妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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古都内乱編⑫

 

 

深雪ちゃんの淑女スマイルに、光宣君は少したじたじに答える。

初々しい若者の反応だ。だけど忘れちゃいけない。彼の美貌は反則級の美しさなのだ。

 

「そ、そうですか?…そう言っていただけるなんて、嬉しい、です」

 

超絶美少年に恥じらい交じりにはにかまれてしまった!心にダイレクトアタック!!

胸が苦しいですね。可愛い。はにかみ美少年超可愛い。悶絶級の愛らしさ。

淑女の仮面があるから顔面崩壊なんてしないのだけれど、心の中では孫を愛でるおばあちゃんのごとく表情を緩ませている。

お小遣いねだられたらすぐにでも渡しちゃいそう。

何故私はポチ袋を持参していないのです?って、この時代でポチ袋なんてそもそも見たことが無かった。ちょっと錯乱してますね。でも心情的には何でも買ってあげたいおばあちゃんです。

貢ぎたい女子、にならないのは、決して彼に魅力が無いわけじゃない。恐らく普通の女子ならば年齢問わず彼に恋をしていただろう。

使命感の強い水波ちゃんでさえ、この状態なのだ。ふわふわ綿菓子でできている一般の女の子にはひとたまりも無いはずだ。まさに一撃必殺の美貌と笑みのダブルコンボ。これで落ちないわけがない。

 

「深雪さん、よかったら光宣くんと仲良くしてあげてくれない?もちろん達也くんも水波さんも」

「きょ、響子姉さん!」

 

おおう…藤林さん、並の思春期の男の子になかなかなのダメージ攻撃(おせっかい)を。

親戚のお姉さんにお友達仲介してもらうってなかなか恥ずかしいエピソード。

もちろん藤林さんにそんなつもりはないのだろうけどね。

もしこれがお兄様相手だったなら揶揄いだったり意地悪だったりするだろうが、まだ人馴れしていない光宣君にはまだ早すぎる。

彼は国の、いえ、世界の宝ですからね。皆で保護しないと。

 

「藤林さんにお願いされなくても、私たちは光宣君と仲良くしたいと思っていますよ。そうですよね、お兄様、水波ちゃん」

「そうだな」

「わ、わたくしでよろしければっ!」

 

うーん、水波ちゃんまだ緊張解けないねぇ。えい。

 

「み、深雪姉様!」

 

お食事中お行儀悪いけれど、体ごと向けて水波ちゃんのもちもちほっぺを突いてみました。意表を突かないと解れないかと。不意を突かれたびっくり水波ちゃん可愛い。

 

「ふふ、可愛い」

 

慌てる水波ちゃんはとっても可愛い。あの頭に汗が描かれてる感じの慌てぶりがとってもキュート。

流石私のガーディアン。私好みに順調に成長してますね。

お兄様は、って?お兄様は初めから大好きですからそのままでお願いします。だからどうかこれ以上変化しないでいただきたい。供給過多は心臓に負担がかかり命に直結します。大変危険。

 

「…なんていうか、深雪さんって振り回す系美少女になっちゃったわね」

「そこも魅力的なんですが、おかげで振り回されてばかりで困っています」

「達也くんが?」

「俺が、とは…どういう意味です」

「達也くんの場合、達也くんの方が振り回していることの方が多いんじゃないの?」

「まさか。いつだって俺が振り回される側ですよ」

 

私がそちらに向いていないのをいいことに、お兄様が大法螺吹いてますね。

藤林さんのおっしゃる通り、いつも翻弄されて困らされているのは私の方だと訴えたい。ぜひお兄様の間違った認識を正していただきたい。藤林さん頑張って。

そっちの応援に回りたいけれど、その前に水波ちゃんの緊張を解す方が大事だから。あと光宣君もね。

親戚のお姉さんの普段見ないやり取りに、ちょっと驚きつつも微笑ましく見ていた光宣君にターゲットを変えてちょっかいをかける。

 

「光宣君はゴールデンレトリバーのようですね」

「え?」

 

意表をつけたのかまんまるお目目に。宝石のように美しい瞳がむき出しになったかのように大きくなった。もう少し驚かしたら零れそうで心配です、なんて。

彼の反応は年相応というより幼く感じる。これは同世代と一緒に成長しなかったことによる弊害かな。

だがそこがまた庇護欲をそそられるポイントだ。

 

「例えが犬になって申し訳ないのだけど、なんとなく、その親しみやすい空気が。末っ子ということもあるのでしょうけど光宣君は甘え上手な気がします」

「そう、でしょうか。よくわかりません」

 

