妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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古都内乱編⑩

 

 

翌朝、お兄様はいつも通りで何もおっしゃらなかった。

先生との間にどういうやり取りが行われたのかわからないが、お兄様は警護をお願いすることができたのだろう。原作で対価が何だったかは描かれていなかったけれど、いくら親しくさせていただいている先生相手でもお兄様が何もお返しをしない、ということは無いだろうから私の知らないところで何かお返しをするのかな。

九重寺の助力という強力な防護壁を一枚築き上げても安心できるお兄様ではない。

放課後、生徒会室。

今日は私用で早く上がらせてもらう話はつけていたので、副会長の泉美ちゃんに戸締りをお願いしていると、お兄様が遊びに来ていた雫ちゃんに話しかけていた。

雫ちゃんもただ遊びに来ているわけではないよ。ちゃんと風紀委員のお仕事も…やってきてるんだよね?要領のいい雫ちゃんのことだから問題ないはず。

生徒会室に居れば、何かあればすぐに緊急呼び出しもわかるしね。うん。ちゃんと利点もある。渡辺先輩もそうしていたし。これはきっと風紀委員伝統のスタイルなんだろう。

お兄様は雫ちゃんにほのかちゃんの守りをお願いしていた。

雫ちゃんだって狙われないわけではないと思うけど、北山家――大財閥の娘を狙うリスクを冒さないのでは、と。古式魔法師だってそれくらいの保身はするはずだからね。そうなると狙われやすいのはほのかちゃんとなる。

前回行ってみて思ったけどほのかちゃんの家は一般セキュリティよりグレードは高いけれど、プロの手にかかれば簡単に制圧されちゃうレベル。雫ちゃんパパはもっとしっかりしたところにしたかったみたいだけれど、ほのかちゃんとしては自分は一般市民。遠慮する気持ちはよくわかる。お兄様や私たちと付き合うことが無ければそれで十分だっただろうけど、もう深く付き合ってしまったので今回のように巻き込まれやすくなってしまった。

それとなく理由をぼかしての説明だけど、うん。昨日私たちが襲われたことを知った泉美ちゃんがね、私の手を取って至近距離で確認されてます。

 

「お怪我はありませんでしたか!?」

 

なかったよー、大丈夫だよー。だからその触って確認しようってお手手は下げようね。ワキワキさせないで。

美少女はそんなことしちゃダメだよ。イメージが崩れちゃうからね。貴女七草家の御令嬢。気をつけて。お願い。落ち着こう。

 

「深雪様から・離れて下さい」

 

おお。いつもありがとうねピクシー。大好き。今日も可愛いよー。だからそのうねうねはしまってくれていいのよ。

貴女も心配してくれてるんだよね。うねうねした触手の動きで全身確認されてるのがわかる。

んー、怪我を心配してか、ちょっとピクシーも動揺?慌ててるのかも?どんどんお母さんに似てきたねぇ。

生徒会室で一緒だからお母さんを見て成長しているのかな。貴女は母親を反面教師にして落ち着きがあってもいいのよ。

この間にもお兄様は雫ちゃん達とおしゃべりを継続中。

敵の目的がわからないこと、警察からまだ連絡がないこと等を伝え、とりあえず相手が古式の魔法師ではないかという憶測を付け足した。

ところで警察は何か聞き出せたのかな。せめて彼らが昨日襲撃した理由が今日九島の家を訪れることを察知していたから、とか。

流石にそこまでの情報は出ないとは思うのだけど、タイミングが良すぎたのでね。

これでもし来週襲撃だったなら、予定や目的がだいぶ変わっていただろうから。

ホテル滞在中に襲う計画は漏れても、理由までは話し合わなかったらしい。

命じられて動いているのだったら本人たちも目的なんて知る必要も無いからね。知らされていなかった説が有力。

あの動き、連携の様子から察するに、実行部隊として実績を積んだような慣れはあったけれど、対象の力量を見誤っている時点で情報収集能力は高いとは思えない。

それともやはり高校生相手と舐めてくれているのか。

だから周辺を狙って脅そうと?うーん。地元じゃないから情報網や力場が不足して思う存分発揮できていないのかも。

伝統派ってどうにも自分たちの目と耳を信じての情報収集メインみたいで現代の情報収集には頼ってなさそうなんだよね。

だって、何度でも言うけど調べれば九校戦の情報はすぐに出る。別に秘匿情報でも有料情報でもないから。

ちょっと調べればニブルヘイムできる実力あることくらいわかるだろうに。まあ、アレを人の多い街中で放つことはできないけど。

 

「じゃあ、もしかして達也さん個人が狙われたのではなく、一高の生徒会が狙われている可能性もあるということですか?」

 

