妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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ダブルセブン編⑰

 

深雪視点

 

 

 

やったね!全員にしりもちをつかせてやったぜ!ピースピース。

いやー。楽しかった~。やりたいことをやり切った気分です。最後なんて膝カックンだったしね。

漫画やアニメのあれこれ再現もめちゃくちゃ楽しかったです。最後の方に至っては完全お遊びでしたね。

さんざん煽ってからの舐めプ。同じ技でもレベルが違うのだよ!と力量を見せつけたり。

これぞ悪役!と私の中の最悪の悪役を演じきって見せましたとも。

もうね、こんな相手どう勝つっていうんだよ!っていう、序盤からレベル差を見せつけてくるラスボスみたいな敵。

しかも弱点を教えてくれるっていう親切さも腹立つよね。後々効いてくるの。

自分が強いと思う最強技をそよ風でも受けました?みたいに全く食らってないプレイも決まったと思う。

実際大変だったよ。酸素があっという間になくなるからこっちも真空つくって熱が侵入しないようにしながら酸素確保してって。

七宝君の紙の刃はサイオン引きはがすとただの紙になったのでそのまま熱風で焼却処分させてもらった。

簡単に言ってるけれど結構高度なことをしていました。集中力とっても使いましたとも。なかなかここまで魔法を使う機会はないのでおかげで結構な疲労感。なかなかないってそれはそう。学校で実力が拮抗することも無ければ、外部で襲われるなど滅多にないから。

疲労感はあるけれどしたいこともできたので大満足。

満足しているから精神的にはそこまで疲れたって気はしていないけど、多分これランナーズハイ的なやつだ。後でどっと疲れるヤツ。

だから今のうちにやっておこうね。

 

「煽るためとはいえ、失礼なことを言ってしまったわね。ごめんなさい」

「「…いえ」」

「…深雪先輩は何も間違っておりません」

 

いやいや、泉美ちゃんは盲信を止めましょうね。今怖い目にあって目を覚ましたでしょうに。

同時に声を出してしまった香澄ちゃんと七宝君は目がかち合ったけど両者プイっと背けた。タイミング一緒。微笑ましくなっちゃう。

 

「確認だけど、あなた達の攻撃はどれか一つでも私に当たったと思う?」

「「「思いません」」」

 

よろしい。良かった。

見えないところで実は食らってたんじゃないかとか言いがかり付けられる可能性も無くもなかったから。

これでいちゃもんつけたらどう更生させていいかがわからなくなるところだった。

 

「香澄さんは規模と連射性、多様性は三人の中で一番ね。七宝君に干渉力は劣るようだけど、泉美ちゃんはその七宝君と干渉力はそれほど差がない、互角くらいかしら。きっとこの三人で戦っていたら、決め手に欠けてなかなか勝負がつかなかったでしょう。

これがあなた達の魔法を受けての総合判断だけど、異論はあるかしら?」

「「「…ありません」」」

 

あら、ちょっと不満そうね。だけど文句は言えないってところかな。圧倒的な差をつけて負かせた相手に何も言えない。

だけど彼ら自身直接対決したわけではないからね。相手に直接力をぶつけてないから半信半疑なのだろう。

だけどね、やってみてわかるけど、君たちしたところで泥仕合、決着なかなかつかないよ。五十歩百歩です。

 

「あと、最後の二組の魔法だけれど、威力は確かに高かったわ。だから自信に繋がるのもわかるのだけど、もっと精度があげられることには気づいているわよね?」

 

訊ねると、三人とも何それ、みたいな顔。

完成したと思ってるとか?それはないよね。制御はどちらも甘かったのだし。

 

「香澄さん達の窒息乱流は炎とも相性がいいけれど、そこにカマイタチを合わせても、七草先輩のように氷を混ぜても面白いと思うわ。炎だと制御が甘いというか扱いづらそうだったから。もう少し制御力を身に付けてからでないとね。私でなかったら防げたとしても瀕死になってもおかしくなかったと思うわ」

 

というより酸欠と熱波はきちんとしたコントロール下になければ死ぬよ。降参待ちだったと思うのだけど、降参する間もないと思う。

すみません!と謝るけれど、気にしてないから次いくね。

 

「七宝君は」

「俺はちゃんと制御できていました!」

「ええ。切り刻んでやる!って気合は感じられたわ」

「っ!!」

 

