妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
水波視点
深雪様が悪役ムーヴをするつもりなのだと、すぐに理解した私は達也様に確認してからカメラを構えた。
正直この試合は茶番だと思っている。深雪様と彼らとでは実力差があり過ぎるからだ。それが理解できない彼らには同情を通り越して憐みさえ覚える。
しかし、深雪様は先ほどから挑発的な言動を取っておられるけれど、徐々にその、色気が漏れ出している。
ご本人は自覚されておられないようだけれど、彼女の色気はまだ未成年であらせられるのに、ご当主様と匹敵するものだった。
初めて深雪様のお世話をさせていただいたあの日、私の施術が失敗し、深雪様に我慢を強いてしまった夜の出来事は、きっと一生忘れることは無い。
緊張し、震えてまともにできなかった施術をくすぐったいのを我慢し黙って受けた深雪様の、あの恐ろしいまでの色香に何度失神しそうになったことか。
彼女の前で性別など関係ない。だが、私には頑強な砦があった。『この人は私の主人』、その思いがあったから意識を保つことができた。
今滲んでいる色気はあの時に比べれば微かな程度漏れ出ている程度に過ぎない。
だが、それでも学生の身には十分刺激が強い。気を少しでも弛めたらその色香に中てられそうだ。
男性陣は意識的にか深雪様を見ないように、一年生ばかりに視線を向けていた。
深雪様のご友人たちは耐性があるのだろうが…光井先輩はそうでもないのか、顔が真っ赤で横の北山先輩に縋りついている。
その北山先輩はと言えば深雪様を無表情で凝視していた。目を離したくないとばかりに、縋りつく友人の頭だけ撫でて一瞥もくれないで、食い入るように見つめている。
友人に対し随分おざなりな対応だけれどいいのだろうか。
そして達也様と言えば、感情など見せない表情で全体を見ている――ようだけどきっと中心には深雪様がいる。
あの人が深雪様から視線を外すわけがない。
それは短い付き合いの私でさえ確信できるほど、あの人の中心は深雪様だったから。
何を考えているかわからない人ではあるけれど、深雪様のこととなれば話は別だ。
この人は本当に命を賭しても主を守る――それだけは間違いない。
だから私は撮影など余分なことができる。
一応いつでも魔法が放てるようにはセットしているのはガーディアンとして当然のこと。主の実力を疑ってのことではない。
偶然なんてありえないほどの実力差。わかっていても、だからといって私が仕事をしない理由にはならない。
じっ、と主を見つめる。
冷ややかな空気が足元に漂い、血の上っていた頭が冷静さを取り戻しかけたところで深雪様の嫣然とした笑みが威圧と共に直撃する。
この二つが合わさると、まるで御当主様と対面した時のプレッシャーを感じた。
まだ16歳だというのに、深雪様はすでに御当主様の域に達するほどの統治者としてのカリスマ性と恐怖をコントロールする術をお持ちだった。
先に怒りを与えられていたからか、彼らは怯みそうになるのを叱咤して、正面に立ち向かう彼らは己を奮い立たせてCADを構えた。
緊張がピークに達する――
「はじめ!」
合図は達也様の視線を受けて部活連会頭が発した。
途端、中央に立つ深雪様に向け、両端から魔法が放たれ想子光が閃き、襲い掛かる。
が、深雪様の領域干渉力の前にそれらの攻撃は形を失っていった。サイオン量が桁外れというだけではこうはならない。
深雪様の意思が、この場を陣地として構えたことによって彼らの魔法が上書きされて掻き消されたのだ。
彼らとてかなりのサイオン量と魔法力を持っている。だが、深雪様が言ったように格が違う。
それが初手の攻撃でまざまざと見せつけられた彼らは茫然としてしまっていた。
手が止まった彼らに対し、深雪様は何もしない。ただ困ったように眉を下げて首を傾げた。
その仕草によって肩から流れる黒髪が、さらりと滑り落ちてどきっ、と心臓が音を立てる。
