妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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ダブルセブン編⑮

 

次の日、登校時のキャビネットの中。

各紙新聞をチェックしていたお兄様からの、予想外にいい記事ばかりだという言葉に私と水波ちゃんはほっと胸を撫でおろしたのだが、その後に続くお兄様の「悪意ある記事が出たら相応の対応で応戦できたのに」と吐露された言葉に水波ちゃんは引き気味に、私は流石お兄様、と称賛を込めて見つめた。

幾重にも罠を仕掛けるお兄様かっこいい!いくつもプランを準備できちゃう姿は惚れ惚れしちゃう。これぞプロって感じ。

お兄様は苦笑で応え、注目記事をいくつかピックアップして教えてくれた。

予測したセンセーション狙いの「水爆実験」なる見出しの記事もあったが、若者たちの挑戦、という人気コラムに掲載されるとは思わなかった。

この手の記事って普通撮って出しの記事にしないはずなんだけどね。出遅れたくない、ということなのか。

他の新聞各社も平等と見せるために批判的な意見も折り交ぜつつも基本的には好意的な文章構成になっていた。

新エネルギーの革新的な実験だからね。悪く書いて今後特集ができなくなる可能性があれば、上層部としても完全に否定的な記事は載せられなかったか。

…なんて。実際は他にもいろいろ別の思惑が絡んでいるのだろうけど。

そんなことはどうでもいい。要は一高がこれ以上引っ掻き回されないことが大事なのだ。

お兄様もとりあえず現状に不満は無いと端末をしまった。

 

 

 

 

お昼の食堂でも話は昨日の実験と今朝のニュースでもちきりだった。

食堂の壁面ディスプレイではローゼン社の支社長が日本のニュース番組に出演して、実験を絶賛する姿が流れていた。これがどれほどの意味を持つか。

日本のローカルニュースでとどまらず、世界にも影響を与えるという事実に一高生は浮かれていた。

反比例するようにエリカちゃんの機嫌が下がり、吉田くんは落ち着かない様子だけれど、それは注目して見ているからそう感じる程度。彼らは上手く隠している。

ただ、ちょっとした洞察力と背景を知っているからわかるのだ。

そのことを突く様な真似はしない。人には触れられたくないことがあるのだから。

話題は昨日実験に参加した私たちを称賛する話になったけれど、これもそんなに話せることは少ない。

話題を週末のお兄様の誕生日パーティーに移させてもらい、ここにいるメンバーと水波ちゃんが参加すること、当日は手ぶらで参加、出し物は無し、などとそれじゃいつもと変わらないただの食事会だね、と笑っていつもの空気に戻した。

うんうん、食事中に嫌な気持ちになると消化に悪いからね。少しでも気を紛らわせてほしい。

 

「プレゼント無しって言ってもほのかはプレゼントしたんでしょ」

 

引っ掻き回すの大好きエリカちゃんが帰ってきました。ほんと、切り替えが早いったら。

ほのかちゃんは顔を真っ赤にして何をプレゼントしたか絶対に口を割らなかった。そうなるとお鉢はこちらに回ってくるわけで。

 

「深雪は?何をあげたの?」

「タオルをプレゼントしたわ」

「ありがたく使わせてもらっているよ」

「タオル…あ、」

「これ見よがしに使ってんなー、と思ったらそう言うことか」

 

お兄様はさっそく授業で使ってくれている様子。良かった。

それにしても吉田くんと西城くんが気付くのはいいのだけど、これ見よがしとは?

 

「深雪の想いが込められているからね」

「確かに想いも込めて刺繍を入れたけど、さっそく使ってくれたのね」

 

お兄様逐一反応が大きくて、嬉しいけど困る。

ちなみにもう一つのプレゼントはネクタイに、ではなく胸ポケットにつけられている。制服にネクタイピンつけている生徒っていないので。

それでも身に着けてくれてるのは嬉しい。小さいし銀色だから目立たないので気付いている人は少なそう。皆ネクタイピンというよりペンのクリップだと思ってるんじゃないかな。

 

「…刺繍…流石深雪。ただのタオルじゃなかった」

「達也さん、今持ってないの?」

「使用済みタオルを食堂に持ってくるのはどうかと思うぞ」

「…達也さんの使用済み…」

「ほのか、戻ってらっしゃい」

 

ほのかちゃん、恋する乙女はそっちに行っちゃダメです。

お兄様がスルーするお耳を持っていて助かりましたね。普通ならアウトですよ。

 

