妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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古都内乱編㉒

 

 

10月12日。お兄様からの指示で京都への下見を、吉田くんを筆頭にお兄様と私、そして水波ちゃんで行く流れを誘導した。

ほのかちゃんと泉美ちゃんはお留守番です。

二人ともとても残念そうにしていたけれど、生徒会役員がこれ以上抜けちゃうととっても大変なことになるから。

一応中条先輩にも声を掛けて手伝ってもらうことになってます。コンペの手伝いもしてもらっているのにこっちも手伝ってくれるなんて、先輩ありがとうございます!とっても助かります。

 

「…深雪先輩、副会長として頑張りますから、あの…」

「泉美ちゃん、大変なお仕事を任せてしまってごめんなさいね。時間があったらお土産を買って帰るから――」

「いえ!お土産じゃなくてその…褒めて下さいね」

 

…美少女のあざと可愛い涙目での上目遣いをいただきました。可愛い。計算づくな気がひしひしとするけど可愛いから許す。可愛い。

でもゴメンね。私の危機察知能力が抱きつくのは止めた方が良いと囁くので頭ぽんぽんだけで許してね。

それから急いで今日の分のお仕事を片付けて終わった頃、お兄様はほのかちゃんと連れ立って実習棟へ向かわれた。

風紀委員の引継ぎも話しておかないとね。

途中吉田くんと合流して雫ちゃんと軽く打ち合わせをするのだろう。

 

「泉美ちゃんは周辺でおかしなことなどおきてない?」

「はい。ご心配いただきありがとうございます。ですが、ウチの護衛も優秀ですので何も」

「それはよかったわ」

 

はにかんでうっとりされてのいつもの流れが起き、ピクシーが私たちの距離が縮まりそうなのを察知して動き出そうとしたところで呼び鈴が。

すっと立ち上がる泉美ちゃんが迎えたのは香澄ちゃんでした。

 

「香澄ちゃんもお仕事お疲れ様。何かトラブルは起きてない?」

「はい。大丈夫です」

 

二人は一緒に帰るからここで合流してから帰ることが多い。

 

「戸締りは私たちがするから、泉美ちゃん、香澄ちゃんもお疲れさまでした」

「「はい、お先に失礼します」」

 

おお。双子ユニゾン。思わずにっこりしちゃうね。珍しい物でもないのだけど聞くだけで嬉しくなるじゃない。

そうすると二人そっくり固まって、動き出すタイミングも一緒って言うね。面白い現象が見られる。双子の神秘だね。

これが見たくてやっちゃうところもあるのだけど。可愛いよね。

帰っていく二人を見送って水波ちゃんと二人きり。ピクシーもいるんだけどね。

 

「水波ちゃん、今日の日記に書くことは決まった?」

「…授業のことを書こうとは思っています」

 

交換日記はあれから順調に日を重ね、一巡したところ。

まだまだ書き慣れない感じが初々しくて楽しい。書き手メンバーは3人。お兄様はコメント係。コメントは皆自由なんだけどね。

 

「なら、今夜は一緒に料理を作ってそれをネタにしてみたら?そろそろ皆に休憩用のお菓子を配ろうかと思って」

「それでしたらぜひお手伝いさせてください」

 

水波ちゃんもまだ戸惑いがあるのだろうね。彼女もこういったことに参加したことなかっただろうから。

こういう青春を感じられる時間を少しでも共有出来たら素敵だね。

 

「…あの」

 

そんなことを考えながらピクシーの髪を櫛で梳かしていたら水波ちゃんが遠慮しつつ声を掛けてきた。

ん?なんかそんな緊張するようなネタありましたっけ?

