妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
10月7日 日曜日 深雪
今日から交換日記を始めることになりました。
まずはお試しとしてどんなものか書いてみたいと思います。
昨日から奈良に来ています。ホテルで目覚めるのはいつも新鮮でわくわくしてしまいます。
この調子で細かく書いてしまうと原稿用紙5枚分になってしまいますので印象に残った部分だけ書きますね。
朝、光宣君の家に行ってびっくり。リムジン移動だそうで、光宣君がリムジンをバックに立っている姿がとても画になっていたのが印象でした。椅子がふかふかで中が広くてリビングにいるようなくつろぎ空間。すごかったです。
お兄様たちはお仕事をしているのに、私だけ観光気分を味わって申し訳ない気分でもありましたが、とても楽しませていただきました。奈良はとても素敵なところで見どころが多く、いつか観光目的でゆっくり見て回りたいものです。
昼食にいただいた、柿とほうれん草の白和えは衝撃でした。柿をおかずとして食べたことが無かったので。今度作ってみたいと思います。秋の味覚をたくさん食べられて、光宣君に感謝です。
途中、お邪魔虫が現れましたが、光宣君の技に圧倒されてしまいました。お兄様が凄いのはもちろん、水波ちゃんの働きも素晴らしかったのですが、圧巻、とでもいうのでしょうか。目を奪われてしまいました。センスももちろんあるのでしょうが、あそこまで鍛え上げられるには並の努力ではないでしょう。尊敬します。
…その後の温泉は気持ちのいいものでしたが、私はどうも温泉とは相性が良くないようです。以前も似たようなトラブルが。詳細は訊かないでくださいませ。悲しい思い出です。
光宣君とお別れした後、時間が余ったのでお土産物屋さんへ。たくさんお菓子があって選ぶのも面白かったです。旅行の醍醐味ですよね。光宣君はどういったお土産ものが好きですか?今度お会いする時希望の東京土産がありましたら持って行きますね。
と、こんな感じでしょうか。短くまとめたつもりでしたが、原稿用紙一枚分にはなってしまった気がします。
この行間のところに、それぞれコメントを入れたりします。今隣にお兄様がいらっしゃるのでこの先はお任せしようかと思います。
この交流が、私たちの仲を一層深めてくれることを願って。
明日も担当は私です。
「こんなかんじでしょうか」
「…すごいな。よくすらすらとこんなに書けるものだ」
お兄様に褒められたけど、なんだか気恥ずかしい。まるで小学生の日記のよう。
「いったい何をそんなに照れているんだ?上出来だと思うが」
「日記を見られながら書くというのも恥ずかしいですが、内容もまた、子供過ぎたでしょうか」
「親しみやすくていいと思うぞ。俺もこれならコメントが書きやすい」
「そう、ならよろしいのですが」
お兄様が褒めるように頭を撫でるけど、この流れだと余計に子供扱いに感じる。
思わず恨めし気にお兄様を見つめると、お兄様は苦笑して。
「子供扱いではないぞ。可愛いから愛でているだけだ」
「…それが子供扱いというのではないのですか?」
「なら深雪は水波や光宣を可愛がる時、子供扱いをしているのか」
お兄様に問い返されて、ちょっと悩んでしまった。
水波ちゃんに関しては確かに猫可愛がりをしている。でも子供扱いをしているかと問われれば、彼女に対して母性本能は反応しない。
でも、光宣君に関して言えば、
「不思議なのですが、妙なことに、光宣君に対しては幼子を相手にしているような気分になります」
「それはまた…。さっきも母性本能が、と言っていたね。異性だと思わない、ということか?」
お兄様も私の答えに困惑気味。
そうだよね。一つしか違わないのに。
「彼を異性として認識するのは難しいかもしれません」
「…だが、光宣はどうかわからないぞ」
「わからない、とは?」
「お前にとって異性と感じなくとも、あちらにとってはそうではないということだ」
何度かお前に見惚れていたしな、とお兄様は言うけれど、それを言うなら私も何度か彼には見惚れた。
だって美しいんだもの。芸術作品に目を奪われないものはいない。
「それにお前は初めから光宣に甘いからな。勘違いさせてしまうこともあるんじゃないか」
…お兄様、なんだかシスコン拗らせてます?近寄るものは全て怪しい、みたいな警戒感をお持ちの模様。いつだったかの桐原先輩の時を思い出しますね。
「先ほど水波ちゃんとの関係をお話していたではないですか」
「それはそれ、これはこれだ」
どれだ?