「深雪なら自分の写真でも撮ってプレゼントすればそれだけでもプレゼントになりそうなのに」

 

…エリカちゃんエスパー?それって原作の深雪ちゃんが贈ったものだよね。正確にはおしい、だけど。

そもそも妹の写真を貰って喜ぶお兄様の姿って想像がつかない。なんで深雪ちゃんアレをあげたの?知らないうちに世のブームになってたとか?私の知らない何かしらのジンクスがある?…謎だ。

 

「深雪の写真か。それもいいが、どうせなら生の方が良い」

「…達也くん、その発言は流石に引くよ」

 

エリカちゃん自分でふっといてそれは無いよ、と言いたいけれど、西城くんたちも遠い目に。

生って言い方は私もどうかと思いますよ、お兄様。

グダグダのお昼は最終的に変な空気で終わった。回避できなかった消化不良。

お兄様のせいですごめんなさい。

 

 

――

 

 

これで今日が終わればまだ今日はすっきりしない一日だなぁ、くらいで済んだのだけど。

ただいま連絡が来まして。

部活連から服部会頭と十三束君、風紀委員からは雫ちゃんと花音委員長、生徒会からはほのかちゃんと私、そしてなぜか水波ちゃんが第二演習室に集まっていた。

なんで水波ちゃんも?とこそっと本人に訊ねたらお兄様に呼ばれたらしい。

なら撮影お願いね、と言えば、彼女は目を見開いたのち、周囲に目を巡らせてベストポジションを確保に行った。

ガーディアンとして傍で守るようにと呼ばれたんだろうけれど、お兄様がいるからね。

お兄様も私が彼女に何をお願いしたのかわかったのだろう。アイコンタクトを向けられ小さく頷いて水波ちゃんの行動を許可していた。すごい連携。周囲は誰も気づいてない。

部活連と風紀委員からしたら、何で生徒会まで来たか、と思われるだろうけどほのかちゃんはここの開錠コードを管理しているから、なんだけど私は別の目的があったので。

当事者は七草双子と七宝君。

動きやすい恰好に着替えたこの二組が対決するためのここに集まったのだけど――

 

「審判は司波さん?」

 

十三束君の質問に私は首を振ってから目的を口にする。

 

 

 

「二組の直接対決に待ったを掛けに参りました」

 

 

 

この言葉に一同訝しんだ表情を向けられた。一部無表情だけどね。

 

「…この対決をすると決めたのは君の兄だが?」

「そうなのですか。ですが、この試合では何も解決しないと思いましたので」

 

服部先輩の言葉に揺らぐことなく真直ぐと答えると今度は七宝君が吠えた。

 

「解決しないとはどういう意味です!?」

「平等性に欠けるからです」

「俺が二人に負けるとでも?!」

 

随分と精神が不安定のようだ。無理もない。

昨日の実験の噂話で彼の苛立ちはピークに達していて、ようやくきたチャンス――八つ当たりと実力を見せつけられる場面が到来したというのに水を差されたのだ。

しかも七草家に与していると思いこんでいる人物からとくれば感情も抑えが利きにくくもなるだろう。

何度も違うと言ったのだけど、信頼しているお姉さんの言葉を信じるよね。

一方の七草双子はなんでこんなことに付き合わなければならないのかという不満が隠せていない。というより隠す気がない。

彼女たちはどうでもいいのだ。ただ売られた喧嘩を買っただけ。冷静になったのか、今はなんでこんないらない喧嘩を買ってしまったのかと後悔をしているよう。

それでも家を馬鹿にされたのだという事実は許せないわけでここに立っている。

 

「七宝君は負けた時の言い訳が立つ、というのもそうですが、彼女たちも負けてあげた、と言い訳が立つ状況。両者納得など行かない試合など、するだけ無駄でしょう」

 

ちょっと顎を持ち上げてはっきり無駄と言えば、彼らはかちんときたらしい。ふふ、挑発は成功ですね。

けれど私の視線は服部先輩に戻して。

 

「見ればわかります。彼らはまだ未熟。そんな二組の試合など、はっきりした勝敗などつくはずもありません」

「「「なっ!?」」」

 

はっきりと未熟なんて言われたことなどないのだろうね。しかも実力を見られてないのに断言されるなど、――七宝君に至っては名も無い一般人のくせに、という見下しもプラスされているだろうから、より非難する視線が強いけど、そういうところだよ。君たちの未熟な部分は。

