妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
部屋に戻るなりお兄様と久しぶりの普段通りのハグを。
正常な判断が戻ってきてから初めてなので安心感がヤバい。思わず体の力が抜けていく。
お兄様はそれを危なげなく支えてくれた。
「なんだか、ずっと触れ合っていたはずなのに、久々な感じがするな」
「私もそう思っておりました」
お兄様も同じことを思っていたらしい。互いに笑って体を離す。
それから互いに明日の準備やら寝る支度やらをしてあっという間に時間は過ぎた。
「――深雪は…いや」
お兄様のベッドに二人並んで腰かけて、今日あった出来事を互いに話し終えて、もう寝る空気になった時、お兄様が言い澱む。
「お兄様、もしかしてですが、一条さんのことでしょうか」
「………すごいな、深雪は」
まあ、このタイミングで言い澱むとしたらやっぱりパラサイドール何とかしたい、という話か妹の恋愛事情くらいかと。
前者だったら嫌だなー、と思って後者を選んだら当たりだった。助かった。前者だったら今度こそ力尽くしかなかったからね。
ピンポイントで言い当てられ、お兄様はちょっと唖然とされていたけれどすぐに持ち直した。
「もし一条から申し込みがあった場合、叔母上の打診があると思うか」
「さあ、どうでしょう。叔母様のお考えは私にはわかりかねますので」
正直に言えば、次期当主同士だ。
婚約自体お兄様のことを抜きにしても無い、と思うのだけど原作では申し込まれてましたから、十師族間的には有りではあるみたいだけど。
原作深雪ちゃんにとってお兄様以外はありえなかったからご立腹で突っぱねていたけれど、もしお兄様の件が無かったのなら、――誰と婚姻を結ぶことになるのだろうね。
叔母様的には一条君でもありだと思うのだろうか。
先にも述べた通り、可能性は有りにはありだろうけど、十師族間での次期当主同士の結婚ってあまり推奨されてない気がする。
基本一族の中の誰かと、という身内内での結婚が多い。
魔法の特性は血で継がれることが多いのだからそうなるのも当然だ。外に出したくないというのもあるだろう。
ただ血が濃すぎると劣性遺伝の可能性が出てくるので、多少他の血も混ぜなければとなるのも然り。
私のように、そういうのを超越できる遺伝子操作を受けていれば話は別だけど、普通ならそろそろ他家の血筋を入れる時期とも言えよう。
そうなれば必然的に強い家から求められる、というのもわかる話ではある。
でもね、たとえそうであっても一族の秘伝たる魔法を他家に渡せるかとなるとまた話は難しいのではないか、と思うわけで。
十師族はけして仲良しこよしの一致団結している組織ではない。
特に叔母様世代は。というか七草だね!あの一族が引っ掻き回す。
七宝との諍いも、四葉との軋轢も原因は七草だ。
九島の古式魔法師とのトラブルも、この後で揉める事件に繋がるけど、それはそもそも揉める種があって、その始まりが原因だから。彼らだけが悪いかと問われると、伝統派と名乗る集団の考えの方がいけ好かない。
…と、話が逸れたね。なんだっけ。
あ、そうだ。結婚だ。
とはいえ深雪ちゃんの結婚については叔母様が初めからお兄様用に造った時点で、お兄様から拒絶されようが何だろうが押し付ける気だったのだろう。
お兄様にとって深雪ちゃんは、四葉からお兄様が離れないように打ち込まれる楔だから。
原作では深雪ちゃんがお兄様を求めたから、お兄様は様子見で婚約者の座に一時的に身を置き、最終的に自身の感情に気付き、正式に婚約者に収まる。
つまり、深雪ちゃんから迫らないと妹は結婚対象の選択肢にも入らないのだ。彼にとって深雪ちゃんは守るべき大事な妹。恋愛感情を抱ける相手ではなかった。
しかし――そう、深雪ちゃんが求めたから。
それが無ければお兄様が妹を婚約者に選ぶわけがない。
四葉がいかに非常識であろうとも、お兄様はそういったところは健全思考だ。