戦闘中だ。集中すべき場面だというのに心をかき乱される。…精神干渉の魔法など使われていないという事実がより一層恐怖を抱かせた。
「挨拶にしては、控えめ過ぎるのではなくて?言ったはずよ、本気でかかっていらっしゃいと。それとも、無抵抗の敵に攻撃はできないなんて、甘いことは言わないわよね?私はあなた達の仮想敵になると言ったのよ。それでも攻撃しづらいと、反撃を希望するというのなら――防御に徹しなさい」
攻撃しないのではない、攻撃が通用しなくて固まっているに過ぎない。
深雪様もそれがわかっているから指示を出したのだろう。
わざわざ構えを取らせるなど、指導する教師の様なのにそう思わせないのは彼女の表情が憐憫を浮かべているからだ。
だが、ただの憐憫ではない。明らかに格下を憐れむような嘲りも混じっている。
…深雪様にそのような表情ができるなんて。今度は別の意味でぞくりと背筋が震えた。
彼らが物理防御と情報強化、干渉力を場に敷いたのを確認した深雪様は己の干渉の場を霧散させた。
そしてCADを操作し何も持たない右手を真直ぐ前に突き出すと、その腕を少し下に構えて、握った拳から素早く弾くように親指を立てる動作をした。
それをたった二度ほど。
直後、七宝の足元に銃弾でも受けたような穴が一つ。七草の双子の間の足元にも同じ穴が一つ開いた。
「うそっ?!」
「何が起きた!?」
彼らの防衛ラインを撃ち抜いて、深雪様の放った空気弾が床のタイルを穿ったのだ。
この演習場の床と壁は特殊な加工が施されていると部屋を案内された際に説明を受けた。その強化されているはずの床に穴が開いている。相当な威力だと物語っていた。
これがもし彼らの体に向けられていたならば彼らは確実に、身体に穴が開けられて地に伏すことになっていただろう。
「あなた達が放ったエアブリッドのちょっとしたアレンジよ」
ちょっとした、なんてものではない。私にも全てがわかったわけではないけれど、深雪様が放ったのはまさしく指で弾いて作った空気の塊。
それを強化し、移動魔法で音速の弾丸としたのだ。
普通この手の魔法は飛び道具を使う。ナイフだったり本物の拳銃だったり、そこいらに落ちている小石でもいい。
そういった物理的な道具を使う方がはるかに楽だ。
こんな気体を固定して、なんて無駄な工程は使わない。そんな労力を掛けるくらいなら初めから物量のあるものを使った方が効率的だ。
(これのどこがちょっとしたアレンジだというのか)
深雪様が使ったのは、ただの空気。どこにでもある空気を塊にして放った。氷にするでもなく純粋な空気を、だ。
それに質量を与え、速度を加えることで、ハンマーを叩きつける程度では傷つけることもできない床に穴を空ける?まず普通の魔法師にはそんな芸当できっこない。
だが、有り余るサイオンと魔法力のある深雪様には片手で成しえてしまえる。
ただの空気を凶器に変質させてしまえる。
――つまり、深雪様にとってここには無限の弾があるのと変わらないということになる。
あえてパフォーマンスのように指で弾いて見せたが、実際そんなことも必要ない。
彼女が意識し、強化し、加速・移動魔法を操れば一帯が銃弾の雨に見舞われるということになる。
彼らもそれがわかったのだろう、表情が青ざめていた。
「こんなのもあるわよ。次は全方位、ちゃんと防御を張りなさい」
空気の塊に色は無い。不可視の攻撃だ。だから先ほどの攻撃が何だったかがわからなかった。
深雪様は自身の周りにダイアモンドダストを発生させて
ソフトボールくらいだろうか、丸い、氷の粒を含んだ空気の塊で作られた球体が二つ。
まるでスノーボウルのようなものを、それぞれ彼らに向かって飛ばした。スピードは歩く程度の速さだろうか。
ふよふよとゆっくりと飛んでいくそれに、彼らは言われた通りに防御に徹し迎え撃つことなく身構え、警戒していた。
前面を中心に防御を固めつつ、けれど深雪様の指示通り全方位に防御を展開していたのは、ここまでの流れで油断してはいけないと彼らの本能が教えたのだろう。
私なら偏らせず全面均等に防御をふる。どこかに集中などさせない。