 

「深雪姉様は、その…光宣さ、んのことをどうお思いなのですか?」

 

人がいないとはいえここは外だからね。様と呼びそうになったのを堪えただけ偉いよ。大丈夫。

しっかし、水波ちゃんからも恋バナとは。師弟そっくりになりましたね。…恋バナだよね?人柄聞かれてないよね⁇

 

「どう、と言うとすぐに浮かぶのは一つなのだけど…怒らないでね?」

「え、はい」

「ゴールデンレトリバー」

「……第一印象、でしたよね、深雪姉様の」

「そのまま変わりないのよねぇ」

 

日記を交換して、彼の日記を読んでみて思ったことはよくできました、という感想が最初だった。内容じゃない。「よく書けたね」でまず百点を出している時点で、これは恋じゃないと思う。

内容は、今日は体調があまりよくなくて学校に行かせてもらえなかったことや、書くことに困ったのでニュースの話題だったりと、あとは私が事前にリクエストした食事内容ね。

あまり意識して食べたことないんじゃないかな、と思ったらその通りで、料理人にまで聞きに行ったらしい。

その様子も想像できて微笑ましい。…うん。やっぱりこの感情は恋ではないなあ。沸き起こるのは母性愛だもの。

 

「なんていうのかしらね。恋をするには温度が低すぎるのよ」

「温度、ですか」

「水波ちゃんは彼のことを思い出すとどうなる?」

「ぅえ!?え、えと、その!そのようなアレは!!」

 

誤魔化すのへたくそかな。ただただかわいい。

 

「ほらね。お顔が真っ赤。熱々でしょう?私のはぬるま湯。多分人肌くらいじゃないかしら」

 

落ち着きを取り戻した水波ちゃんははぁ、とわかったようなわからないような表情。

 

「恋に発展するにはもっと刺激的なことでも起きない限り無いんじゃないかしら。でもそんな刺激はお兄様がいる限り起きないでしょうしね」

 

ほら、吊り橋効果が起これば錯覚することもあるかもだけど、吊り橋を渡る前にお兄様が迂回路を用意してくれたりするから。不可能と思われていた空も飛べるようになったことで錯覚を起こす自体想像もつかない。私の人生最大の吊り橋はあの沖縄だと思う。あれ以来強化されたお兄様のセ〇ム能力(エレメンタル・サイト)に見守られあれ以上の障害が今後あるだろうか。

 

「…深雪姉様はそれでよろしいのですか?」

「ん?どういうこと?」

「難しいことはわかっています。許されないかもしれませんが、それでも、恋をするくらいは許されるのではないでしょうか」

 

あら、あらあらまあまあ。ぼかしにぼかして言ってくれているけれど、これは私の立場――四葉家次期当主候補として難しいだろうけど、恋をしたっていいじゃない、と心配してくれているみたい。

嬉しいね。心まで慮ってくれるようになって。

思わず笑みも深くなるというものだ。

 

「ありがとう、水波ちゃん。貴女がそうして心配してくれることが、何よりも嬉しいわ。でもそうね、せっかく心配してくれたところ悪いのだけど、私は今一番したいことがあるの。だから恋をする暇なんてないのよ」

「一番したいこと、ですか?」

「そう。もうすぐ第一関門が訪れるはずでね。その結果次第でどう動くかが決まるの」

 

第一関門はもうすぐそこまで来ている。

はたしてそれを乗り越えられるかが、どう乗り越えられるかがすべてのカギとなる。

水波ちゃんは思ってもみなかった回答に驚いて目を白黒させていたけれど、可愛いね。

 

「ピクシー、付き合ってくれてありがとうね」

「いいえ・こちらこそ・嬉しかったです」

 

あら。こちらも嬉しいことを言ってくれる。整えたばかりの頭を乱さないようそっと撫でる。

するり、と触手が腕に絡みつく。あれだ。猫ちゃんがもう行っちゃうの?というようなアレ。…どうして連れて帰れないんだろうね。もううちの子として迎えたい。

お兄様がほのかちゃん達を連れて戻ってきた。門で待ち合わせでいいって言ったのだけど、今は警戒するに越したことは無いんだそう。

お兄様の負担になりたいわけじゃないので大人しく言うことを聞きますとも。

久しぶりに皆で賑やかに帰った。

 

 

 

その帰りのキャビネットの中で、お兄様は一つのローカルニュースに目を止めた。

有名観光地を現場とした他殺死体の詳報で、被害者の名前も載っていた。

 

「発見されたのは今朝のことで、被害者の名前は名倉三郎…お兄様、この方は」

「同姓同名でなければ七草先輩のボディーガードをしていた魔法師だ」

 

 

 

事態は、様々な事態を飲み込んで動き出す――。

 

