妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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スティープルチェース編⑯

 

深雪視点

 

 

朝起きたらお兄様が部屋に居なかった。すでにいつもの朝練にお出かけになったらしい。

ベッドは乱れておらず整えられていた。お兄様きっちりしすぎ。

そして私はと言えば…思ったより乱れてないようでほっとする。

とはいえいつも自身のベッドだってそんなに乱れたのを見たことはない。

だからいつもと変わりないように見えるのだけど…

 

(お兄様と同室だからだろうか…どこからもお兄様の匂いがする)

 

いや!違うから!私が変態とかそういうのじゃなくてですね?!深雪ちゃんの鋭い嗅覚がお兄様を捉えてしまうというかですね!

…って、誰に言い訳をしているのか。

いいの、わかってるの。とても混乱しているということは。

良かった。お兄様が部屋に居なくて。

ベッドの上で悶えている姿なんて見せられるわけがない。

せっかく起きたのだから、私もいつものルーティーンをしよう!と運動着を取り出して着替える。

お兄様のように外に出て運動はしない。出るところも入るところも見られてしまうと危険だからね。

ってことでストレッチと筋トレを少々。筋トレと言っても筋肉は付かないのだけどね。

本当、不思議な体です。四葉の神秘。

ある程度体を動かすとポカポカと内側から温まってくる。そして運動量を増やせば汗が滲んだ。

室内でも効率よく運動すると汗を掻くほど運動できる。

そろそろお兄様が戻ってきてしまうだろうからその前にシャワーを浴びてしまおう。

こんなところでラッキースケベの呪いが発動してはお兄様の疲労に繋がってしまうから。

急いでシャワーを浴びて着替えてシャワー室も綺麗にして。これならすぐにお兄様が入っても問題ないね。

うんうん、と満足していたところにノック音。お兄様だ。

 

「おはようございます、お兄様。おかえりなさいませ」

「おはよう深雪。よく眠れたかい?」

「ええ、ぐっすりと眠れました」

「それはよかった」

「お兄様はいかがでしたか?」

「問題ないよ」

 

…んん?

ちょっと深雪ちゃんのアンテナが引っかかりました。

 

「…お兄様、詳しく」

「詳しく、と言われても…問題はなかったよ」

 

お兄様は普通に答えているつもりだろうけれど、答え自体がおかしいことに気付いていらっしゃらないご様子。

…まさかと思ったけれど、私やっぱり何かやらかしたのでは?女の勘がビンビンと。

 

「お兄様、正直にお答えください。昨夜、私に起こされてはおりませんか?」

「そんなことは無かったな」

「では今朝方は?」

「…深雪さん、先にシャワーを浴びてもいいかい?」

 

…つまり朝方何かあった、と。

お兄様、まさか深追いされると思わなかったのか動揺しましたね。一体何をしたの私?!シャワーを浴びたばかりなのに冷や汗が流れる。

 

「どうぞ」

 

平静を装って答えたけれどお兄様は不審に思われなかっただろうか。

そのままシャワー室に消えていくお兄様の姿を見つめてから、昨夜同様縫いかけの生地を取り出してちくちくちくちく。

落ち着け、落ち着くのです私。…まさかとは思うけど、原作のアレをやってしまったのではないか!?

でもあれって大会二日目とかじゃなかった?部屋が変わった初日はぐっすり寝たはず。

そんな描写があったはずだし、私にもお兄様を温めてあげなければ、なんて行動を起こした記憶が無いのに、どうしてこんなに不安になるのか。

…原作に書かれてなかっただけで、お兄様連日あんな目に遭っていた、とか?そしてたまたま、あの日だけ深雪ちゃんの記憶に残っていた…?

 

(まさか、まさかね…?)

 

でももし、そんなことになっていたのだとしたら。

ただでさえあんなにお仕事一杯で疲労していたのにその上、寝不足まであったのだとしたら――

 

(だから、なの?あのぶっ飛んだ思考になってしまったのは)

 

あんな、ばれても押し付ける相手がいればぶっ壊してもよくね?な思考になっていたのは、ただ単純に仕事が重なりすぎて疲労が蓄積されてとかそういうことだけでなく、連日寝不足が原因!?

…あり得る。だって、あれだけ理性的に考えられるお兄様が、あんな大胆で無謀ともとれる策を取ろうとするなんておかしいもの!

