妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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古都内乱編⑭

 

「深雪姉様…お守りできずに申し訳ございません。…私はガーディアン失格です」

「水波ちゃん、貴女は立派に務めを果たしているわ…私こそ淑女としてこんなに動揺してしまうなんて…まだまだだわ」

 

水波ちゃんと一緒に顔を覆いながら反省会。

その間お兄様と光宣君は目的をちゃんと果たそうとしていて、観光しているように見せかけて周囲を指差しながらこういうところに潜んでいる、一人いたら30人はいる――ってそれってGのお話?光宣君による九島家ジョーク⁇

でも二人の様子を盗み見る限り真面目なお顔。真剣な横顔ですね。とても素敵で額縁に収めておきたいくらい、惚れ惚れする光景です。スチル保存システムはいつ実行されます?

周囲の女性陣のみならず男性たちだってちらりと横目でお兄様たち…というか正確に言えば光宣君だね、を見てる。

二人はスルースキルが高いから周囲なんて気にもしてない。

そんな、どう見ても真面目に周囲を見学、観察している二人が話してることがGの根城や生態の話とは。…実際話しているのはGじゃなく伝統派の人たちだけども。

Gと言えばこの世界で私はまだGを見たことはない。あの恐竜の時代さえ乗り切った彼らだ。きっと生息はしていると思うのだけど。いくら清潔を保っているキッチンでも、やつらは忍び込んでくるから。…もしやお兄様が気付かないうちにこっそり駆逐してる、とか?いや、HARが清掃中にやってくれているのか。

どちらにしても彼らの存在を見ずに暮らせる生活は素晴らしい。

…思考が逸れたおかげで冷静さを取り戻し落ち着いてきた。

うん、過ぎたことは後悔するより次に活かしましょう。大丈夫。いくらでも挽回できる。

これもいかなることにも動揺しない立派な淑女になる修行。お兄様はいつでも高い壁として立ちはだかってくれているのです。期待に応えられるよう頑張りましょう。ファイト、私。

そして当然だけれどお兄様たちはGの話を例えに出して伝統派のことなんて話してなかった。

冗談でもなく光宣君は、彼らが単独で行動する真似はせず、もし一人や少数で動いている時は罠を仕掛けている時であり、周囲を確認するように、という忠告でした。

冷静になれば光宣君がそんな冗談を言ってないことくらいわかったはずなのにね。私よりもキッチンに立つことのない光宣君の方がGの存在を知る機会はないだろうから。

だけど二人のお陰で伝統派の印象がGになりました。とりあえず一人見たら複数人潜んでいる、と。目に見えるだけが全員ではない、ということは覚えておこう。

それから何か所かアジトらしいところを巡るのだけど、神社仏閣を巡って歩いているのでお兄様がお仕事中だというのにだんだん観光気分に。

清浄な空気っていうのかな。歩くだけで気持ちが良くなってくるし、暮らしている東京に比べて緑が多いのも気分が良くなる理由なのかも。そもそもこんなに外を歩くのも久しぶりですしね。

気が付けばペアが入れ替わり、光宣君の隣にはまだ光宣君の美貌に慣れない、顔に赤みが差したままの水波ちゃんの姿が。

身体を緊張させながらも頑張って光宣君のお話し相手を務めていた。光宣君、同年代とおしゃべりすること自体が滅多にないからしゃべるのが楽しいんだろうね。

水波ちゃんは聞き上手だし、二人の相性は初めから良いようだ。…今はまだ水波ちゃんはテンパってるみたいだけどね。

そして私の隣には自然とお兄様が。

観光スポットですから人が多いということもあり、腕を絡ませカップル偽装中です。

歩くガイドブックと化したお兄様から解説をいただきながら見て回っているのだけれど…これ、普通に観光と言いませんか?

心が躍るくらい楽しんでしまっているのですけどよろしいのでしょうか。

 

「うん?そろそろ疲れたか?」

 

不安に思っているのに気づいたのか、お兄様からすかさずお声が。

このように気にかけてもらえることが嬉しいけれど、邪魔してしまっていないかしら。

 

「いいえ、疲れは感じていないのですが、その…調べものをされているというのに、私は隣で楽しんでばかりでいて…なんだか申し訳なく思えて」

 

小さな声で俯きながら答えると、お兄様は私の髪に触れ、耳にかける。

そしてむき出しになった耳に顔を寄せて囁いた。

 

