妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
流石人気の観光地。どこに行っても視線が凄いね。私たちが歩くたびに渋滞が発生。道は空けてもらえるから歩くのには問題ないのだけどね。近寄ると本能によってか後退りされます。
お兄様は平然と、水波ちゃんは多少居心地が悪そうだけれど任務だと気を張った状態で。
なんとかホテルの到着し、温泉を利用する受付を通ってレンタルをして。
荷物は宿泊先から直接送ってもらっているので奈良駅に到着しているだろうから、お風呂セット一式は借りるしかない。
まあこういうところで自前の物を持ち込むのは地元民くらいなもので、観光地のホテルにまでくる地元民は少ない。レンタルがほぼだろう。
運動量で言えばお兄様の方が激しかったと思うのだけど、お兄様はレンタルしなかった。
お風呂に入るつもりは初めからなく、お話しがメインだっただろうから。
というわけで水波ちゃんを連れて温泉へ。
…一応だけど、原作お兄様が懸念していた家族風呂に誘われるんじゃないかって警戒はしなくて結構ですよ。入ろうなんてちっとも思ってないんだからね。
いえ、ツンデレではなく、お兄様とお風呂なんて失神しないわけがない。想像しただけでも恥ずか死にそう。
先日の、一緒にベッドで寝ていたという事実を聞いただけでも失神レベルなのに、湯着を着ているからといってお兄様と温泉なんて入れるわけがない。
お兄様の水着姿を見るだけでも失神した私だよ。湯着なんてあんな頼りない布一枚がお兄様の身体を隠しきれるわけがない。
水で張り付いた姿を想像するだけでも――やめよう。このままじゃ痴女だ。オタクどころじゃない。変態であっても紳士淑女であれ。
水波ちゃんと脱衣所で着替え、(手伝おうとするのは注目も凄そうなので止めてもらった。というか恥ずかしいのでね)二人湯着の姿になって向かうのだけど、脱衣所を出た瞬間からですね、ほう、と漏れる吐息と共に熱い視線が。さっきの市街地とはまた違う類の視線だ。
…うん、学校の女子更衣室よりも身の危険を感じるのは気のせいかな。
水波ちゃんが体を緊張させて付いてくるけれど、これでは全然休ませることになってないね。
――営業妨害になるかもだけど原作通り人払いさせていただきましょうか。
わざとらしく見えないようにさりげなく纏めた髪から漏れたひと房を耳にかけながら、そこまで短くない丈の湯着で歩幅を大きくしてちらりと白い腿を覗かせて歩けば、周囲の視線が釘付けになった後、その場で崩れ落ちたり(腰が砕けた模様)、俯いて私はノーマルっ!と呪文を唱えるお姉さま方の姿がいくつも見受けられた。
すまないね。深雪ちゃんの暴力的な美しさのあまり、あなた達の性癖を捻じ曲げるようなことをして。
入浴前からバタバタと人がいなくなる。残っているのはお年を召されたご婦人方なのだけれど、こちらは両手を合わせて拝まれていますね。
天女だ女神だ吉祥天だと色々言われているようだけど、私、人間。神様やその眷属違う。
騒々しいのをなるべく視界に収めないようにして、周囲を気にしない風を装って体を清めて湯船に向かえば任務完了。この広い大浴場に人っ子一人いなくなっていた。
…なんということでしょう。作戦通りではあるけれどこれって本当に立派な営業妨害では?…うん、気にしない方向で。私たちもゆっくり休みたいのです。
「水波ちゃん、まだ少し早いけど、今日はお疲れ様」
労うと水波ちゃんは恐縮するように身を縮こまらせて。
「…深雪様の盾にもなれず、むしろ行動を妨げるような真似をして、誠に申し訳ございませんでした」
頬を上気させて視線を逸らせているのは温泉に浸かったことで血行が良くなったということよね?