あ、ごめん。繊細な少年の心に傷を負わせた気がする。大丈夫だよ髪の毛一本も傷ついてないから。でもこれも言ったらもっと傷つけそうなので別のことを。

 

「紙ってもっと無限の可能性があると思うのだけど、どうして全て同じサイズの紙片にしてしまうの?」

「え?」

 

私の言葉にポカンとする七宝君。

教わった技を忠実にすることしか念頭にないのかな。これが完成された形!みたいな。でもね、魔法ってただ単調にこれ!と決めて使う魔法の方が威力が純粋に強いけど、工夫すると化けるから。

いえね、紙っていうと昔紙使いという主人公たちが活躍するアニメがありましてですね。紙の無限の可能性を知ったのですよ。

紙を刃物のようにしたり、乗り物や傀儡にしたり、弓のようにして飛ばしたり。粘着テープみたいにして相手の動きを封じたりとかね。

彼がしているのは群体制御だから紙をすべて刃のように鋭く!をメインにくらいしか考えていないのだろうけどね。せめてサイズくらいはばらけてもいいと思うんだよね。

遠近感覚狂わせるだけでも十分相手をかく乱することになると思うのだけど。

もし一部別の操作も可能なら刃にするだけでなく、それを目くらましにして相手の目や口をふさぐのにも使えたりもできてとっても使い勝手が良くなるはず。

単一の動き以外もできそうだったしね。攻撃のバリエーションをもう少し増やせると思う。

それをもう少し砕いて説明すると七宝君は考えたこともなかった、と零して茫然としていた。

彼らにはまだアレンジは早かったかもしれない。

 

「そういう工夫を考えるのも魔法の楽しみよ。二組とも、魔法を使うことはできても使いこなせるまでには、まだ魔法というものを知らなさすぎるわ。もっと強くなりたいなら、上を目指すなら、先輩たちを見て、いろんなことを学んでみて。初めに言った、あなた達を見て未熟だと思ったというのは嘘ではないの。強い人はね、普段からの立ち居振る舞いからして違うから。そういったところも観察してみて。――あなた達は今、ようやく井戸の中から大海に出たのよ」

 

まだ入学したばかりなのだから、これからたくさん学べばいい。ここには教師こそ少ないけれど優秀な先輩たちが近くにたくさんいる。

まだいろいろと呑み込めていないようだけれど、私は七宝君に体を向けた。

 

「ねぇ、七宝君。今度万全の態勢を整えてもう一度試合をしてみない?今度は私ではなくて――そうね、十三束君が教育係だったのよね?」

「え?!う、うん。本当は俺が直接指導しなければならなかったのだけど…」

 

ああ、やっぱり気に病んでたね。責任感あるものね十三束君。ならちょうどいい。

 

「まずは直属の先輩がどれくらい強いか、その身で体験してみると良いわ。十三束君はとっても強いわよ」

 

そう言うと七宝君は目を見開いて、十三束君はちょっと慌てふためいていたけれど、実力は折り紙付きだからね。

お兄様を苦戦させるような人を過小評価なんて致しませんとも。

服部先輩に振り返り、明後日もう一度試合をできるように計らってほしいとお願いしたら、即許可が下りた。もちろんこの後生徒会にも申請に行かないといけないのだけれど。

先輩たちも思うところがあったらしい。

話はスムーズに進み、とんとん拍子に明後日の土曜日放課後に時間を取れた。

この時十三束君がお兄様を見ていた。…お兄様との戦いも決まったようですね。お兄様は気付いていらっしゃらないようだけれども。

お兄様は先ほどから何か考え事をなさっているのか、ちょっと上の空。どうしたんだろうね。

とりあえず、今回の戦いは七草と七宝両者敗北という形で決着がついた。

どちらが上か、なんて話にもならず、ただ彼らが未熟であると自覚させた試合であった。

天狗っ鼻がへし折れてよかったね!これで成長できれば万々歳なのだけど。

 

 

 

この後、床のタイルに穴を空けたことを中条会長に叱られて書類を書く羽目になりました。器物損壊してごめんなさい。

こんなことでお兄様に再生なんてさせないよ。これは私の始末しなければならないこと。始末書の一枚でも二枚でも喜んで書きますとも。

 

 

――

 

 

お兄様がウィードと蔑まれることもなく、八つ当たりも受けることもなく、更にやりたい放題できたので私としては満足いく試合だったのだけど、帰りのコミューターがまるでお葬式のようにですね。

二人が落ち込んでおります。どうして?なんて流石にボケられないね。

 

「あの、心配をおかけしました」

 

原因は私にあることは間違いないので謝罪をすると、二人はゆるゆると頭を振って否定しているように見えたけど、ため息もついています。呆れられてる?

