妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
次の日、七宝君は学校をお休みしていた。明日の試合に万全に準備を整えているんだろうね。本当に真面目な努力家さんだこと。
だけど、その英気を養うためにか彼女さんに会いに行っちゃう辺り思春期男子だよねー。
ってことでその日の夜藤林さんから連絡がきて、お兄様は私たちに留守番を言い渡して出かけて行ってしまった。
一応行く直前にネクタイピンは持っているか確認したら、これか、と取り出してみせてくれた。良かった。お兄様なら壊れても再生させられるからどこにでも持っていけるね。
家で待っているように、と念を押すように言われたのは、リーナちゃんとの対決の時家を抜け出したからですか?
あの時は私だけではなく先生が案内してくれたから行けたんですけどね。
水波ちゃんと仲良く二人きりでお留守番、なんだけど。
水波ちゃんがスイーツの作り方を教えてほしいってことで一緒に作ったり、その後お風呂に入れられて念入りにケアをしてもらったりと、いつも以上に一緒にいてくれるのは、もしや私が何かしでかさないかと警戒されてたり?…気づかなかったことにしよう。うん。水波ちゃんは気を利かせて寂しくないよう傍に居てくれたんだよ。
「ありがとうね、水波ちゃん」
「…もったいないお言葉です」
だからそんな気まずそうに視線を逸らさないで。どこか行かないように監視してたのに、この主は。みたいなお顔しないで!
それからしばらくして。
案の定帰ってきたお兄様からは血の匂いと焦げ臭さが。
水波ちゃんが席を外したタイミングで少しだけハグをする。
「お兄様も無茶をなさる。私には視えない分、恐ろしくもなります」
私にお兄様の状況を視ることなんてできない。ただ、終わった後のこの残り香だけが私が唯一得られる情報。
だからこそ、余計に怖い。お兄様は一歩間違えば死に至る怪我をしたのだとわかるから。
「すまない」
お兄様が悪いわけじゃない。どう考えても攻撃する側が悪いのに。
お兄様がしたくて自身の体を酷使しているのではないのに。
それをどう言葉にしていいのかわからなくて、強く抱きついてしまう。それをお兄様が何も言わずに包むように抱きしめる。
「お疲れさまでした」
「ん」
「大変でしたね」
「ああ」
そんなことないよ、とは言わなくなったお兄様に、気を許してもらえている気がして嬉しくなる。
「今日はもうゆっくりと休まれてください」
「そうさせてもらうよ。だがもう少しだけ、深雪を感じさせてくれ」
更に強い力で抱きしめられるけど、絶妙に苦しくなる前で止められている。すごい力加減。
水波ちゃんが来るまでお兄様とハグをし続けた。
――
あくる日、十三束君と七宝君の戦いの火ぶたが切られた。
生徒会からはお兄様と私。風紀委員からは沢木先輩と吉田くん。部活連からは服部会頭と桐原先輩というメンバーがこの試合を見守る。女子は私だけって珍しい。
服部先輩の号令で始まった試合。この後を知っている私には前座の試合だ。
十三束君は特異体質で、自分に触れる魔法を無効化することができる。
普通にやり合ったのではまず勝ちようがない。なぜなら大抵の魔法が触れただけで解除されてしまうのだ。普通ならまず破れない。
お兄様とは違う術式解体。
七宝君は全力で立ち向かうものの、すべてを無効化されていく。
これほど魔法師にとって恐ろしいことはないだろう。
私のように圧倒的力の差を見せつけられるのとも違う展開に、七宝君は為す術も無く立ち尽くし、十三束君の決定打の一撃が決まる。
彼は魔法師らしく、接近戦に慣れていなかった。
崩れ落ちる七宝君に、審判の服部先輩が試合終了を宣言した。
しかし、あれだね。七宝君の技っていちいち紙吹雪が散らばって大変だね。お片ししようね~、とCADをちょちょっと操作して気流を動かし空気の流れを操作して、いくつも渦を作って紙くずとなってしまったものを一か所に集めてそのまま掃除機に吸い取らせた。ごみはちゃんとゴミ箱へ。お掃除はきちんとしましょうね、と七宝君を見たら驚愕の表情を向けられていた。なぜ?