手を握りしめているのはあの時の手の感触を思い出したとか、今更私の身体が直視できないわけじゃないわよね⁇水波ちゃんには毎晩マッサージをしてもらっている間柄だもの。…一緒にお風呂入ることは初めてだけど。
「そんなことないわ。貴女が自らの身を顧みず、覚悟をもって護衛に当たってくれた。これは十分にすごいことよ。誇りこそすれ恥じる必要なんてない。――でも、あの時のようなことは二度と無いことを望むわ」
「…はい、あのような失態――」
「違うわ、水波ちゃん」
謝罪しようとする水波ちゃんの言葉を遮って止めた。
お湯の中で動くとひらひらと湯着が舞い、本当に羽衣のように見える。
水の抵抗を感じながら体を水波ちゃんと向かい合うように移動して。
「貴女が私の身を守ろうと自身を犠牲にしようとしたことが、二度と無いことを私は望むの」
真直ぐと見つめて真剣に返せば、水波ちゃんも先ほどまでの姿が嘘のようにすっと姿勢を正し、真剣な表情で返した。
「それは――申し訳ございません。私の一番は貴女をお守りすること。たとえこの命が散ろうとも、貴女様の壁になれたのであれば、その少しでも稼いだ時間で達也様が深雪様をお守りするでしょう。その一瞬でも稼ぎ出せれば私は!」
「そんなこと言わないで。――水波ちゃん、私はもっと過酷なことを貴女に望むわ。
もっと、もっと強くおなりなさい。自身の身を犠牲にしなくとも私を守り切れるくらい、お兄様とは違う守り方で、貴女は私を守るの。
命令よ。強くなって。そして私を守ってちょうだい」
なんて身勝手なお願い、命令なのだろう。
努力してここまで上り詰めた水波ちゃんにまだ上を目指せと、無茶を言う。
でも、何も起きない、起こさせないと思っていてもあの瞬間は肝が冷えたのだ。水波ちゃんが、身を挺して守ろうとしたあの一瞬。
この子はためらいなく自身の命を差し出すのだ、と主として命を預かっていることを改めて認識させられた。
沖縄のあの日を境に、自分の命にはお兄様の命が付随していることは認識している。
私が死ぬということはお兄様に絶望を与えるものだと理解した。
お兄様の分だけでも重いのに、今回の件で水波ちゃんの分も背負っていたのかと、自覚させられた。
だからこそ、いつもなら躊躇う命令という形をとってでもお願いする。
どうか、強くなって、と。
私の無茶ぶりな命令を聞いた水波ちゃんは、視線を下して俯いた。
…やっぱり、こんな我儘主に嫌気が差しただろうか。
どうしよう、フォローを入れるべき?でもこれ以上何か言い募ったらそれはそれで主としてブレブレになって嫌われない⁇
不安になって胸の前で手を握ってしまう。
きっと、時間にして十秒ほどだったと思うのだけど、その十倍は長く感じた。
「…ります」
水波ちゃんの小さな声に、ピクリと反応し湯船を揺らしてしまった。
だけどその小さな波を打ち消すようにさらに水波ちゃんが波を起こす。
私の手を両手で包み込むと、固く決意した表情で。
「強くなります!必ずや、深雪様をお守りできるよう精進します!」
「きっと苦労するわ」
「構いません」
「傷つくことだって」
「承知の上です」
…ああ、しまった。今度はプロポーズみたい、なんて茶化すことなどできない。
握られたまま重なった手に額を乗せて。
「貴女の主として相応しいよう、私も努力するわ」
貴女に恥じぬ主となる、と今度は私からも誓った。
――
どれくらい、そうしていただろうか。体がじんわりと熱くなってきた。これは温泉の温かさだけではないと、チラリと見える水波ちゃんの肌の色からもわかる。
「…私たち、また恥ずかしいことしてるわね」
「そ、そろそろ上がりましょうか」
二人して真っ赤だったのでちょっとぬるめのシャワーを浴びてから浴場を出たのだけれど。
「そういえば全くお客さんたち戻ってこなかったわね」
きっと新規のお客さんだっていたはずなのに、と思っていたら脱衣所で先ほどのご婦人方が…通行止め?をしていた。
…この先女神が入浴中だから人は入浴を待つように?なんて言葉が耳に入る。
これはまずい。水波ちゃんと顔を見合わせて急いで着替えて淑女の仮面を被り、水波ちゃんも心得ているのかポーカーフェイスを被って素知らぬ顔をして集団の前に姿を現す。
そして、この状況に不思議そうに首を傾げつつ、視線の合ったご婦人に微笑みかけてその横を通り過ぎた。
できるだけ指先に至るまで優雅さを心がけて。…叔母様の前にいるくらいの緊張感をもって。
角を曲がって彼女たちの視線が切れると、水波ちゃんと視線を合わせ――二人して早歩きでこの場を去る。
背後で歓声が上がっているのなんて聞いてない。本物だ!なんて騒ぎ聞こえていません。
「水波ちゃん。急いでお兄様たちと合流するわよ」
「はい!」
こっち!と私の優秀なお兄様センサー…なんて便利なものはなく、単純に待ち合わせ場所に向かう。
でも近づくと不思議とお兄様がこっちにいる気がするってわかるんだからお兄様センサーはばっちりあるんだろうなぁ。
犬の帰省本能、みたいな?
