妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
辿り着いたのは副都心にある最近できたばかりのファッションビルでした。
んん?どんなご都合主義が発動しましたか?なぜこのような場所にお兄様と二人できているのでしょう?
私は深雪ちゃんと違って着道楽ではありませんよ。肌触りにはこだわるけれど。
「あの…」
外なのでお兄様とは呼べない。
腕を絡ませカップルに見えるように身を寄せている現在、お兄様はいつもより割増の明るい笑みを浮かべられています。
眩しい。夏本番はもう少し先でしょうに、なんという眩しさ。
「どうした、そんな不安そうな顔をして」
くすくすと笑うお兄様は心配そうな声を出しているのにご機嫌な様子を隠そうともしない。
そして建物に入った瞬間訪れる静寂と、ものすごい数の視線。館内の自動アナウンスがよく聞こえますね。
流石できたばかりの人気スポット。人の視線が多い。
深雪ちゃんの外出には付き物のいつもの光景だ。
(もしかしてだけど、これって昨年の夏休み再来では?あのデートの日の再現では⁇)
「安心していいよ。去年のように20着も着せ替えするようなことは無いから」
心の中で慄いてたらお兄様が心を読んでくるぅ。
そうですか。まさか私が誘わなくてもこんな展開になるなんて思いもしませんでしたよ。ええ。
「昨年もたくさん買っていただきましたのに」
「去年は去年だろう?それに、今日の目的地は深雪の思っているところではないよ」
ファッションビルなのだから洋服だと思ったのだけど、私の思っているところではない?いったいどこへ向かうのだろう。
というかお兄様初めての場所なのにすいすい進みますね。
売り場の確認は入り口でしていたと思うけど、お兄様遠目で見えちゃうから近くで立ち止まるなんてこともないものね。
そして辿り着いた先は――まさかの『現場』でした。
え?直接水着売り場⁇先輩たちの姿は――見当たらない。
そのことにちょっとほっとしつつ、しかし頭を占めるどうして?の言葉。一体全体ここに何のご用事が?
「去年はエリカ達と一緒で時間も限られていたからな。今年はゆっくり選べる」
おおう…、まさかの去年のリベンジだった。そんなに不満でしたか?あの時もほぼお兄様と一緒に選んだようなものでしたけど。
「…今年はまだ雫たちに誘われておりませんよ」
水辺に行く予定が今のところ一切ないのですが。
それに、水着って毎年新調するモノだったっけ?前世あまり海に行ったことが無いからよくわからないのだけど。
とりあえず抵抗をしてみせるけど、お兄様はどこ吹く風。
「春はバタバタしていて秋の約束を果たせなかったから。九校戦が終わった頃にでもまたバイクを走らせに行かないかと思ってな」
秋の約束、と言われて思い至るのはあの紅葉の素晴らしかった湖でのピクニックだ。
確か次の春にまたここで花見でも、と約束をしていたけれど、今年の春は水波ちゃんが来て、学校でもバタバタとしていて時間が取れずに流れてしまっていた。
残念ではあったけれど、あの時すでに水波ちゃんが来るとわかっていた私には、叶わない約束かもしれないと思っていただけにそんなに落ち込んでもいなかった。
けれどお兄様はずっと気に病んでいらっしゃったのかもしれない。妹との約束を叶えられなかった、と。
だとしたら申し訳ないことをした。約束なんてしなければよかった。
過ぎたことを後悔してもしょうがないのだけれど、そう思わずにはいられない。
…お兄様への申し訳なさもあるのだけど、花見ができなかった代償が、ですね…なんか思っていたのと違いそうで。
「バイクは、分かりますが、行くのはあの山なのですよね?」
「何も海ばかりが水着になる場所と限らないだろう」
お兄様、何故そんなに楽しそうなのです?
お兄様の腕がするっと腕を離れて逃さないとばかりに腰に回された。及び腰になっていたのがバレていたのか。
蟀谷に汗が一筋垂れたのは、暑さによるものであってほしい。
「あれだけ水質のいい湖なら泳いでも問題ないだろう。それに、泳いだ後には温泉にも入れるしな」
ああ、そういえば地熱が高い理由は近くに秘湯があるとおっしゃってましたっけ。…なんということでしょう。あの素敵なお山は避暑地としてもいい場所だったのですね。
しかし、そうですか。それには確かに水着が必要になりそうですね。
でもだからこそ言いたい。
「水着の新調、いります?」
去年買ったばかりですよ。しかも使用は一回だけ。もったいなくないですか?