お兄様だけでなく私も水波ちゃんもいたからね。

可能性としては考えられるけど…この時点でほのかちゃん、お兄様が狙われていること、そしてお兄様が何をほのかちゃんに望んでいるかをわかっている気配がそこはかとなく。

でないとこんなお兄様の都合のいい展開にはならない気がする。

…ほのかちゃん、そういう気遣いできちゃう子だから。って、これはまだ私の推測の域を出ないのだけど、そんな気がね、ひしひしとしてくるわけで。

そしてお兄様が願った通り、ほのかちゃんは雫ちゃんの家に泊まることになった。

なら同じ生徒会役員の泉美ちゃんは、となるはずだけど、彼女は七草家。

そして香澄ちゃんと登下校もするし、護衛がちゃんとついている。十師族ってだけでも常に狙われる理由になっているから。

 

「…まだ相手の狙いがわかってないってことは、深雪が狙われている可能性は?」

 

雫ちゃんが心配してくれている。そうだね。一高を代表する生徒会長になったからより目立つ存在となったことも要因か。

今までも狙われることがあると、ことあるごとに言っていたからそっち可能性も心配してくれるのね。ありがとう。

 

「そうね。私も十分に気をつけるわ」

「深雪なら自分で撃退できちゃいそうだけど」

「ふふ、ほのかったら。でもそうね。いつまでも兄さんに頼っていられないもの」

 

その為に私もだいぶ鍛えてきた。お兄様の嫌がる切り札も使わず倒せるだけ強くなってきたつもりだ。

 

「…深雪に張りきられてしまうと、本当に俺がいらなくなってしまいそうだ」

 

あら、困ったね。しょんぼりお兄様が現れた。母性本能くすぐられる可愛さ。恐ろしい。今すぐ抱きしめたくなるけれど、ここでそんなことはできないから。皆見てるから。我慢です。

泉美ちゃんが、なんと不甲斐無い!と睨んでいる。…代われるならそのポジションを狙おうとしてるわけではない、よね。されても困るけども。

七草(うち)の護衛と一緒に帰ろうと言い出しかねない。

 

「もう、兄さんったら。ちゃんと頼りにしてるわ」

「深雪姉様!私もお守りします」

「水波ちゃんも。ありがとうね」

 

今日も私の家族が優しい上にカッコよく、可愛い面まで併せ持っていて大変幸せです。

二人が十分守ってくれるので、よそ様の護衛は結構だよ。

というよりお兄様が護衛しているだけでもプロのSPが束になっても敵わない。

水波ちゃんだって実績こそまだ少ないけれど、ウチの厳しい試験を中学生で合格した優秀なガーディアンだ。

特に桜シリーズの守りは十文字家並みに堅いと言われている。

これ以上ない攻守揃った鉄壁の守りです。ついでに護衛対象も一人で戦えますからね。

実弾が来ようがナイフが迫ろうが、この珠のお肌に傷などつけさせるわけがない。

深雪ちゃんの身体は傷一つでもつければ一帯を平らにしちゃう強力なミサイルのスイッチを押すことになるので。

お兄様の幸せのために、ついでに世界平和のためにいつでも気をつけておりますとも。

それからお兄様の暗躍はこれにとどまらず、生徒会室を先に上がらせてもらってから吉田くんたちの元へ。

今日は風紀委員長としてのお仕事か、講堂で作業する五十里先輩たちを見守っていた吉田くんと、野次馬なのかのエリカちゃんと西城くん、そして美術部としてもお手伝いしてるのかな、美月ちゃんに声を掛けていた。

遠目に見ても元E組は今でも仲が良い。

吉田くんは一科のB組に。お兄様と美月ちゃんは魔工科に変わったけれど、クラスは変わらずE組。西城くんとエリカちゃんがF組と分かれているのに今でもお昼は一緒だ。

うんうん、高校の友達は一生の付き合いって言うけれど、お兄様たちは是非そういう付き合いになってほしいところ。

…距離を空けられない様にこの先の流れをより良い方向へと変えていけたら、と思うのだけど。

できれば一時的にもギスギスなんてしてほしくない。

でもその原因は私たちの血筋がきっかけだから。困ったね。生まればっかりは変えられない。

せめてお兄様だけでも四葉の枠を出られたら違うんじゃないかな、と思うのだけど。

それに、今の彼らの関係は原作よりも仲が良い気がする。気心が知れている、というか。お兄様の態度が違ってみえるからそう感じるのかもしれない。

 

(あの中にいるとお兄様も年相応の高校生に見えるから)

 

とても素敵な光景だ。まぶしい、夢のような、でもこれがここでの現実――。

 

「…深雪姉様」

「なあに、水波ちゃん」

「いえ…その」

「ん?」

「なんとなく、寂しそうに思えましたので。皆様の元へ行かれないのですか?」

 