撤回を要求する発言が向けられるけれど、そこには驕りしか見えないわけで。

二年の総代だからと言って偉そうに~的な発言には笑いかけてしまったけれど、今日の淑女の仮面は頑丈に作り込んできていますからね。

まず私たちの学年にあなた達が入ったところで私の総合一位は揺るがないし、筆記試験もお兄様の方がはるかに上だ。

一年遅れて生まれてきて運がよかったと喜ぶと良いよ。

 

「――そこまで言うのでしたら、為合って(しあって)みましょうか」

 

できるだけ妖しく見えるよう微笑みかけ、同時に事象干渉力も働いて冷気がふわりと漂い、まるで戦闘オーラのように私の身体からにじみ出る演出に。

その姿、正に氷の女王。

先輩たちは表情を引きつらせ後ろに下がり、雫ちゃん達は少し心配そうにこちらを見ていたけれど、心配されるようなことなんて何一つない。

笑みを向けられた三人は顔をこわばらせて息を呑む。怖がっていただけたのならなにより。

 

「よかったわね。早いうちに身の程を弁えられれば、きっと九校戦でもいい結果を出せるでしょうから」

 

でも怖がってちゃ動けないからね。この挑発で少しでも心を燃やしてくださいな。

そう煽ったら見事に七宝君の顔は真っ赤に、香澄ちゃんは睨みつけるように。泉美ちゃんは表情を消したね。ただ見惚れるだけでなく安心しましたよ。

 

「ルールはシンプルにいきましょう。私に一つでも攻撃を当てられたら勝ちです。威力は問いません。得意な魔法でも何でも。ただし、私以外を攻撃した場合、傷を負わせたその時点で失格とします。態と怪我をしに行く行為も失格。自身の防御はきちんと自分たちでしてください。この室内は横に広いので互いに怪我をさせようという目的がない限り、そのようなことにはならないでしょうけども」

 

攻撃対象はあくまでも私だけ。広範囲攻撃を得意とする彼らがうっかり傷つけ合ってはいけないからね。そのための忠告。自分の防御を疎かにして怪我を負ったりしないようにという意味もある。

しかしここでお兄様からの質問が飛ぶ。

 

「致死の攻撃や治癒不能な攻撃も禁止にするべきではないのか?」

「普通ならそうだけど、私が彼らに傷つけられると思う?」

 

この発言には七宝君のみならず香澄ちゃんも気色ばんだ。

だがお兄様は冷静にその可能性を否定した。

 

「お前が傷つくことなどありえないな」

 

この言葉に怒りを向けたのは泉美ちゃんだ。こちらの実力も知らないで無責任な、と思ったのかもしれない。

でもね、どうあってもあなた達に傷つけられる私ではないのですよ。だから安心して全力でかかってきてほしい。

お兄様は口ではそう言っても、実力の差をわかっていても心配みたい。水波ちゃんも、私が戦うところを初めて見るからだろうけど緊張してるね。

いつでも私を守れるように、って気を張っているようだけど大丈夫だよ。これでも鍛えてますのでね。

 

「なら、お前の勝利条件は?」

「そうね…それなら、しりもちをつかせたら、にしましょうか」

 

痛い思いはさせては可哀想だものね、上から目線でと微笑めば、わあ!ヤル気に満ち溢れてるね。元気になったようでなにより。

でもこれだけ煽られても憎々しげに見つめるだけで殺気も出ないなんて、七宝君、実戦経験なくてその自信なの?それはちょっと自信過剰過ぎじゃないかな。

 

「道具は何を使ってもいいですよ。とはいってもここは演習室なので自分の持ち込んだ物だけですけれど」

 

今から取りに行ってもいいよ、と言ったのだけれどこれには彼らは首を振った。

すでに戦う準備はできているのでこれ以上持ち込む必要はないということらしい。

 

(そんな装備で大丈夫か?なんて)

 

ちょっとノリノリになってきた。私も鬱憤がたまってたかな。思いっきり魔法を使わせてもらいましょう。

 

「私のことは先輩ではなく、仮想敵とでも思って全力で向かってきて下さい。私もそのつもりで対応させてもらいます」

 

そう告げて私はシャンプーのCMのごとく髪をさらっと背に流し――

 

 

 

「本気でかかってらっしゃい。――格の違いを教えてあげる」

 

 

 

思い描く最高に悪い笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

こうして二組の直接対決から、二年総代バーサス新入生成績優秀者の試合の幕は上がった。

 

 

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