甘え上手の末っ子と言われて真っ赤になって俯くけど、うん。ラブラドールというよりはゴールデンなイメージ。

水波ちゃんを見れば、わかります!と力強い頷きがとキラキラお目目が向けられた。そうだよね。一緒に見た映画のあのゴールデンレトリバーを思い出すよね。

彼はその例えばぴんと来ていないのか戸惑い気味。

 

「あ、あの、先ほども言いましたが、僕の方が年下ですので、敬語は無くて大丈夫です」

 

遠慮しがちなのに、要望はちゃっかり伝えてくる。

こういうところが懐に入るのが上手な、甘え上手さんに見えるんだろうね。

 

「ふふ、分かったわ。よろしくね光宣君。私のことも深雪と名前で呼んでくれるかしら。お兄様と一緒だと不便だものね」

「分かりました…深雪さん、と」

 

同世代の女の子とこうしておしゃべりすること自体経験がないのだろう、光宣君は顔を赤くしながらもリクエストに応えてくれた。うんうん、こうやって少しずつでも慣れていこうね。

そして水波ちゃんはお口をもごもごさせていた。こちらはまだ勇気が出ない模様。緊張は多少解れたけど、これはまた別問題らしい。

慈愛に満ちた視線で光宣君と水波ちゃんを見ていたら、彼は少し躊躇しながら実は、と口を開く。

 

「僕は生まれつき体が弱くて…学校を休みがちなのでこうして年の近い人と話す機会が無くて」

 

ということは大人は慣れているけれど、同年代から下の若い人とは付き合いが少なくてどう向き合っていいかがわからないってことなんだろうね。確かに大人と子供じゃ話す内容も反応も違うから。

水波ちゃんはその話に同情的な視線を向ける。それを受けて、彼はちょっと寂しそうに笑ってから。

 

「でも今週は調子が良いんですよ」

 

彼にとっては体調を崩すことが当然で、調子がいい時が稀。

彼の抑えきれていないそわそわした様子は、同年代と食卓を囲んでいる状況だけが理由ではなく、体調の良さも彼のテンションを高くする要因だったようだ。

だから一瞬寂しそうにしたのは、水波ちゃんのような反応――同情されてしまうことの心苦しさによるものなのか。

だけどそれを打ち消すように隠そうとして、調子がいいのだと大げさにアピールしてみせることで、心配させまいとした。純真で優しい子だね。先ほど面会したあのお爺ちゃんの孫とは思えない。

 

「そうだ!皆さん、今日は泊って行かれるのでしょう?」

 

この言葉に、藤林さんと如何に自分が振り回されているか説明をしていたお兄様が反応した。

というかまだその話続いてました?心なしか藤林さんの表情がげんなりしているように見えるのは気のせいでしょうか?

そっちに参戦してきちんと否定したかった。

 

「ああ。近くに宿をとっている」

「うちに泊まっていかれないんですか…?」

 

光宣君…私たちが来た理由聞いてない…わけじゃないよね。

協力は要請し、手を結ぶにしてもここは私たち四葉の人間にとって九島家は安全地帯とは呼べない場所なのです。九島家としても家に置いておきたくないでしょうしね。

仕方のないことなのだけど、なんだろうね。耳が垂れてきゅーん、と鳴かれている感じがひしひしと。

恐ろしい。この子は天性の甘え上手だ。思うだけで人をコロコロ自分の都合のいいように動かすことができる才能を持っている。

多分本気出したら何も言わなくても勝手に宗教作れちゃうタイプ。

 

「光宣くん、無理を言ってはダメよ」

 

お兄様が答えに窮していると、藤林さんが助け舟を出してくれた。

 

「そう言うのはもっと親しくなってからでないと」

 

諭すように伝えればさらに頭のお耳と尻尾は垂れさがるけれど、それ以上のおねだりは控えた。

…すごい。よくあのお願いモードの光宣君を抑えられるものだ。

藤林さんは調教師の資格をお持ちです?

しょんぼり光宣君に申し訳なく思うけれど、流石に魔窟に何の準備も無しに泊まるのは怖いです。準備していたって怖い。…まあ、人の家のことをとやかく言えないのだけどね。四葉だって十分に魔窟。というより人を寄せ付けない造りになている。それに比べたら、このように気配りの行き届いた部屋が用意されている分、警戒度が低く思われがちだけれど、古式魔法を長年退けているお家ですよ?何も仕掛けられていないわけがない。

庭を案内されていた時に説明も受けてましたしね。ここも立派な要塞です。

 

「それより、明日は光宣くんが達也くんたちをご案内してあげたら?」

「!ええ、是非!!」

 

