妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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この世界で元号は架空のものになっているのを忘れて書いておりました。スルーしていただけると助かります。


古都内乱編⑲

 

 

家に帰るまでが旅行です。

ということで帰って参りました我が家!

楽しかったぁ。まさか星の砂がまだ生き残っていたとは。あのお土産って海が近くないと無いと思ってた。

そもそも奈良に海ってないよね?一体どこの砂なのか。買わなかったけれどつい嬉しくてじっと見つめてしまった。

あと名前入りキーホルダーね。

この時代、名前は一周回ってキラキラネームはほとんど無くなっていた。アレも妙なブームだった。いや、過去も結構な名前あったけどね。

買ったのは消え物ばかり。鹿の描かれたクッキーにチョコクランチ、お煎餅などオーソドックス系。この間の先生にいただいたのとはまた違う定番チョイスを。

生徒会にお土産として買っていくべきか悩んだけれど、何故奈良まで行ったかという話になったら面倒だということで手作りおやつを差し入れにする予定。

夕食はリニア列車の車内販売のお弁当で済ませた。ちょうど三種類あったので全員バラバラに頼んでおかずを交換し合った。楽しかった。お弁当も旅行の醍醐味だよね。

楽しい、良い思い出ばかりの二日間だった。

温泉に入ったのでお風呂には入らず、今日の水波ちゃんのお仕事はお終いです。慣れない旅行で疲れたでしょう。ゆっくり休んで、と半強制的に休んでもらった。

ずっと緊張の連続でしたからね。九島家訪問から、敵の出現や、温泉での騒動だったり。光宣君相手にはずっと緊張しっぱなしだったしね。

私もそれなりに疲れたけれど、気分が高揚しているせいか眠気が全く来ない。

何か飲み物でも淹れてリビングで落ち着いてから寝ようか、と今日はハーブティーを淹れようとキッチンでガラスのティーポットを準備していたらお兄様に声を掛けられた。

 

「そのポットを見るのは久しぶりだな」

「!お風呂から上がられたのですね。お兄様もいかがです?今日はレモングラスのハーブティーです」

「お願いするよ」

「かしこまりました」

 

うーん、お風呂上がりのお兄様はきちんと拭われていても水気があるというか、色っぽいよね。

身体が温まっているからそう見えるのか…はたまた私の煩悩のせいか。

リビングで待つお兄様に心を込めて一杯を注いで持って行く。

深々と座っているお兄様を見られるのはこの一瞬だけで、私が近づくと身を起こしてしまう。

そのままの姿勢でいてくれてもいいのだけれど、とも思うが、以前はその姿さえ見せてくれなかったことを考えるとかなり譲歩してくださっているのだと思う。

私の、お兄様のリラックスした姿が見たいという願いを少しでも叶えてくれているのだ。

それが嬉しくて口元が緩くなってしまう。

 

「お待たせいたしました」

「いい香りだ」

 

お兄様の前に置いて、さて、私は今日はどこに…なんて思う隙も無いくらい、お兄様が隣をぽんぽん叩く。そこに座れということですね。…やっぱり私調教されているのかしら。

 

「どうした?浮かない顔に変わってしまったが」

「いえ…お兄様に飼いならされ――いえ、なんでもありません」

 

危ない、また変なことを口走りそうになっていた。慌てて止めたけど、残念。お兄様の前で調教などという言葉は言えない、と変換することに気を取られたばかりに八割言ってから、そもそも正直に言う必要も無かったと止めたのだけど時すでに遅し。お兄様もその後に続く言葉が何だったか気づいた模様。固まりましたね。申し訳ない。

黙ってお兄様の隣に腰を下ろして、お茶に口を付けたけど、今淹れたてだからとっても熱い。動揺しすぎだ。手を当てて冷やす。こういう時冷え性便利だね。

 

「火傷してないか?」

「大丈夫です。少しひりひりするだけですから」

 

お兄様が固まりから復活。流石お兄様。妹のちょっとした粗相にも気づいて心配してくれる。優しい。

 

「見せてみなさい」

「大丈夫ですから」

「深雪」

 

…うう、大したことないのに。

ゆっくりと手を離すとお兄様が顎に近い頬に手を添えてじっくりと唇を見つめられた。

 

「ちょっと赤くなっているね」

 

そう言って親指で軽く撫でられる。

 

「痛くはないか?」

「…はい」

 

痛くはないけど大変恥ずかしいです。触診なんだから恥ずかしがることは無いはず、と言い聞かせてもお兄様の顔が近いのですよ。

…変なことを口走った罰ですかね。反省。今年は発言に気をつけていたのに。

 

「深雪はあわてんぼうだね」

「…すみません」

 

ゆっくりと頬の手が外れて頭を撫でられた。

 

「それにしても、なんだって俺が深雪を飼い馴らすなんて発言に繋がったんだ」

 