あら、まあ。水波ちゃんに心配されてしまった。その細やかな気遣いがくすぐったい。嬉しくて顔が緩んでしまうくらいに。

 

「ありがとう。水波ちゃんが居てくれるから私は大丈夫。それに、ほら。兄さんももう戻ってくるわ」

 

はにかんだまま答えると水波ちゃんは恐縮です、と俯いてしまった。うーん、覗く耳が真っ赤だ。ここが外でなかったら撫でまわして抱きしめていたのだけど。人目がしっかりありますからね。

 

「深雪、また何かしたのか」

 

お兄様、もう何の疑問もなく私を犯人扱いですね。合ってますけども。

 

「水波ちゃんが優しくていい子なんですよ」

「…ほどほどにな」

 

水波ちゃんが私の言葉で更に縮こまり、お兄様がやりすぎ注意のストップをかけた。はぁい。ほどほどに気をつけます。

 

 

――

 

 

リニア列車に乗り込む前にちょっとお手洗いに寄らせてもらい、予定通りスパイ活動を少々。

と言ってもただトイレの個室に置いてくるだけなんだけどね。お兄様と水波ちゃんにバレないのが一番のミッション。

後で回収してもらえるからすれ違うこともない。原始的な方法だけど、こういうのが一番痕跡が残らない。

怪しまれることもなく戻って列車に乗って――うん、やっぱりリニアって興奮するね。バイクや他の乗り物とはまた違う良さがある。

水波ちゃんと一緒にキャッキャしながらお茶とお菓子を摘まみながらあっという間に奈良へ。早いねー。本当あっという間。

ここからはコミューターで移動。

地方だからコミューターの椅子の柄が違ったりと小さな違いを見つけては再びキャッキャ。うん。見事に観光客ですね。

お兄様、お仕事で来てるのにはしゃいですみません。思い出して恐縮したら構わないよ、と。むしろそうしてくれていた方が自然でいい、とのこと。

観光客を装ってということかな。まあ今回はそこまで装う必要性はないのだけど、周囲にはそういう人ばかりだからより自然に溶け込んで見えるだろう。

だけどはしゃいだ姿をお兄様に温かく見守られて少し、というかかなり恥ずかしくなり、水波ちゃんと一緒に縮こまって反省。お兄様はしばらく笑っていた。

そんなこんなで生駒に着きました。待ち合わせ時刻の五分前。ダイヤの乱れのない、日本の誇るべき技術ですね。

100年経っても日本くらいだそうですよ、こんな時間ぴったりの交通機関。

…なんで機械任せにして時間ぴったりにならないの?とは聞いてはいけない。きっとお国柄か何かだろう。

予約しても人が来なければ機械だって動きようが無いからねぇ。

呼び鈴を鳴らせば、出迎えてくれたのは藤林さんだった。使用人をわざわざ介さないようにしてくれたのだろう。おかげでこちらも気が楽です。

 

「いらっしゃい達也くん。深雪さんに水波ちゃんも、よく来てくれたわね」

 

わあい、分かってはいるけどお兄様だけ特別扱い。こういうところにきゃっ!と心の中ではしゃいでしまう。

招いているのはお兄様だけだものね。妄想が捗る。…とと、そうじゃなかった。

人様のお宅です。きちんとマナーは守らねば。今日の私はお兄様のおまけです。

 

「すみません、わざわざお付き合いいただいて」

 

お兄様の開口一番の挨拶は、お仕事を休んでまで来てくれたことへの感謝も含んでいる。今日も明日も普通にお仕事でしたでしょうから。

 

「気にしないで。さあ、遠慮なく入ってちょうだい」

 

門の中に案内しようとする藤林さんに、私は少しストップをかける。

 

「あの、藤林さん。こんな時にあれなのですが、直接お会いする機会もなかなかないので。受け取っていただけると嬉しいのですが」

 

手土産を、と考えたのだけれど、家格に見合う手土産を表向き普通一般の家の人間が用意できるわけもない。

そういうわけで私たちが持っていくと不自然になりかねないのでちゃんとしたモノがご用意できなかったのが心苦しいが、藤林さん個人宛に、個人からという形でならいいだろう、と。

 

「え、なあに?もしかして深雪さんの手作り?以前いただいたお菓子も美味しかったわ。――またいただけるのですか。これだけでここに来た甲斐があったというものです」

「そんな。そう言っていただけて私の方が喜んでしまいます」

 

初めこそ砕けた口調だったけれど後半は揶揄い交じりの敬語に変わった。こういう言葉遊びも彼女の話術の一つなのか。

美女からの誉め言葉に舞い上がって両頬を抑えて落ち着こうとしている間、お兄様と藤林さんがこそこそっと。

 

