妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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古都内乱編㉑

 

 

お兄様に私の伝えたいことが通じるかどうかわからないけれど、ビフォーアフター見せれば何か得られるものがあるかもしれない。…それをお兄様が知ってどうなるのかはわからないが。

私の突然の要求に、お兄様は一拍置いてから手に持っていた眼鏡をケースごと渡される。

そのままクローゼットに向かわれて、ちらっとこちらを見てから少し悩んで普段着ている黒のジャケットを取り出した。

別にジャケットじゃなくてもお兄様のサイズに合った服ならなんだって良かった。

単にお兄様に選びやすいかな、と指定しただけに過ぎない。

だからちょっとだけ驚いた。お兄様が私を見てちょっと悩んだことが。

 

(いったい何を思って振り返ってくれたのだろう)

 

聞いてみたいと思う反面、気恥ずかしくてやめた。

なんとなくだけど、そのやり取りは――「何を思って私を振り返ったの?」なんて聞くのは彼氏彼女のやり取りに思えて。

別に兄妹でもおかしなことではないと思うのだけど…いや、部屋で着せ替えごっこみたいなことしてる兄妹普通じゃないな。

…うん、今更か。

私は考えることを放棄した。旅行帰りだしね、疲れてるし。

そういえば戦闘なんてものもあった。疲労で頭が働かなくても仕方のないことだ。

戻ってきたお兄様からジャケットを受け取ってその場で立ち上がって羽織り、もう一度座りなおすのだけど、この時には少し膝を内寄りに角度をつけて。

袖はほとんど手が隠れてしまうほどだが、持ち上げればちょこんと指先が出ているので袖口を折らなくてもいいだろう。

お兄様はこの間、私の目の前に立っていた。じっと見つめられてます。そんな心配しなくともジャケットにいたずらなどしませんよ。

そして最後の仕上げに眼鏡を取り出し、掛けながらお兄様を見上げる。

眼鏡のサイズが合わないのでずり落ちてしまうのを防ぐため両手で押さえるのも忘れない。

 

「眼鏡一つでも、見え方が変わりませんか?」

 

本当は眼鏡一本でも良かったのだけど、自身でやったこの組み合わせが最強かな、と思ったので。

萌え袖×メガネ…あ、そこに彼ジャケ要素も入ったのか。彼じゃなくて兄だけれど。兄ジャケ。

お兄様には攻撃力の高い方が響くかな、と。

やってみたのはいいんだけどね、うん。お兄様瞳孔が開いてますよ。若干ですけど。一ミリにも満たないですけども。…これを判別できる深雪ちゃんの目、ヤバいね。

お兄様が固まっている間に私もお兄様を観察してみる。

下から仰ぎ見るお兄様。ハグをしている時にはよく見かけるけれど、こう、一歩離れたところから見るとまた新鮮だね。

 

「…深雪の呼吸が止まるのは、こういうことか」

 

おや?お兄様再起動しました。早いね。そしてすでに何かしらの分析が終了した模様。

どうやってその式と解答を得ました?

 

「深雪には変わりないし、眼鏡もジャケットもありふれたただの道具だ。目新しい物でもない。だが、それを深雪が着用することで、いつもと違う魅力が生じて目を奪われ、心を奪われ、思考を奪われるのか。これは確かに息も止まるな。体の指揮系統が上手く機能しない」

 

……お兄様、この数瞬でそこまで深い分析を?オタク心理を理解されたと??恐ろしい…。まさか本当に一見するだけで理解されるとは。

 

「えっと…お兄様?」

「うん、可愛いね。眼鏡なんて顔を隠してしまうんじゃないかとさえ思っていたが、相乗効果が生まれるのか」

 

お兄様、呑み込みが早い。

そうなの。相乗効果が生まれるんだよ。ナチュラルの状態もいい。だけどそこにもうひと手間加えると一層輝く組み合わせというものがある。もしくは全く別の魅力を生み出すともいう。