「いいんだよ。お前が楽しんでくれることが俺には一番大事な任務だ」

 

甘く響く言葉に顔に熱が集まるのを感じるけれど、お兄様任務間違ってますよ。

お兄様の任務は周を探すこと。その手掛かりとして伝統派のアジトを見て回ることでしょうに。

そんな私の心を読んでか、お兄様は苦笑して。

 

「正直ここには雰囲気を掴みに来た程度だからな。資料からもそうだが、どうにも奈良に潜伏している可能性は低いと思う。だが伝統派の隠れ家がどのようなものなのかは見る見ないで違うだろう。本丸を見つけるためにも、まずはどんなものか感じるだけでも何か掴めるのではないか、とな。その程度のことだ」

 

だからそこまで血眼になって探すこともない、と。

…確かにここでの散策に大した収穫は――あ、一つだけ、ありましたね。

 

 

――

 

 

「司波さん!?それに、司波君も…。まさか、こんなところで会うとは」

 

高鴨神社の境内で掃き清めている青年――眼鏡はされていないけれど、司先輩ですね。

それにしても原作ではお兄様しか話しかけられていなかったはずだけど…と思ったが、私が隣にいては先にこちらに視線が来るのはおかしなことではない、か。

お兄様の腕をスッと離して軽く頭をお兄様に向けて下げ、先輩にはしっかりと一礼してから水波ちゃんの元へと下がる。

お兄様からも引き止められることは無かった。

 

「あちらの方は」

「昨年まで一高に通われていた先輩です。諸事情があってお引越しされたと聞いておりましたが、このような偶然もあるのですね」

 

光宣君の質問に応え、水波ちゃんがあの件か、と若干目が鋭くなった。彼女には事件の概要を教えているからすぐに分かったのだろう。問題を起こして退学した生徒は彼だけだから。

でもそんな怖いお顔しなくても大丈夫だよ。彼自身は催眠術で操られてしまった、正義感が強かったことで良いように使われてしまっただけの善良な人なのだ。

今お兄様と話している態度を見ても良い人なのが分かる。後輩相手に礼儀をもって接し、頭を下げられるなんて、縦社会を重んじる運動部の主将が簡単にできる事じゃない。先輩は、あの時のことを反省し、前進しているようだった。

過去に主に迷惑をかけた人間、とハリネズミのように警戒しているけれど落ち着いて水波ちゃん、と手を握れば、驚かれたけど振り払われることはなかった。ちょっと恥ずかしそうではあるけれど。可愛いね。

それをじっと光宣君が見つめているので、調子に乗ってみた。

 

「光宣君も?」

 

ちょっと茶目っ気を出して手を差し出してみる。三人仲良くお手手繋いでもいいのよ、と。

光宣君は目をぱちくり。そんなつもりで見つめてたわけじゃなかっただろうからね。でも女の子に恥をかかせるようなタイプじゃない彼は、その宙に浮いたままの手を取らないという選択肢は無かったようだ。

それでも緊張しないわけではないのだろう、おずおずと手を伸ばして触れた。

 

「…あら?」

 

珍しくて思わず声が出る。

すると共鳴したかのように水波ちゃんと光宣君が首を傾げた。同じ方向でシンクロして可愛らしい。ってそうじゃなかった。

 

「いえね、水波ちゃんと私は冷え性だから手の温度がほとんど変わらないのは知っていたのだけど、光宣君も同じくらいだったから」

 

勝手に光宣君もお兄様と同じくらい温かいと思い込んでいた。

滅多に触れる機会が無いのだけど、男性って結構手が温かいイメージ。

 

「そう、なんですか?あまり握手する機会もないので比べることができないのですが」

 

おおう…ここでも人と関わらないできた過去がぶっこまれてくる。

なんていうか、光宣君も薄幸の美少年を地で行くよね。儚い笑みがサナトリウム系美少年。

お兄様も不幸の星のもと生まれているけど、お兄様の不幸はお兄様に近づかないと感じることもできない。

年齢を知り、落ち着き過ぎているところや、戦闘慣れしているところから察することはできるだろうけど、お兄様と光宣君はタイプが違う。環境が全く違うのだから当たり前だけれどね。

光宣君は薄幸、その美貌と時折浮かべられる笑みにより、それなりに大事にされてきただろうと多少幸が見えるけど、お兄様には薄幸どころか幸は何処状態。

…何で神様はこんなにお兄様に手厳しいのか。苦労したらそれ以上の幸せが無いと釣り合いが取れるべき幸不幸の天秤がおかしくなるでしょう?