そんな大それたことしたら、いくら軍だって尻拭いしてくれたかわからない。きっと原作より大変な作業になっていたことだろう。

強硬派だって地形変えるなんて、そんなことやってない!って言い張るだろうからね。その通りですよ。魔法の痕跡どうやって消すの。

…できなくはないけどね、誤魔化しくらいいくらでも方法あるけども。それでも無茶無謀の策だ。

そんなことは絶対にさせられない。そんなことしたら、私が手綱を握れていないことになってしまう。それだけは避けなくては。

なんて考えながらチクチクしてたら黄色いバラが完成しました。いつの間に。

 

「もうバラが完成したのかい?」

「っ!お兄様、また気配を消して!妹を驚かせて楽しいですか?」

「困ったことに驚いたお前を見るのは好きみたいだ」

 

ううう、お兄様が開き直ってしまった。

シャワーですっきりして頭が整理されたのかな。さっきまで見えた動揺が全く見られない。

 

「それは何とも悪趣味な」

 

切実に止めていただきたい。

けどね、お兄様のお顔見ると、…その言葉が口から出ないんだよねぇ。

さて、朝食まで時間もないことですし、覚悟を決めよう。ダラダラ伸ばしてもいいことなんて何もない。

お兄様も言っていた。知らない方が良いこともある、は嘘なのだ。

知っていた方が先にある不幸を回避する手立てが増えるのから。

 

「お兄様、お願いします」

 

私の覚悟が伝わったのか、お兄様も佇まいを正して、

 

 

――私の罪を宣告をしてくださった。

 

 

――

 

 

「…私は今猛烈に穴に埋もれたいです」

 

その穴の名前は墓穴っていうんですけどね。

何ですか、お兄様のベッドに潜り込むって。

あまつさえ、抱きついた、と?……刑の執行は早めにお願いします。

記憶も証拠もないけどお兄様が言っているのだから真実だと思うので。お兄様この手の冗談言えないから。

できるならこんなベッド上からではなく降りて床で土下座したい。

お兄様の安眠を妨げるだけでも絶許なのに、抱きついたって…、それって正に原作の深雪ちゃんの謎行動じゃない!

なんで?どうして⁇

この間水波ちゃんと一緒の部屋でも、去年の同室の子とだってそんなことしなかったのに!お兄様相手だと発動しちゃうの⁇

 

「検証が必要なところではあるが、母さんも恐らく経験していたと思うぞ」

「え!?そ、そんなことお母様は一言も――あの時だって寝相が悪いと言って…。まさかそれがぶつかることではなく、」

「深雪が寒がりだったのでは、とも言っていたな」

 

…お母様ぁ、何故その時に教えて下さらなかったのか。そして良いように解釈してくださってありがとう!

 

(でも多分違うんじゃないかな…)

 

そう。ただのオタク的なアレだったのではないかな?!寝ぼけて隠していた気持ちが表に出て愛でてしまう的な。どうだろう?

あれ?それなら水波ちゃんも好きだからそうなってもおかしくないのに。…ダメだ、混乱してる。

 

「とりあえず、今晩はベッドを離して検証してみよう」

「検証!?なんのです?」

「昨夜、俺も深雪がいつ隣に来たのかわからなくてな。ベッドが近かったからそのまま移ってきたのか、はたまた歩いてきたのか――」

「そんなこと、どちらでもよろしいのではないですか!」

「気になるだろう」

 

全然!全く!!というより、

 

「あの、お兄様。ただでさえ忙しいお兄様の安眠を妨害するなんて私は自分が許せません。ですからどうか他の部屋に移させて下さい!雫たちにお願いして床で寝かせてもらってもいいですし、何ならエリカ達のように客室があるのですから他所に移っても」

「ダメだ」

「なぜです?!」

 

即行否定されてしまい、反射的に顔を上げてお兄様を見つめれば、お兄様は少し怒ったような表情をされていた。

そのことに体が硬直する。

 

「部屋を移動する必要性を感じない」

「ですから、お兄様の眠りを邪魔してしまっているのですよ?!」

「深雪が傍に居ない方が落ち着かない」

「っ!!」

「今朝方、確かに俺の眠りは妨げられたが、来るとわかっていれば対処も変わる。相手が深雪なら問題ない」

 

そうかなぁ?!とツッコみたいけれど、お兄様は真面目に次を続けた。

 