前者は簡単に言ってしまえば裸より、エロエロランジェリーを身に付けたら何も無いよりエロくなる。後者は、そのままでも十分可愛いけどふわふわした愛らしさ、とか無防備さが加わることによる守りたくなる可愛さ、というのが追加される。そういうことだ。

丸見えよりも見え隠れした方が興奮する。欲望って不思議だね。

 

「サイズの合っていないジャケットを着てどうするんだとも思ったが」

「余裕ある、というよりこのだぼだぼの感じがより一層私の小ささを浮き彫りにしますでしょう?そうするとさらに華奢に見えるという寸法です」

 

それに、彼シャツならぬ兄ジャケによって生まれる萌え袖である。…お兄様に効果があったかはわからないけどね。

 

「ただでさえ細いのに華奢になったら、と思わなくもないが、実際目で見てしまうと…より繊細で触れたら崩れてしまいそうなほど華奢に見える。…深雪は砂糖菓子か飴細工でできていた?」

「まあ。お兄様ったら幻影でもご覧になっておられるのですか?私は何も変わりないですよ」

 

女の子は砂糖菓子でできている、なんてお兄様一体どこでそんな言葉を知りました?

先ほどから可愛いと言っているわりに触れられないのは、どうやら触れれば私が脆く崩れるのではと心配になったらしい。そんな錯覚、お兄様ならすぐに見破れるはずなのに。

くすくすと笑うけれど、お兄様の反応は鈍い。

でも私と違って動けていたり分析できている時点で称賛に値する。

私なら息の根が止まって気絶する未来しか待っていないから。

もう謎も解明されたことだし、と眼鏡を外し、ジャケットを脱ぐ。

するとお兄様は魔法が解けたように動き出し、ジャケットを持ったままの私ごと抱きしめた。

 

「お兄様、ジャケットが」

「…いつもの深雪だ」

 

皴になってしまいますよ、と伝わっただろうに更にきつく抱きしめられる。

あらあら。確認しないと落ち着けないくらい華奢に見えていました?萌え袖深雪ちゃん可愛いよね。私もヤラれたからわかる。暴力的な可愛さだった。

 

「私にパレードは使えませんよ」

「適正はありそうだがな。今のお前は十分に使えていた」

「ま、お兄様ったら」

 

冗談まで言えるようになったなら、もう大丈夫だね。お兄様復活が早い。

体を離してジャケットを返すと、お兄様はそれを無造作にベッドに放り投げた。あとで片すんだろうけど、珍しいお兄様の雑な行動にきゅんとした。

そんな態度は表に出すことはないけれど。

 

「ご納得いただけましたか?」

「眼鏡やジャケットは要素の一つ。魅力を引き立てるアイテムでしかない。――肝心なのはそれを深雪が身に付けることだ。そういうことだな」

 

そういうことです。…そういうことなんだけど、何で私はお兄様に萌えのお勉強をさせているんでしたっけね?

ああ、眼鏡がすべての元凶でしたっけ。うんうん、すべては眼鏡が悪い。そういうこと。

 

「もうこんな時間か」

「今日は色々とありましたから」

 

本当にね。朝から奈良観光(?)をして美味しいモノを食べ歩いたり、景色を見ては感動したり。感動と言えば思わぬ再会を果たしたり、光宣君の華やか且つ鮮烈な戦闘も見られ、お兄様のスマート且つ洗練された動きに見惚れ、帰りの温泉ではちょっと悲しい出来事もあったけれどお湯はとてもよくて。お土産物売り場に寄ることもできて個人的には大満足の旅行だった。

 

(何より、水波ちゃんとの関係が深まったことが一番嬉しかった)

 

ただの主従関係ではなく、固い絆が結ばれた、そんな関係に成れたと思う。

 

「――今度、また遠出をしようか。今度は純粋に旅行だけを目的として」

 

!それは、是非と言いたいところだけど、前回何も考えずに叶わぬ口約束をして代償を支払った夏の思い出がよみがえる。

水着で湖まではまだ――うん、まだ耐えられた、はず。でもその後の温泉は…うん、ナニモナカッタ。記憶も何もかも山に置いてきた。

 

