妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
さて、九校戦へと向かう朝、学校に集合していた。
大型バスとエンジニア用の作業車の二台。
原作では深雪ちゃんのごり押しが通って作業車がとてつもない快適な車に変わっていたけれど、そんなことはしてません。
その方が何かと便利かもしれないけれど、そんな特別扱いをしてもお兄様は喜ばないし、周囲との軋轢を生む原因を作ることをわざわざしなくてもいいかな、と。
生徒会予算から出るわけじゃないとしても印象が良くないしね。
一応聞いたのですよ、作業車って不便ですか?って。お兄様曰く、軍用車より広くて快適だそうです。…比べるものぉ。
作業車でも十分色々揃っているし、現地で椅子や机はレンタルできることは調べがついているので、原作通り作業車横でお茶会はできる。
よって、私は個人の我侭を通さないようにした。
花音先輩はご不満のようでしたけどね。今年こそ五十里先輩と一緒に移動できると思っていたのに、私が賛同しなかったので意見が通らなかったのだ。
一応一言忠告するだけで引き下がったのは風紀委員長が表立って風紀を乱すような真似はできなかったかららしい。
その判断ができるようで安心したけど、鬱憤は溜まっている模様。…これ、やっぱり部屋の交換させられそうだな…。
対抗策は用意したけど果たして効果があるかどうか。
と、ふわり、と見えない気配に押されるこの感覚はピクシーですね。お兄様が付き添いながら移動している。
ほのかちゃん達に断りを入れてからお兄様たちの方へ。
部活連の人たちとエンジニアの人には説明したけれど、ピクシーにはお茶くみだったり、整理だったり忙しくしているエンジニアグループの手助けをしてもらうため今回同行してもらうことになっている。
でも知らない選手、特にお兄様をよく思っていない香澄ちゃんには不可解に思えてしまうだろうからフォローを入れませんと。
「ピクシー、おはよう。今日からしばらくよろしくね」
「おはようございます・よろしくお願いいたします」
今日は魔法は使ってないみたいで表情はぎこちない。だけどするん、と腕に絡まる触手が彼女が機嫌が良いことを伝えてくれる。
うっすら微笑むピクシーに満面の笑みを浮かべてしまう私の反応は大げさに見えるのだろうな。
お兄様もちょっと呆れ顔?というよりやれやれ仕方ないな、といった表情。
「こんなに一緒にいる機会ないから、楽しみに色々準備してきたのよ。貴女用に作ってきた服もあるの。あとで着替えてくれると嬉しいわ。サイズが合っているといいのだけど、ちゃんと調整できるから付き合ってね」
いやー。思いついたのが一週間前だったから大急ぎで用意したよね。ピクシーに似合う夏用のお洋服。
いつものメイド服もいいけれど、もうちょっと飾り気も欲しい、ということでメイド服を二点ほど。エプロン部分は付け替え可能な3パターンを用意した。
どれもクラシカルなロングスカートタイプなんだけどね。ボディは隠さないといけないので。ミニスカ、膝丈はNG。ちょっと残念。
そっちは水波ちゃんに着てもらうだけで我慢だ。あれ、実用には向かないからね。ただのファッション。
お揃いにしたから嫌がる水波ちゃんも押せば行けると思うんだよね。もちろん着用するのはお兄様がいない時限定だけど。
「…まさかとは思うが昨日寝るのが遅かったのはその用意をしていたからか?」
「え?!…それだけではないのだけど」
邪なことを考えていたらお兄様からちょっと低めの声で質問が。こ、今度こそ呆れられてる!?
いえ、でもこんな機会じゃないと採寸合わせられないので!
「ごめんなさい?」
ちょっとあざといかな、と思うけど上目遣いで謝罪をしてみると、お兄様は大きなため息。うわぁん!本当に呆れられた!?
「…お前がピクシーを可愛がっていることは知っていたつもりだが、まさかここまでとは。…ウチはペット禁止だぞ」
いつぞやの設定ここに持ってきますかお兄様。
というか普通一軒家はペット可だと思うし、そもそも彼女は3Hです。ヒューマノイド・ホームヘルパー。家庭に一台あっていいヤツ。…人型はお金持ちの変わった趣味だけどね。
でも、こういうのはノリだから。
「ちゃんとお世話するから、いいでしょ?お兄ちゃん」
「っ………絶対にダメだ」
ピクシーもノリが良く、私の隣でお兄様を見上げたけれど、お兄様は顔を背けて拒否。残念。でも思ったより葛藤された?お兄様もノリがいい。
というかピクシー、そんなこと何処で覚えたの?芸達者。いい子だねー。よしよし。
寸劇はそれくらいにして。
なんだか背後でめらめらとしたオーラを感じてですね。振り向くとじっとこちらを見ている泉美ちゃんと、それに引いている香澄ちゃんの図。
おかしいな。香澄ちゃんがお兄様に対して引いていたはずの場面だけど、双子の姉妹に対して引いてません?