 

「深雪様が、このような無茶をなさる方だとは思いませんでした」

 

ぐっ…ご、ごめんなさい。

 

「いくら深雪がかすり傷一つ負わないとわかっていても、心臓に悪い試合だった」

 

うう…すみません、そんな試合を楽しんで。

 

「「はぁ」」

 

うわーん、二人にため息つかせちゃった。

護衛なのに守らせてあげられなかったからあんな落ち込ませちゃったんだってことだよね。

 

「ごめんなさい」

 

心を込めて謝罪して顔をあげると、二人は苦笑を浮かべていた。仕方のない子を見るような目です。

…おかしいな。精神年齢なら前世含めて二人の倍はいっているはずなのに。

 

「やっぱり深雪に悪役は向いていないね」

「そうでしたでしょうか。私としては結構頑張ったつもりなのですけど」

 

絶望を与えるボス目指して頑張ったのだけど、お兄様には悪者に見えなかったらしい。

 

「確かに悪役を主役にする物語もあるとは知っているが、深雪が主役の物語はどうやっても英雄側だ。今回のは人を導く主人公のようだった」

 

人を導く系はメインキャラじゃないと思うのですけどね。お助けキャラ。だけどお兄様が自信を持って言っているのに水を差すのもはばかられた。

頑張ったつもりなんだけどなー悪役。

でも後で水波ちゃんに聞いたらちゃんと怖かったって!お兄様の欲目でした。

映像は後後日演劇部部長に持っていこう。何かの参考資料になるでしょう。

家に着いてから私は流れるように地下に連れていかれ隈なくチェックされました。

いつぞやの注文の多い料理店リターンズ。お風呂にまでは入っていないけれど。

ケガも全くなく、健康体でした。疲労は有りますけどね。

お兄様にガウンを羽織らされ、今日はそのまま抱きしめられた。

…こんな薄い恰好でお兄様に抱きしめられると心臓がとんでもないスピードでビートを刻んでしまうのですけど、お兄様を心配させた罰でしょうね。大人しく受けますとも。

 

「ごめんなさい、お兄様」

「心配するさ。俺はお前の兄貴だから。これから先もずっとお前を心配するのだろうな」

「…はい」

「だが深雪が弱いからじゃない。それはわかるね」

 

こくりと頷く。

密着していて互いの顔を窺うことはできない。それでよかったと思う。心配させているというのに頬が緩んでいたのを自覚していたから。

弱くない、とお兄様が言ってくださったことが嬉しくて。強さ関係なく心配なんだという言葉を読み取って、妹だから心配になるんだ、と告げるお兄様に力を抜いて身を委ねた。

お兄様が力を抜いたことに気付き私を抱えるように抱きなおす。

 

「どうした?」

 

いつもより甘い声に、更に心臓は加速するけれど。

 

「改めて、お兄様の妹でよかったと」

 

その胸に頭を擦り付ける。お兄様も心臓が早く鼓動を打っていた。

温かくて、恥ずかしさもあるのに不思議と安心してしまうお兄様の腕の中。

 

「困ったな。無茶をしたお前を嗜めたかったのに」

「叱ってくださるのですか?」

 

お兄様に叱られることなど滅多にない。注意は受けるけどね。

だからちょっとどんな感じか気になったのに、お兄様は私の頭を抱え込んでしまった。

 

「叱られることが嬉しいなんて、困った子だ」

「それはお兄様が滅多に私をお叱りになることが無いから」

「それだけ深雪が良い子だったからね。叱ること自体がなかった」

「まあ。私は結構いたずらをしたと思うのですけれど」

「そうだね。可愛い悪戯をしては母さんや俺を困らせたりもしたね」

 

母にはいつも叱られていた思い出。怒ったお母様のお顔も美しかった。

 

「最後のあの悪戯が成功した顔は久しぶりに見たよ。相変わらずすべてを許してしまいそうになる可愛さだった」

 

頭が解放されたと思ったらお兄様の手が頬を覆って顔を上向きにされた。そして襲い掛かるお色気たっぷりのお兄様の微笑み。

…ちょっと手を離していただけますか?眩しすぎてですね。

 

「どうして視線を逸らすんだい?」

「だって、お兄様が…」

「俺が、なんだい?」

 

もぉー。お兄様の確信犯!