「お兄様!」
「深雪?水波もどうした、そんなに急いで」
お兄様が光宣君との歓談を中断して立ち上がったけれど、ごめんなさい。これなんて説明すればいいんだろう?
「達也兄様、いつも以上のパニックが起こっております。至急この施設を脱出しなければなりません」
水波ちゃんの固い声に、しかしそれで通じる?と思ったらお兄様は目を細められて私をじっと見ると、そういうことか、と。
どういうこと?なぜそれで通じるの⁇光宣君もわかっていないなりに場の空気を読んでかすっと立ち上がり、こっちです、と人通りの少なそうな道を案内してくれるようだ。
なんか、連携が生まれてますね。
そして駐車場にはリムジンが待機しているのでそれに乗り込む。
「それで、深雪の美貌で客がパニックを起こし騒動にでもなったか?」
「…お兄様、私を何だとお思いで?」
「世界一美しい俺の妹」
…お兄様、真顔で言い切った。水波ちゃんは大きく頷かないで。隣にも美しい人がいるでしょう?
「お兄様の妹であることは否定の言葉もありませんが、世界一というのは言いすぎでしょう。光宣君がいますもの」
「え、僕ですか?その、僕よりも深雪さんの方が美しいと思いますけれど」
こっちは若干の照れが入りましたがその分…うん、キラキラが増しますね。やはり光宣君の方が神々しくて美しいと思うのだけど。
「二人とも人間離れした美しさではあるが、俺は男だからな。どうしても深雪に軍配が上がる」
「それを言ったら私は女ですもの。水波ちゃんと合わせて二票です」
勝手に水波ちゃんの投票権を借りて光宣君に投じる。
「ならこちらも二票なんだから同率二人が一位ということで間違ってはいないな」
…いったい何の話をしていたんでしたっけ。お兄様が真面目なお顔で変なお話をするから混乱してしまった。
「深雪姉様が、あまりの美しさに高齢の女性方に女神と勘違いされてしまいまして、自主的に他の客が湯殿に入らないよう封鎖されてしまったのです。誰も入ってこないことに、また結界でも張られたのでは、とも疑ったのですが…」
「厚意で入場をストップしていた、と。客同士でよくトラブルにならなかったな」
「私たちが上がった時には一触即発の状態だったのですが、その…湯上りの深雪姉様の姿を見た客たちが放心した後、納得を」
「…だから拝まれる前に脱出した、と。――災難だったな」
隣に座るお兄様に頭を撫でられ慰められた。
ええ、ええ。慌てましたとも。光宣君も宗教に祀り上げられてもおかしくない美貌だけれど、深雪ちゃんもそうなのだと改めて実感させられました。他人事じゃなかった。
「今度は個室を取ってゆっくり入るか」
お兄様、何もそこまでしなくとも…。次があるとも思えないのだけど。
「その方が良いかもしれません。本日は危機感を覚えました」
水波ちゃんまで…。そんな深刻な問題でもないでしょうに。
「確かに、僕もそう言えば大衆浴場を使ったことは一、二回しかありません」
光宣君も苦労してるね…。そして男性の方はまた危なさが違う気がします。私にはない苦労してそう。
せっかくの温泉で体は休めたはずなのに精神疲労は増したこの不思議。
どうにも深雪ちゃんボディと温泉は相性が良くないらしい。残念だ。温泉大好きなのに。
「でも、光宣君が紹介してくれただけあっていいお湯だったわ。ありがとう」
「それならよかったです」
失敗した、と落ち込む光宣君だけど、光宣君は何も悪くない。というより今回のことで悪い人など誰もいない。
もうお別れの時間が迫っているのにこんなことで悲しい顔のままお別れするのは嫌だから。何か別の話題を振りましょうかね。
「お兄様も男の子同士のお話はできましたか?」
「なんだ、その男同士というのは」
「だって、お兄様はいつも女の子ばかりに囲まれていらっしゃるんですもの」
「…不可抗力だ」
「ふふ、それだけお兄様が頼りにされているということですものね」
「分かっていて揶揄うとは、深雪は悪い子だな」
空気を変えようとフォローを入れようとしただけなのにお兄様から不穏な空気が。これはよろしくない気配。
気配だけでなく怪しげな手が延びかけたその時。
「達也兄様、深雪姉様を困らせるようなことはなさらないでください」
水波ちゃんがお兄様から伸ばされる手をぴしゃりと撥ね退けた。すごい!今の水波ちゃんは強い!