まあ、香澄ちゃんがお兄様に偏見持つのよくないな、と思って私がピクシー大歓迎したら大丈夫かな、と行動してみたのだけど、なんか思ってたのと違う。
泉美ちゃんが引き留めようとする香澄ちゃんを引きずりながらこっちに来た。
「み、深雪先輩!」
「おはよう泉美ちゃん、香澄さんも。泉美ちゃんは気合十分ね」
とりあえずボケてみるね。これで緩和してくれれば儲け、程度。
けどこれが意外に効果があったみたいで、微笑みかけるだけで泉美ちゃんは強張った表情がはにゃん、と柔らかくなりましたね。よしよし。
「おはようございます!」
「おはようございます…」
たいして香澄ちゃんはお疲れだね。対照的な双子の姉妹ちゃんだ。
「じゃあ俺はピクシーを運んでいくから」
「ピクシー、またね」
お兄様が二人に軽く挨拶をしてからピクシーを連れて作業車に行ってしまった。
見送ると、袖をツンツン引かれる感触が。振り返ると泉美ちゃんが引っ張ったらしい。名残の手が戻っていく。
「あ、あの!なぜ3Hを連れて行くのですか?!」
落ち着いたように見えたけど、興奮気味に聞かれた。
だから落ち着かせようと、落ち着いたトーンで返す。
「そのことなら、私から提案したの。去年の様子を見てエンジニアチームの方々がとても忙しそうだったから、手伝える手がもう一つあったらいいなと。人員はこれ以上割けないから。それに昨年は色々トラブルもあってね。警戒の目は有った方が良いかもしれないということになったのよ」
昨年のような工作員が今年も来ないとも限らない、とね。
原作上そういった工作員は来ないはずなのだけど、用心する理由にもってこいだったので。
軍の人が信用ならないんじゃなくて自分たちでもできるだけ自衛をすべきだと進言。だけど生身の生徒がずっと警備するのは難しいから3Hを、となったのだ。
昨年のトラブルはあまり公にはできないけれど、この二人ならお姉さんから聞いているだろうから内緒だけど、と二人の間に耳打ちで伝える。
一応生徒会役員と、風紀委員でもあるわけだからね。知っていてもいいかと思ったので。
意味が分かれば落ち着くかな、と思ったけれど泉美ちゃんのご不満です、という拗ね拗ねの表情が戻らない。
「どうしたの?泉美ちゃん。何か嫌なことでもあった?」
「…いえ、別に」
「ふふ、もしかして撫でられてるの羨ましくなっちゃった?」
冗談交じりで言うと、パッと顔を赤らめて俯いてしまった。
あらぁ…本当に羨ましかったの?私はお姉ちゃんではないけれど。
「泉美ちゃんも、九校戦、頑張りましょうね。貴女の実力ならきっといい結果を残せるわ」
期待してるわね、と頭をなでなで。
「!!は、はい!必ずや深雪先輩のご期待に応えてみせます!!」
わぁ。変わり身が早い。ぶんぶんしっぽ振ってるね。幻影じゃなくてなんか本当に見えてる気がする。
隣の香澄ちゃんが申し訳なさそうにこっちを見てるので苦笑で返しておくね。
双子だけどちゃんとお姉ちゃんしてるんだ。
「香澄さんも、初めての競技だから他の競技に比べて予想が付きづらいけれど、貴女の応用力は目を見張るものがあるわ。気負わずいつも通り頑張って」
「…はい。ありがとうございます」
この間会った時の蟠りがあるかな、と思っていたけど予想してたよりあまり感じないのは、そのあとあっただろう七草先輩のフォローがよかったからかな。
「それと、あの」
「うん?」
「この間は、騒いでしまってすみませんでした」
ペコリ、と頭を下げる香澄ちゃん。この間ってあの騒動のことよね。七草先輩水着事件。
あれから結構経つ。香澄ちゃんはあの件に対してずっと怒っています!と主張するように視線を外されたりしてたと思ったけど、本当にどうしました?