皆もなんでそんなすごーい、って目で――あ、しまった。これって結構高等技術なんだった。うっかりお掃除気分で使ったけれど、繊細な操作が必要だったりするんだよね。
それをいとも簡単にCADで制御してたら七宝君の切り札の凄さが半減しちゃう。…もう少し気を使うべきでした。反省。
とりあえずにっこり笑って誤魔化す。
思ったより試合が早く終わった、というより十三束君は初めからこのつもりだったからね。お兄様に試合を申し込んだ。
十三束君にとってお兄様は強いのに、七宝君みたいに何も知ろうとしない人に見下されるのは我慢ならないんだって。
わかるよ!同志!!
お兄様は注目されないならどうでもいいと思っている節があるけど、お兄様の強さを知っている人間からしてみれば、腹立たしく思うわけで。
明らかに乗り気ではないお兄様に、私は胸の前で手を組んで見たいなー、と念を送ってみる。
お兄様と目が合った。
見つめ合うことしばし、お兄様は折れたように目を伏せた。勝った!
戦う選択をしてくれたお兄様に今度は心からにっこり笑うと、そのお兄様から一言。
「勝ったらご褒美を楽しみにしているよ」
…ワァ、オネダリサレチャッタ。
お兄様が負けるはずないからね、どうしよう。私がお兄様にしてあげられることって何かあるかな。
この試合がどれだけ大変なものかを知っているだけに、釣り合いの取れるだけの褒美が思いつかない。
困ったね。
そんなことを思いながら服部先輩の号令で試合は始まったのだけど、すぐにそんな悩みは吹っ飛んでしまう。
お兄様は初っ端雲散霧消を装填、引き金を引く。直撃すれば十三束君の姿は無くなっていただろうけれど、彼の接触型術式解体によってそれは無効化された。
しかし、誰も気づかないとはいえ、こんなところで軍事機密指定がされている技を躊躇いなく使うとは。あとでピクシーに改ざんさせるつもりだったとはいえ無茶をする。
大丈夫だと知りつつも冷汗が流れた。
試合はそれを皮切りに、十三束君が怒涛に攻める。お兄様が往なして躱して反撃もしつつ、それでも距離を保とうと動く。
術式解体は想子の圧力で魔法式を対象から剥離させる対抗魔法。
だけど十三束君の場合はお兄様のように砲弾を打ち出して魔法式を吹き飛ばすのではない。『身体』を包み込む分厚い想子の装甲で魔法式の侵入を拒んでいるのだ。
有効なのは魔法で起こした事象で攻撃すること。私の得意とする方法ではあるのだけれど、お兄様は直接作用する魔法を得意とする。
普通の魔法が使えないお兄様には明らかに不利な状況だった。
それでもお兄様は諦めない。打開する案を模索しながら鋭い攻撃を捌いていた。
視線を感じる。これは位置的にも吉田くんだろう。
十三束君がお兄様と互角など、彼にとっては驚愕のシーンを目撃しているようなものだから、お兄様の実力を一番知る私を見たのかもしれない。
私はできるだけ冷静に試合を見ているつもりだけど、内心ハラハラしっぱなしだ。これがお兄様の試合でなければ沢木先輩のようにワクワク楽しめただろうに。
こういう格闘戦の観戦なら汗握って楽しめるタイプなんだけどね、お兄様が戦っていると思うと勝つとわかっていても心配が勝ってしまう。
紙一重の攻防戦。両者一歩も譲らない。喰らっている量ならお兄様の方が多い。ダメージも蓄積されている。
けれど、お兄様も緻密に計算された魔法を罠のように一つ一つ展開し、じわりじわりと十三束君を追い詰めているのがわかる。
振動系の床の揺り返しを利用して感覚を揺さぶり、更に多方面からも振動を受ければ体内に狂いが出る。直接的ではない間接的攻撃。
相手にも攻撃と悟らせない揺さぶり程度だけれど、徐々に蓄積されていく疲労に十三束君は気付いているだろうか。