血の繫がった兄妹なんて、たとえ遺伝子操作で二人の間に作られる子供に問題なかろうとも、倫理的にも世間的にも大問題なのだから。
考えれば考えるほど、お兄様を自由にするって難しいよね。生まれてすぐに結婚までの道のりが敷かれているのだから。
初めから雁字搦めすぎる。
(だけど、だからこそ、私はできることを証明しなくちゃいけない)
たとえばお兄様が、四葉に所属せずとも遊撃としてコントロールができることになれば。
外に出ても四葉を守る守護神であることを認めさせれば、まず分家は抑えられる。
最大の問題であろう叔母様に関しては、世界破滅云々は置いておいて。
多分だけど、お兄様の劇的な恋愛模様が見たいのであって、何も相手は私でなくてもいいはずだ。
今やお兄様は心が育って私以外にも関心が芽生えだしてきているはずだし、四葉の壁を乗り越えられる恋愛ってそっちの方が劇的で茨の道だと思う。
四葉の壁って本当分厚くって高いから。
四葉筆頭に障害を乗り越えた上での大恋愛。そっちも十分見応えあると思いますよ。
もう一つの破滅に関してはバッドエンドなので却下します。お兄様が幸せになれない世界は初めからノーセンキュー。
「深雪」
「そうですね…考えてみても、よくわかりません。四葉と一条が結びつくメリットは――ああ、イメージ戦略としては、ありなのでしょうか」
「イメージ戦略?」
「四葉はアンタッチャブル、不穏分子と思われてますが、一条と婚姻関係を結べば抑止力に、…抑え込めるのでは、と」
「何か事を起こしそうなら事前に一条が止める、と?」
「表向きはそう取れるかと」
実際一条がウチを止められるとは思えないけどね。
裏家業?はともかく、もし周囲から非難を浴びるような暴走をするとしたら、それは一族を守るための暴走のはず。
だとしたら四葉は如何な犠牲を払ってでも止まらない。そういう一族だ。
そもそも暴走をするような事態を起こさせるつもりもないけれど。
「ない、こともないか」
「限りなくその可能性は低いと思われますが」
「それは、どうして」
「一条へのメリットがありません」
四葉は次期当主を変えない。叔母様は変える気などない。
変えたらお兄様の楔にならないから。
となると、一条くんが当主の座を降りなければならないと思うんだよね。
両者当主のまま結婚って…癒着どころの問題じゃないものね?だからどちらも当主のまま婚姻は無理だ。
だとすると次期当主として育ててきた労力が無駄になるし、次代を育てるまでには時間がかかる。
しかも一条くんは戦闘員としても優秀だ。守りの要になり得る人材を婿に出すほど、あちらに余力はないのではないかと思うわけで。
原作では当主があっさり婿に行ってもOKって送り出されてましたけどね。
現実問題、今の情勢を鑑みてそんな余裕が一条家にあるとは思えない。
「メリット――一条にとっては十分深雪自身がメリットになり得るだろう」
あら、お兄様からのシスコン発言。お兄様ったら。
思わず笑いが漏れてしまった。
「そう言っていただけるのは光栄ですが、私個人の価値はそこまで高いものではございませんよ」
今ある地位を捨ててまで選択するものではない。
見た目の美しさだけでは、中身は測れない。きっと私の中身を知ったなら理想を抱いていた分その落差に幻滅するだろう。
一条くんはこの見た目に惚れこんでたもんね。
きっと彼の中での深雪ちゃん像は聖女のごとき清廉さを持っているに違いない。
この世界って皆思い込みが激しい。意外と泉美ちゃんと話が合いそう。彼女も彼女で妄想癖が凄いからね。
遠い目をしていたら、お兄様が私をじっと見ていることに気付くのが遅れてしまった。
「お兄様?」
「…深雪は、本当に自分の価値をわかっていないな」
すり、と頬を撫でられ、気が付けば腰にも手が回っていた。
「お、お兄様、」
正常に戻ったはずでしょう!?何故そんなお色気たっぷりに妹に迫ってくるのです?!
って正常だった頃もこんなものだった!混乱してる!