「それは魅力的なお誘いですが、しばらくはできそうにありませんね」

 

残念とばかりに眉を下げて微笑むと、お兄様ははぁ、と大きなため息を吐いた。

 

「さっさとこんな依頼を片付けたいものだ」

「ふふ、そうですね」

 

長期任務の解決の目途は全く立っていない。京都付近に潜伏しているようだ、との情報と、九島家――閣下と光宣君だけだけど――の協力を得られるようになったくらい。それでもこの短期間で得た戦果としては上々と言える。

帰宅直後お兄様は藤林さんと電話で話をしたはずで、彼女の力はもう借りられないことを知らされたはずだ。

情報部が動いているんだとか。軍も柵多くて大変だよね。他部署が絡むと面倒なことになる。

そして明日には、私たちが奈良で襲われたことが七草家に伝わるわけだけど――これは、必要な『死』であることはわかっている。

彼の決死の攻撃が無ければお兄様が術を見破るのが難しく倒せたかもわからないわけで、つまりは見捨てるしかない。無い――のだけど…

 

(…本当に、無いだろうか)

 

まだ何か、できることがあるんじゃないか、と考えてしまう。

 

「深雪?」

「いえ、今年のコンペに支障が無いと良いのですが」

「その前の下見で片が付くと良いんだがな」

 

お兄様はすでにエリカちゃん達と現地警護の下見に行くことを計画していた。

 

「その下見ですが、メンバーはいつものメンバーを予定されているのですか?」

「言っていなかったか。幹比古たちとだから6人の予定だ」

 

うん、そんな気はしていたけれど当然のように私と水波ちゃんが入っている。

 

「あまり大所帯で行っては目立ってかえってお邪魔になりませんか?」

「あちらでは分かれて行動するから問題ないと思うが。修学旅行先で学生グループもいるだろうから目立つこともない」

 

…あれか。家も敵にバレている状態で私を留守番させることは論外ということなのか。たとえ危険地帯であろうとも傍に居る方が守れると。

 

「何か心配事か?」

「心配事、と言いますか。…正直浮かれないでいられるかが心配です。お兄様たちだけでなく、エリカ達とも京都に行けるなんて。遊びで行くわけじゃないとわかっていても、観光名所ですから」

 

私だって名目上生徒会長として動くわけだからホテルの従業員と直接顔を合わせて打ち合わせをし、万が一の事態に備え、シェルターを目で確認する、ということもしなければならないけれどそんなのお兄様たちに比べればなんてことない仕事なわけで。

一人だけ物見遊山な気がしてしまう。

 

「いいんじゃないか。その方が敵も油断するかもしれないぞ。――もちろん、囮になんてするつもりはないが」

 

後半のお声が低すぎて背筋が震えますね。…お兄様、自身が囮にされることは歓迎レベルなのに、私が相手だと狙った時点で相手の命が無い、みたいな。

しかしお兄様は厳しさを一変させてふわりと笑みを浮かべて。

 

「お前が傍で笑ってくれていたら、それだけでいい視察になるだろうからな。思うままに楽しんでくれたらいい」

「…もう、お兄様は妹を甘やかしすぎです」

 

ちょっとだけお兄様に寄り添うと、お兄様は苦笑して頭を撫でる。

 

「それはきっとお前が甘やかしたくなるくらい頑張り屋さんだからだろうな」

「でしたら、お兄様こそ撫でられるべきでしょう?お兄様もとっても頑張り屋さんなのですから」

 

今日だけでどれだけ働いていたのか、お兄様はもう記憶の彼方なのかもしれない。

頭に乗っているお兄様の手を取って、その甲を両手に包んでから撫でる。よく働く手は固く、努力し続けた手だ。

 

「今日もたくさん、よく頑張りました。お疲れ様です」

「ああ。…深雪も、身を守るのが上手くなったね。特にあの管狐への反応は良かった」

「ありがとうございます」

 

お互い労い合って、最後にもう一度ハグをして。

 