…結局説明から逃れられなかった。

仕方が無いので今日の妄想を搔い摘んで説明する。光宣君がゴールデンレトリバーに見えることは伝えていたので、いいか、と。開き直ったとも言う。

 

「光宣が犬っぽい、というのはなんとなくわからなくもないが。…深雪の発言は時々危ないから気をつけなさい」

 

はい。よく肝に銘じておきます。

反省を示すと、お兄様もお茶を口に含む。そしてまだ熱いからもうちょっと待つように言われました。…過保護が発動してしまった。

 

「それにしても交換日記なんて、よく知っていたな」

「昔読んだ本に書いてあったんです」

 

前世が懐かしくて、歴史書を読んだらあったんですよね。歴史書と言っても文化を知ろう、みたいな子供向けのものだったけど。

旧遺物扱いでした。ノート自体がもうほとんど使わなくなっているからね。昭和も平成も令和も明治大正と同じ分類。一緒くたにされるのはなぁ、と思わなくもないけれど50年も経てば丸っと一緒になりますよね。

流石に江戸は一緒ではなかったけどね。着物文化は一緒にはならなかったらしい。

 

「深雪は随分と光宣が気になっているようだね」

「そうですね。彼は――何というか危うく見えてしまうんです」

 

お兄様相手だから下手に誤魔化すこともない。知っている全てお話することはできないけれど、今の私が感じていることを情報として伝えることは必要だと思うから。

 

「私には、彼の軋みが感じられてしまうのです」

 

私が感じたままの光宣君の状態を伝えた。

彼の身体がボロボロに感じてしまうことを。それに対し、私が抱いた彼への想いも。

 

「傷ついている彼を見ていると、心が疼くのです。心配になる、優しくしたくなる――母性本能とでも言うのでしょうか。彼を慈しみたくなるのです」

 

上手く纏められず、とりとめのない言葉をそのまま伝えた。

お兄様はそれを静かに聞いて、すべて聞き終わるとお茶に口を付ける。一口飲んだところで暫し目を閉じて整理をしているのか。

そしてカップを机に置いて膝の上で手を組むと前のめりになって。

 

「…深雪、それは一目惚れとは違うのかい?」

 

お兄様の口から聞きなれない言葉が飛び出した。

 

(うん?一目惚れ?もしや私に恋バナを求めてらっしゃる?)

 

確かに光宣君の美しさは尋常ではなかったですからね。どんな乙女も、それどころか男の人でさえ彼を見れば目を奪われるだろう。

残念だけれど、その期待には応えられない。

美しいモノを見て興奮は覚えてもときめきは覚えなかったから。

私にとって光宣君は恋愛対象に映らないらしい。

 

「何と言えばよろしいのでしょう。これも感覚としか言い様がないのですが、愛情を向けることはできるでしょうが恋情を抱けるかと言われるとそこに繋がらないのです。

例えば、彼が水波ちゃんと付き合うとします。私はそれを手放しで祝うことができるでしょう。幸せになってもらいたい、と願うことができる。これは恋をしていたらできないことだと思うのです」

 

恋をしていたなら他の誰かと付き合うことを祝福などできようはずがない。

想像するだけで胸が苦しくなるか、嫉妬の炎が燃え上がるか。

想像上光宣君のお相手を水波ちゃんにしたのは身近な女の子、ということでさらっと言ってみたけれど、私の中ではベストカップル。それ以外に考えられない。ぜひ彼らにも幸せになってもらいたいところ。

 

「……そう、か。そうだな」

 

こんな説明だが一応納得いただけた、ということでいいだろうか。

私にとって彼はすでに庇護しなければならない相手になっていた。

お兄様を守りたい、という気持ちとはまた別の、守ってあげたいという気持ち。

お兄様を幸せにしたい、と光宣君に幸せになってもらいたい。…この差は私の中ではかなりの別物なのだが、言葉って難しい。

多分私は恥ずかしさはあるだろうけれど光宣君を抱きしめられる。だけどお兄様相手のようにドキドキはしないと思うのだ。

 

「やはり、第一印象の影響でしょうか。ゴールデンレトリバーから抜け出せないのですよね。お別れの際には耳としっぽがくっきりと見えましたもの」

「ああ、それは俺も感じたな。光宣は恐らく頼られることが好きなんだろう」

 

お兄様もそう思われたんだ。可愛らしかったものね。一つ下とは思えない純粋さ。

心を開いた相手にはあけっぴろげになるタイプ。そういったところもゴールデンレトリバー。可愛い。

 

「うん。そうか。深雪にとって光宣は愛玩対象なんだな」

「…お兄様、それはちょっと印象がよろしくありません。せめて庇護対象と」

 

お兄様は私を何だと思っているのか。流石に同年代の男の子相手に愛玩だなんて発言はよろしくない。私はどんな悪女です?