「いる」
はっきり、きっぱりと。お兄様は力強くその二文字を言った。断言した。
…左様でございますか。昨年のでも十分だと思うのですがお兄様がそうおっしゃるのならそうなのでしょう。
私は思考を放棄し、お兄様の願う通りにしようと、それがお兄様の幸せなのだと従うことにした。
いいじゃない。お兄様楽しそうだもの。
あんなに忙しくて大変だったお兄様が、息抜きとして私の水着を選びたいというのなら、付き合って差し上げるのが妹としてお兄様にできるご奉仕だ。そうに違いない。
思考を放棄したわけじゃない。ただお兄様の幸せのため私は沈黙を選んだのだ。
――
「とりあえず去年と似たタイプは除外だな」
この売り場に男性客はいないけれど、お兄様全く気にしてませんね。強い。
お兄様を一人浮かせるわけにもいかないので、私も水着選びに参加するとしましょう。
あまり攻めたような水着をお兄様が選ぶとは思えないけれど、水着ってだけで普通の服と違い布の面積が少ないわけで。
(いくら妹のとはいえ、お兄様は気まずくないのかな)
うちのお兄様、原作より強心臓な気がする。
だって原作ではお兄様はこういった売り場に妹と一緒にいても居心地の悪さを感じていたはずだもの。
自ら率先して水着売り場に来るなんてきっとしない。
それとも、疲れていてその判断もできなくなっているとか?だとしたら早く終わらせて帰った方が良いのよね。
…とはいってもこの後イベント予定だからここにいること自体に不満は無いのだけど。
「あちらの売り場も見てみませんか?」
今年のトレンドの水着売り場に誘う。去年もトレンドだったし、簡単に見つかるかなって。
そう思ってのことだったのだけど…今年のは何というか、ちょっと開放的だね。
大胆なデザインが多い。まあ横浜のことやパラサイトの件があってイベント自粛だったり縮小だったりあったから、その反動がこういうところに出ているのかな。
ビキニやハイレグ、ワンピースでも背中がざっくり空いてます。逆におへそがとってもセクシーなワンピースとかね。
他にも布面積が少なかったり見えそうで見えない斬新なラインの水着だったり。どこのプライベートビーチで着る予定です?ここはセレブゾーン⁇
見る分には華やかでいいのだけど、これ、深雪ちゃんが着たら大変なことにならない?
「これもいいデザインだが、深雪はもう少し落ち着いたものが好きだろう?」
よくご存じですねお兄様。その通りです。ですからここを離れましょうか。
「――ああ、だが、これならどうだ?」
お兄様のチョイスしたのは今年のトレンドの陳列の隣の列から選ばれた抑えめの、品のいいハイネックタイプの水着だった。
足もパレオで覆われている。これなら首元から胸部まで隠れるし全体的に肌をみせる部分は少ない。
ちょっと大人っぽい色合いではあるけれど、深雪ちゃんなら問題なく着こなすだろう。
ただ――いや、こればかりは試着しないとわからない、か。
昨年とはかなり違うテイストだ。アレは女子高生を意識したモノだったから。年相応を狙いました。
今回はどうしましょうね。お兄様と二人きりで水着で過ごすことなんて想定したことが無かったからなぁ…。
ハイネックもエレガントで素敵だけれど、フリルトップのガーリー系も選んでおきましょうかね。
…たぶんだけど、深雪ちゃんにはこっちの方が危険度は下がると思うのですよ、とこれはこれで凶器的可愛さなのだけどね。
「いいね。可愛らしいデザインだ。良く似合うだろう」
これも試着だな、とまだ視線は次の水着を探している。
前回もそうだったけど、試着は三着選んでからが勝負と思ってませんか?