「世が世ならお前を得るために世界で戦争が起こるくらいにお前は魅力的だよ」
それは一体どこの世界線のお話しでしょうねぇ。
「その時は俺が世界を滅ぼしてでも手に入れるが」
…わあ。お兄様ならできてしまいそう。とっても愛が重いですねぇ。
今日は騎士様といい、なんだか芝居がかっている場面が多い。
「その前に手を取るので、どうか世界を滅ぼさないでくださいませ」
くすくすと笑ってお兄様の胸に寄りかかれば、頬に触れたままだった手を背中に回して抱きしめられる。
「すべては深雪次第だな」
責任重大だ。終末を迎えるトランペットは私に託されたようです。荷が重いね。
何でこんな物騒な話になったんだっけと思い返せば一条くんの話だった。
「――深雪は恋に興味は無いのかい」
「そうですね。今のところは。まだまだたくさんやりたいことが多すぎて、そちらに興味が向かないようです。お兄様はいかがです?」
「俺に恋はできないよ」
そう断言するお兄様だけれど、私はそれを口元に笑みを浮かべながら否定する。
「それは数年前までのお兄様でしょう?」
「…深雪は、俺に恋ができると思うのか」
「できますとも。お兄様は人を愛せます」
身体を起こして至近距離でお兄様を見つめる。
お兄様は懐疑的な目をしているけれど、私は確信していた。
お兄様の心はすでに、兄妹愛以外にも家族愛を知り、友愛を知った。
ただ利用する関係ではなく相手を気遣い、時に助けを求めた。
そして無意識にも人を守ろうとしていた。
お兄様は人を愛せる。もう、お兄様の心は何も感じないと思っていたあの頃とは違う。
「お兄様、愛は生まれるものです。そして育むものです。心の成長したお兄様ならばその愛を見つけることができます」
お兄様はもう、自分から幸せを掴みに行ける。私はそのアシストをすればいい。
無表情に近くても、私にはお兄様が戸惑っているような、複雑な顔をしているのがわかる。
あり得ない、と断じることなく思考を巡らせている時点で、もう過去のお兄様ではないのにね。
「たくさん悩んでくださいませ。時に迷うこともまた、成長の一歩なのですから」
「…深雪には、一体何が見えているんだ?」
ぽつり、と呟かれる言葉に、私はにこりと微笑んで。
「私が思い描く幸せが」
「そこに俺はいるのか?」
「私の幸せにお兄様はつきものですもの」
むしろ私の幸せの中心はお兄様だ。お兄様がいつまでも仲間たちと楽しく笑って過ごせるように。
好きな人ができ、その人と共に生きていけるように。
「…そうか」
まだ消化しきれていないだろうに、お兄様は口元を綻ばせて凭れるように抱きしめた。
その背に手を回し、ぽん、ぽん、と叩く。
「お兄様のペースでいいのです。全てはお兄様の心のままに」
恋とは急に落っこちたりするものらしいから。
「ありがとう」
そう言うと、お兄様はぎゅっと抱きしめてから私の身体を解放した。
もういい時間ですからね。
「今日はいい夢が見られそうだ」
「私もです。おやすみなさいませ、お兄様」
「ああ、おやすみ」
横になり、お兄様と顔を合わせてくすりと笑って目を閉じる。
あ、ちゃんと行火は足元にあります。
うっかり忘れて最初に戻るなんてオチは必要ありませんからね。
――
「深雪、残念だが――来てくれなかったな」
「そこは残念がるところではありませんよお兄様」
喜んでくださいませ。
どうやらお兄様のベッドにもぐりこむ奇行も治まった模様。良かった。
今日からは新人戦です。
ロアー・アンド・ガンナーは男女ともに一位。お兄様とケント君がエンジニアを務めた子は海の七高を破っての優勝だ。
流石ですお兄様!