だけどやっぱり最終的には甘やかしちゃうんだね。しょうがない。彼のお願いには抗い難いから。

きっと普段からそんなに我侭を言って困らせるタイプじゃないんだろうな。

お二人が盛り上がってお兄様の返事を聞かずに予定が決定しそうになっている。

これはお兄様にも考える時間が必要案件と見ましたので時間を稼いでみよう。

 

「そんな、お手数でしょう?」

 

藤林さんの手前、少し反応に困って敬語で返してしまったけれど、訊ねられた光宣君は気にしてない模様。

お散歩いくのが楽しみなわんこ状態。張り切っている…これは断りづらい。

そして藤林さんからの援護射撃が入る。

 

「でも達也くんも深雪さんも水波ちゃんもこっちは土地勘がないでしょう?光宣くんは体が弱いって言っても病気になりやすいと言うだけで、五輪家の澪さんみたいに外へ出られないというわけじゃないから。伝統派の潜伏していそうな場所についても詳しいわよ」

 

お兄様が視線を走らせる。鋭く、射抜く視線にけれど藤林さんは怯まない。

初めからそのつもりだったのか、光宣君に外出の機会を与えたかったのか。

藤林さんの心裡はわからない。ミステリアス美女はそう易々と心を読ませてはくれないのだ。

 

「ええ、学校を休みがちな分、お爺様の仕事については兄さんたち以上に詳しい自信があります。司波さん――」

 

お兄様の中ではすでにガイド付きの方が歩きやすいか、と彼の同行参加を考えていたところに閣下の仕事について詳しいとくれば、天秤はメリットの方が大きく傾いたご様子。

ふっ、と小さく息を吐いて笑みを浮かべて応えた。

 

「達也で良い」

「私のことは先ほどの深雪で」

「水波とお呼びください」

 

水波ちゃんを便乗させるために改めて言えば、水波ちゃんは勇気を出して乗っかってきた。うん、この度胸が水波ちゃんのいい所です。水波ちゃんがんば!

お兄様がちらっと水波ちゃんを見たけど何も言わなかった。…お兄様、本当に他人のこととなると鋭い嗅覚をお持ちです。だから自分は鈍くない、と思われるのだろうけど、その嗅覚を自分にも発揮していただきたい。お兄様のフラグはもっと乱立しておりますよ。

話はとんとん進み、光宣君がお兄様の仕事が伝統派の術者を探すことかと問うと、お兄様から大体そうだとの返答が。

光宣君も正確には違うという回答だと気付いたけれどそれ以上踏み込まず、お兄様の望むことだけを案内しようという決意が見られた。頭の回転も、空気の読み方も上手だ。

人付き合いは経験が浅くとも、周囲を困らせないようにとの気遣いは身についてしまっているのか。…賢くて、優しい子だ。

 

「でしたら、お役に立てると思います。伝統派の拠点が最も集中しているのは京都ですが、奈良にも主要拠点とみられるところが少なくありません。明日、ご案内します」

 

伝統派と言っても彼らは別に単一の組織ではない、各個が集まり連合となっている魔法結社。一枚岩ではない組織。

だからこそバラバラで絞りづらい。目的は一緒だから纏まっているだけの集団なのだ。

まあ、バラバラだからこそ綻びが出ると簡単に瓦解もするのだけど、切り離したら、したらしたでしばらくするとまたくっついて復活する厄介な属性持ち。

お兄様は藤林さんたちの提案に乗ることに決めた。

 

「ご厚意に甘えよう。光宣君、よろしく頼む」

 

お兄様の言葉に光宣君は明らかに喜びを見せ、周囲を苦笑させていた。

あの九島閣下の孫とは思えない、愛くるしさ。閣下もこの可愛さにやられたのだろうか。そう思わせるほどの魅力が彼にはあった。

 

 

 

 

(…そう言えば、お兄様の周りってMが付く人多いな)

 

入眠間際、持参したポータブル行火を抱えながらふと思いつく。

深雪ちゃんに水波ちゃん、今回の光宣君に、お母様と叔母様の深夜真夜姉妹。七草先輩も真由美さんだし、渡辺先輩も摩利だね。吉田くんも幹比古、美月ちゃんもだ。ほのかちゃんはちょっと強引だけど光井だからギリ範疇?それがありなら壬生先輩だって入るよね。それからお兄様の周りってわけではないけど一条君だって将輝でMだ。

 

(…お兄様の名前、どうして達也なんだろう。TじゃなくてSであるべきでは…?)

(司波だからSはSか?シルバーもSだ…うん、お兄様はエスだ…)

 

「…寝ましょう」

 

だめだ。思考がおかしくなっている。旅行先だからかな。今すぐ寝た方が良い。私は寝ることに専念した。

 

 

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