この二着から選ぶという選択肢は無さそう。いくつか試してみて、一番いいものを、ということらしい。
…流石お兄様。妹のことではどんなことも妥協しない。
次にお兄様の目に留まったのはオフショルダーのデコルテが綺麗に見えるだろう水着だった。
こちらはカラーが黒。珍しい。お兄様が白や水色など明るめだったり暖色系の色以外を選ばれるなど、と思っていたら、
「こちらはカラーが二種類しかないのか」
ああ、デザインは気に入ったけど色が白と黒しかなかったのか。
白の在庫を店員に確認しつつ試着室の確保。仕事が早い。
店員さんは私を見て驚いて固まったのち、ものすごい張り切って案内し始めた。
お仕事思い出してくれてありがとう。
案内されたのは他の試着室から少し離れた特別感のある試着室だ。
これもしかしなくてもVIP用なのでは?空いていたのがここしかなかったとかそういうことだといいのだけれど。
お兄様はなぜかその待遇に頷いていた。
「着替えたら端末で呼ぶから時間を潰してきて」
店員さんを意識して敬語を外して話しかける。
何故だかお兄様がここで待機しそうな雰囲気だったのでね。
女性の試着室の前で待つのは気まずいだろうと提案すると、お兄様はしばし考えたのち、
「そうだな」
またあとで、と手を振ってお別れして個室に籠った。
手元にはハイネックタイプの水着。
大人っぽいデザインで、レースのように刺繍が施されている。下はパレオもついているのだけど、あれ、これ思ったより…光に透かすとはっきりわかる。スケスケパレオのため防御力が低い。
さっき抑えめの品の良い、と言ったけどトレンドと比べたら抑えめ、ってだけでした。
むしろチラリズムがとても刺激される一品です。スケスケでひらひら。
男の人が好きなものが詰まってますね。見えそうで見えない。覗き込みたくなる…じゃなかった。妄想を掻き立てる感じ。オタクの私も大好きですが。
身に付けてみたのだけど、うん、やっぱりね。
なんとなくそうじゃないかな、と思っていたのだけれどこれってどことは言わないがある程度の大きさを越えていると、隠すよりも強調することになりますよね。
はい。なんとなくそうじゃないかなー、と思ってました。
上品なのだけどね。とても美しいデザインなのだけれど、くびれた腰もちらりと見えて、全体のバランスも一部を除きとてもいい。…その一部がエレガントをエロティックにさせてしまっているのが残念ですね。
これ、着用したままお兄様呼ぶの?写真だけ撮って次のに着替えちゃった方が良いんじゃない?
でないと去年の二の舞になりそうなんだけど。
でも勝手に着替えたら着替えたで、お兄様ご不満に思われたりするかしら。
…まだ悲鳴聞こえないね。事件は次の水着に着替えた頃、かな。
とりあえず端末で着替え終わった旨を伝えると、お兄様はすぐにやってきた。
もしや店内に居ました?店員さんと一緒だったから商品の説明受けてた?
…試着20超えないって言っていたけど、それに近いものがあるのでは、と戦慄した。
「ん?寒いのかい?」
寒くは無いですけれど、悪寒がですね。
叫び声を上げられてしまうお兄様には悪いですが早く七草姉妹に見つかっていただきたいという気持ちがひしひしと。
まだ試着室から体は出していない。顔だけ先に出した状態で嫌な予感を覚えて体が震えてしまっただけだから気にしないでいただきたい。
大丈夫と伝えてからゆっくりとドアから出るとお兄様は目を見開いたものの、すぐに全身を確認するよう目を動かしているので、くるりとターンしてみせると、お兄様は困ったお顔。
「…これは人に見せられないな。俺でさえ理性が持たない」
何時か聞いた言葉ですね。
しかも今回は断定でした。持たないと言われても。お兄様の理性はダイアモンド製でしょう?冗談もほどほどにしてほしい…のだけど、お兄様の表情があまりに真剣過ぎて冗談には見えない。
お兄様、だんだん演技力アップしてません?