 

――

 

 

10月14日日曜日。

 

お兄様は葉山さんに呼ばれて外出。

その間、この間の宅配業者とは別の業者に扮した四葉のエージェントが小包を持ってきた。水波ちゃんを下がらせてお手紙を渡す。

中身はあとでのお楽しみ。

今は水波ちゃんとお菓子作りをしていましたからね。そっちが最優先。

 

「あの、よろしいのですか?」

 

水波ちゃんの視線がちらちらと机に放置した小包に向いているけれど、今すぐ開けたところで何も事態は変わらない。ただの報告書だから。

指示はすでにサインと共に前もって認めておいた手紙を持っていってもらったから。

 

「こっちの方が大事だもの」

 

これも嘘じゃない。水波ちゃんと一緒にお菓子を作ること以上に重要なことなど今はないのだ。

お兄様は今頃葉山さんと腹の探り合い中かな。

ご苦労様です。

 

「さ、今日はあと二回くらいオーブンを回転させるわよ」

「は、はい!」

 

賄賂はいくらあってもいいからね。

 

 

 

 

次の日の月曜日。元生徒会長が来校し、十師族・七草家長女として面会を願った相手は司波達也。

これで噂が立たないわけがない。

特に彼女の在学中を知る生徒たちの騒ぎは大きかった。上へ下への大騒ぎだった。

皆好き勝手噂するねぇ。一年生たちが噂に踊らされて大変なことになってます。そのお祭り私も参加したいけど、どうやら当事者でもないのに当事者扱いで、腫れ物注意に分類されてしまった。ひどい。私もお祭り参加したい。

同じようにほのかちゃんも、そして服部先輩も外されているらしい。…この二人に交じって私入るのは違くない?

わざわざ学校に来てもらったのはお兄様に配慮した結果なのだろうけど、随分捨て身だよね。

それとも高校で噂されるくらいなら大丈夫だと思ったのかな。そっち系の噂の主な被害者お兄様だけだし。

お兄様たちが応接室で二人きりになって話していることはすぐに全校生徒の知るところとなった。

噂が校内を猛スピードで駆け抜けました。エリカちゃんの身体強化のスピード並かもしれない。

瞬く間に広がった噂は十師族長女からの婚約申し込みでは?という話が有力だった。

もしそうならクラッカー用意しなきゃだけど、そうじゃないんだよねぇ。と少し残念に思いながらため息を吐いたら泉美ちゃんがびくっと体を跳ねさせた。

 

「み、深雪先輩!あの、姉のことなのですが!」

「泉美ちゃん、落ち着いて。ピクシー、少し早いけどお茶にしましょう。服部先輩も香澄ちゃんも一息入れませんか?水波ちゃん」

「どちらになさいますか?深雪姉様」

「そうね、チョコマフィンなら片手でも食べられるからそれにしましょうか」

 

水波ちゃんはすっと立ち上がりお茶の準備を。ピクシーと共同作業。ウチの水波ちゃんは融通の利くいい子です。

 

「み、深雪先輩の手作り!ありがとうございます!」

「泉美ちゃん、何度も食べているでしょう?それに水波ちゃんと一緒に作ったのよ。お礼なら水波ちゃんにもね」

 

はい!と良いお返事。

香澄ちゃんはその様子に少しだけ元気が出たのか苦笑い。服部先輩はまだ心ここにあらず、だね。

可哀想なので早めに正気に戻っていただきましょう。

 

「服部先輩。とりあえず、婚約話とかではないはずですよ」

「な?!なぜそう言い切れる!?」

「普通、婚約するなら親に話が行きませんか?ちなみにうちの親にそういった話は来ていないです」

「「「「……」」」」

 

あの父にお兄様の婚約話なんて来ようものなら大騒ぎだもの。私の耳に入らないわけがない。

皆無言できょとん顔をしたのちはっと目を見開いていた。

まさか、誰も思い至らなかったの?