目まぐるしい知略の張り巡らされた攻防。
十三束君から放たれんとする加重系魔法エクスプロージョンの術式を視てすぐさま術式解体が破壊、そしてその事象改変を踏み台にして自己加速魔法を発動させる離れ業を、お兄様はなんともなしにやってのける。
この試合がどれほど刺激的か、わかる者の反応は様々だ。興奮する者、畏怖する者、打ちのめされる者。
この試合をたった数名で見ているのがもったいないほどの名試合だった。これほどの教材はないだろうと言うほど、巧みな技の応酬。
それを固唾を飲んで見守るしかできない。
先日の試合、お兄様もこんな気持ちだったのだろうか。あの時私が対峙したのは確実に格下だったので、余裕があった。遊んで相手をしていた。
けれどお兄様も水波ちゃんも心配だったのだという。
今回はお兄様が負けることは無いとはわかっていても苦戦を強いられている試合。
今お兄様が受け掛けた攻撃は下手をしたら大やけどでは済まされない攻撃だけれど、紙一重で回避した。
なんて、心臓に悪い試合だろう。自分がけしかけておいてなんだけど生きた心地がしない。
十三束君の動きが不自然に変わった。その変化にお兄様は反応したけれど――ポン、と気の抜けた音と鳴ったかと思ったらお兄様が床に転がる。
叫ばないように口を覆うので精いっぱいで、呼吸を忘れた。
沢木先輩と桐原先輩が解説するも耳を素通りしてしまう。
わかっているのだ。お兄様が攻撃が当てられた直後、ちゃんと自分から跳ぶことでダメージを最小限にしたことくらい。
それでもお兄様が床に転がる姿というのは衝撃的だった。
すぐに立ち上がったお兄様は、CADを構えていた。――その鋭い眼差しには勝ち筋が見えたようだ。
セルフマリオネット。それは十三束君にとっては今まで使っている魔法と何ら変わりないものだろう。
けれどお兄様の目には違う。
そこには接触型術式解体とは別の、無秩序のサイオンの鎧が構造ある形に変わった。
それがたとえ無機質な情報であろうとも構造は構造。形作られた物。――つまり、理解できるものであればお兄様に分解できぬものは無い。
ここで対パラサイトのために鍛えた技が炸裂。防ぎようのない想子弾に貫かれた十三束君は予想以上に後方へ吹っ飛んだ。
十三束君に立ち上がる力は無い。お兄様の勝利が宣言されて、ほっと息が漏れてずっと息をつめたままだったことに気付いた。え、いつから息止まってた?
お兄様の元に駆け寄りそうになるのを抑えて深呼吸を一つ。そしてお兄様を見れば、お兄様と視線がかち合った。それだけで嬉しくなって笑みがこぼれてしまう。
勝ったことよりも、ケガが少なかったことよりも、今お兄様とこうして目が合い、安心させるように微笑まれてくれたことが、私を喜ばせる。
お兄様は一つ頷くと、視線を十三束君へ。ちゃんと相手に敬意を払って手を伸ばす姿はカッコいい。
これだよ七宝君。君に足りないのは対戦相手に対する敬意。
「思った通り、強いね、司波君」
「十三束もな。これはかなり効いた」
男の子同士の友情ですね。素晴らしい。互いを健闘し合う姿に感動すら覚える。
優秀であるからこそ、彼らの演じた戦いがどれほどのものか、己がどれほど未熟であったかをまざまざと見せつけられた気分なのだろう、七宝君は怪我のダメージも忘れて部屋を飛び出していった。
お兄様がちらりと私を見たけれど、行きませんよ。それは私の仕事ではありません。
吉田くんや桐原先輩たちに囲まれてお話しする様子は、男子高校生のあるべき姿のよう。
わちゃわちゃしてて青春の一ページそのもの。私は控えてその姿をひたすら目に焼き付ける。
でも、じっと見つめてしまうとお兄様は気付かれてしまうので時折視線を切るようにして見ていたのだけど、ちょっと熱がこもり過ぎたかな。