何が来るかなんてわからないけれど、アレは危険だ、と本能が訴えてくる。
深雪様は彼らの様子を愉しそうに見つめ、口角を引き上げて、
「ブレイク!」
と、ぱちんと指を鳴らしたと同時に球体が弾けて中から四方八方に風の刃が彼らに襲い掛かった。
ひゅんひゅん、と刃物が風を切る音が彼らの四方を取り囲み彼らの防壁にぶつかって消えていく。
一つの塊としてではなく無数の風刃として分散されたことで威力も弱くなっているように見える。
もしあれがそのまま正面からぶつかったらと思うとゾッとするが、もし全方位の防御が無かったらこれらが襲い来るのだ。どちらも十分驚異的な攻撃と言えた。
分散されて威力が弱まっているにしてもあの球体からは予想もできないすごい数が雨あられのように降り注ぐ。
彼らが情報強化してやっと堪えられているようだが、弾かれて床や壁に当たる音がその威力を物語っていた。
その時間約5秒ほどだろうか。パチパチパチ、と深雪様が手を叩いたことで攻撃が終わったのだということがわかった。
「よく防げました。ただの空気の塊でも使い方ひとつで人を翻弄することができるの。よく覚えておきなさい。小細工は時に、高ランクの魔法にも引けを取ることは無いのだから」
よくできましたと微笑まれて褒めているのに、背筋が寒くなるのはその瞳が冷ややかなままだからか。
しかし…深雪様、そうは言いますけれど、これほどの技巧を彼らに身に付けられるでしょうか?
繊細且つ精密な操作が要求される技術だ。
今のあれだけでいくつの魔法を同時展開した?魔法を閉じ込め移動させ、解放させる?どれもこれも見たことのない使い方。
それを同時に二つも操ったというのだから、深雪様は本当に恐ろしい。そして多分だけれど、深雪様の魔法力なら二つだけでなく同時にいくつも生み出すことができただろう。
…この方の護衛でいることが不思議に思えるほど強い。
もっと、この方の力になれる様にならなければ、と後で達也様に相談しようと心に決める。
このままでは護衛なのに深雪様に守られる未来しか見えない。そんな事態は絶対に避けなければならなかった。
「さぁて。七宝君、どうかしら。無名だと思っていた敵が貴方の及ばない実力を持っている事実は」
深雪様はゆっくりと彼に向かって歩き出す。その表情は確かに悪役と呼ぶにふさわしいのかもしれない。
目は弓なりに、口元はうっすら口角が上がっていた。気品は一切損なわれておらず、むしろ圧となってネズミを甚振る猫のような残忍さを醸しながら近寄る様は恐怖でしかないだろう。
七宝は恐怖に顔を強張らせながら一歩、また一歩と無意識に下がってしまっていた。
腰も引けている。無理もない。頭で考えるよりも先に本能が格の違いに気づいたのだろう。
妖しくも美しい笑みから視線を外すこともできずに。
「敵が親切に自分は有名人です、すごい魔法が使えるんです、なんて教えてくれると思う?偽らないでいてくれると思う?正々堂々正面から名乗るなんて、どんな魔法を使うかなんて教えてくれると、そう思っているの?――名札だけ見て実力が量れるなんて、そんなわけないでしょう」
ゆっくり丁寧に教えながら追い詰めていく。
正面から受けたらどれほどの恐怖だったのだろう。もう下がる場所のなくなった七宝の顔は青白く、冷や汗も流れていた。
体も緊張で動かなくなり、震えだしていないのが不思議なくらいだが、硬直して震えることもできずに動けないのだ。
「外見と情報だけで相手を推し量ることなんてできない。
九校戦でお会いした九島老師はご高齢で小さく見えたけれど、あの方の技巧は今も衰えず、人に気付かれる前に敵を屠ることができる技を見せてくれたわ。司会者に紹介されて、くることがわかっていたのに誰もがあの方の存在を認識することができなかった。名前を知ったからって全てを防げるわけじゃない。ましてや侮ってなんていたら勝てるものも勝てない」
冷ややかな視線が七宝を貫く。
「――十師族を名乗ってない相手になら負けないと思った?」