 

「皆さん、お疲れみたいですね。ちょうどお茶も入ったところのようですから、一緒にいただきましょう。水波ちゃん、ピクシーありがとうね」

 

皆にお茶を配り終えたピクシーは私の背後に控えた。

水波ちゃんは隣です。もう片方にはほのかちゃん。向かいには泉美ちゃん、と大概このフォーメーションです。

そこに今日は風紀委員も交じっているので香澄ちゃんが泉美ちゃんの隣に。服部先輩はすぐ扉に向かえるようにか、水波ちゃんのお隣に。吉田くんはその向かい側に座っていた。

 

「…深雪先輩は落ち着いてますね」

「そうね。正直、皆がなぜそこまで浮足立っているのかがないのかがわからないわ」

「だ、だだだって!七草先輩だよ!?」

「七草先輩だからって、ほのか。何を心配しているの?――確かにこの間お見掛けした先輩はお美しかったわ。大学生になると雰囲気も大人びるのかしら」

 

夏に見た先輩は美人さんだった。前までは小悪魔美少女って感じだったけど今では小悪魔美女さんだ。

見てはないけど結構なボリュームをお持ちなのでしょう?前に香澄ちゃんが言いかけてたよね。

お兄様には実際見てどうだったかなんて聞いたところで聞きたい回答が返ってくるとは思えない。妹相手にお兄様がそういったお話をすることは無いだろうから。残念だけどね。

 

「深雪は心配じゃないの!?」

「だからほのか。私は何を心配すればいいの?」

「え。それは、もちろん…達也さんを取られちゃう、とか?」

 

…ほのかちゃん、私たちの関係をどう思っているのかな。兄妹から奪うとは。

 

「兄さんは別に妹のものじゃないわよ。それから七草先輩もそういったお話をするのにわざわざ学校に来ると思う?」

「……思いません」

 

ほのかちゃんを論破してしまった。でも恋する乙女は理論じゃないから。

こればかりは理屈じゃ割り切れないのだ。

 

「深雪先輩は姉のことをどう思っているんですか?」

「か、香澄ちゃん!」

 

泉美ちゃんが慌てたような声を出しているけど、別に困る質問でもない。安心してほしいと微笑みかけてから。

 

「どうって、頼れる先輩。綺麗な人、強い意志を持ってる人、十師族としての責任感が強くて、カッコいい先輩、かしら」

 

羅列してみると、なんだか似通ったものばかりになってしまった。

その評価に妹さんたちは二人して顔を見合わせていた。

多分聞きたかったのは姉がお兄様に近づくことをどう思うか、ってことだと思うけど大賛成なんて言おうものなら二人が嫌そうな顔をするのが目に見えているので話題を逸らしてみた。ら、うまく乗ってくれたみたいだね。

 

「カッコいい、ですか、姉が」

「ええ。立ち居振る舞いがとても素敵だと思うわ。毅然と前を向いて、何も後ろ暗いところが無い、と真直ぐ生き抜いてこられたのだろうという強い意志が見られて。憧れるわ」

 

十師族としていらぬ苦労も多かっただろうに、そんなことをおくびにも出さない先輩の態度は純粋にカッコいいと思った。時折甘いところがあるのは、平和な証拠にも思えて私にとっては戦争無き時代を象徴する姿のよう。

…まあ、まだこの情勢だから、平和ボケするにはちょっとまだ早いと思うのだけどね。

もう少し実戦向けに育ててくれてもよかったのにと思わずにはいられない。せっかく能力があるのだから。

七草弘一はどこかに嫁がせるために強く鍛えすぎないようにしていたのかなとさえ思う。

…叔母様のように鍛えてしまえば、隙が無くて男性としては気後れしちゃうかもしれないと思ったのかもしれない。自身がそうだったように――なんてことは邪推かな。

 

「その、もしもですけど、先輩のお兄さんとお、お付き合いとかしちゃったら」

「お互いに好意があるならいいんじゃない?そこに妹の意思が関係するとは思えないのだけど」

「「……」」

 

あ、しまった。双子に刺さってしまった。そんなつもりじゃなかったのだけど。もう少しオブラートに包めばよかった。

どうしよう、フォローした方が良いのかな?