お兄様が輪から外れてこちらに気付いて断りを入れてこちらに来てしまった。
「深雪」
「お疲れさま」
赤くなった頬は触れると若干熱を帯びていて。
「気持ちいいな」
「私の手でよければいくらでも冷やしてあげるわ」
私の手に頬を押し付けるように手を添えて、目を閉じるお兄様。…周囲が皆顔を背けました。そんな見ちゃいけないみたいな反応されても。
「でもこの部屋は時間が限られているものね」
だから早く部屋を移動しましょう、と声を掛けるとお兄様はそうだねと頬の手を掴んでつないだまま部屋を出ようとする。
掃除も済んでますしね。このまま出ても問題ないのでしょうけど。桐原先輩にあとは任せろとぞんざいに手を振られました。
向かった先は生徒会室だったのだけど、部屋の前で立ち止まる。
「いかがなさいましたか?」
二人きりだから敬語で問いかける。
繋がったままの手をもう一度頬に運ぶお兄様は私の手の冷たさにもう一度目を伏せる。
「ずっと深雪に冷やしてもらいたいところだが」
「そんなことをしたらお仕事になりませんよ」
「お前の仕事を全て片付けてやるから冷やしていてくれないか」
「そんなことをしてはほのかが仕事になりませんよ」
あと泉美ちゃんね。私は良いんだけど、ほのかちゃんたちが噴火しちゃいます。会長も気が気じゃなくなっちゃいそうだしね。
「仕方ない」
お兄様は諦めて手を離してくれ――る前に引き寄せて私の体を抱きとめると耳元に囁いた。
「ご褒美は決めているんだ」
かすれ気味の声に心臓が大きな音を立てたけど、聞かれる前にお兄様の腕は私を解放した。
「家に帰ったらお願いするから」
……一体私は何をさせられるというのか、帰るのが怖くなった。
お兄様は私の動揺に笑いながら今度こそ生徒会室に入っていった。続いて私も入るけれど、ピクシーに様子を確認されてる?
熱やらを確認するみたいに触手が動き回る。結界張っていたから問題ないのだけど、仮面がうまく被れず心配かけるような顔してたかな?
心配してくれてありがとうね。いい子。お茶を持ってきたときにお礼を言いながら撫でるとテロンとその手にじゃれつかれた。可愛い。
…ピクシーに癒しを求めるくらいに私は疲れているらしい。
ブン、との音にお兄様とテレパシーで会話をしているのを察知。さっきの試合の映像データの改ざんのお話みたい。
お兄様は声も発していなかったからメールでお願いしたんだろうね。記録に残しちゃいけないものがありましたからすぐに処理しないと。
こうしてお兄様にとっても意味ある戦いも終え、春のダブルセブン騒動は終息を迎えた。
――
夕食の準備で水波ちゃんがキッチンに籠る間、私はお兄様の部屋にいた。
勝利したご褒美を強請られているところなのですが。
「…今、なんとおっしゃいました?」
思わず聞き返してしまったけれど、お兄様の笑みは揺るがない。
「キスが欲しい」
…うん、聞き間違いではないらしい。
魚の、とかボケたら実演とかされそうでそんな冗談も迂闊に返せない。
というかこれはトラップが仕掛けられてる?『キスしてほしい』、ならわかるけど『キスが欲しい』って――いや、お兄様に限ってそんなトラップ仕掛けないか。
お兄様は意地悪だけど流石にそこまでは、ねぇ…。お兄様相手にも言葉の裏を疑ってしまうなんて失礼だね。申し訳ない。
「勝利したら褒美のキスが定番だろう」
どの世界線の定番でしょうね。
確かにあるけど。そういう話は聞くけども。妹からもらって嬉しい?そう言うのって恋人とか思い人とか一番の美女とか――あ、深雪ちゃんは一番の美少女ではあったね。
…マジですかお兄様。本気で言ってます?