「それよりも問題なのは、深雪が傍に居ないことの方だ。昨日はお前が千代田先輩に命じられ部屋を交換させられたことを叱ったが、今思えばこの部屋割になった方がメリットが多い。部屋を勝手に抜け出しても怪しく思われない点もそうだが、何よりここにはパラサイドールが現れる予定だ。――深雪の身の危険をいち早く察知できる」

「あっ!」

 

…そうだ。パラサイト、パラサイドールがいるならば、私の感知能力が彼らの反応をキャッチできるかもしれない。

私はそう捉えたのだけど、お兄様は苦々しい顔だ。

 

「パラサイトとはまた反応が異なるかもしれないが、もし結界を張っていない状態で奴らが動き出したらと思うとな」

 

もしそうなったら――もし、部屋を変えていなかったら、私はとんだ痴態を花音先輩に見せてしまうところだったのでは…?

それは確かに大問題、と顔を青ざめたけど。

 

(いや!いくら知られているお兄様相手だってそれはそれで気まずいですけど!?)

 

お兄様は鋼の精神をお持ちだから大丈夫かもしれないけれど、こちらの羞恥心も考えていただきたい。

だがお兄様はもう決めてしまわれたようだ。

 

「そういうことだ。このまま変更はしない」

「…その検証は九校戦中にしなければならないことではないと思うのですが」

「どうせ現象が起こるなら調べてしまった方がすっきりするだろう」

 

現象って…私の行動は怪奇現象か何かですか。

まあ、理由が解明されて解決すれば早くお兄様も眠れるってことならばその方が良いのか。

だけど、おかしいな。原作での深雪ちゃんはお兄様が寒そうだからベッドに潜って温めてあげよう、ってことだったと思うのだけど、私の場合自分が寒くて、に改変されてる。

元々手足は冷えている方だけれど、…もしや、だから原作でも自分が寒いならお兄様も寒いはず、理論であんなことになっていたのか?

とにかく今晩も変わらずお兄様と同室のまま一緒に寝ることになりそうだ。

 

 

――

 

 

憂鬱だった朝だけど、朝食を食べ終わる頃には持ち直していた。いつまでもうじうじしていてもしょうがないからね。

お兄様が気にしていないのに、いつまでも私が気にしていてはお兄様だって気を取られてしまうかもしれないから。

それに昨年の活躍で、私は一高の代表選手という風に見られている。

それらしく振舞わないと他校に舐められてしまうかもしれない。連覇を繋げて来てくれた先輩方に顔向けできるよう頑張らねば。

 

「ねぇ、ランチは部屋で取らない?」

 

そう誘ってくれたのはほのかちゃんだ。

私への視線の煩わしさに気を使ってくれているのだろう。本当、優しくていい子です。

たとえ視線がお兄様にちらっちら、と向かっていてもその優しさには変わりない。

雫ちゃんと四人で移動していたら、人がごった返しているロビーに友人を発見!

いやー、眩いばかりの美少女はどこに行っても目立つねー。おかげですぐに発見できましたとも!

 

「やっほー」

 

美少女が声を掛けたことで視線はその先へ集中。私たちの方向へ。うーん、そのタイミングでロビーが静まり返ったね。

皆様初めまして。喧噪泥棒です。視線泥棒でもあるかな。

気にせずエリカちゃんに話しかければ、彼女も心得たもので、いつものメンバーで応援に来たよ、と振り返った。

そこにはエリカちゃんの荷物を持った西城くんと、鍵を受け取ってきた美月ちゃんの姿。

心強い応援団です。

お兄様は気を利かせて吉田くんにも声を掛け、部屋ではなく大人数で食べられる、選手団に開放されているカフェテリアに移動するのだった。

 

 

 

着いたカフェテリアは時間もピークを過ぎていたので人はまばらだった。

その僅かな人々から注目を浴びながら席に着く。

 

「あいっかわらずの注目度ね」

「深雪だからな」

 