あっという間に二人の距離は二歩も空いていない距離まで詰まっていた。
深雪様はただ歩いているように見せていたけれど、横から見ていたから分かる。途中から歩幅がおかしかった。――魔法と体術の融合。
リズムは一定だった。けれど進む歩幅は長短バラバラ。正面の七宝はそれに気づくこともできないでいた。
こんなに近づかれていたことに今気づいたように驚いて飛びずさろうとするが、すでに背後には壁しかない。
けれど深雪様はそんな七宝を見てにんまりと笑い、それ以上彼に近づくことなくくるりと反転する。
隙だらけの背に見えるのに、七宝は動かない。――動けないでいた。
次に深雪様が向かったのは七草双子。
彼女たちはまだ冷静な方だった。これが試合だということを忘れてはいなかった。
泉美は防御を展開し、香澄が正面と見せかけて周りの壁を利用し空気の塊を間接的にぶつけようとするが、目を向けることなくステップだけで躱した。
魔法とは基本決められたルートを示すことで発動する。魔法式通りにしか動かないのだ。
それをきちんと理解し読み解けば今のような間接的な魔法も避けられる。
本来なら躱すことなどせず、撃ち落とすなり拡散で霧散させたりもできたのにそうしなかったのは、彼女の攻撃の甘さを伝える為か。
そんなあからさまに読める攻撃なんて当たらないという演出か。
彼女たちは発動速度も魔法の規模もなかなかだが、深雪様の言う通りまだ技に工夫がない。
「魔法を生み出すことはできても、使いこなすまでは身に付いていないのね。魔法はイマジネーションが大事よ。凝り固まった考えじゃ使えているとは言えないわね」
深雪様が今度は正面から撃ち落としにかかった。同じ魔法、エアブリッドをぶつけるが、無駄がない分威力が違う。
彼女たちにはじき返された空気砲のような風が次々と浴びせられる。余波の風を防ぐ防壁ではないので、髪が乱れていた。
「あなた達は確かに優秀よ。だけど、テストは合格できても実戦はできませんでした、なんて、それは流石にお粗末ではなくて?」
憐憫も混ざった嘲笑だった。向けられれば屈辱を覚えるはずの顔なのに、それでもなお美しく、気を抜けば陶酔しそうになる。
無造作に向けられていた風が急に渦を起こして深雪様の左手の手の平に吸い寄せられるように移動し、暴風は手のひらの中に納めるように閉じることで霧散した。
CADを操作しているようには見えなかった。まるで物語に出てくるような本物の魔法使いの様な演出。
けれど、実際そんなことはない。深雪様はもう一台のCADを彼女たちの見えないように操作しただけに過ぎない。
マジック、手品のようなものだ。
タネがわかれば不思議でも何でもないが、そうでないなら未知の力に感じたことだろう。こういった一つ一つのパフォーマンスによって精神的ダメージが蓄積されているようだった。
「張り合いがないわねぇ。そろそろ終わりにしようかしら」
深雪様がつまらなそうに言うと三人がびくりと肩を震わせた。
屈辱を覚えたか、はたまた呆れられたとショックを受けたか。
そんな彼らに構うことなく深雪様はくるっと身をひるがえして初めの位置、中央へと戻った。
「双方、自身の持つ最高の技を見せてごらんなさい。己の威信をかけた最後の攻撃を。
私たちはたった一年しか違わないのよ?さあ、最後の力を振り絞りなさい!」
両手を広げて彼らを鼓舞するように高らかに。
あれだけ一方的な力の差を見せつけられて彼らはすでに戦意を喪失させていたけれど、『たった一年しか違わない』、その言葉にはっとなってCADを、本をそれぞれ強く握りしめていた。
これが、認めてもらえる最後のチャンスだと、奮い立たせた。
七宝のミリオン・エッジはCADを必要としないらしい。こちらは達也様から概要を聞いていた。
七草の双子についても、二人揃うことで真価を発揮するのだとか。
双方から凄まじいサイオンが迸るが、七草の方が早かった。
「ボクがシュート」
「わたくしがブースト」
「じゃあ、行くよ。カウントダウン」
「スリー」「ツー」「ワン」
「キャスト!」
(これはっ!)