「おやすみなさいませ、お兄様」

「おやすみ」

 

こうして二日間の弾丸奈良ツアーを終えた。

この次は京都観光が控えている。

スケジュールがいっぱい。楽しみだね!と素直に喜べないのは裏の事情が濃すぎるからだ。

考えることが山積みだけれど、ここを乗り越えれば――

 

(ようやく、私の暗躍の結果が出はじめる)

 

長かったように思う。けれどあれから4年しか経っていないのかと思うと短いのだろう。

こんなに幸福でいいのだろうか、というくらい幸せな生活。

これが、あと3か月で変わってしまう。――終わってしまう。

それがとても寂しくて、悲しくて。

でもだからこそこの3か月を大事にしたくて。

この先を一人でも耐えられるくらい大事に思い出を抱えて。

 

(この日記のやり取りも、きっとその支えになってくれるはずだから)

 

端末を胸に抱いて、しばらくその場に立っていた。

 

 

――

 

 

学校生活は論文コンペ中心に回り出した。

何が足りない、アレが欲しい、とバタバタ慌ただしいが、去年ほどの活気はない。学校全体で取り組まなければならない大きな装置が必要にならないから学校全体で作業することが無いのだ。

会場と評価対象が違うだけでこんなにもやる内容が変わるなんてね。大変だ。

他人事になってしまうのは、直接自分が関わることではないから。論文は任意ではあったが提出はした。私自身に画期的なアイディアはないけど評価に繋がるので。こういうイベント事を生徒会長がサボってはまずいでしょう。

生徒の手本となるよう活動しないとね。

代表の生徒として選ばれなくとも、生徒会役員は論文コンペのお手伝いに参加する。

直接作業を手伝えることは無くとも、人手が足りないというところに論文コンペにエントリーした生徒の中で優秀な生徒に、片っ端から手伝ってもらえないかとスカウトに回り、何人か人手を確保。

先に一時的処置としてお兄様を送り込んでいたところに確保できた数人を回して、を繰り返して人材不足解消に取り組んだ。

落選した生徒を説得って大変だったのだけどね。心を込めて誠心誠意お願いしましたとも。

もしそれでも難しかったら評価という餌を使うつもりだったのだけど、ね。サポートメンバーにもなれば一応名前を連ねることができるから。こちら先着順だよー!とたたき売りのように参加を促したらあら不思議。それなりに人数が確保できました。

本人たちもきっかけが欲しかっただけだったりもするのよね。素直になれない思春期たちばかりだから。

生徒会長にお願いされたらしないわけにはいかないな、みたいな。

だけどそれで参加してくれるなら感謝です。お礼にあとで焼き菓子差し入れにいくからねー!

ある程度駆けずり回って講堂に戻ると五十里先輩とお兄様が何やら難しいお話をしているところで、近くのほのかちゃんがうっとりお兄様を見つめていた。

恋する乙女だねぇ。見つめているだけなのにお花が飛んで見えます。

 

「深雪、お疲れ様」

「雫は休憩?」

「今終ったところ。これから見回り」

「そうなの?でもすれ違わなくてよかった。頑張ってね」

「うん。ほのかも、あまり見惚れてちゃダメだよ」

「み、みとっ!?も、もう!生徒会としての視察だよ!」

 

視察という割に見ていたのはひとりだけだったように思うけど、お口チャックだね。雫ちゃんと視線で会話しながらお見送り。

 

「じゃあ、私たちも一度戻りましょうか」

「え、深雪は達也さんたちの作業見なくていいの?」

「ほのかが見ていてくれたならそれで十分でしょう」

 

ごめんね、もうちょっとお兄様を見ていたかっただろうけどお時間です。そろそろ業者の方から連絡が来てしまう。

 

「五十里先輩、兄さん。順調そう?何か足りない物はない?」

「司波さん。今のところは大丈夫かな。人手も僕たちだけじゃ確保できなかったよ。助かった。ありがとね」

「お役に立てたならよかったです」

 