「お姉ちゃんに恥をかかせた、と思って突っかかっちゃって。先輩は別に悪くなかったのに、八つ当たりしてしまって」
あら、あらあら。反省をした、と?やっぱりお姉ちゃんにうまい具合に諭されたのかしら。
しぶしぶ謝っているようには見えない。
ただこの謝罪って私に対してだけかな。お兄様は今席を外されているからわからないけれど、真剣に謝罪してくれているようなので。
「謝ってくれてありがとう。こちらは気にしていないから大丈夫よ。不用意に私が兄さんを一人にしてしまったことも原因だから。あの時の謝罪だけで充分。それよりも七草先輩本人はどうだった?不快に思われてなかったかしら?」
「姉は大丈夫です。むしろあんな大げさに騒いでしまったことを反省しているようでした」
「先輩の反応は無理も無かったと思うわ。私もいないと思っていた兄がいたらびっくりすると思うもの」
あんな防御力も無い薄くて面積の小さい装備でお兄様に立ち向かうなんてできるはずもない。びっくりして悲鳴を上げてもしょうがないと思うから。
でもよかった。この件に関して二人ともに遺恨は残っていないよう。安心しました。
「それで、あの…ボ、私のこと、さん付けなんかじゃなくていいです、から。泉美と同じでお願いします」
…あら、あらあらあら。
「香澄ちゃん、て呼んでもいいの?」
「…深雪先輩のことは、尊敬、してますから」
あらあらまあまあ!
香澄ちゃんが!デレてる!!どうしましょう、可愛い!
どうしてそうなったの?!何かそんな風に思ってもらえるイベントあった⁇
記憶にないのだけど、とりあえず。
「そう言ってもらえて嬉しいわ。これからもよろしくね、香澄ちゃん」
急に頭を撫でるのはよくないと水波ちゃんで学習済みなので下から手を差し出すと、香澄ちゃんはおずおずと握ってくれた。
おお、懐かなかった猫が急に触らしてくれた感じ。
嬉しくてちょっとはにかんでしまいますね。
そうしたら急に恥ずかしくなっちゃったのか、香澄ちゃんは顔をバッと背けてしまった。
でも手は振り払われなかったのでセーフ?
ずっとここにこうしているわけにもいかない、というかここは作業車前なので邪魔になってしまうから大型バスへ移動しながら。
「香澄ちゃんに尊敬されるようなことをした覚えがないのだけど、何かしたかしら?」
「…ロアガンで、アドバイスを」
ああ、そう言えばしたね。理由が気になって訊ねてみたらあっさり教えてくれた。
でもアレ香澄ちゃん一人にじゃなくて全体にだったと思うのだけど。
「それに、最初の滑りを見た時、すごいなって…」
恥ずかしそうにぼそぼそと。
あれから自分がコースに出てみてあんなにうまく操作ができなかったことに愕然としたらしい。
いとも簡単にやってのけたように見えたのにとんでもない技術だったのだ!と。
…あれか。スポーツ選手に憧れてやってみて、あれは凄い技だったんだ!と驚いちゃったわけだ。
すまない。深雪ちゃんはチートなもので、あっさり何でもできちゃうのだ。
アレを手本に練習してたんだって。
あの慣らし運転のタイムをまだ誰も抜けなかったらしい。
だけどあの時波は最小限にしてたから条件が良かっただけの気がするのだけど、ここで水を差すのも良くないかな。
憧れにケチをつけるのってやる気をそぐことになるからね。
「香澄ちゃんに映像を見せてもらいましたが、深雪先輩はまるで水の女神のように水の抵抗などものともせずコントロールされていて…。的を撃ち落としている姿も、とっても素敵でした」
うっとり、と泉美ちゃんが見つめてくる。うん、ありがとうね。でも水の女神って。運動着で女神?