お兄様ったら、自慢の妹だ、とすまし顔で返す。当たり前だろう、とのこと。

周囲もその反応に異論はないみたいだけど、こっちは居た堪れなかったりする。

こういう時どういう顔をするのが正解なんだろうね。とりあえず淑女の仮面で受け流すけども。

それから吉田くんの、予定時刻より来るのが遅くなった話に移り、美月ちゃんとのメールのやり取りを揶揄われたりとキュンキュン青春ラブなストーリーを聞きながら昼食を。

エリカちゃんに便乗して揶揄うお兄様だけど、お兄様だっていろんな人とコンタクト取れる連絡網お持ちですよねぇ。おまいう案件。

この中で揶揄う権利があるのは西城くんだけのはずだけど、西城くんは美味しそうにご飯を食べています。うん。健康的。いいと思います。

 

「それで、来るのが遅かった理由はなんだ?」

 

ひとしきり揶揄いが終わってからメインの話へ。…お兄様にとって恋バナはアイドリングトークなんだろうか。

エリカちゃん曰く、何でも九校戦へ向かう応援バスの前にデモ隊が現れたのだとか。人間主義者活動の一環みたい。

昨年はそこまでのことは無かったから、USNAでの波がこちらにも押し寄せてきたということなのだろうけど、それは表向き。

しっかりちゃっかり工作員たちが日本での魔法師排除の動きを仕掛けてきていたことは調査で分かっている。

…なんでもうちの子、とんでもシステムを作ったらしくて顔認証でプロフィールをあっという間に洗い出す方法を編み出したのだとか。

そこまでなら普通のシステムのようなんだけど追跡や過去のデータも遡って標的を狙い撃ちできるというのだから恐ろしいソフトを開発したものだ。

流石に工作グループの上層部の人間は、警戒レベルが高いのか洗い出すことはできなくとも、末端までその意識はいかない。

情報の受け渡しっぽい映像から金品授受の証拠映像等わんさか。とんでもない数の爆弾見っけてきちゃってるみたい。

…この子たちがこの技術を悪用して犯罪に走ったら大変なことになってしまう。

監督の私がしっかり手綱を握らなければ、と気持ち新たに皆にお手紙認めました。給金もアップして休暇も取ってもらって、労って。

不満を抱くような環境を作らないようせっせと環境を整えてます。いつもありがとう。お願いだから暴走はしないでね。

と、話が逸れたけど、その情報をこっそり一般の、真っ当なジャーナリストにリークして、あとは彼らに自由に調査させているみたい。

四葉だけで調査なんてしたら情報操作と思われるから、外部委託みたいな形も取っておかないとということらしい。ニュースソースがたくさんあればそれに越したことはないからね。

エリカちゃんはデモ隊の主張を真っ向から否定。

君たちは利用されてるんだー!なんて頭ごなしに言われたら思春期の青少年が反発することくらいわかるでしょうが。

お兄様がエリカちゃんの発言に人間主義の思想側の意見を述べると、苛立ちの矛先をお兄様に向けられるけど、お兄様が人間主義者の肩を持つわけないでしょう。

それは魔法師だからという理由じゃない。お兄様は世界を破壊する力を持っていながら平和主義者でもあるのだから。

両者の意見を理解しながらも正しいと思う方を選ぶ。ただそれだけ。

お兄様は時折全部破壊しちゃおうかなんて発言もするけど平和主義者ったら平和主義者である。実際OKが出た時以外していないのだから文句は言わせない。

お兄様は暴走スイッチが押されない限り、基本必要以上の戦闘を回避する行動を取る。

要はスイッチさえ押さなければ世界の平和は保たれる、ってことなのだけどね。

四葉を中心に魔法師を目の敵にしている輩がいるからハラハラさせられるだけ。

四葉や魔法師を排除しようとする=私を攻撃に繋がってしまうのでね。すぐにボタンが押せる状態なんですよ。

困ったね。

 

「深雪、どうかした?」

「んー、デザートを食べるべきか悩んでる」

 

最近ちょっと食べ過ぎているような気がして。作ることでストレス発散してたのだけど、作ったらその分消費しなけらばならないからね。

雫ちゃんにそう返すと、雫ちゃんから半分こで一緒に食べる提案をしてもらった。優しい!好き!!

 

「アンタたち見てると平和でいいわー」

「エリカも食べる?」

 

エリカちゃんは見てるだけで十分、と断られてしまった。

まあ今の内ですからね、こんな平和を享受できるのも。

高校三年間くらい青春させてもらいたいものだ。

気が抜けたのなら万々歳です。

ガス抜きに吉田くんは揶揄われずに済んだけど、そろそろ美月ちゃんのこと名前呼びしてもいい頃だと思いますよー。

 

 

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