいけれど、理想と恋は別物でしょう」

 

お兄様が話を逸らすついでに先輩やほのかちゃんから遠ざけようとしているけれど、妹という時点で私はお兄様の恋人にならないのだから目くらましに使われてもね。

ほのかちゃんがそうだった!とばかりに目を覚ましました。うん、そこ一番重要なポイントだから忘れないで。

だけど香澄ちゃんはそうではなかったみたい。

興味失せたようなお顔。安堵した、ではなく、これは無いな、という悟りの表情。

だけど気付いて。お隣の泉美ちゃんの表情が険しいまま。お兄様をずっと睨んでます。…とりあえずお兄様は腰を離しましょうか。

ぽんぽん、と叩いて合図を送れば――離れないな。

 

「兄さん」

 

声を掛けてようやく離れました。そんなつれないな、みたいな表情しないでほしい。

悪いことをしたような気分になるけど、シスコン対決は終わったのでしょう。…勝敗はこの場合お兄様が勝ったということでいいのかしら。

どちらでもいいけど、お昼休みは長くないんですから。

 

「泉美さん、生徒会に入っていただけますか?」

「喜んで」

 

お兄様を睨む目は、私に向いたことで零下だったのが一気に熱を帯びて常春に。うーん、変わり身が早い。これが若さか。

とりあえずいい返事がもらえたので新規役員はゲット。私の仕事は終了です。会長を振り返るとほっと安心していた。

 

 

――

 

 

あれよあれよと時間は過ぎていき、新入部員勧誘週間に入った。

私とお兄様は昨年の七草会長と服部先輩のように、生徒会からトラブル対策要員として部活連本部へと派遣されていた。

見回るのではなく、本部で待機し、トラブルがあったら駆けつけるというものだった。

数日間ここで過ごしているけれど、…なんだか部活連の方々に接待されているような気分でですね。

我々が対処しますのでお二人はここで待機願います!みたいな。

いえ、対処するのが仕事ですので、と向かおうとするのだけれど、自分たちが確認して必要ならお呼びしますのでお二人はごゆっくり!!とかなんとか。

待機室は別に私たち二人だけではないのだけれど。

お兄様を見ると、気にした様子もない。言われた通り待機して端末を操作したり、読書をしたりして過ごしている。

…と、こう聞くと大したことない時間つぶしに聞こえるけれど、お兄様この時間を有効活用して論文書いている。読書というより資料に目を通してました。

私は邪魔をしないように勉強して時間を潰す。

夜にする分を今に回せれば趣味の時間を確保できますからね。

だから二人でごゆっくり、ではあっても二人べったりはしていないのだけど、同じ空間に二人が自然体でいるだけで彼らにとっては十分満足な光景のよう。

…オタクとしてわからなくもないけどね。推しが揃って同じ空気吸ってるだけで幸せになるイキモノだから。

出撃、じゃなかった。出動したのは二三回程度。しかも到着すると皆ぴしーっと整列するので聞き取りもあっさり。

意見が衝突したりもするけどそれをちょこっと注意したり解決策を提示すると素直に聞いてもらえる。

何だろうね。これも改変の影響かな。科のトラブル、格差のトラブルではなく部活としての衝突だからそんなに不満や蟠りがないのかもしれない。

 

 

 

 

「こんなことを申してはよくないのでしょうが、拍子抜けですね」

「優れた統治者がいると纏まるということだろう」

 

?どういうことです⁇

帰りのコミューターで水波ちゃんと三人で帰宅中。

大したトラブルも無く進んでいる現状についてお兄様に零すと、お兄様はさもありなんと頷いていた。

 

「トラブルが起きるのは意見の衝突もあるが、不満や理不尽から生じる負の感情の爆発が起こすことの方が多い。余裕のない人間が起こしやすいんだ。だが、現状の一高生は去年までと違い、そこまでの不満はないだろうからな。小さな小競り合いくらいなら理性が働いて互いに譲り合うこともできるのだろう」

 

思ってた以上に昨年の行動は影響あったようだ。

余裕って大事だね。

 

「水波ちゃん、部活決まりそう?」

「いくつか拝見しましたが、曜日の都合も考えて二つ掛け持ちをしようかと」

 

水を向けると水波ちゃんがはきはきと答える。

部活を毎日やっているところもあるけれど、大抵は週に二、三の活動日のところが多いからね。限られた敷地内を交代で使用しているからそうなるのも当然だ。

毎日生徒会のある私たちの帰りに合わせるとなると、週五日部活動をしていた方が時間つぶしにはいいかもしれないけれど、

 

「二つ掛け持ちなんて大変じゃない?無理に私たちに合わせなくてもいいのよ」

「どちらも興味がありますので」

 

あら、もう候補が決まってる様子だね。

 

「水波ちゃんならどこの部活でも引っ張りだこになりそうだけど、水波ちゃんの方ではトラブルは無かった?」

「それなのですが、…漏れ聞こえる言葉から推測するに、本の影響があるようです。お二人の親戚だとわかると伸ばしかけた手が引かれることがありました」

「それは…」

 

どうもここでもプリンセスとナイトが関係してくるらしい。影響力有り過ぎやしない?

いい、ことなのかな。

なんか、私たちのせいで水波ちゃん避けられたりとかしてそう。トラブル回避だけならいいのだけど。

 

「深雪様が悩まれるようなことはございません。むしろ良くしていただいているのだと思います」

「そう?ならいいのだけど」

 

気を使ってもらってしまった。

水波ちゃん、ただ表面上のお仕事をこなすだけでなく、こうしてこちらを思いやってくれているのがわかって嬉しくなるけれど、負担になってないかな。高校一年生でこの気遣いは凄すぎるよ。

 

「水波ちゃんも嫌なことがあったら遠慮せずに言ってね」

 

水波ちゃんは控えめに伏し目がちではい、と答えたけれど、若干口角が上がっているように見える。

水波ちゃんの初々しい反応に頬が緩んだまま、先ほどから静かに見守ってくださっているお兄様を見れば、お兄様も優しい目でこちらを見ていた。

 

(ああ、なんて幸せな時間だろう)

 

水波ちゃんが来たときはどうなることかと思っていたけれど、こんなに順調に暮らせるとは思っていなかった。

4月はトラブルの月と思っていたから余裕なんてないと、そう考えていたのに、実際蓋を開けてみればこんな幸福な時間ばかりで。

 

(…でもオタクは知っている。これは前兆だと)

 

フラグが立つときは大抵、落差を演出するために束の間の幸せに浸れるのだ。

 

 

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