「深雪のお願いを聞いてあげただろう?」
そうですね。私が見たいってお願いしましたけども。
しかもお兄様にとって気乗りしない試合だったのに、私が期待したから大変苦戦してまでも勝ってくれましたものね。
「あの勝利はお前に捧げたものだ」
だから、どうか俺に褒美を。なんて、手を取って触れないキスをするなど仕草まで気障すぎますよ。
ベッドの上で横並び。腰には逃げないようにか腕が添えられている。
見つめるお兄様の目は愉しそうに細められていた。しかも期待で輝いているようにも見える。
…お兄様、本当に感情が豊かになりましたね。
私相手には消されていないとは言っても、そこまで強く出るのは喜怒哀楽といった基本的な感情ばかりだったのに、今ではこのように多彩な色を見せてくれるようになった。
嬉しい、喜ばしいことなのだけどね。
(…妹に向ける好意じゃないと思うんだよなぁ)
ここで育んで、他の誰かに似た感情を感じて恋をしていくのだろうか。だとしてもこのプロトタイプを受ける衝撃を、私はあと何度受けることになるのだろう。
…身が持つ気がしないのだけど。残機が残っていない気がします。
でも以前に一度だけ通り魔のように犯行を及んだ私です。二度目もやって見せようじゃありませんか。
女は度胸!と気合を入れて寄せられる頬に首を伸ばしてそっと触れる。
音は立てられなかった。ただ触れるだけの口付けを、押し当てるようにしてすぐに離れる。一瞬だけの接触。
それだけでも心臓がバクバクと脈打つ。全力疾走並みの激しさ。苦しさを覚えるくらいの緊張を強いられたのに、受けたお兄様はくすくすと笑って私を抱きすくめた。
「勝った甲斐があったというものだな」
……やっておいてなんですが、こんなのでお兄様は本当にいいのだろうか。
だって、あの試合でお兄様は本当にギリギリの戦いを強いられていたというのに。勝てたのはお兄様の術式解体を使用できる条件が整ったからだ。構造が理解できる状態にたまたまなったから勝てた。
あのまま接触型術式解体が展開されたままだったらきっと消耗戦が続いていた。
薄氷の上で戦っているような緊張感がずっと続くのだ。普通ならまず精神が持たないけれど、そういう意味ではお兄様は焦燥がない分強い。
だとしても疲労は感じるだろうけど。
「不満顔だね。何か言いたいことでもあるのかな」
「…あの素晴らしい試合のご褒美がこんなものでよかったのかと不安になりました」
顔を覗きこまれて気まずくなり俯きながら正直に答えると、お兄様はさらに抱き込むように力を込めて。
「最高のご褒美だよ。これ以上望むことなどあるはずもない」
「…お兄様は欲が無さすぎます」
「そんなことは無い。随分欲が深いと自分に呆れている。こんな可愛い妹を独り占めできて、更に勝利のご褒美にキスまで貰えるなんて、欲張り過ぎだ。今にも天罰が下りそうだな」
「こんなことで怒る神様ではないでしょう」
なにせ、実の姉弟をなんやかんやのご都合主義で結婚できちゃうような設定作る神様ですから。
きっと兄妹ラブラブは本望です。…この形があっているかはわかりませんが。
「だと良いがな」
ただこの神様はお兄様をトラブルに巻き込むことも大好きですので、天罰とは別にたくさんのトラブルを用意されていることでしょうけど、それは私が少しでも減らせるよう頑張りますので共に乗り越えましょうね。
コンコン、とドアがノックされる。
「夕食の準備が整いました」
水波ちゃんの声に応えて立ち上がる。
「参りましょう、お兄様」
「ああ」
するりとお兄様の腕から抜け出て振り返る。お兄様は眩しそうに目を細めてからゆっくりと立ち上がった。
「深雪」
「はい、」
何でしょう、と振り返るより早くお兄様は私の横に回り込んで頬に口付けを落とした。
「やはり貰いすぎた気がしてな。少しだけ返す」
「~~~!!」
淑女の仮面を何度お兄様は割るつもりなのだろう。真っ赤になった顔を手で覆い隠す。
お兄様はそのまま横を通り過ぎ、部屋を出て行ってしまわれた。
(不意打ち過ぎる!というかキスは返却不可です!!)
しばらくその場に蹲っていると、水波ちゃんがもう一度呼びに来てくれた。
しゃがみこんでいる私に驚いた水波ちゃんだけど、私の顔を見て何かを察したのか、とりあえずお兄様の部屋から連れ出してくれて、一旦私の部屋で落ち着くようにと座らせてくれて水と濡れタオルを持ってきてくれた。
階下では水波ちゃんが「達也様!」と大きな声でお兄様を叱る声が聞こえた。
年下の女の子に怒られるお兄様。一体どんな表情で受けているのか気になるけれど、私がそれを見られるのはもう少し時間がかかりそうです。
ダブルセブン編 END