いつもの理論的な考えはどこにいきました⁇お兄様が迷走しています。
「ほら、お兄様。そんなことは置いておいて、コメントをお書きください。その際にはお名前も書いてくださいね」
お兄様はまだ納得いっていない様子だけれど、お願いすればそちらに意識を向けてくれた。
こういうものは急かしてはいけないのですけどね。意識を逸らすための苦肉の策です。
それからお兄様はコメントを付け足してくれた。…なんていうか、赤〇ン先生かな。添削されてる気分。
でも横顔見ていると、真剣な眼差しで…とてもカッコいい。
交換日記に記入しているから子供相手を連想して真っ先に赤〇ン先生と浮かんだけれど、お兄様の雰囲気だけを見れば研究者に見えなくもない。
これで眼鏡でもされたら似合いすぎてヤバいと思う。
目の良いお兄様がメガネを掛けるシチュなんて無いのだけど、ファッションで掛けてくれないかな。とっても似合うと思うんだ。
実は以前深雪ちゃんに似合うはず、と買って掛けたことがある。めっっっちゃ可愛かった。
態と両手で押さえてちょっとずらしたりしてね、萌え袖セーターと合わせた時の破壊力よ。
可愛い以外の何物でもなかった。このフィギュアが欲しいって思ったもの。いくらでも払うからって。
お兄様は逆に何もしないで掛けてくれるだけでいい。
普段の恰好で眼鏡かけて足を組んでその膝に手を組んでひっかけてもらって――何もしないで良いって言うわりにポーズキメてもらってるね。でも絶対似合う。
…今度プレゼントしてみようかしら。お揃いってことにしたらお兄様一回くらい掛けてくれるかな。
「深雪の視線はおしゃべりだね。俺の目がどうかしたか?」
そんなことを考えていたら視線が気になる、との声が。
「!!も、申し訳ありません!邪魔をしてしまいましたか」
「いいや、構わないよ。ただ、何が気になったのか、それを教えてくれないか」
…素直に言って引かれないかな。でも聞かれたからには答えないという選択肢は無いから。
「お兄様には眼鏡が似合いそうだな、と思いまして」
「……それは、どういう意味で?」
んん?どういう意味で、とは?お兄様の雰囲気が若干暗く、いえ、もやもやして…落ち込んでる?
「どういう、ですか?きっと素敵だろうな、と思ってのことなのですが、他に何かあるんですか?」
こっちは素直に答えた方が良い、と瞬時に判断。そのまま答えたらお兄様は少し変なお顔に。
私何か変なこと言った?…お兄様には眼鏡が似合うから掛けて欲しい、というのは変なことではあるのかもしれない。お兄様には脈絡もない話だったものね。
疑問符を浮かべているとお兄様が重そうに口を開いた。
「…以前、藤林さんに眼鏡を貰ったことがある」
「え!そうなのですか?!」
それは見たい!ぜひ見たい!!
藤林さんもお兄様に眼鏡が似合うと見抜いていたのですね、流石です!と目を輝かせてお兄様を見つめたのだけれど、続く言葉に私は目を見開くことになる。
「俺が鬼畜だから、だそうだ」
「…はい?」
ん?どういうことです?
「軍事訓練の一環で、仮想敵を想定したシミュレーションを行ったんだ。その時リーダーとしての役割を与えられたから最良の作戦を組み立てたつもりなんだが、――確かにその時実行した作戦は慈悲など一切ない鬼畜の所業と呼ばれてもおかしくない手段であったから、多少の非難は覚悟していたんだが、その作戦の後日、渡されたんだ。鬼畜には眼鏡がよく似合うから、と」
ちなみに、その時のお兄様の対戦相手のリーダーが藤林さんだった。
一応勝者へのプレゼント、ということで贈られた、らしい。
でも鬼畜だから、眼鏡とは?どんな繋がりだろう。
もしかしてそういう鬼畜な作戦を立てる人が軍の内部にいるとか?そのイメージが眼鏡を連想させる、とか。
「…そうなのですか?」
「さあ?俺にはわからん」
お兄様に思い当たる人はいないのか、はたまたそういった発想がないのか首を振られた。
…鬼畜、人でなしのイメージ?頭脳派、クール系だから眼鏡は似合うと思うけど…そもそもお兄様一体どんな作戦を実行したらそんな風に思われるの?怖いから訊かないけど。
「隙のない作戦を立てる頭脳派、という意味でしたら確かに眼鏡は似合うのではないでしょうか。眼鏡には知的なイメージがありますから」