女子では香澄ちゃんが表彰台の中央でドヤ顔アピール。可愛い。
思わず頑張ったわね、とお姉さん風を吹かせて頭を撫でてしまったら硬直されてしまったけれど、逃げ出さずに真っ赤な顔をして享受してくれた。
それを泉美ちゃんに見つかってちょっとした修羅場のような展開になってしまったのは申し訳ない。
本物のお姉さんがいてくれればこんなことにならなかったかもしれないね。
代理で褒めてあげようなんて考えたのがいけなかった。泉美ちゃんも撫でるから落ち着いて。
でもそのことで香澄ちゃんが「泉美はまだ試合してないじゃん」と横を向いてぷっくり膨れたのが可愛かった。この双子を愛でる七草先輩の気持ちがわかる。これは可愛がりたい。
次の日も絶好調。シールド・ダウンでは男子は三位入賞、女子は水波ちゃんが優勝しました。
お兄様との二人三脚のタッグ戦で負けるわけがないね。抱きしめていい子いい子をしたら水波ちゃんが小っちゃくなってしまった。
お兄様に止められてストップ。ごめんね。やりすぎちゃった。
その後お兄様が代わりに頭を差し出してくれたので僭越ながら撫でさせていただきました。
お兄様もすごい!お疲れ様です!!撫でたお礼にハグをされそうだったけれど、それは今度はこっちからストップをかけた。
お兄様、ここはお外です。そういうのはお部屋に戻ってから。
お兄様は少ししょんぼりされたけど、見せかけなのわかってますからね。
でも可愛いかったのでキュンキュンしてお手手繋いでしまった。手を繋ぐくらいならいいよね。
そして、アイスピラーズブレイク男子も三位入賞。得点取れてるだけでもすごいんだから胸を張って。そうそう。よく頑張りましたね。
女子の部は泉美ちゃんが圧巻の勝利。まさに独壇場でした。
天幕に戻ってきた彼女が可愛らしく駆け寄ってきて満面の笑みで抱きついてきてくれたのだけど、その、結構密着するね。
あとそこでばれないように深呼吸しないで。
香澄ちゃんは双子の妹の奇行にドン引きするんじゃなくて止めてあげて。美少女としてあるまじき行動してるから。
ちょっと落ち着いて、と背中をぽんぽんするけどなぜかぎゅううっとしがみつかれた。うーん、意思疎通上手くいかないね。
しばらくは大人しくぬいぐるみのように抱きしめられてあげよう。だって、今日は頑張ったからね。
…でも、だからってすりすりしないで。胸に顔を埋めようとしないで。変なところ触ろうとしないで!?
水波ちゃんが慌てて引きはがしてくれた。ありがとう。なんとか大切なものは守られました。
香澄ちゃんも流石に泉美ちゃんをお説教。
できればもうちょっと早く止めて欲しかった。女の子同士だからって越えてはいけないラインはあるのです。気をつけてください。
その晩、お兄様から消毒と称して長めにハグをされました。消毒になったかな。
新人戦三日目。
「これは仕方が無いな」
「やっぱりミラージ・バットで亜夜子さんと勝負するのは厳しいでしょうね…。私でも相手にならないわ」
翌々日のミラージ・バットの本選に備えて今日、明日とオフのお兄様と観客席で観戦していた。
亜夜子ちゃん生き生きしてる。ひらひらした衣装も可愛らしいね。
私にはない夜の妖精さんのような雰囲気。この妖精さんは一体どんないたずらをするのか。ちょっと危険な香りがします。
似たような作りの服でも着てる人間で全然違く見えるってすごいよね。
というかこの独走っぷり、とっても目立ってますね。叔母様の命もあって派手に動いているからなのだけど。お兄様の助言通り七草双子のどちらかがこの競技に出場しなくてよかったよ。
何でもそつなくこなせるくらいでは彼女に勝てないもの。お兄様の誘導は流石でした。
「相手にならない、は言いすぎだが、確かに
あら、お兄様にしては甘めの採点。身贔屓が過ぎるのでは?と顔を覗くと苦笑された。
「リーナの時で学んだと思ったが、お前の実力は桁外れだぞ」
「…それは、そうかもしれないけれど、だからといって彼女の得意魔法に対抗するのは私でも難しいと思うけど」
この競技は他の選手を魔法で妨害してはいけないからね。
「そこは工夫次第だな」
「あら、兄さんが作戦を立ててくれるの?」
「一緒に考えたら良い案が浮かぶかもな」
…どうしました?急に揶揄いモードを展開している。
お色気モードではないので圧されることはないけれど、去年の恋人の振りみたいないちゃつき具合で頬を撫でられる。
何かあったかな?と周囲を見回すと、あ、泉美ちゃん達発見。…視線で人が殺せそうだねぇ。
この距離なら会話も聞こえないからただのいちゃつきカップルにしか見えないだろう。
「…昨日の、怒ってる?」
もしや昨日の泉美ちゃんに対してまだお怒りでしたか。お兄様もあの場に居ましたものね。
彼女が遠くてもぎりぃしてるのが見えます。そしてお兄様が顔を寄せたら鬼の形相に。
香澄ちゃんが今にもこっちに走ってきそうな泉美ちゃんを引き留めている。
頑張れ。頑張れ香澄ちゃん。
お兄様はこれ以上煽らない。お怒りはわかりましたから。
…あと、今気づいたけど亜夜子ちゃんもこっちに気付きましたか。視線がね。ちらっとちらちら。…もう移動しましょう。試合も終わりましたし。
あ、一高の成績は二位でした。大健闘!