まあ美人って何を着ていても美人だからね。気にしないのか。
「参考になったのならよかったわ。さ、そろそろ私たちもバスに乗りましょうか」
雫ちゃん達が迎えに来てくれている。もう出発時刻が近いようだ。
私が乗り込むのを、お兄様が見守っているのをミラー越しに見つけたので、鏡の中のお兄様に微笑み、それを受けたお兄様が目を細めたのが見えた。
バスがゆっくりと出発した。
今年の九校戦が、始まる。
事故も事件も不穏な空気もなく――と言いたいけれど、花音先輩はぐちぐちと婚約者と長時間離れ離れにされたと不満を口にしていたので完全に無かったとは言えないのかな。
偶には離れてその時間さえ愛おしめれば良いと思うのだけどね。離れた時間が愛を育む、的な。…というか学生のうちにあまりべったりすぎると周囲とのコミュニケーション取れなくなっちゃいますよ。
到着してバスを降り体を伸ばす。ずっと座りっぱなしだったから体が固まってしまっていた。前世で乗った夜行バスに比べれば全然乗り心地が良いのだけどね。
荷物を下ろし終えたお兄様たちと合流。前夜祭パーティー会場へ足を踏み入れた。
去年は諸事情で一緒に入ることはできなかったからね。ええ、諸事情によって。
今年はおかしな作戦はないのでそんなことしません。正々堂々勝負します。
それにしても、やっぱりお兄様の制服に描かれたエンブレム…うん。よくお似合い。カッコイイね。思わず頬も緩んでしまうというものだ。
「…もう四か月経つんだがな」
「それでも、よ」
お兄様は私の視線の理由に気付いて苦笑する。
「あの時は着心地が悪そうだったけど、今はしっくりきてる。――よく似合ってるわ」
カッコいい、と改めてうっとり見つめてしまう。
背後で水波ちゃんが、また始まった、と苦笑しているのがわかる。
苦笑で済んでるのは、私が幸せそうだからいいか、ということらしい。うん、私は今有頂天です。幸せ。
「私もそう思います!」
「私も」
ほのかちゃんと雫ちゃんが参戦してきた。そうだよね。去年を知ってると猶更そう思うよね!
そしたらエイミィちゃんもスバルくんも参加してきた。彼女たちも去年は違和感あったって。
そうそう、心の中でだけだけどスバルのことをスバルくんと呼んでいます。ちゃん付けもいいのだけど、くんや様をつけて呼びたくなるよね。
本人の魔法特性のためのキャラ付けらしいけど、堂に入っていて様になってる。
続々と集まる女の子たちに対し、お兄様はお一人。…着々とハーレムを築いてます。
おかげで男子たちは遠巻きに見ている。
吉田くんくらい来てくれてもいいと思うのだけど、まあ女の子が集団でいると近寄りがたいよね。
お兄様が気にされてないようでなにより…と思ったけれど、そんなことないみたい。
見た目とは裏腹に居心地悪いのか、周囲を見回して――お、一条くんを見つけましたか。
その横には吉祥寺君と後ろに女の子たちがずらり。
三高女子もレベル高いよねー!中でも一色愛梨ちゃん、今年も輝いてるー!!縦ロールのボリュームが増しましたか?さらに磨きのかかった美人さんになられた様子。綺麗。テンションが一気に浮上しました。
でも金髪を見るとリーナちゃんを連想してしまう。リーナちゃん、元気かな。
そんなことを考えていたら、一条くんがお兄様目掛けて歩き出した。
お兄様もこの場を抜け出すチャンスだと思ったかな?一条くんに向かって歩み寄る。
ついていったらお邪魔かな、と思わなくもないけれどちらっとお兄様に視線を向けられた。あ、行きますー。
傍に居ないと不安ですか?何かしでかす予定は無いし、水波ちゃんも傍に控えてくれているんだけどね。
お兄様に望まれてついていかない選択肢はないので。
ついていくと、一条くんの視線がお兄様からこちらに移った。
制服の色が映ったかのように、頬が赤いですね。
「…お久しぶりです、司波さん」
「ええ、ご無沙汰しております、一条さん」
去年のコンペ以来だねー。
元気そうで何より。でもなんでそんなに緊張するの?そんなに怖いオーラ放ってます⁇
不思議に思って首を傾げると、うっ、と詰まったような声が一条くんから漏れ出たけれど、大丈夫?ここに来るまでのバス酔いですか?(すっとぼけ)
この反応に対してどうしたモノか、とお兄様を見ればお兄様に手招きされた。
もう少し近こう寄れ、です?行くけども。
そしたら腰を抱き寄せられた。…お兄様?
そして正面では一条くんが何やらショックを受けている模様。…今何かの勝敗がついた感じ?