もしお兄様の幸せが生まれ持った特殊な魔法と妹だというのなら、絶対にお兄様を幸せにしてみせるんだから。

でもその前にこちらにもお裾分け。

 

「多分二人の温度も変わらないはずよ。水波ちゃん、手を出して」

「え、ええっ?!」

「だって気になるんだもの」

 

私が何をするつもりなのか理解した水波ちゃんが一瞬にして真っ赤になったけど、無邪気を装ってお願いしてみる。…水波ちゃんを困らせたいわけじゃないの。いえ、完全に無いわけじゃないけどね。慌てる水波ちゃんも可愛いから。

だけど一番の理由は――同年代の触れ合いは成長に欠かせないと思ったから。

お兄様がそうだったように、きっと光宣君にだってこうした触れ合いは必要なはずだ。

 

「だめ?」

 

お兄様直伝のおねだりに、水波ちゃんはしばし葛藤の後、小さな声でどうぞと差し出した。

うん、ぷるぷるしてる。その様子に光宣君は口元を綻ばせながら手に取った。

一生懸命な子を見るとほっこりするよね、分かるよ光宣君。

 

「本当だ。深雪さんの言う通り、ほとんど変わりないですね」

「でしょう」

 

小さな発見だけどこういうのって共有すると特別感がある。

 

「お兄様はとても温かいから機会があったら試してみて」

「それは、気になりますね。機会があったら是非」

 

光宣君とにこにこ笑い合って、次いで困っている水波ちゃんを見て光宣君がちょっと可哀想になったのかな、困り顔。

美少年の困り顔も麗しい。宗教画とかでありそう。ああいうのってなぜか悩ましげな表情が多い印象。この光宣君を見たらどんな芸術家も彼を題材に創作活動に勤しんだことだろう。

 

「面白い体験ができたわ。水波ちゃんも光宣君もありがとう」

 

そう言って離そうとしたら、

 

「三人とも何をしているんだ?」

 

司先輩とお話していたこのタイミングでお兄様が戻ってきました。

単純に疑問に思われたようで非難しているような色はなく、おかげでこちらも気まずさを覚えずに済み笑顔で迎え入れる。

 

「三人で仲良くしておりました。――お兄様もいかがです?」

 

さっそく来たチャンスに光宣君をちらっと見ると、彼もパッと目を輝かせて、すぐに手を離して三人で作った輪をお兄様の分を開ける。

流石にここに加わることは想定していなかったようで目を開閉させていたけれど、私が期待に満ちた目で見ていることに気付いたお兄様は暫し躊躇うように間が空いたものの、私と光宣君の間に入って四人の輪を作ってくれた。

 

「わ、本当だ」

「なんだ?」

 

光宣君があげる嬉しそうな声に、お兄様は眉を顰めたけれど気分を害したようではない。

光宣君に悪意がないことが分かったからだろう。

だから光宣君も臆面もなく答えた。

 

「深雪さんから、達也さんの手は温かいと伺っていたので」

 

つい声を上げてしまいました、と照れたようにはにかむ美少年の美しさよ…。あまりの眩しさに目がつぶれるかと思った。

光宣君、ぴゅあっぴゅあだね。国宝級の純白さ。驚きの白さだ。

お兄様も珍しくたじたじだ。ただし、その動揺ぶりは妹の観察眼にしか見分けられないものだけど。

あのお兄様がどう返すべきか考えあぐねている。何と珍しい光景か。

この一部始終を収めた動画が欲しい。あそこの防犯カメラの映像買い取れないかな。

 

「ふふ、確認もできたことですし、先に進みましょうか」

 

いつまでもここでこうしているわけにはいかないし、と言えば惚けていた水波ちゃんがビクンっと震えて手を引っ込めてしまった。

どうしたのかと思えば周囲からの視線に気づいたらしい。

道の端っことはいえ絶世の美少年と美少女含めた四人がお手手繋いで微笑み合ってる空間を誰もが無視できなくて立ち止まってしまい、渋滞が起きていたのだ。

水波ちゃんはこんなに注目を浴びていたというのに惚けてしまっていたことに、恥じ入ってしまったようだ。

そして職務放棄していたという事実にショックを受け、暗い空気を背負い始めた。これは良くない。

水波ちゃんが職務放棄していたんじゃなく、私が巻き込んだことだから。

さて、どうやって持ち直してもらおう?

 

 

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