守るぞ!という気概が感じられます。だけど相手はお兄様だから。お兄様は敵じゃないよ。
でも助かりました、ありがとう。
そんなやり取りをしていたら、光宣君がくすっと笑った。
「ふふ、すみません。なんだか皆さんのやり取りが面白くて」
美少年の微笑みはお布施を払わないといけない気分になるよね。
よかった。気分が明るくなったみたい。
「本当にお二人の兄妹仲はとてもいいのですね。響子姉さんに聞いていましたけれど、想像がつかなくて」
「藤林さんは大げさに話すこともあるからな」
お兄様が何やらしれっと返しているけれど、光宣君はニコニコと流している。
藤林さん、一体何を言ったんだろう。よくお話はするけれど私が直接対面した回数はかなり少ない。基本私たちの揃ったところもさほど見ていないはずなのに何を話されたというのか。
…そう言えば、お兄様に自慢されたとか言っていたような。つまりお兄様のシスコン発言が原因では?
「それに、水波さんと達也さんの関係性も、信頼しているからこそのやり取りのようで羨ましいです」
あらまあ。
それはどちらを羨ましく思われました?もしやもうすでにこの時点で水波ちゃんが気になってますか⁇今日は二人での行動も多かったものね。
やだ、どうしましょう。ワクワクが止まりません。
そうなんですよ。お兄様が忠告を大人しく聞いたり、または往なしたりするのも心を許している証拠。
水波ちゃんも、お兄様が四葉の直系であり私のお兄様だと知りつつも強気で出られるのは、お兄様との良好な関係性が築けているということに他ならない。
いい関係性だよね!私が結びました。どや!
「そしてそれを嬉しそうに見つめる深雪さんはとても慈愛に満ちていてお美しいと思います」
と、ニコニコ見つめていたらこっちにまで飛び火が。
あまりにストレートな言葉にほんのり頬が染まる。…光宣君の照れが移ったみたい。
動揺して顔を両手で挟んで落ち着かせていると、私と光宣君の間に割り込むように肩を入れるお兄様の姿が。
「光宣、深雪を口説くつもりなら、俺を倒してもらおうか」
(お、お兄様!光宣君がそんなつもりで言ったのではないことはお判りでしょうに!)
口角を上げて言っていることから冗談だとわかるけど心臓に悪い!