うん、先輩のちょっとお疲れからの儚げはにかみいただきました。なんだろうね、この得も言われぬ色気は。お兄様、よく傍に居てなんともないですね。

お兄様を見上げたら涼しげな表情。今回はそんなにお疲れには見えない。良かった。

 

「深雪が先輩方を派遣してくれたからな。俺は引き継ぎだけしてすぐ他に回れた。見事な采配だな」

「兄さんの九校戦での行動を真似てみたの」

「俺の?」

「兄さんみたいに選手一人ひとりの特性を調べることは無理でも、選考上位二十名くらいならどういった分野が得意かなら試験の結果でわかるから」

 

全部がわかるわけじゃないけどある程度なら読めるから。あとは乗せて上げれば歯車は回る。

スポーツと違って知識に好不調はない。

 

「…人材を探すのもスカウトするのも能力が違うよ」

「俺にはできないことだな」

 

五十里先輩とお兄様がやれやれ、と首を振っている。

何をそんなに呆れているのか詳しく聞きたいけれど、本当に時間が無いので今はこの辺で。

 

「それでは続きをよろしくお願いします」

「が、頑張ってください」

 

ほのかちゃんがお兄様にだけ視線を向けていたけれど、五十里先輩は苦笑だけして手を振ってくれた。

ほのかちゃんの態度が花音先輩と被ったのかな。一生懸命な恋する女の子だからね。

お兄様もああ、と返してお別れ。

それからほのかちゃんには、帰り道におかしなことは起こってないか確認したけれど、特にないみたい。

これが本当に無いのか、それともバックについている人に警戒してなのか、分からないけれど。

何でも雫ちゃんのお父様は二人のために最高峰と言われる魔法師警備会社の森崎くんちに依頼を掛けたらしいから。

一学生にする警護じゃない。

もちろん先生のところのお弟子さんが劣るわけじゃないけれど、彼らは忍び。

まずそもそも警護をしているなんてバレることはしない。ひっそり潜んでこその忍び。ロマンが詰まってる。

 

「森崎くんのご実家なら安心ね」

「何でも小父様、森崎くんのご実家が、一高の論文コンペの件での警護ならと割引価格で仕事を引き受けようとしたことに怒っちゃって。商売人としてそれはダメだって定価を支払う上で仕事次第では今後自分の事業の警護契約を結ぶって言いだしたみたい」

「それは…森崎家も張り切って護衛をされるでしょうね」

 

商売人としての血が許さなかったんだろうね。

うん、守りが固いことは良いことです。

 

「深雪…私いつまで雫の家に泊まればいいの?」

 

…そうだよねぇ。期限が決まっていないと不安になるよね。

ほのかちゃん曰く、雫ちゃんちは大歓迎で迎え入れてくれて、家族同然に付き合ってくれるらしい。でも居心地がいいか、と言われると…あのママさんとパパさんだものねぇ。

圧が、圧が凄い。

 

「長くとも論文コンペまでに終わると思うのだけど」

 

一応論文コンペ絡みで襲われたんじゃないかって意見が有力だからね。

でもほのかちゃんは期限がついたことに驚きの表情を浮かべた。

…もしかしたら、何か感づいていたのかもしれないね。でもそれまでに片は付くはずだから。

 

「ほのか、大丈夫よ。怖いことにはならないから」

 

だから安心して、と私にできる精一杯の笑みを浮かべて答えると、ほのかちゃんはボン、と音を立てたように顔を真っ赤にして俯いてしまった。ごめん、加減間違えたみたい。

 

 

 

 

次の日、お兄様は帰りが遅くなるということで水波ちゃんと二人で帰宅することになった。

寄り道もせず帰宅すると、四葉からの小包が届いた。まるでお兄様がいない時を狙いすましたかのようなタイミング。

――なんて、私が依頼したのだけれど。

そして配達員にサインと、一通の手紙を託して。

 

「水波ちゃん、このことは時期をみたらお兄様に私の口からお話するから他言無用ね」

 

水波ちゃんは、荷物に描かれた四葉のマークをしっかりと確認し、頷いた。

 

 

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