そして新人戦最終日。モノリスコードは七宝君をリーダーになかなかの快進撃。順調だったんだけどね。
「すごいな、あいつ。名前、なんてったっけ?」
今日は一般応援席で皆と応援。
「黒羽。黒羽文弥だ」
自慢の親戚ですー、とは言えないのが残念。敵チームですしね。
「黒羽って、やっぱり…」
吉田くんは四葉の噂が怖いみたい。申し訳ない。
今はまだ言えなくてごめんね。
目下で行われている試合は一年生の試合ながらなかなか見ごたえがあって皆興奮気味だ。
文弥くんもすごいね。実に巧みに魔法を使いこなしている。これじゃあ一年生相手じゃ無理だ。というか、実戦を知らない選手じゃ相手にならない。
七宝君は相手が悪かったね。ステージは七宝君たちに有利だったこともあって悔しさも倍増だろうけれど、この悔しさをバネに頑張ってもらいたい。
モノリスコードも四高の優勝。
花形二種は黒羽姉弟に持って行かれた形になったけれど、どちらも一高は二位を確保。新人戦の総合優勝が決まった。
この時点で総合も一高が三高を引き離す形になっていた。完全独走状態。
でもこの後本戦の花形二種があるからね。この二つは元からある競技だから皆熟練度が違う。各校対策が立てられている。
ミラージ・バット、フェアリーダンスはほのかちゃんのエンジニアをお兄様が。スバルくんのエンジニアは中条会長が担当していた。
ほのかちゃんのためにも私は雫ちゃん達と一緒に席で観戦。お兄様に応援されたら百人力だもんね。
スバルくんもいい具合に発破をかけてくれるだろうし、俄然燃えるほのかちゃん。…問題はその勢いにお兄様が気圧されないかだけどね。
ほのかちゃんも気合が入り過ぎると周りが見えなくなるタイプだから。程よい燃料投下をお願いします。
しっかし、このユニフォームは本当けしからん。グッジョブ。…自分が着ないとこんなに気が楽なんだね。
色々と計算されつくした恰好だとはわかっているのだけどね。ぴっちりスーツにフリルがあしらわれているだけだから。
それはえっちになるでしょうよ。特に豊満なボディをお持ちのほのかちゃんなんて、コレ全年齢対象です?と問いたくなる。
試合よりもそっちが気になってしまって気付けば終わっていた。一位はほのかちゃん、二位にスバルくんだった。
おお!テンションが上がったままだから恰好のことを忘れてお兄様に抱き着いています。
一斉に男性客たちの視線がお兄様を射殺さんばかりに集中した。気持ちはわからないでもないけど、お兄様抱き留めただけで抱きしめ返してないのだけどね。
「ん?なぁに?雫」
周囲の視線を気にしていたら至近距離からの視線に気づくのに遅れてしまった。
雫ちゃんにじっと見つめられています。
「深雪は、なんとも思わないの?」
え、お兄様を羨ましいと思う男性陣に同情していた、なんて言えない。
「…兄さん、もう少し喜べばいいのに?あと、ほのかが冷静さを取り戻したら大変なことになりそうだとは思うわ」
ほのかちゃん、きっと悲鳴上げて逃げちゃうんじゃないかな。もしくは真っ赤になってしゃがみこんじゃう。その様子が目に浮かぶようだ。
「……嫌じゃない?」
無表情だけど心配してるっていうのが伝わってくる。
だから安心させたくて微笑んで。
「兄さんが幸せなら、それが一番じゃない」
女の子の柔らかボディに喜べなくても、仲間と優勝を分かち合うことは嬉しいことだろうから。
「ほのか、優勝できてよかったわね」
「ん」
二人で微笑み合って、友達の優勝を喜んだ。
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