「…ねえ、達也くん。明日には調査して帰るんでしょう?その間深雪さんを私が預かりましょうか」

「藤林さんのお手を煩わせることなどありません」

「手を煩うことなんて深雪さんに限ってないでしょう。…私も癒しが欲しいのよ。察して頂戴」

「深雪は目を離すと危ないので兄として心配なのですよ。察してください」

「達也くんはそろそろ妹離れをした方が良いんじゃないの?」

「今のところ必要性を感じませんので」

 

あの、もしもし。お話し中すみませんが、ここまだ門の前です。そろそろ中に入らないと予定通り来たのに遅刻という失礼なことになりかねない。

私と水波ちゃんが戸惑っていることで思い出してくれたのか、二人が咳払いをして中へ移動することに。

用事思い出してもらえてよかったですね。

しかし、原作でも書いてあったけどすごい造りのお庭です。迷路だ。緑の壁が続く。

これは迷子になりそう。水波ちゃんが道順を覚えようとしてかきょろきょろとチェックしてます。私?もう諦めました。お庭綺麗。

いざとなれば飛んだり跳ねたり、迷路をぶち抜いたりすればいいのです。力業の深雪様が通ります。ま、そんなことにはならないでしょうけど。

こういう和テイストのお庭も大好き。迷路はいらないけれど生け垣は憧れる。だから四葉の外観はとても好きだったりする。アレを管理するのは大変だと思うけどね。

 

「大袈裟で驚いたでしょう?伝統派の襲撃に備えて作ったものじゃないのよ。この屋敷ができた時から、旧第九研の研究成果を取り入れながら少しずつ守りを整えていったの。ここに屋敷を構えることは、当時の政府の決定事項なのよ」

 

何故だかわかる?と訊ねる藤林さんはなぞなぞを出すお姉さんのようで、邪気の無さそうな雰囲気だけど質問はとっても子供向きじゃない。

でもこのギャップがまたきゅんとさせるよね。胸が高鳴ります。

だけどお兄様はそんな藤林さんにきゅんと来ないのか、はたまたポーカーフェイスで隠しているのかノーリアクション。うーん、お兄様ギャップにお強い?

 

「大阪の監視と聞いています」

「張り合いが無いわねぇ…正解よ」

 

がっくり、と項垂れる美女。やだ、可愛さまで持ち合わせている。藤林さんにときめきが止まらないね。好き。

だからしょんぼり藤林さんに元気を出して、とつい声を掛けてしまった。

 

「あの、大阪の監視とは、政府は何を恐れたのでしょうか」

「大阪は国際商業都市という性格上、外国人の行き来に寛容だし、居住も容易ですから。どうしても監視の目から漏れる工作員が出てきますし、何か事件が起こった際、後手に回りやすいんです。

魔法師工作員の暗躍は政治家にとって最も質の悪い悪夢の一つですので。九島家は旧第九研最高の成功例として、外国人魔法師工作員の跳梁を抑えるという任務が与えられたんですよ」

 

だからこそ、九島閣下は昨年の九校戦の際、電子金蚕に気付けたということか。海外の技術の知識を蓄え、工作員に備える。うん、それは確かに必要なことだ。…代々そう受け継げれば、先日のような害虫を中に入れることなんて無かったのではないかと思うのだけどね。

手の内を知っているからどうこうできると思った閣下ならまだ手があったけど、息子さんはそうじゃなかったようだからなぁ。

最終的にパパが何とかしてくれるって?そんな甘えが見え隠れしちゃう。

 

「深雪さん、遠慮はいらないんですよ」

 

私の微妙な変化を読み取ってくださったのだろうけど、…藤林さんの叔父さん、甘い考え持ってますよね、なんて言えないから別の質問を。

 

「ありがとうございます。大したことではないと思うのですが…大阪に潜入した工作員の監視が任務なら大阪に、少なくとも生駒山の東ではなく西側に拠点を設けるべきではないかと思いまして」

 

監視するならもっと近くじゃないの、とのツッコミは藤林さんに苦いものを飲ませてしまったようだけれど、もっと身近な身内の恥の話をされるよりかはいいと思って。

藤林さんが口を開きづらそうなのをお兄様がフォローするため割って入った。

 

「近すぎると取り込まれてしまう恐れがあるからな」

「裏切る可能性があると?」

「政治家はそう考えた、ということだ」

 

魔法師は単純な味方ではない、いつ敵に寝返るかわかったものじゃない、ということか。

まあそうでしょうね。戦争を止めに介入できるだけの力を持っているわけですから、政治家の思い通りに動くとは限らない。それが魔法師という存在だ。

 

 

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