内心動揺していると、今度は服部先輩が恐る恐る声を掛ける。

 

「…司波さんは、交際に反対しないのかい?」

「……あの、気になっているのですが、何故兄の付き合う相手に私が関係するのでしょう。結婚するなら確かに関係ができるでしょうが、それまではまだ他人でしょう?」

 

おかしいな。どうして私お兄様にべったりしてないのにこんな反応受けるんだろう。

兄妹仲はいいよ。原作みたいなべたべたは無いけど、寄り添っていたりはしていたから距離は近いしね。でも、だからといって――あ。

 

「もしかして、物語とごっちゃになっていませんか?」

 

一高に蔓延る悪の教典…じゃないけど、私とお兄様をイメージして創られた作品だ。生徒たちが混同して楽しんでいることは実感している。

特に生徒会長になってからは女王扱いも加わって、より一層物語の登場人物のような扱われ方をしている。

もしその流れで彼らのような関係だと勘違いが起こったのだとしたら、そんな反応もおかしくはない。

あれは恋愛小説だから。

 

「あちらは幼馴染で兄妹のように仲良く育っていましたけれど、私たちは血の繋がった兄妹ですよ。家族愛、兄妹愛はあっても恋愛にはなり得ません」

 

はっきりすっぱり言うと、ほのかちゃんが安堵を浮かべつつも疑惑の視線…?何故?

 

「…わかっている、つもりなんだがな」

 

続いて服部先輩もですか。

 

「司波が七草会長と何かあるわけがないとわかっていても疑いたくなるというか」

 

こちらも恋する男子も複雑な模様。

一高生は順調に青春してるね。良いことです。

 

「僕は達也が誰か特定の人と仲良くなろうとしているようには見えないのだけど」

 

そう言いながら吉田くんがこちらをチラチラ見るのはなんででしょうね。ほのかちゃんに遠慮してる?それにしては視線が私に向いている。

七草双子も何か言いたそうだけどどう口にしようか悩んでいるようで、難しいお顔でマフィンを口に含んでは咀嚼していた。

水波ちゃんは落ち着いていて、マフィンとお茶を楽しむ余裕すらあるようだ。…というか彼女の場合、お兄様と七草先輩との関係をどうでもいいと思ってそうだね。

一応四葉と因縁のある七草のご令嬢ですよ?関心が全くないはずはないと思うのだけども。

 

「先輩の用事として考えられるのは、去年の論文コンペではあんな事件が起きたから、今年も何かあるのではないかと警戒してくれていて、何かしらの情報を持って忠告しに来てくれたか、それ以外に何かトラブルに巻き込まれて解決方法を兄に尋ねに来たか――。

一高でトラブルがあった場合、兄さんが解決することがあったから、相談相手にはもってこいだったのかもしれないわ。十文字先輩に相談したら十師族同士何かあるのかもと、周囲に勘繰らせてしまうかもしれないし。

簡単に思いつくところはこんなところかしら」

 

というかそれくらいしか思いつかないよ。まさかお兄様に会いたいから!なんて学校に来る恋愛脳じゃないでしょう先輩は。

 

「そう、だな。十文字先輩に相談しづらい何かがあったのかもしれん」

「姉のトラブル、ですか」

 

香澄ちゃんが俯いたのは、心当たりがあったから、だろうか。姉の専属でもあったわけだから護衛交代の理由を知ったのかもしれない。

私はそれに気づかぬふりをして紅茶を傾ける。

 

「そちらはただの勝手な妄想よ。でもあながち間違いではないような気がするの。ご挨拶した時、私に遠慮してほしい、という雰囲気を感じたから。元から二人で話すことを希望されていたのは知っていたのに、わざわざそんな視線を向けるってことは知られたくない何かがあった、と考えるのが普通だわ。そうなると、兄さんは巻き込んでもいいけど、私は巻き込みづらいトラブルなのかな、と」

「深雪先輩、たった一度目にしただけでそこまでの推理!感服します!!」

 

わあ、キラキラお目目が眩しい。

でも皆可能性を提示されて落ち着いてきたね。ずっとそわそわしてたから仕事にならなかったもの。

 

「さあ、そろそろ仕事に取り掛かりましょうか」

 

休憩時間は終わりです、と言えば皆初めの時に比べてシャキッと動き出す。うんうん、お腹空くと判断力も低下するからね。おやつタイムは必要です。

サクサクお仕事終わらせましょう!

 

 

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