試着室に戻されました。
次だそうです。これはお兄様的にアウトだったみたい。お気持ちはわかりますよ。はっきり言ってエロスでしたからね。
お兄様は私を試着室に押し込めるとすぐさま扉から離れていった。
押し込めると言っても力づくとかではない、むしろ触れてもいなかった。
けれど気分的にね。封印されたようにドアを閉じられた気分がした。
気のせいだろうけどね。
次はこのフリルトップだね。こっちはさっきのと逆。大きさを隠してくれるはず。
ってことでさっそく着替えてみるのだけど、フリルってそう言えば体型も隠してくれる分ボリューミーに見えるっていうことを忘れてた。
腰の括れがより強調されてしまって、こちらもただの可愛いではなくなっている。
艶めかしい腰のラインからふわふわふんわりフリルを越えると白い足がすらっと覘いて…どうしても修飾語にエロが付くね。エロ可愛い。
でも可愛いがついている分さっきよりもエロさは低め。五十歩百歩だけども。
フリルがふわふわして見えるのがより触りたいとかめくりたいとか欲を掻き立てる逸品です。危険危険。
おかしいな。これなら年相応で可愛らしくなるはずだったのに。
あれかな。去年よりサイズがアップしたことが原因か。
もう一度お兄様へ連絡を。
到着して私の恰好を見て一言。
「可愛い、んだが…困ったな。腕の中に閉じ込めたら最後、逃がしてあげられそうにない」
わあ。お久しぶりですバッドエンドルートに行きたがるお兄様。目が若干暗いですよ。良くない傾向です。戻ってくださいませ。
おかしい。お兄様ってどっちかって言うと見守る系でしたよね?
どうして監禁ルートが開示しそうになるんでしょう。と言っても言葉だけですからね。
実際そんなこと無いのでしょうけど、危険思考はしまっちゃいましょうね。
「次、着替えるね」
「ああ」
今度は送り込まれる前に自分から中に入りました。お兄様の視線が、扉が閉まるまで切れなかったことが気になりますね。
可愛い系の方がお好み?
さて、お次はオフショルダーの白い水着だね。黒とはまた印象が違うけれど、ふわっとしたぼやけた白ではなくかっちりした白。
申し訳ない程度のフリルがついていてこちらも胸を隠すタイプ。スポーティーさがあるので見る限り安心できる。
着てみても、うん。これならデコルテもすっきりしていて綺麗に見える。それなのにエロさがない。
括れた腰は隠しようも無いから仕方がないにしても、この白のお陰だろうか、健康的な体つきに見えなくもない。
白い肌にも負けない白ってすごいね。色味が違うだけでこんなに印象が違う。
…さっきまでの水着のせいでマヒっているかな。ちょっとわからなくなってきた。
これも肩丸出しなんだけどね。今までで一番深雪ちゃんの裸体が晒されてます。
前のあの二着がよくなかった…。とっても似合ってたけどね!
よし、お兄様に連絡を――と思ったら絹を割くような乙女の悲鳴が。
ラブイベント発生のお知らせですね。お兄様何も悪くないのに悲鳴をあげられてしまうなんて。
流石ラノベ主人公。その宿命からは逃れることができない。
でも彼女たちに対しては説明すれば問題ないにしても周囲から変に勘違いされてないかな。水着売り場に男性がいるだけで変に見られるからね。
しかもそれがたった一人で、後輩女子に非難されているところに先輩から悲鳴まで上げられて…。
私たちについていた店員さんがいてくれているはずだから問題にはならないだろうけど、お兄様の心労は計り知れない。
こんなに騒がせてしまったのだからどれか売り上げに貢献しないと…って、私、この水着お兄様が来る前に着替えていいのかしら。
端末に、悲鳴が聞こえたがどうすればいいか送ると、お兄様はすぐに迎えに行くとのこと。
着替えるかどうかについてもそのままでとなっていた。着替えず待機らしい。…こんな時でもきちんとチェックはする、と。
「すまない、待たせた」
「…大丈夫ですか?」
「うん、いいね。それなら動きやすそうだ。先ほどのものと一緒に購入しようか」
あれ、今の「うん」はお兄様を心配しての大丈夫かの質問に対してではなく私の姿にでしたか。
というかアレも購入するのですか!?流石にワンシーズンに二着も必要ないと思います!…あ、お店への迷惑料?……仕方ないのか。