でもそっか。お兄様、すでに眼鏡をお持ちなんだ。お掛けになったところを一度も見たことが無いけど、鬼畜っぽいからあげる、と言われて着ける人はいないか。あまり印象よろしくないものね。
藤林さん、ユニークネタグッズとして渡したのかな。
「どんな眼鏡なんです?」
「…気になるなら見るか?」
部屋にあるぞ、とお兄様からのお誘いが。
気になってるのが目に見えて伝わってしまったのだろう。お兄様は苦笑している。
見せてもらえるなら見たい!コクコク頷いて返すと、端末を閉じてお茶を飲み干した。
私も慌てて残り僅かなお茶を飲み切る。
「そんなに慌てなくてもいいのに」
「気が変わられては困りますもの」
「何か期待しているようだが、そんなに変わった代物ではないぞ」
いえ、藤林さんが選ばれている時点で十分普通ではないと推察します。きっとお兄様にお似合いの眼鏡を厳選されているはず。
カップを片付けていざお兄様の部屋へ。
――
こんなにワクワクしながらお兄様のお部屋に訪問するのは久しぶりですね。
このところ緊張を強いられる場面が多かったもので。
「座って待っていてくれ」
そう言われて躊躇いながらもベッドに座るくらいには慣れてきた部屋。
それでもこうしてお兄様の匂いに囲まれてしまうと脈拍はどうあっても上がる。
待っている間にこっそり呼吸を整えて落ち着かせようとしているのに、お兄様はどこに何が入っているのか的確に覚えているのでお目当てのものをすぐに見つけてしまう。
「これだな」
そう言って見せてくれたのは…あら、ケースからして高級品。揶揄いネタで贈るにしては本格的。
もしかして贈られたのは4月なんじゃないですか?プレゼントを贈る口実に鬼畜発言をした疑惑。
中身は、ハーフリム型のシルバーフレームの眼鏡。知的でもあるけれど、流線型な部分がスポーティーにも見える。
「流石藤林さんですね。とてもお兄様にお似合いになりそうな眼鏡です」
「そうか?」
「お兄様、掛けたことが無いんですか」
「掛けたら鬼畜に見えると言われて掛ける気にはならないな」
あら、まあ。お兄様ったらいじけてしまってつけてないらしい。そんなところも可愛らしくてキュンっとしてしまうね。
せっかく脈が落ち着くと思ったのにさっきから上がりっぱなしです。
「それはただの口実かと。このデザイン、知的でクールでもありますが、遊び心もあるおしゃれ眼鏡ですもの」
「そういったことはわからんな。お手上げだ」
言いながら、お兄様は隣に腰を下ろした。
「深雪は掛けたところが見たいのか」
「ぜひ!」
「――そうか」
頂いた時を思い出していたのか憮然とした表情だったのが、にやり、という擬音が似合う笑みに変化して。
(…わぁ。お色気が溢れておりますよお兄様。目に毒です。劇薬です。心臓が、悲鳴を上げるくらいトップスピードになるまでギアを上げましたよ)
ドキドキと心臓が激しく音を立て始めた。可愛いの直後にカッコイイのコンビネーションアタックは私のウィークポイントにクリティカルヒットです。
「なら、深雪が掛けてくれ」
そう来ましたか…。やけに近い距離で座られるなと思っておりましたが。
「ご自身で掛けた方が早いと思うのですが」
「深雪が掛けた俺を見たいように、俺も眼鏡を掛けてくれる深雪が見たい」
交換条件、ということらしい。
眼鏡を掛けられるところが見たい、とはどんな状況なんですかね。そんな変わったものは見られないと思うのだけど。
でもなんだろうね。普通に触れるより緊張するのは。
手に持つ眼鏡は軽かった。レンズも度が入っていないから厚さも無い。完全ファッション用。
レンズに指紋をつけないよう慎重に弦に触って広げて。
「そこまで壊れ物じゃないと思うが」
くすくすと笑うお兄様は、私の緊張がわかっているはずなのにとても意地悪だ。
「もう、お兄様ったら。動かないでくださいませ。とんでもないところに刺さってしまうかもしれませんよ」
「安心しろ、失敗してもすぐ修復するから」
意地悪返しで脅しを掛けたらブラックジョークで返された。
「…こんなことで軽々しく再生を持ち出さないでくださいませ」
冗談めかして不満を口にすれば、お兄様も軽くすまん、と謝罪。
すぐにお互い微笑み合って。
「じゃあ、行きますよ」
仕切り直してお兄様の前に眼鏡を持っていくのだけど――お兄様ジッとこっちを見てる。…恥ずかしいのだけど、我慢するしかない。全ては眼鏡を掛けたお兄様を見るために!耐えるのです。