明らかに今までとは違う威力だ。一高校生に使える高等魔法ではない。
二人だからこそできる魔法――これが達也様の言っていたことなのか。
窒息乱流(ナイトロゲンストーム)が深雪様を飲み込んだ。
同時に、七宝は風に煽られページが今にもちぎれ飛びそうになっていた本を閉じた。
そして再びそのハードカバーの本を開くと全てのページが一斉に紙吹雪となって飛び散った。
そこに魔方式を加えた様子はない。CADを使わずに行使される魔法。
彼女たちが巻き起こした強風をものともせず、硬質と化した紙片が無数の刃となって深雪様を切り裂かんと一体となって襲い掛かる。
二つの魔法は相殺されてもおかしくないと思われたが、七宝の群体制御の賜物か、上手い具合に風を利用するように合間をすり抜け深雪様に向かっていた。
そこにさらに追い打ちをかけるように七草から熱乱流(ヒートストーム)のアレンジ魔法が加わり火災旋風のように熱い風を纏って吹き荒れた。
余りの光景に見守っていた先輩方から悲鳴が上がるが、達也様は動かない。
今すぐにでも動き出したいくらい悲惨な光景が想像できる攻撃なのに、達也様はCADを構えることもなく、ただしっかりと見据えて見守っている。
…私には、できない。すぐにでも駆けつけたくなる体を歯を食いしばって抑えるしかできなかった。
まだ、試合は終わっていない。深雪様の邪魔はしてはいけない。理性で飛び出しそうになるのを抑え込む。
徐々に収束する竜巻はまだその中心を見せることはない。炎の渦が覆っていて見えないのだ。
七宝の紙片はその中でも燃えることなくまだ動いていた。
――そのことが、標的を攻撃できていないのだと理解したのは覆い隠していた炎が消えてからだった。
中心に、涼しげな表情で、深雪様は立っていた。
何かしました?と言うように小首を傾げて、たおやかに微笑んで。
その足元は霜が降りていた。減速魔法の事象干渉力は、あれほどの威力のある高等魔法でさえ侵すことができなかった。
自身の持つ最高難易度の魔法ですら何のダメージも与えられなかった事実に七草の双子はその場で崩れ落ち、へたり込んだ。
動かず佇んで微笑んでいた深雪様だったが、何か思いついたのか、古典的に手のひらにぽん、と拳を当てるとその場から消えた。
消えた!
全く何も見えなかった。サイオンの煌めきが魔法の痕跡を教えてくれるが発動のタイミングといい全く分からなかった。
いくら周囲に余剰サイオンがまき散らされていたとはいえ、こんなに魔法の発動も痕跡もわからなくさせる方法なんて私は知らない。
痕跡を追って視線を走らせ、見つけたと思えば七宝の背後に回っており、その首に両手をかけ――
「少々髪が痛んでいるわね」
七宝の髪に触れると同時に己の膝で相手の膝裏を突き、強制的に体を崩して座らせた。
「これで三人とも、しりもちをついたわね」
悪戯が成功したように無邪気に笑う深雪様は大変可愛らしく、今までの暴れっぷりが幻だったかのように錯覚させるほどの純粋さが彼女を覆っていた。
どう見てもヴィランには見えなかったが、それが一層恐ろしい存在に見えた。
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