この反応は絶対わかっていてやってるよ。

 

「お兄様も、困ったお兄様です。こんなに妹を困らせて」

 

と伏し目がちになって視界に入ったのは…己の谷間だった。おおう…そういえばガウンを羽織っただけで着替えてもいなかった。下着の上にガウン羽織っただけはほぼ裸同然です。

こんな姿でお兄様に身を委ねていただなんて…。

 

「…お兄様、あの、そろそろ着替えたいと思うのですが」

「…そうだったな。すまない。いくら春でも冷えるのに」

 

お兄様に抱きしめられて寒くはないんですけどね。羞恥って気温を忘れさせるよね。今は熱くてたまりません。

急いで着替えに向かう。顔をぱたぱた仰いでも全然冷めない。

困ったね。今頃になってとんでもないことをしたと気付いた。今すぐベッドでバタバタしたいくらいだけど、この後はすぐに夕食だ。

水波ちゃんが用意してくれているだろうから。…早く淑女の仮面を被らないと。

パン、と頬を叩いて気合を入れなおした。

 

「お待たせしましたお兄様」

 

お兄様は音が聞こえたはずだけど、何も聞かれることなく、一緒にリビングへ向かった。

 

 

 

 

水波ちゃんにも改めて心配させたことを謝罪して許しを貰いました。良かった。

 

「今回の件で七宝君が目を覚ましてくれるといいのですけど」

「…糸を引いている人間か」

 

思い込みと、自分の都合のいい流れに惑わされて乗りやすい性格。

彼自身が殻を破れればいいけれど、彼の場合周囲が言葉巧みだからね。若い彼には抜け出す術がない。

 

「これ以上引っ掻き回されても困るな。少し探ってみるか」

 

お兄様が重い腰を上げました。とはいえこれも予定調和。

偶然黒幕おじさんたちの妨害をすることになるんですよね。…お兄様大けがするけども。それを思うと憂鬱だけど、ここで七宝君たちを見殺しにするわけにもいかない。

神がそんなことを許すはずもなく、ベストなタイミングでコール音が鳴る。

藤林さんだ。

映像電話のモニターに映し出される麗しい姿にうっとりしそうになる。美人さんはどんな時に見ても美しい。心を癒してくれますね。マイナスイオンでも出てます?

お兄様から視線を受けて水波ちゃんと一緒に離れようとするのだけれど藤林さんに引き止められた。

水波ちゃんのことも紹介していないのに知っていると臭わせてくるので、お兄様も警戒心を煽られて身を引き締める。

藤林さんの口から語られる、お兄様を常に盗聴盗撮監視している事実を暴露されるけど、これって親切だよね。でなければこんなこと言う必要ないもの。

それにしてもお兄様と私に直接耳目を向けなければお兄様が気付かないなんて方法、よく思いつくよね。盲点。お兄様の隙を突くいい作戦です。

油断が見つかれば対処しようもありますからね。

そして話は七宝君へ。藤林さんも彼が気になるんだってー。モテモテだね七宝君!特に大人の女性に大人気。羨ましい限りだ。

…お相手が務まるかは別だけど。彼じゃどちらも手に余りますものね。

 

「動きがあったら連絡するわ。じゃあそう言うことで深雪さん、その時は達也くんをお借りするわね」

 

お兄様が怪我することがわかっているので喜んでー!とは言えないけれど、許諾すればウインクいただきました!わぁい。美女のウインク!

内心喜んでいたら横からの視線がですね、突き刺さると言いますか。

 

「…藤林さんは相変わらず素敵な方ですね」

「憧れるのはまだいいが、真似はしないように」

 

お兄様…真似したくてもあの魅力は私には出せないものです。

真剣に訴えるお兄様に、無言で頷くしかできなかった。

 

 

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