全神経を集中させて震えないように細心の注意を払って――。
「………素敵です、お兄様。よくお似合いです」
予想を上回る格好良さ。それを至近距離で見られるこの特権、――督促状が送られてくるレベル。支払い切れる自信が無い。
この眼鏡、魔法がかけられてます?魅力アップと麻痺、もしくは石化とそれから――
「深雪はよく呼吸を忘れてしまうね」
どうしてかな、と弓なりの目をされてるお兄様は原因をご存じだろうに、追い打ちをかけるように顎に指を掛けて更に顔を近寄らせて。
「早く呼吸を思い出さないと、直にここに吹き込んでしまうよ」
親指でなぞる様に、ここ、と唇に触れられる。わずかにピリッとしたのは先ほどのお茶で負った火傷が原因だろうな。
痛みで思考は戻っても心と体は混乱しているため、小さくあ、と声が漏れるだけで吸うことが難しい。ここは水の中かと思うくらい息が吸えない。
「そんなに見つめられ続けると、いくら艶やかな黒曜石もかくやの美しい瞳でも渇いてしまいそうだ」
くすくすと笑い、もう片方の手で目を覆い隠された。
その瞬間、視界が遮られたことで息を吹き返す。
…息を吸った途端、苦しかったことに気付くなんて。私もお兄様同様鈍感なのだろうか疑ってしまう。
「もう大丈夫だな」
そう言って目隠しのような役割を果たしてくれた手は目の前から外れたのだけど、そうすると現れるのが、眼鏡を掛けたお兄様なわけで。
「…お兄様、残念ですが私には刺激が強すぎて直視できそうにありません」
せめて鏡か何かで反射越しに見ないと目がつぶれてしまう。メガネを掛けたお兄様が格好良すぎた。
お兄様は、なんだかなぁ、といった感じで苦笑しながら眼鏡を外し、ケースにしまった。
あ、せめて写真に残させてもらえばよかった。写真ならいくらでも眺められたのに、と悔やむ。
「…なんとなく、深雪の考えが読める気がするが、映像には残させないぞ」
「え!?どうしてです?」
お兄様が心をお読みになるのはひとまず置いておくとしても、何故残させてくれないのか。
お兄様に迫る勢いで身を寄せて仰ぎ見ると、お兄様はそこまでの勢いと思わなかったのか僅かに身を引いた。
驚いただろうに、それでもすぐに正常に戻ることができるお兄様が羨ましい。
「写真などに残したら、深雪はそちらに夢中になってしまうのだろう?それは面白くない」
至近距離でにやり、と笑う姿に、
(これは確かに眼鏡が似合う!藤林さん、お兄様に眼鏡は間違いないです。お兄様は鬼畜です!間違いない)
…またも大いに混乱が起きた。今夜のお兄様は妹を困らせて楽しむ悪いお兄様らしい。恐ろしいったならない。
「だが、たかが眼鏡一つだろう。何がそんなに違うんだ?」
ひとしきり妹を揶揄い倒したお兄様は満足したのか、いつものお兄様に戻られた。
まさか新たな属性、鬼畜を身に付けられるとは。お兄様にはまだ私の知らない属性が隠されているのかもしれない。
お兄様が戻ってきてくれたことにほっと安心しながら、今度は正面から眼鏡のなくなったお兄様の顔を見る。うん。好き。眼鏡を外そうが何だろうがお兄様相手にならいつだって心臓は駆けだす。
歩くくらいのスピードでいいのにジョギングレベルから徐々にペースを上げていく。
(…お兄様は勘違いしているよね、絶対)
初めてお兄様の目の前で息が止まったのは夏休み。お兄様の水着姿…というか裸の上半身を直視して、だけど。
続いてが横浜後。お兄様が疲労でおかしくなり、ストレス発散のお家デートを敢行した夜、スーツ姿のお兄様にノックアウトされた。
その次が初めてのパラサイトの気配に動揺した私を慰めんと涙を吸い取られたことに動揺して。
思い返してみると…結構止められてるね。お兄様いつから私の命を狙ってました⁇
「お兄様、眼鏡はただの要素の一つでしかありません。お兄様がすべての原因です」
お兄様だから、私はこうなるのだと訴える。一応否定はしておかないとね。
私はシチュ萌え大好きオタクでもありますけれど、そもそもの前提が無いと成り立たない。
「口で説明も難しいですね。お兄様、眼鏡を――あと、ジャケットもお借りできますか?」
こういうのは口で説明するよりも見た方が早いですからね。
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