水波ちゃんも緊張感出さなくていいから。そんな戦い起きないし。
ほら、光宣君を見て。お目目ぱちくりから真っ赤になって、その後青くなってるから。
「光宣君、お兄様のジョークだから真に受けちゃダメよ」
「うん?俺は深雪と付き合う相手にはいつだって本気だぞ。俺を倒せるくらいじゃないとお前を任せられない」
「そんなことを言って…。大体、そんな条件では誰とも付き合えないではないですか」
まだまだ成長途中とはいえ最強チートのお兄様に誰が敵うというの?先生とか?絶好調の光宣君もチートキャラだけども。
というより誰かとお付き合いする予定は無いから問題にもならないのだけどね。
「もう、お兄様ったら。光宣君も気にしないでね」
光宜君はこのやり取りの間に青い顔がすっかり元に戻って、ふわりと笑う。
「やっぱり、達也さんは面白いですね。とても興味深い」
…うん?あれ?光宣君お兄様にラブです?あら、大変、吉田くんに強力なライバルが?(違う)
というかこんなに仲が良くなるなんて、私たちがいない間二人は何を話していたんだろう。
気になるけれど、あっという間に駅に到着してしまいました。予定時刻より早いけれど、余裕あるに越したことはない。
「…ではここで。今日はとても楽しかったです」
光宣君のその言葉には嘘が無いように思う。
でも寂しいのか彼の頭の耳は垂れ下がり、尻尾はしゅん、と力が無い。…パレードで幻覚見てるのかな、と疑いたくなるほどはっきりくっきり落ち込み具合が丸わかりです。
きゅう、と心臓が掴まれる可愛さ。恐ろしいね。うちに連れて帰りたいと思ってしまう愛らしさ。うずうずする手を抑えるのに必死です。
「いや、こちらこそ助かった」
お兄様もただの社交辞令ではなく本心で答えていた。
襲われたりしたけれど、おかげで現地に来なければ知り得なかったことを知ることもできたのでお兄様にとっても実りある二日間だっただろう。
感謝の言葉受けた光宣君は、もうお別れなのだと切なげに瞳を揺らし、別れを惜しむ。
…横で見ているだけだけど、よくこの視線を向けられてお兄様は正気を保っていられるね。
一歩下がっている水波ちゃんなんて直撃を避けるためか私を盾にしてチラチラと覗いている気配。リムジンの窓に映っているのを見ているのかな。こちらからもよく見える。
主を盾にするとは。水波ちゃん本当に強くなったね。あらゆる意味で。
以前ならどんな時でも主を盾にするなんてできない!精神だったけど臨機応変を覚えられましたか。図太くなった、とも言う。でもいい成長だと思うよ。
「また、お会いできますか?」
「まだ用事は終わっていないからな。近々こっちに来ることになる。その時はまた世話になると思う」
目的の周の居場所はまだ見つかっていませんからね。
「是非!何でもおっしゃってください。僕でお役に立てることでしたらお手伝いしますから」
お兄様からの頼りにするとの言葉にシャキッと背筋を伸ばす光宣君。
わんこが元気になりましたね。しおしおだったお耳がピンと立って尻尾がぶんぶん振られてます。
藤林さんよりもお兄様の方が調教師でした?お兄様の周りに私を筆頭にわんこがいっぱい。
私にほのかちゃん、中条先輩にケント君の小型犬コンビ。水波ちゃんは四葉のイメージのせいか猟犬タイプかな。いや、可愛いから同じお仕事する犬でも牧羊犬タイプ。
中身はきりっとしていても可愛いコーギーかコリーか。・・・パートナーがゴールデンレトリバーならコリーだと同じ長毛種で毛が絡まって大変だろうからコーギーかな。
なんて私が妄想している間に挨拶が終わりそうになっていた。
「ありがとう。ではまたな」
「はい!またその時に」
おっと、このままお別れしそうになってしまった。一言だけ。
「光宣君、日記を書いたら送るから、よろしくね」
「!はい、もちろんそちらも楽しみにしています!」
学生同士らしく、手を振ってお別れをして。
向かったのは駅構内のホームではなく――お土産屋さんでした。
「時間も余裕があるし、ゆっくり選ぶと良い」
前回の旅行で行くことのできなかったお土産屋さんに!お兄様、私がこっそり残念に思っていたことに気付いてくださってた。
喜びの余り、お兄様の手を握って感謝を伝える。
「ありがとうございます!」
「そんなに喜んでもらえるとはな」
苦笑しながら手を繋いでいざ店内へ。
あの…掴んでおいてなんですが、手は離してくださってもいいのですけれど。そんなにあちこち動き回ると思われたかな。
さっきの妄想のせいでこの手がリードに思えてしょうがない。恥ずかしさよりも戸惑いが大きい。
でもせっかくのお土産屋さん。時間も限られていることだし色々見て回ることに専念しよう。
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