お兄様は態と言ったのか、口元が笑っていた。

 

「だから私の恋人候補なんて勘違いをして決闘なんてなさらないでくださいませね。もしお兄様がそのようなことで光宜君を攻撃しようとしたら、私は光宣君の前に立ちはだかってお兄様を止めますよ」

 

お兄様が私を攻撃することだけは無いという前提があるからこそできる壁役です。

お兄様自身、そんなことにはならないとわかっているから口元を綻ばせた。

 

「…まるで子を守る母のようだな」

「だから言いましたでしょう。庇護対象なのです」

 

わざとらしく大げさに言えば、今度は肩の力も抜けたよう。安堵の表情を浮かべられていた。

そもそも心配することなんて何もなかったというのに。お兄様も心配性だ。

 

「深雪が交換日記を言い出したのは、もしかして水波のためでもあるのか?」

 

あら、お兄様頭の回転が正常に戻りました?察しが良くなりました。というか水波ちゃんの恋バナもここでしちゃいます?

 

「…ちょっとしたきっかけになれば、と思わなくもない、と言ったところでしょうか」

 

お節介でしょうか、と言えばお兄様はいいんじゃないか、と。…お兄様、他人事だからって軽いお返事。

以前、友人の恋は応援しない、と公言したことがあるが、身内は別枠。特にお兄様の恋なら全力でパックアップする所存。言えないけど。

 

「水波は言わずもがなだったが、光宣もなんだかんだと気にかけてくれていたしな」

 

そうだね。私がお兄様のお話を聞いている間、水波ちゃんの相手をしてくれたのは光宣君だった。

…お兄様、やっぱり恋バナ好き?というより他人の好意には気づくんだね。

原作でも吉田くんだったり水波ちゃんのこともお兄様自力で気づいてましたもんね。

自身で気づけているのがほのかちゃんだけっていうのが不思議でしょうが無いのだけれど。

深雪ちゃんに関しては妹だからが前提なので別として、七草先輩には気づけないのはどうしてだろう。

ありえないと思い込んでた、とか?七草とか家の関係じゃなく、あの人が自分を好きになるはずが無いと思い込むような前提が無い限り、あれだけあからさまなんだから気付かないってことは無いと思うのだけど。

この間の水着売り場の件だってそう。

もしお兄様のポジションに十文字先輩がいたとしてもあそこまで取り乱したかと言えば、恐らく彼女は悲鳴を上げなかっただろう。

…いや、十文字先輩だと例えが難しいか。服部先輩なら揶揄っただろうね。一年の時の九校戦に向かうバスでも揶揄われていたし。

同じ年下で、弟として見ているというのならあんな真っ赤になって悲鳴を上げないだろう。…そこの場面を直接見てないけどね。

きっと涙目で顔を真っ赤にして悲鳴を上げただろうと想像がつく。生徒会選挙の際だってあんなに真っ赤になっていたもの。

だから、お兄様がほのかちゃん並みに矢印を向けられているにもかかわらず、その好意に気付かないなんてあり得るのだろうか。

って、原作とこちらの現実がごっちゃになってしまった。でも、そうなのだ。

原作より感情が豊かになったお兄様は人の感情にも理解を示すようになっている。だから色々と気づいてもいいと思うのだけど。

他にも原作だとエリカちゃんね。

エリカちゃんも多分、お兄様が押せばお付き合いできたんじゃないかな、と思っている。西城くんとの関係も素敵だけれど、初めはお兄様に惹かれていたように見えた。想いは芽吹いていたと思う。

だけど、その芽を早々に自分で摘み取っていた。彼女は、諦めることを知っていたから。

あとはリーナちゃんも、たった三か月――実質二か月だけど、それでも十分お兄様に惹かれていた。

千秋ちゃんだって、初めは憧れていて、途中で憎しみに翻ってしまったけれど、それまでは恋をしていた。

うーん、やっぱりお兄様は自分のことに関しては鈍いの?自分に向けられているモノでも条件が何かしらあって、そこをクリアしないと気付かない、みたいな?…わからなくなってきた。

お兄様の気付けるラインは何処からなんだろう?

 

「深雪、どうした?」

「いえ、日記には何を書こうかと思いまして。まずはあいさつ代わりに今日の日記から書いてみようと思ったのですが、今日はたくさんあり過ぎてうまくまとまりそうにありません」

「ああ、確かに。今日はいろいろあったな」

 

今度は上手く躱せた。

お兄様の自覚について考えていたなんて言えないから。

無難にこの後書く日記についてにスライドしたのだけれど、そうなんだよねぇ。書くことがたくさんあってどこから書くべきか。

それに、考えたら今日のことは皆共通で知っていることだから、改めて書くのも…でも、例題としてはわかりやすい?ううん。

 

「とりあえず書いてみたらどうだ?俺は日記の書き方を知らないが、こういうのは朝から順に時間列を並べて書くものなのか?」

「そうですね」

 

お兄様に促されるままに端末を開く。

 

 

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