「…横浜以来ですね。変わりなさそうで何よりです、司波達也君」
「そちらも壮健そうで何よりだ、吉祥寺」
吉祥寺君がこの事態を何とかせんと、介入するけどこちらはまるで社会人の挨拶だ。
二人ともすでに大人の社会で活躍しているから堂に入ってておかしくは無いのだけど、制服姿の学生に囲まれた中での挨拶だと思うとなんか不思議な感じ。
というかこの会場の空気がですね、なんか一条くん可哀想、に傾いている気がするのは気のせいかな?もしや皆彼の片思いを知っているのだろうか。
というか、気づいたと言うべきか。
ずっとお兄様の回されている手を睨みつけてますものね。ぎりぃしてますものね。
…お兄様、何故にこんな挑発しました?もう彼らは兄妹だって知ってますよ。
今年作戦はないのではなかったの?こんなことで一条くんの精神が乱れるとも思わないけど。揶揄って遊んでる?お兄様Sっ気あるから。
「そして一条も。横浜では大活躍だったな。流石はクリムゾン・プリンスだ」
「それ、止めてもらえないか」
お兄様の言葉にようやく視線が戻ったけれど、一条くんは不満顔。
お兄様は揶揄ったつもりはないと否定するけれど、そもそも仰々しい二つ名を呼ばれるのが嫌らしい。
お兄様もあっさり受諾。普通に一条呼びに戻した。
なんていうか、高校生らしくていいよね、一条くん。十師族ながらも真っ当に青春送っている感じ。
「ところで司波…っと、この呼び方で構わないか?」
「無論だ」
…あれ?お兄様との会話ってこれが初めてでしたっけ?とりあえず男子だけで話すのよね?お兄様、この手を離しませんか。
ぺしぺし、と手を叩く。うん、外れましたね。ペコっと頭を下げてから失礼して…どこ行こう?と思っていたら視線が。愛梨ちゃんだ!
にっこり笑ってから近寄ります。わぁい。美少女からのお誘いだ。ありがたい。
「こうして挨拶するのは初めてですね。改めて、わたくし一色愛梨と申します」
「ええ、こうして挨拶させてもらえるなんて、嬉しい限りです。司波深雪と申します」
ニコニコしていたら、愛梨ちゃんがちょっぴり拍子抜け、というか肩から力が抜け落ちた。
ん?どうしました?
「いえ、昨年見たあなたはとても神々しかったので、もっと話しかけづらい方かと思っておりました」
あら、メッキ剥がれちゃった?いえ、ガワが深雪ちゃんなのでメッキと呼ぶにはふさわしくないのだけれど、この場合中身が残念だとバレたと言った方が正しいのか。
「神々しいだなんて。私の方こそ、一色さんは昨年お見かけした時から気になっておりました。貴女にはスポットライトが当たっているのかと思うくらい眩しかったので」
麗しの金髪縦ロール。一人だけ世界観が違いましたものね。思わず魅入っちゃってました。今年もすぐに見つけられましたし。
そう言うと、彼女は頬に朱を走らせてそっぽを向いて。
「それは、こちらのセリフです。…貴女の美しさは他を圧倒する美しさですもの」
…かっわいい…。どうしよう、とってもかわいい。
こっちまで照れが移ってしまってもじもじしてしまう。
「…深雪」
「…愛梨」
おっと、雫ちゃんが助けに来てくれました。ありがとう!この空気どうにかしてください。
愛梨ちゃんにもお友達が来たみたい。
「深雪は本当に、綺麗なモノに目がない」
「うっ…」
雫ちゃんからのジト目が心に刺さる。申し訳ない。
「あまり移り気が多いと、束縛されちゃうよ」
「誰に?!」
ちょ、雫ちゃんが脅してくる!
「ちなみに私もそのタイプかも?」
嘘でしょう?雫ちゃんそんな雰囲気無かったのに?!
「今気づいた。深雪が他の子に熱中してるの、面白くない」
……わぁ。拗ねてる雫ちゃんだぁ。
気付いたら抱きしめてた。かわいい。ぎゅっとしたくなる愛らしさ。
「な、なにやってるの雫!深雪も」
おお。ほのかちゃんもやってきたね。お兄様ウォッチングはもういいの?
ざわつきでそれどころじゃ無い?ああ。視線がこちらに集中しているね。邪魔してごめんね。
「だって、雫が寂しがってたから」
「…深雪、それ騙されてるよ。雫もVサインしないの」
あら、雫ちゃんに騙されたの?でも嬉しかったのでもーまんたい。
雫ちゃんたちとこの場を一旦離れてドリンクでも、と周囲を見渡せば、愛梨ちゃんは友達たちとおしゃべりしてた。
良かった、放置した形になっちゃったから機嫌悪くなってないか心配だったのだけど、なんともないみたい。
すすっと水波ちゃんがグラスを渡してくれました。ありがとう、ナイスタイミング。丁度のどが渇いていたところです。
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