どちらもトレンドのものではないから来年着てもおかしくないだろうし。来年に水着を着る機会が果たしてあるかわからないけれど。
お兄様の待つ扉一枚越しで着替える気まずさったらない。お家で何度も体験している?お外はまた別だし、そもそも家だっていつも、何時までも慣れない。
アレは修行だと思って耐えているだけ。
けれどこれ以上七草姉妹に構われて大変な思いをするくらいなら私の羞恥など大したことじゃない。
というより扉の前で何やら騒ぐ気配が。
これは…泉美ちゃんが来たかな。着替え終わって出ていいか内側からノックすると、お兄様からいいよ、とお声がかかった。
出ると、あら可愛い。私服の泉美ちゃんが。奥から慌てた様子の七草先輩も来ましたね。
泉美ちゃん…お姉さま方の視線を振り切ってここに来たのかな。そのパッションは凄いと思うけど。
「泉美ちゃん、それに七草先輩も。こんにちは」
何を言って良いかわからなかったのでとりあえず挨拶を。
「このような場所で出会えるなんて、運命ですね深雪先輩」
そうですか。その理論で言うとお兄様も該当してしまうと思うのですがね。
まあ間違いなく運命か。お兄様と七草先輩のラブイベントですからね。合ってる。泉美ちゃん正解です。
「泉美ちゃん!暴走しないの。…騒がしくしてごめんなさいね、深雪さん」
「いえ…。それよりも、場所を移動しませんか?」
ここは水着売り場の試着室ですし、こっちの方が先輩たちのいた一般エリアとは違うようで気まずいので。
「なら俺は会計に行っているから先輩たちと一緒にいてくれ」
「わかったわ」
もう本当に買うのかなんて余計なことは口出ししません。そんなことを言って泉美ちゃんを刺激すると大変そうなのでね。…お兄様にいらぬ浪費をさせてしまったことが心苦しい。
そんな気持ちは押し隠して、先輩たちと入口へ移動。
「こんにちは香澄さん」
「…こんにちは」
「香澄ちゃん!先輩にその態度は」
「気にしないで。今日はプライベートなのだから」
泉美ちゃんが双子のお姉さんを叱るけれど、こちらは気にしてないからね。懐かない猫ちゃんは見ている分にはとても可愛らしいから。
先輩は水着を購入したのかな。お嬢様のお買い物って買ったらその場で持ち帰らず発送が当たり前だろうから、買ったかどうかはわからない。けど、お兄様と同じ理由で買っていそうだけどね。
「それにしてもお久しぶりです先輩。四月にはお会いしましたが、あの時よりずっと大人びていて…。大学生ともなると雰囲気も変わるのですね」
「そ、そうかしら?」
「ええ。メイクも変わられたのですね。先輩によくお似合いです」
高校でもメイクはしていたけれど、その時と比べると華やかさが違う。肌の色も明るいけれど健康的で瑞々しい。プライベートということもあるんでしょうけどね。
「あ、あの!深雪先輩の私服姿もとても素敵です!」
「ありがとう。泉美ちゃんも、いつもの制服姿と違って活発的な恰好ね。可愛いわ」
「あ、ありがとうございます」
うんうん、女子の会話って感じだね。挨拶がてらの褒め合い。
でもお世辞じゃない真実だから苦にならない。可愛い綺麗と口にできてすっきりです。
香澄ちゃんもボーイッシュでカッコ可愛いけど触れてくれるなオーラがね。無理に褒めないよ。嫌がることはしないから安心して。
こっそりと泉美ちゃんには伝えるけどね。身近な人褒められると嬉しいよね。泉美ちゃんもニッコリ笑顔。
その様子をいぶかしんでいる香澄ちゃんと、「なぁに、内緒話?」とにんまり揶揄いモードの先輩。
そこへお兄様が手提げを持って登場しました。水着二着が随分コンパクトですね。手を伸ばすけど手を繋がれただけで何も持たせてもらえませんでした。
…繋いでほしかったわけじゃないことわかってましたよね?
ほら、見て下さい七草姉妹のそっくりな呆れ顔。
…泉美ちゃんは若干目の色が違ってたけどね。
「とりあえず、お茶でもいかがでしょう?」
どこかで落ち着いて話しましょう、との私の提案に否定の言葉は上がらなかった。
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